児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

風俗営業の「既得権」意識

 前からうすうす感じてきたんですが、風営法って既得権重視なんですね。
 でもこういう既得権を認めると、罰則付きで強力に進めている健全化とは矛盾するので、どっちかにしてほしいですよね。
 こんなことだと、児童ポルノの所持とかについても、風俗営業を倣って「既得権」を主張する人が出てきますよ。

出会い系喫茶及び類似ラブホテルに対する規制の在り方に関する提言
http://www.npa.go.jp/safetylife/hoan3/090806_kenkyukaiteigen.pdf
3 営業禁止区域等における営業の取扱いについて
(1) 問題の所在
出会い系喫茶営業を風営法上の店舗型性風俗特殊営業として規制し、また、ラブホテル等営業の要件を見直す場合、これらに該当する営業を新たに営業禁止区域等で営むことは禁止される。一方、従前から営業禁止区域等に当たる地域で営まれてきた営業について、これを継続させることは清浄な風俗環境の保持等の観点から望ましいことではないが、仮にこれが禁止された場合には、これまで適法に営まれてきた当該営業が継続できなくなることに伴い、設備の改修、爾後の営業上の利益の喪失といった経済的負担等の問題が生じることから、当該営業を廃止させるべきか、又は当該営業を引き続き営むこと(既得権)を認めるべきかが問題となる。
なお、風営法は、既に規制対象となっている店舗型性風俗特殊営業について、営業所の周辺に新たに保護対象施設が設置されたような場合には、当該営業を引き続き営むことを認める一方で、当該営業の相続や当該営業所の新築、増築、移築等があったときには当該営業の継続を認めないことにより、当該施設周辺における清浄な風俗環境の保持等の要請と店舗型性風俗特殊営業を営む者の財産権との調整を図っている(風営法第28条第3項)。

 まあ、判例も既得権をみとめるんですね。

阪高裁平成 19年8月29日
1 法令適用の誤り
 (1)憲法違反
 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (以下「風営法」という。) 28条 1項及びこれを受けた大阪府条例 (大阪府風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例 9条 1号)は店舗型性風俗特殊営業について広範な禁止区域を設定し、合法的な新規出店は許可されない。また同条 3項は既設の店舗についてのみ営業を認めている。これらの規定は、新規参入者を極めて不合理に差別するもので,憲法 22条、14条に違反する無効なものである。したがって、これらの規定に違反したとして被告人を有罪とした一審判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある。
・・・
風営法 28条 1項が店舗型性風俗特殊営業について禁止区域を設定していることは弁護人主張のとおりであるが、同規定は、店舗型性風俗特殊営業が性的なものであることから、周辺の善良な風俗又は清浄な風俗環境、あるいは少年の健全な育成を害することのないように、学校等の特定の施設の周辺におけるその営業を禁止しているのであって、かかる規制は、公共の福祉のために合理的に営業の自由を制限するものであり、憲法22条 1項に違反するものではない。また前記大阪府条例は、風営法 28条 1項後段に基づいて、病院、診療所等の施設を指定しているのであり、これも上記風営法による規制の趣旨に照らして合理的なものであって、同様に憲法22条 1項に違反するものではない。さらに、風営法 28条 3項は既存の業者に対して場所的規制を適用しないとしているが、これは、店舗型性風俗特殊営業を規制する改正法施行の際許可を得て現実に同営業を営んでいたものに対し、その既得権を尊重し、特にその営業を引き続いて行うことを認めた趣旨のものであって、既存の業者に禁止区域における営業を独占させようとする趣旨のものではないから、同規定は憲法 14条 1項に違反するものではない。
 したがって、上記風営法憲法違反をいう弁護人の主張には理由がない。

 この判決は公刊されていません。