児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

刑事未成年の被害児童に撮影させた場合の擬律

 最近多い、こういう事件なんですけどね。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/78677/
 調べでは、容疑者は5月2日、中学生向け携帯電話サイトの掲示板で知り合った久留米市の中学2年生2人に「自宅でできる高収入アルバイトがある」とメールを送り、3万円の報酬を約束して携帯電話のカメラで撮影した裸の写真を5枚ずつ送信させた疑い。
 「アルバイトの報酬を支払う」と言って、2人の名前や電話番号なども聞き出し「もっと高い金を払う」と電話で売春を強要。断られると「裸の画像を全国に流すぞ」と脅したという。
 容疑者は、小学6年の女児2人に裸の写真を送らせた同容疑で札幌北署に5月25日に逮捕され、その後起訴されている。

12歳に裸体画像を送信させた疑い 道警、大分の男逮捕 /北海道
2007.05.26 北海道朝刊 
 調べでは、容疑者は3月29日午後6時過ぎ、出会い系サイトで知り合った女子中学生(12)に、携帯電話のメールで「クソガキ、徹底的にやってやる、覚悟しろ」「写メ送ればすむんだ」などと脅し、裸体を撮った写真を自分の携帯電話に送らせた疑い。

 被害児童が正犯になりうるということになると、被害児童をして撮影させる場合は、場合によっては間接正犯、場合によっては共犯ということになるので、注意が必要です。
 被告人を処罰する理由付けの話であって、別に、児童を処罰せよというのではないので、被害児童の帰責性を主張するより気楽です。
 強要的な事情があるので、量刑も重いわけで、弁護人も要チェック。

12〜13歳は児童ポルノの撮影・送信について「被告人の道具」と化すのか?
(1)判例
判例によれば、刑事未成年を利用した場合でも、未成年者が正犯、利用者が共犯となることがある。
最高裁S58.9.21
 最高裁S58.9.21は是非善悪の判断能力を有する者であれば、強迫・畏怖などの強い影響がない限り、共犯であって間接正犯ではないとする。
この判決は、「是非弁別能力があるときは、原則として共犯になるという判例」だと理解されている。

  • 渡辺忠嗣「是非弁別能力を有する刑事未成年者を利用して窃盗を行った者につき窃盗の間接正犯が成立するとされた事例」ジュリスト 第803号
  • 最高裁判例解説 渡邊忠嗣「是非弁別能力を有する刑事未成年者を利用して窃盗を行った者につき窃盗の間接正犯が成立するとされた事例」法曹時報 第38巻9号

そうであれば、是非善悪の判断能力を有する12〜13歳を利用する場合は、特別の事情がなければ、共犯であって、間接正犯にはならない。

最高裁H13.10.26
「指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものではない場合」で12歳の児童を利用する場合、共同正犯となりうるとする。
最高裁H16.1.20
最高裁H16.1.20*23*24は、自動車の転落事故を装い被害者を自殺させて保険金を取得する目的で,極度に畏怖して服従していた被害者に対し,暴行,脅迫を交えつつ,岸壁上から車ごと海中に転落して自殺することを執ように要求し,被害者をして,命令に応じて車ごと海中に飛び込む以外の行為を選択することができない精神状態に陥らせていたなど判示の事実関係の下においては」被害者を道具とする被害者に対する殺人未遂罪が成立するとする。
この程度の強度の暴行脅迫が加えられることが道具性の要件となっている。