この事件の児童ポルノ輸入は関税法違反。目的を問わず最高7年。
児童ポルノ輸入罪は児童ポルノ法7条2項・5項ですが、所定の目的がないと処罰できません。しかも、所定の目的がある場合の法定刑が最高5年。
児童ポルノの保護法益を考えると、拡散する目的がある方が重いはずですが、軽くなる。
なお、児童ポルノ輸入罪の既遂時期は不明です。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081011-00000083-mailo-l12
大麻草約107グラム(末端価格約43万円)と児童ポルノのDVDとCD17枚を密輸しようとしたとして、東京都荒川区東尾久1、書店経営(54)を関税法違反と大麻取締法違反の疑いで逮捕、送検したと発表した。千葉地検が10日起訴した。
大麻取締法
第二十四条
大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
関税法
第百九条 第六十九条の十一第一項第一号から第六号まで(輸入してはならない貨物)に掲げる貨物を輸入した者は、七年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 第六十九条の十一第一項第七号から第十号までに掲げる貨物を輸入した者は、七年以下の懲役若しくは七百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3 前二項の犯罪の実行に着手してこれを遂げない者についても、これらの項の例による。
4 第一項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、五年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
5 第二項の罪を犯す目的をもつてその予備をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。(輸入してはならない貨物)
第六十九条の十一
1 次に掲げる貨物は、輸入してはならない。
一 麻薬及び向精神薬、大麻、あへん及びけしがら並びに覚せい剤(覚せい剤取締法 にいう覚せい剤原料を含む。)並びにあへん吸煙具。ただし、政府が輸入するもの及び他の法令の規定により輸入することができることとされている者が当該他の法令の定めるところにより輸入するものを除く。
七 公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品(次号に掲げる貨物に該当するものを除く。)
八 児童ポルノ(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第二条第三項 (定義)に規定する児童ポルノをいう。)
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
(児童ポルノ提供等)
第七条 児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4 児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6 第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
こういう上告理由を書いたことがある。
児童ポルノ輸入罪の既遂時期
法7条5項の輸入罪は、「日本の領域(領空・領海)に入った時点」で既遂となる。
陸揚げ*1・保税地域*2には関係ない。
本件の訴因でいえば、飛行機が日本の領空・領海に入った時点で既遂となる。
森山・野田「よくわかる児童ポルノ・児童買春処罰法」P60このように児童ポルノについては、薬物や輸入禁制品の場合よりも輸入罪の既遂時期が早いのは、有体物として陸揚げされなくても領土に接近してデータとして送信されれば法益が侵害される危険があるからだと合理的に理解できる。
本件の公訴事実には、空港への到達まで記載されているから、(日本領空に入った時点で)児童ポルノ輸入罪も既遂となる
5項輸入罪(不特定多数)の裁判例には、陸揚説的なのがあります。
東京地裁八王子 H16
児童ポルノを不特定多数に提供する目的で本邦に輸入しようと企て
10/1A会社に注文し、
被告人が注文した3号DVD数枚をA会社から被告人宛に国際郵便小包で発送させ、
10/15 JAL××便で成田空港に到着させた上、10/16情を知らない空港作業員をして、同航空機外に上記DVDを荷下ろしさせもって、児童ポルノを本邦に輸入した
あまり出番がないようです。