児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

裁判員に量刑目安資料 最高裁、データベースで提供

 量刑のポイントが「犯行態様、計画性、凶器、被害の状況、被害者の処罰感情、被告の年齢・性別・前科、事件当時の精神状態、反省の有無」だということがわかりました。
 冒頭陳述・論告・判決書の内容を総合した情報。
 こういう要素で絞っても、幅が出てくるので、弁護人はそこで最低限を目指すことになるんでしょうね。
 従来から、量刑は処断刑期の範囲内でフリーハンドでやるものだと思うんですが、裁判員は、素人だから、こういう資料の影響が大きいですね。
 逆に、罪数とかで処断刑期を争う議論になると困るでしょうね。データベースの法令適用と本件の法令適用の違いがわからないから。

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007080502038645.html
刑事局によると、裁判官による現行の量刑では過去の類似事件の判決、求刑はもとより、犯行態様、計画性、凶器、被害の状況、被害者の処罰感情、被告の年齢・性別・前科、事件当時の精神状態、反省の有無などについて詳細なデータを参考にしている。
 裁判員への量刑資料の提供をめぐっては「刑にばらつきが出過ぎないためにも必要」という意見がある。その一方で「資料に引きずられると、市民の常識を反映させるという裁判員制度の趣旨を損ないかねない」との指摘があり、裁判官が参考にしているものよりも大まかなデータにとどめる方針。
 裁判員用のデータベースは来年四月までに完成させ、それ以降の裁判例を入力する。
 裁判員裁判が実施される全国の地裁本庁・支部計六十カ所の評議室に置かれた端末で使うほか、検察官や弁護人にも開示するという。

 児童ポルノ・児童買春の場合は、裁判員制度が適用されませんので、公開されません。だいたい、調書判決が多くて、実刑でも量刑理由がないことがある。
 単位会の副会長からは「量刑なんて、弁護士なら勘でわかるから調査の必要なし。刑事弁護でそこまでやらんでいい。」と言われたことがあります。独自で調べようとしないので、最高裁のデータベースの検証も反論も補充もできません。

 児童ポルノ・児童買春の関係では、ハメ撮りの強姦致傷とか偽札援助交際の通貨偽造とかで裁判員制度が適用されます。
 家裁でやってる別件の児童福祉法違反事件なんてあると、どうやって考慮してくれるんでしょうか?

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
第二条
地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二裁判所法第二十六条第二項第二号に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)

第181条(強制わいせつ等致死傷)
第百七十六条若しくは第百七十八条第一項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 第百七十七条若しくは第百七十八条第二項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は五年以上の懲役に処する。
3 第百七十八条の二の罪又はその未遂罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、無期又は六年以上の懲役に処する。
第148条(通貨偽造及び行使等) 
行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。


追記
 産経によれば、この程度だそうです。
 強盗の未遂・既遂とか、傷害の程度とか、示談の成否とかは、このグラフから読み取れということでしょうか?

http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070805/jkn070805000.htm
http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070805/jkn070805000-1.jpg
 最高裁刑事局は「従来の『相場』にとらわれないよう、大まかな傾向が分かるようにする。あとは国民の常識で 判断してほしい」としている。
 裁判員への量刑資料の提供をめぐっては「刑にばらつきが出過ぎないためにも必要」という意見の一方で、 「資料に引きずられると、市民の常識を反映させるという裁判員制度の趣旨を損ないかねない」との指摘があり、 裁判官が参考にしているものよりも大まかなデータにとどめる方針。
 刑事局のイメージでは、現金を奪う目的で民家に侵入し、住人1人にけがを負わせた強盗致傷事件の例では 「侵入」「被害者1人」で検索。16年の改正刑法施行後に類似事件の判決は、懲役10年から3年まで計30件あり、 執行猶予や保護観察が付いたケースもあったことを示す量刑グラフが提供される。