児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

淫行と恐喝。

 権利行使と恐喝という犯罪阻却の問題じゃなくて、罪数の話。
 稀にあるんですが、観念的競合としても、家裁に行ったり、地裁に行ったり。
 この事案では、地裁・高裁・最高裁は、観念的競合で地裁管轄としています。

被告人は,A17が満18歳に満たない児童であることを知りながら,同女が援助交際と称する売春をしていることに因縁をつけ,暴力団関係者を装い,同女に売春させるなどしてその売上金等を喝取しようと企て,・・・において,同女に対し,「やくざに断ってやってもらわなあかん。どないすんや。」,「どうやって稼ぐんだ。もっと援助交際して稼げ!」,などと語気鋭く申し向けて支払を要求し,同女をして,もし,その要求に応じなければ,暴力団員に引き渡されるなどした上,その身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨畏怖困惑させ,1/1ころ上記対償金の中から万円の交付を受けてこれを喝取するとともに、さらに,2/1ころ,ホテル において,同女に対し,遊客Bを相手に対償の支払を得て性交させ,もって同女に淫行させた。

という事例。
 児童淫行罪の支配関係の一種として、脅迫・強要というのがあるんですが、その場合の罪数処理がまたややこしい。
 恐喝は1/1既遂、児童淫行罪は2/1既遂ですが、名古屋高裁は観念的競合としています。

 児童淫行罪と恐喝罪は併合罪
 被告人の行為の重心を恐喝罪という財産犯にあるとすれば、本件の淫行は、恐喝の手段として行われたものである。
 それが一番顕著に出ているのは、恐喝罪は1/1の交付で既遂となるのに、淫行はその後登場した遊客との間で2/1に行われている点である。恐喝罪既遂の時点では児童淫行罪は不成立なのである。

恐喝罪が先に既遂になっているのに、どうして観念的競合になるのであろう?社会見解上一個の行為とは到底言えない。

 また罪質から考えても、恐喝罪の本質は財産犯であるから財物取得に重心があるのに対して、児童淫行罪の本質は性犯罪であるから淫行(性交・性交類似行為)に重心があるのであって、
脅迫文言
  ↓
財物取得
  ↓
淫行
という時系列では、両罪の行為としては重なり合いが小さく、社会見解上1個の行為とは言えない。

4 児童淫行罪と恐喝罪は併合罪だとする判例名古屋高裁s42.3.1)
 このように、恐喝と児童淫行罪が手段結果の関係にあるときは、牽連犯ではなく、併合罪だというのが判例名古屋高裁s42.3.1)である。

5 恐喝罪と児童淫行罪の軽重(犯情)
(1)犯情(刑法10条3項)とは?
 判例によれば「刑法第十条第三項にいわゆる犯情とは、当該犯罪の性質、犯行の手口、被害の程度その他一切の情状を指称する」とされる。
 その判断の時点は、処断刑を定めるとき、すなわち判決時である。判決までに証拠として現れた事実を総合して、一切の情状を考慮して決めるのである。

(2)本件の犯情比較
 一般論として、恐喝罪は財産犯であるから、被害金額の大小が犯情を左右し、被害弁償によって財産的被害と精神的苦痛については補填しうる。
 その証拠に財産交付に至らないときは、未遂罪として懲役5年が上限となる。
 これに対して、児童淫行罪の保護法益は、単に犯行時における性的自由の侵害だけではなく、児童の徳性・健全成長に対する悪影響をも含むものであり、金銭賠償によっては補填できない。(心身の傷は自然治癒に任されていて、治癒するかどうかはわからない。)
 それ故に、強制の要素(強姦・強制わいせつ)がなくても懲役10年という法定刑となっているのである。(強制の要素があれば、別途強姦罪・強制わいせつ罪が成立し観念的競合となる)
 近時児童福祉法が改正されて罰則が強化された、すなわち、児童の思慮浅薄につけ込む性犯罪の被害を重視するという動向も看過できない。

 本件についてみると、恐喝罪の被害金額は弁償が行われていること、他方、被害児童の健全育成のためのケアが行われていないことを考慮すれば、一審判決時や原判決時点における犯情比較では、児童淫行罪が最も犯情が重いことは明らかである。
 仮に弁償が児童淫行罪の被害に限定したものであるとしても、児童淫行罪が最も犯情が重い。


(3) 児童淫行罪の方が恐喝罪より犯情が重いという裁判例
 実は、同種の裁判事例では、児童淫行罪が最も重いとされている。福井家裁事件の恐喝も悪質であるが、児童淫行罪が犯情重いとされているのである。
福井家裁H14