児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

単純所持罪の無罪判決 佐賀地裁「判定に疑い」(佐賀地裁R02.2.12)

 当職も協力しました。
 タナー法という立証方法を批判したようですが、タナー法に一定の信用性を認めた上で、本件の画像不鮮明を理由として、本件鑑定の信用性を認めないという判断だったもようです。
 画像不鮮明による無罪判決は津地裁伊勢支部でも観測しています。

https://www.saga-s.co.jp/articles/-/488043
児童ポルノ巡り一部無罪 佐賀地裁「判定に疑い」
 県迷惑防止条例違反(盗撮)と児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の罪に問われた長崎県佐世保市、無職の被告(39)に、佐賀地裁は12日、懲役8月(求刑懲役1年)の判決を言い渡した。児童ポルノの所持については「動画データの女性が児童であると立証されているとは言えない」として無罪とした。

 盗撮行為を巡っては検察側、弁護側で争いはなく、被告のノート型パソコンに保存されていた動画データの女性が18歳未満の児童と立証できているかどうかが争点だった。

 杉原崇夫裁判官は判決理由で、検察側の医師が用いた年齢判定の手法について「統計学的な数字による手法として十分に信用できる」とした一方、「動画データは画質がかなり荒く、判定資料としての品質がよくない。判定が正確にできるかについて、常識的にみて疑いが残る」と述べた。

 判決によると、被告は昨年6月23日、佐賀市の大型商業施設2カ所で、氏名不詳の女性ら3人に、靴に装着した小型カメラのレンズをスカート内に差し入れて撮影するなどした。

 一部無罪を受け、弁護人は「結論としては納得のいくものだった」と話し、佐賀地検の奥野博次席検事は「判決を精査し、適切に対処する」とコメントした。

異なる古物店又は質店計8店舗に対し,偽物のプランド腕時計を売却等して換金し,現金を得るとともに,商標権及び専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行った詐欺,商標法違反の事案において,原判決が各所為につき, 1個の行為が3個の罪名に触れる場合であるとして科刑上一罪の処理を行ったことは正当であるが,本件の事実関係の下では, 商標法違反につき被告人の全行為を包括して一罪と解すべきではなく,各行為ごとに別個の商標法違反の罪の成立を認めるべきものである(広島高裁R01.11.21)

前田雅英刑法各論講義7版にはわいせつ行為(刑法176条)の定義がなくなった

 6版では、「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。」って書いてたけどな。

前田雅英刑法各論講義6版
強制わいせつ罪
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮・刺激させ、かつ、普通人の正常な性的差恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為をいう(名古屋高金沢支判昭36.5.2下刑集3.5=6.399)。
被害者の性的自由の侵害が本罪の中核であり、性的風俗を保護法益とする公然わいせつ罪、わいせつ物頒布罪における「わいせつ」の観念とは異なることがある。例えば、相手方の意思に反する接吻(東京高判昭32・1 .22高刑集10. 1 ・10)は、公然わいせつ罪の意味における「わいせつ」行為ではないが、強制わいせつ罪にいう「わいせつ」行為である。判例において本罪のわいせつ行為とされたものとして、陰部への接触(大判大13・10.22刑集3.749等)、乳房への接触(大阪地堺支判昭36.4. 12下刑集3・3=4・319)、少年の肛門に異物を挿入する行為(東京高判昭59.6. 13判時1143. 155)などがあり、着衣の上から若い女性の替部を手のひらでなで回す行為もわいせつ行為にあたる(名古屋高判平15・6・2判時1834.161)。そのほか、直接身体に接触しなくても、裸にして写真を撮る行為(東京高判昭29.5.29高刑特40・138)、男女に強いて性交させる行為(釧路地北見支判昭53. 10・6判夕374. 162) もわいせつ行為にあたる。
性的に未熟な7歳の女児に対してその乳部および替部を触れる行為を行った場合、わいせつ行為といえるか。判例は、その女児は、「性的に末熟で乳房も未発達であって男児のそれと異なるところはないとはいえ、同児は、女性としての自己を意識しており、被告人から乳部や臂部を触られて差恥心と嫌悪感を抱」いているのであって、わいせつ行為であるとする(新潟地判昭63.8.26判時1299・152)。しかし、性的に未熟な児童に対しても、客観的にみてわいせつと感じられるような行為をすればわいせつにあたるのであって、被害者の性的蓋恥心・嫌悪感の有無は、本罪の成否に影響しない。例えば、植物状態に陥った者の性的自由ないし不可侵性も侵害されうるのであり、少なくとも準強制わいせつ罪によって保護されるべきだからである。
本罪は、いわゆる傾向犯であり、わいせつ行為は、わいせつな主観的傾向の発現として行われることを要するとされる(大塚100頁)。しかし、このような主観的傾向は、構成要件の主観的要素とされていない、行為者の主観的傾向によって被害者の性的自由の保護が左右されるべきではない、それが余りにも漠然とした無意識の世界にまで立ち入って判断せざるをえないものであるといった理由で、これを否定する見解も有力である(平野180頁、大谷118頁以下、中森58頁、西田90頁、前田152頁)。

前田雅英刑法各論講義7版
1) 22章の罪全体をすべて個人法益に還元しようとする動きがあったが‘ そもそも, 保護法益は「複合的」なものであり, また, 多数の国民の共有する性的感情を「倫理・風俗」と呼んで保護することも合理性がある(424頁)
・・・・・・・
刑法上のわいせつの意義は, 徒らに性欲を興奮または刺激せしめ, かつ普通人の性的差恥心を害し, 善良な性的道義観念に反することとされるが(最判昭26・5・10刑集'6・102 424頁), この定義は,公然わいせつ罪(174条) , わいせつ物頒布罪(175条)に関するもので,本罪は個人の性的人格・身体を直接侵害する以上別異に考えられ, キスする行為もわいせつ行為である(東京高判昭32・1・22高刑集10・1・10).着衣の上からであっても.女性の臂部を手のひらでなで回す行為も「わいせつ行為」に当たる(名古屋高判平15・6・2判時1834・161)
いわゆる痴漢行為は、本条の要件に該当する場合がある(態様により, 条例による処罰にとどまることもある) .必ずしも被害者の身体に触れる必要はない.裸にして写真を撮る行為も含む(最判昭45' 1 '29刑集24・l ・1E,99頁)9) ~ 「性交あるいは肛門性交・口腔性交」も典型的なわいせつ行為であるが,現在は177条の強制性交等罪によって処罰される.現在でも,少年の肛門に異物を挿入する行為はわいせつ行為に当たる(東京高判昭59.6. 13判時1143・155参照) ~
「わいせつな行為」か否かは,行為自体から客観的に判断し得る場合も多いが,行為自体の性的性質が不明確なため,行為時の具体的状況(行為者と被害者の関係,各属性, 周囲の状況や,行為者の目的等の主観的事情など)を考慮しなければわいせつ性を判断しえない場合もある(最大判平29. 11 .29刑集71 ・9・467-99頁)~
9) 性欲を満足させる意図で男女を裸にし性交の動作をとらせる行為も176条に該当する(釧路地北見支判昭53. 10.6判タ374・162).
。。。。。。。。。
傾向犯に関する判例変更かつて,本罪は傾向犯であり, わいせつな主観的傾向すなわち行為者の性欲を刺激,興奮,満足させる性的意図が必要であるとする見解が有力であった(注釈(4)295頁)~ 判例も, 女性を脅迫して裸にし,撮影した事案につき,専ら報復,侮辱, 虐待の目的に出たのであれば,性的意図(傾向)を欠き, 本罪は成立しないとしてきた(最判昭45. 1 .29刑集24. 1 . 1) . しかし, 法文に「わいせつ傾向」は規定されておらず, 強制的にわいせつな行為をし, そのことを認識していればl4)本罪が成立し得るとも解し得る(東京高判平26.2. ,3高検速報26.45,大阪高判平28・10・27裁判所Web) ~
たしかに,「わいせつ傾向を欠く強制わいせつ行為」は希で, わいせつ傾向の認められる場合のみを禁圧すれば足りるという評価も,一定の説得性があった. しかし,被害者の性的差恥心は行為者の動機のいかんにかかわらず害されている. 国民の意識の主流も.性被害を重視する方向に転換していった.
そのような中で, 最大判平29.11 .29(刑集71・9・467)が,行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は, その後の社会(意識)の変化を踏まえればもはや維持しがたいとし, 「故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく, 昭和45年判例の解釈は変更されるべきである」としたのである.

青少年から「結婚したい」と言われても真剣交際の主張が排斥された事例(大阪高裁H29.1.29)

 真剣交際の主張の主張をして負けた事件がたくさんあります。
 青少年から「結婚したい」と言われても、それだけでは真剣交際の主張は通りません。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,青少年愛護条例(県条例第 17号)違反被告事件
 2  原判示第 2に関する法令適用の誤りの主張について
 一審判決が,原判示第 2の事実について,児童(当時 14歳)に対する青少年愛護条例(昭和 38年兵庫県条例第 17号)違反の罪(青少年に対するみだらな性行為の罪)の成立を認めたことに誤りはない。
 弁護人は,被告人は児童との結婚を検討し,児童も被告人と結婚する意思があるなど,真剣な交際に基づく性交であったから,本条例 21条 1項がいう「みだらな性行為」,すなわち,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させるなどその心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為,あるいは,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為には当たらない旨主張する。
しかし,被告人と児童との関係,児童が裸の画像データを送信するようになった経緯(前記 1(3))のほか,被告人は,自らもちかけて児童と初めて会うと,その機会に,車でホテルに連れて行って児童と性交に及んでおり,その後児童と会って,車でホテルに行って性的な関係をもち,車で送って別れるという同様の行為を複数回重ねていたところ,原判示第 2の事実はその一環のものである。被告人は,ほぼ同じ時期に,別の女子児童( 1 7歳)ともインターネット上で同様のやり取りをしてホテルで性的な関係をもつなどしていた上,平成 26年3月下旬頃,被告人との関係が母に発覚して警察にも話をした旨児童から聞くと,その後は児童からのメールに返信しなくなったというのであり,以上のような経緯等に鑑みれば,被告人と児童は真剣に交際していたという所論の前提自体が採用の限りではなく,被告人の原判示性交行為は,同条例 21条 1項の「みだらな性行為」に当たるというべきである。
一審判決の判断に誤りは認められない(なお,一審判決は,被告人と児童が複数回会った際,いずれも児童と性的関係をもった旨認定しているところ,弁護人が主張するとおり両者は性交せずに会ったこともなかったわけではないと認められ,一審判決の説示はこの点でやや不正確ではあるが,いずれにせよ前記判断に影響するような問題ではない。)。
 弁護人は,平成 26年 10月以降も,児童が幾通か被告人にメールを送信してきており,中には結婚の意思があることを示すものがあったことを指摘するが,前記の検討によれば,それも児童の判断能力の未成熟さゆえのことと考えられるから,その指摘も採用できない。
 その他の弁護人の主張にも採用できるものはない。原判示第 2の事実について本条例違反の罪の成立を認めた一審判決の判断に誤りはない。
 平成28年 1月 29日
 大阪高等裁判所第 2刑事部
      裁判長裁判官  横 田 信 之
         裁判官  坂 田 正 史
         裁判官  向 井 亜 紀 子

準強姦1審無罪判決(久留米支部r01.3.12)の検察官控訴で、「被告人質問を実施したが, 被告人は終始黙秘したため,当審で取り調べた実質的証拠は存在しない」のに、破棄自判して有罪とした事案(福岡高裁r02.2.5)

詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。(最判s33.5.1)
という判例がある
 

判例番号】 L01310138
       欺被告事件
【事件番号】 最高裁判所第1小法廷判決/昭和31年(あ)第4239号
【判決日付】 昭和33年5月1日
【判示事項】 刑訴第400条但書に違反しない事例
【判決要旨】 本件の第1審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した1審判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴第400条但書の規定に違反しない。
【参照条文】 刑事訴訟法400
【掲載誌】  最高裁判所刑事判例集12巻7号1243頁
       最高裁判所裁判集刑事125号17頁
       裁判所時報259号95頁
       判例時報150号35頁
【評釈論文】 研修136号69頁
       主   文
 本件上告を棄却する。
 当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
       理   由
 同第三点についてo
 所論は憲法三一条違反をいうが、その実質は単なる訴訟法違反の主張に過ぎず適法な上告理由にあたらない。のみならず記録によれば、原審は被告人に対し昭和三一年九月二〇日原審第二回公判期日に出頭を命じ(二五〇丁)、該公判廷において被告人を、公訴犯罪事実その他について詳細にわたつて質問している(二五三丁以下)のであるから、その余の証拠については法廷において直接これが取調をなしていないことは所論のとおりであるが、原判決が、被告人の犯罪事実の存在を確定せず無罪を言渡した一審福島地方裁判所の判決を破棄し、被告人に有罪の判決を言渡しても刑訴四〇〇条但書の規定に違反しないことは当裁判所の判例(昭和二六年(あ)二四三六号同三一年七月一八日大法廷判決、判例集一〇巻七号一一四七頁以下)の趣旨に徴し明らかである。(本件の第一審判決説示のごとく、詐欺の意思を除く以外の事実は、すべて、認められると認定しているような場合には、被告人を公判廷で公訴事実その他につき質問し、原控訴判決が証拠とした被告人の検察官に対する供述調書の措信すべきや否や等につき取調をなせば、その余の証拠につき直接取調をしなくとも、原控訴審における事実の取調として充分であると見るのが相当である。
そして、原控訴審では本件につき前述のごとく被告人の質問をした上原控訴判決は、当審における事実取調の結果、すなわち、被告人の当審公判廷における供述によると、「被告人は本件各犯行の当時土工をして月収平均七、〇〇〇円乃至九、〇〇〇円であつたが、その内三分の一は母に出し、残りで身廻り品等を購入し、所謂飲代は三、〇〇〇円位で、平均して一〇口に一度位飲食していたことが認められると」判示し、さらに、「本件の各場合におけるが如く一回に二、〇〇〇円余りから四、〇〇〇円程度の飲食をすれば、他に特別の収入又はその見込のない限り直ちにその支払に窮することは明らかである。而して被告人に当時右代金支払に充てる収入があつたことはこれを認める資料が存しない。然らば、被告人の右代金支払の意思があつたという弁解は疑わしいものといわなければならない」と説示している。されば、原審には事実の取調をしない違法は認められない。)それ故論旨は理由がない。
 被告人の上告趣意は単なる事実誤認の主張であつて適法なる上告理由にあたらない。

条解刑事訴訟法
必要な事実の取調は,事件の核心についてしたことが必要である(判例⑭(c)参照)。第一審が事実の一部のみを認定せず他を認定しているときは認定しなかった部分のみに関するものでたりる(判例⑮(a)参照)。自判に必要な事実の取調は,必ずしも新証拠の証拠調でなくとも核心についての証拠を新たに取り調べればたり,証拠調の結果が第一審で取り調べた証拠以上に出なくともよい(判例⑮(跡参照。その他,十分とされた例として判例⑮(c)(d)参照)。
・・・・
【破棄自判が許される事例】
(a)第一審判決が詐欺の意思を除くすべての事実を認定している場合に,被告人を公判廷で質問し,被告人の検察官に対する供述調書を措信するべきか否か等につき取調をし,犯罪事実の存在を確定せず無罪を言い渡した第一審判決を破棄し,被告人に有罪の判決を言い渡すこと(最判昭33.5.1集12-7-1243)。

(b)犯意について証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し,控訴裁判所が, 自ら事実の取調として,証人を取り調べたが,その結果が争点に直接触れるところにおいて第一審で取り調べた証拠以上に出ない場合,右事実取調の結果と訴訟記録および第一審で取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭36.1.1礫15-1-113)。
(c)第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合に,控訴審が事実誤認を理由として右第一審判決を破棄し,自ら犯行現場の検証等証拠の取調をした上,右検証調書と訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠によって被告人に対し有罪の判決をする
こと(最決昭34.3.19集13-3-361)。
(d)犯罪の証明がないことを理由とする第一審の無罪判決に対し検察官から控訴の申立てがあった場合において,控訴審が自ら証人の取調をした上, これと訴訟記録ならびに第一審裁判所において取り調べた証拠とによって破棄自判し,有罪の判決をすること(最判昭32.3.15集11-3-1085)。

番組では性犯罪事件に詳しいという奥村徹弁護士が、条例の改正案を作った人の立場になって分析。「恐らく真剣な交際とは映画館、美術館とかデートを重ねて、1日で(性行為を)やったらダメですよ」「家族にも紹介して、最終的に性行為に至る」と見解をコメントした。→ 「放送事故では?」と衝撃走る

 真剣交際については、

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

という判例があるが事案は

宮崎礼壹「青少年保護育成条例による『いん行』処罰の合憲性ー最高裁(大法廷)昭和60年10月23日判決ー」法律のひろば 第39巻1号
本件にかかわる生の事実を、公判記録や原審認定にもとづいて少しく具体的にみると、次のようである。
被告人(昭和三○年六月一二日生、独身)は、当時、複数の女性をドライブに誘っては山中に連れ込承強姦・同未遂を敢行したかどで懲役四年の実刑を言い渡され二年八か月服役したのち仮出獄中の身であったが、昭和五六年三月下旬ころ、路上で行き会ったA子(昭和四○年七月一日生、当時一五歳、のち一六歳)が中学校を卒業したばかりで高校入学前の女生徒であるのを知りながら、その場でドライブに誘い、海岸で駐車させた自動車の中で「俺の女にならんか」と言っていきなり性交をしたのを手始めに、同年九月ころまで主に車の中、ときに被告人方で同女と約二○回余の性交関係を重ねたが、二人が会っている問は専ら性交に終始し、中には高校通学途上のA子を被告人が車で待ち伏せ、制服のままそそくさと車中性交を済ませてそのまま登校させるという態様のものが少なくなかったほか、結婚の話などは全くしたことがなかった。
この間被告人は、A子と知り合い性交渉をもった当時平行的にB子なる一四歳の青少年とも継続的な性交渉を有していたところ、同年七月二日右B子との件で警察に逮捕され、同月一三日、本件と同じ福岡県青少年保護育成条例違反により罰金三万円の略式命令(これはそのまま未確定)を受け同日釈放されたが、その当日も被告人はA子を電話で呼出し、福岡市内のホテルで同女と性交をしている。
被告人は同年九月二九日、右A子の供述から、右七月一三日の性交の件で福岡県青少年保護育成条例違反として通常逮捕され、同年一○月八日、次の公訴事実をもって、小倉区検から小倉簡易裁判所に略式請求された結果、同裁判所は即日、当該事実により罰金五万円に処する旨の略式命令を発付した。
「被告人(昭和三○年月日生、当時二六歳)は、A子(昭和四○年月日生、当時一六歳)が一八歳に満たない青少年であることを知りながら、昭和五六年七月一三日午後三時ころ、福岡県遠賀郡内ホテルヨンゼル」の客室において右A子と性交し、もって青少年に対し淫行をしたものである。」

という真剣交際にならないものだった。

 真剣交際の主張で無罪になったのは2件だけ。
  神戸地裁尼崎支部h29.8.23
  名古屋簡裁H19.5.23
 裁判所はこれが真剣交際だというんですよ。
 間違った解説をすると誰かが捕まるわけだから、そう解説するしかないじゃないですか。

名古屋簡裁H19.5.23

金井翔検事 青少年保護育成条例違反事件について,みだらな性行為(淫行)の該当性が問題となった事例 捜査研究816号 p31
第2 事案の概要等
1 A及びVの身上関係等
Aは,本件当時38歳の男性であった。
Aに婚姻歴はなく,本件当時, V以外に交際している女性はいなかった。
Vは,本件当時17歳の女性であり,高校3年生であったが,約2か月後が18歳の誕生日であった。
Vは,本件以前にも男性と交際した経験はあったが,本件当時, A以外に交際している男性はいなかった。
2 A及びVが交際に至る経緯及び交際開始後の状況等A及びVは,本件性行為に及んだ当時,交際関係にあったところ,両名が交際に至った経緯及び交際開始後の状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成27年5月頃から,警備員として働き始め,その勤務先でアルバイトをしていたVと知り合った。
Aは, Vと知り合って以降休憩時間等にVと話をするようになり, Vからは家庭内の事情や進学先等について相談を受けるなどしていた。
(2) Aは,平成28年5月末日に前記勤務先を退職することとなり,その旨をVに伝えていた。
Aは, 同日,仕事を終えると, Aの仕事が終わるのを待っていたVと合流し, 2人で飲食するなどしたが,その際Vから手紙とクッキーを渡され, さらに, Vと連絡先を交換した。
VがAに渡した手紙には, これまで相談に乗ってもらったことへの謝辞のほか, 「(Aのことが)大好きです。」などと書かれていた。
(3) Aは,連絡先を交換して以降, Vとの間で連絡を取り合っていたが, 同年6月上旬,再びVと2人で会うことになった。
Aは, 同日, Vと合流すると, インターネットカフェに入店し,その個室内でVに抱き付くなどした。
Aは, Vと同インターネットカフェを出たが, Vから「セフレ(セックスフレンド)の関係になりたくない。」などと言われたため,それだったら付き合おうなどと述べて交際を申し込み, vがこれを承諾したため,両名は交際することとなった。
④Aは, Vとの交際開始後,週2, 3回の頻度でVと会い, 同年6月下旬ないし同年7月上旬頃, ラブホテルにおいて初めて性行為に及び,以降,何度かVと性行為に及んだ。
Aは, Vとの交際開始後, Vを介して, Vの交際相手としてVの姉やVの友人に紹介されたことがあった。
他方で, Aは, Vといる際にVの実母と何度か会う機会があったが, 同人に挨拶をすることはなかった。
3 本件性行為時の状況等A及びVは,前記の経緯で交際を開始し,その後,本件性行為に及んだものであるが,その状況等は以下のとおりである。
(1) Aは,平成28年9月中旬, Vと会うと,一緒にカラオケ店に入店した。
A及びVは,前記カラオケ店の個室内でカラオケをしていたが, Aは,しばらくして, Vの胸を触るなどした上, Vと性交し,本件性行為に及んだ。
(2) 前記カラオケ店の店員は店内の巡回を行っていたところ, A及びVの個室内の歌詞等を表示するモニター画面の電源が切れていたことから不審に思い,個室内に立ち入った。
すると,前記店員は, Vが上半身裸の状態で座っている状況を認めたため,警察に通報した。
(3) Aは,本件発覚後もVとの交際を継続しており, Vの18歳の誕生日も2人で過ごすなどしたが,交際開始から約6か月後の同年12月頃, Vから交際解消を申し込まれたため, Vとの交際を解消した。

https://sirabee.com/2020/02/04/20162250261/
■弁護士の見解
番組では性犯罪事件に詳しいという奥村徹弁護士が、条例の改正案を作った人の立場になって分析。「恐らく真剣な交際とは映画館、美術館とかデートを重ねて、1日で(性行為を)やったらダメですよ」「家族にも紹介して、最終的に性行為に至る」と見解をコメントした。
■首を傾げる視聴者続出
「1日でやったらダメ」という直接的すぎるワードを受け、視聴者からは「朝からとんでもないフレーズを聞いたな」「この時間帯に大丈夫? 放送事故じゃない?」といった声が多数上がっている。

その他の喩えにも首を傾げた人が多いようで、「家族に紹介しないと真剣交際じゃないってこと?」「デートの数は少なくとも、真剣に付き合ってる人だっているだろうに」などのコメントも見られた。

青少年たちの安全を守るための条例ではあるが、潔癖であることが真の健全さや安全さに繋がるか疑問に感じた人は多いだろう。

医師・歯科医師の刑事事件の結果・時期と、行政処分結果・時期の関係を調べてみた。

医師・歯科医師の刑事事件の結果と、行政処分の関係を調べてみた。
いまも医師3名の弁護人・代理人なので、強く求められて調べてみました。
ソースは、厚生労働省のプレスリリースと、刑事確定訴訟記録法による判決閲覧。という公表資料の集積ですが、結果は公表できません。

傾向としては、
 実刑判決は、免許取消だが、最近は情状立証として返上するので、行政処分がない。
 薬物利用・治療装うなどの地位利用型は執行猶予でも取消
 地位利用がない場合で執行猶予事案でも悪質事案は取消
 刑事判決確定から、行政処分までの日数は、医業停止の場合、150日~706日。取消の場合は、288日~1046日

「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)」とした事件の概要

「①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解する」というのは結局本件を有罪にする理由付けだよね。

宮崎礼壹「青少年保護育成条例による『いん行』処罰の合憲性ー最高裁(大法廷)昭和60年10月23日判決ー」法律のひろば 第39巻1号
本件にかかわる生の事実を、公判記録や原審認定にもとづいて少しく具体的にみると、次のようである。
被告人(昭和三○年六月一二日生、独身)は、当時、複数の女性をドライブに誘っては山中に連れ込承強姦・同未遂を敢行したかどで懲役四年の実刑を言い渡され二年八か月服役したのち仮出獄中の身であったが、昭和五六年三月下旬ころ、路上で行き会ったA子(昭和四○年七月一日生、当時一五歳、のち一六歳)が中学校を卒業したばかりで高校入学前の女生徒であるのを知りながら、その場でドライブに誘い、海岸で駐車させた自動車の中で「俺の女にならんか」と言っていきなり性交をしたのを手始めに、同年九月ころまで主に車の中、ときに被告人方で同女と約二○回余の性交関係を重ねたが、二人が会っている問は専ら性交に終始し、中には高校通学途上のA子を被告人が車で待ち伏せ、制服のままそそくさと車中性交を済ませてそのまま登校させるという態様のものが少なくなかったほか、結婚の話などは全くしたことがなかった。
この間被告人は、A子と知り合い性交渉をもった当時平行的にB子なる一四歳の青少年とも継続的な性交渉を有していたところ、同年七月二日右B子との件で警察に逮捕され、同月一三日、本件と同じ福岡県青少年保護育成条例違反により罰金三万円の略式命令(これはそのまま未確定)を受け同日釈放されたが、その当日も被告人はA子を電話で呼出し、福岡市内のホテルで同女と性交をしている。
被告人は同年九月二九日、右A子の供述から、右七月一三日の性交の件で福岡県青少年保護育成条例違反として通常逮捕され、同年一○月八日、次の公訴事実をもって、小倉区検から小倉簡易裁判所に略式請求された結果、同裁判所は即日、当該事実により罰金五万円に処する旨の略式命令を発付した。
「被告人(昭和三○年月日生、当時二六歳)は、A子(昭和四○年月日生、当時一六歳)が一八歳に満たない青少年であることを知りながら、昭和五六年七月一三日午後三時ころ、福岡県遠賀郡内ホテルヨンゼル」の客室において右A子と性交し、もって青少年に対し淫行をしたものである。」

「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象としてのみ扱っていると認められる性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。青少年から行為者に働きかけて当該行為に至った場合も同様です。」という「大阪府青少年健全育成条例の改正案」

 威迫困惑欺罔という要件があるとほとんど検挙できないので「淫行特区」と呼んでいたんですが、改正されます。淫行の実態を説明してと奥村も大阪府庁に呼ばれました。
 山口県・長野県が同じ体裁ですので、青少年条例の趣旨としてはなお抽象的危険犯的な理解でいいと思います。
 警察官が検挙されるんじゃないかと予想しています。
 わいせつの定義ができないくせにどうするのかと思います。
 

http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/attach/hodo-36748_4.doc
大阪府青少年健全育成条例の改正案」の概要

1 条例の概要について
  「大阪府青少年健全育成条例」は、青少年(18歳未満の者をいう。以下同じ。)の健全な育成を図ることを目的に、青少年を取り巻く社会環境を整備し、及び青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護するために必要な規制を定めています。

2 条例改正の背景と検討経過について
スマートフォンの普及やインターネット利用の低年齢化に伴い、青少年がインターネットを介して児童ポルノや児童買春等の犯罪やトラブルに遭う事案が増加しています。
このような状況を踏まえ、大阪府から平成30年6月に大阪府青少年健全育成審議会(以下「審議会」という。)に対し、コミュニティサイト(以下「SNS」という。)に起因した青少年の性的搾取等への対応について問題提起しました。審議会において、この問題を専門的見地から調査・審議するため特別部会を設置し検討を重ね、同年11月に大阪府に対し第1回目の提言がなされました。今年度は、この提言において継続審議となったいわゆる「自画撮り被害」以外の性的搾取への規制の在り方等について、引き続き議論いただき、本年12月に審議会より2回目の提言を受理しました。
大阪府では、この提言を踏まえ、青少年に対する淫らな性行為及びわいせつな行為による被害を未然に防止し、もって青少年の健全な成長を阻害する行為からの保護を図ることを目的に、大阪府青少年健全育成条例を改正し、必要な規制を行うこととしました。

〔検討経過〕
平成30年6月26日から10月29日
  第1回審議会において、大阪府から「SNS等に起因した青少年の性的搾取等への対応につ
 いて」問題提起。特別部会を設置し、審議会(2回)・特別部会(5回)において審議。
同年11月28日 
審議会から大阪府に対して、「青少年を取り巻く有害環境への対応について~SNS等に起因した青少年の性的搾取等への対応~」提言。

令和元年5月31日から11月13日
  特別部会等(7回)において、昨年度継続審議となったいわゆる「自画撮り被害」以外の性
 的搾取への規制の在り方等について審議。
同年11月28日
  第1回審議会において特別部会報告書をもとに審議。
同年12月5日 
審議会から大阪府に対して、「青少年を取り巻く有害環境への対応について~SNS等に起因
  した青少年の性的搾取等への対応~」提言。

3 条例改正の内容について
現行の淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止に関する規定は、青少年健全育成条例制定時の昭和59年に、青少年の性を弄ぶ心ない大人から青少年を保護し、行為者の社会的責任を追及するとともに、青少年に正しい性意識を持たせる一助とするために設けられたものであり、プライバシーその他の人権を不当に侵害することのないよう、取り締まりの対象行為をその動機や手段において社会的に非難を浴びるような性的行為(専ら性的欲望を満足させる目的で、威迫し、欺き、又は困惑させて行う性行為及びわいせつな行為)に限定して規定されました。
近年、スマートフォン等の普及により、青少年がSNS等で知り合った大人に軽い気持ちで会い、誘われる等して性行為又はわいせつな行為に至るケースが増えていますが、こうしたケースでは、行為者の威迫し、欺き、又は困惑させる行為がないまま青少年が被害に遭っている場合があります。
こうした現状を踏まえ、青少年保護の観点から規制の対象範囲を見直すものです。

(1)規制する行為及び対象
<現行規定>
第39条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
 ⑵専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

<改正後に規制の対象となる行為>
〇行為者が青少年を威迫し、欺き、又は困惑させたうえで行う性行為又はわいせつな行為に加え、青少年の未成熟に乗じた不当な手段(困惑状態にあることに乗じる等)により行う性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。
〇青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象としてのみ扱っていると認められる性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。青少年から行為者に働きかけて当該行為に至った場合も同様です。
〇真摯な交際関係における性行為又はわいせつな行為は規制対象ではありません。

(2)罰則
現行規定のとおり、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科します。
なお、本条例第61条により、この条例の罰則は、青少年に対しては適用されません。

4 今後の予定について
○令和2年2月府議会に提出予定です。 
○施行日は、令和2年6月1日を予定しています。

sextingの児童ポルノ製造容疑の相談に対して、「写真と動画はすぐに削除した方が良いです。持っておく方が危険です」として証拠隠滅を勧めるような弁護士の回答

 証拠隠滅しろというアドバイスになっています。
 単純所持罪については、捜査機関の方針として、削除されていると起訴されませんが(破壊するときにも警察と相談しつつです)、sextingの製造罪は、児童側の画像から捜査が始まるので、受信側で削除しても立件される危険は変わりません。
 「ココなら法律相談」は不正確であっても相談者を安心させる回答にするという傾向があります。
 登録弁護士もそういう回答を連発して高評価を得てランク上位に掲載されることを目指します。
 

https://legal.coconala.com/bbses/7478
公開日時: 2019年4月9日 19:14 刑事事件
19歳の大学生です。児童ポルノについての相談です。先月、ツイッターにおいて中学二年生で14歳と思われる女子とダイレクトメッセージ上で連絡を取り、彼女が提示してきた金額相応のプリペイドマネーと引き換えに彼女の裸の写真や自慰をしている動画を送ってもらいました。その後この一連の行為が児童ポルノの単純所持あるいは製造になる可能性があることを知り

弁護士からの回答タイムライン
馬場 龍行
馬場 龍行弁護士
東京都 > 立川市
刑事事件に注力する弁護士
写真と動画はすぐに削除した方が良いです。持っておく方が危険です。
自首は勇気を出して警察に行けばできますよ。弁護士が同行してくれれば万が一逮捕された時などの初動が早いですし,何より逮捕されないようにきちんとプレッシャーを与えることができるのですが,何れにしても,勇気を出して警察署に行ってください。
自首を勧めるかと言われると,難しいところですが,あなたが反省して二度とやらないと誓えるのであれば自首まではしなくても良いのかなとも思います。
2019年4月9日 19:14
・・・・・・・・
馬場 龍行弁護士
東京都 > 立川市
刑事事件に注力する弁護士
というよりは,削除しなければ常に児童ポルノ所持で取り調べを受けるリスクがあるからということです。持っている限り,罪を犯している状態になるからです。

最高裁判例解説「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」平成28年(あ)第1731号平成29年11月29日大法廷判決棄却第1審神戸地裁第2審大阪高裁刑集71巻9号467頁 法曹時報72巻1号(向井香津子)

 わいせつの定義はありません。

(後注) 本判決の評釈等として知り得た主なものとして,以下のものがある。
松木敏明=奥村徹園田寿「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」法学セミナー758号48頁,
奥村徹最高裁大法廷平成29年11月29日判決の背景」判例時報2366号131頁

判例
「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ), 175条(わいせつ物頒布等)にも使用されているところ,昭和26年判例が,刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し, 「徒に性欲を興奮又は刺激せしめかつ普通人の止常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認め,最大判昭和32年3月13日・刑集11巻3号997頁(チャタレー事件) もその定義を採用しており, これ
が「わいせつ」の定義であるとされている。
さらに, 前褐名古屋高裁金沢支部判【裁判例①】は, 「刑法第176条にいわゆる「猥せつ』とは徒らに什欲を興奮又は刺戟せしめ, 且つ普通人の正常な性的蓋恥心を害し,善良な性的道義観念に反することをいうものと解すべき」とし,刑法176条の「わいせつ」についても,刑法175条に関して判示された上記定義と同内容の定義を採用し, 【裁判例①】は, 多くの文献等で刑法176条のわいせつの意義を示した高裁判例として引用されている。しかし,刑法176条の「わいせつな行為」の定義を示した最高裁判例はない。
・・・・・・・・
(5) 「わいせつな行為」の定義、判断方法
ア「わいせつな行為」の定義
以上のとおり,性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば,「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要なものとなってくるが, 「わいせつな行為」該当性の判断に|際して,行為者の主観を一切考慮してはいけないのかどうかを含め, これをどのように、判断しし,その処罰範閉を明確化するのかが問題となる。
また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば, 「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
ところが,強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした当審判例はなく,前記のとおり,学説上は様々な説があって,未だ議論が成熟しているとはいい難い状況にある。
しかし,そもそも, 「わいせつな行為」という言葉は,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持つことができる。
そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには附難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また, 「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって, 「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえるところ, これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられており(前掲大コメ67頁以下等) ,それらの集積からある程度の外延がうかがわれるところでもある。
そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには, これをどのように定義づけるかよりも, どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという、'1断方法こそが重要であると考えられる。
本判決は, 「わいせつな行為」の定義に言及していないが, このようなことが考えられたものと思われる。
もっとも,本判決は,その判示内容からすれば, 【裁判例①】が示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思わ(注12)れる。
なお,実務上, 「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては、従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねから「わいせつな行為」の外延を踏まえて判断していなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる。
(注12) 私見によれば, 【裁判例①】及び原判決の各定義が妥当でない理由として,次のような点を指摘できると考える。
まず,原判決の定義「性的自由を侵害する行為」についてみると, 「わいせつな行為」が強制されたり, 13歳未満の者等に対して「わいせつな行為」が行われたりすることによって,性的自由が侵害されるのであって, 「わいせつな行為」自体が直ちに性的自巾を侵害する行為とはいえないし, また,性的自由を侵害し得るような行為と捉え直した場合には,その範囲は無限定に広がりすぎてしまい, 「わいせつな行為」の処罰範囲を画する定義としては不適当であるように思われる。
次に, 【裁判例①】が示す定義「徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ,且つ普通人の正常な性的董恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること」についてみると,社会的法益を保護法益とする174条等とは異なり,強制わいせつ罪が個人的法益に対する罪であることに照らせば, 「善良な性的道徳観念に反するか」という観点は不要であろう。
そもそも, 「わいせつな行為」を暴行・脅迫を用いて他人に強制することや, 13歳未満の者等に対して「わいせつな行為」をすることは性的道徳観念に反することではあるが, 「わいせつな行為」とされる性的行為そのものに不道徳性が備わっているのではなく,性的行為自体は,本来的には価値中立的な行為と考えられる。
また, 「道徳」という言葉は多義的で不明確との批判を招くおそれもある(なお,究極的なわいせつ行為ともいえる姦淫行為の意義に関しても,その字義から不道徳な性交を連想させるとしながらも,単なる性交と解するのが通説であって,性交が不道徳なものかどうかは問われないと解されてきた。前掲大コメ76頁,前掲条解504頁,前掲注釈刑法(4)296頁)。
さらに, 「徒に性欲を興奮又は刺戟せしめ, 」「普通人の正常な件的蓋恥心を害する」という部分についても,それぞれ,誰の性欲を問題にしているのか, どのような性的羞恥心を問題にしているのかが必ずしも明らかではなく,誤解を招きかねない上(例えば,性的差恥心を想定しにくい幼児に対する行為の判断などで混乱を生じさせかねない。
また, 行為者の性欲を問題にするとすれば,性的意図を一律に要求しないことと矛盾を生じさせかねない。
),一般人を基準に考えるというのであれば,結局は「性的意味があるか否か, その程度はどのくらいか」という評価に収數されていくように思われる。
なお,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号) 2条の2第1項4りにいう「卑わいな言動」の意義については,最三小決平成20年11月10日・刑集62巻10号2853頁が, 「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう」としているが, 同条例の構成要件は, 「卑わいな言動をしたこと」であって,暴行脅迫要件も年齢要件もないことから, 「卑わいな言動」を価値中立的に理解すべきでないことは当然であり, 「わいせつな行為」とは自ずと異なる解釈になるべきと考えられる。

送信型強制わいせつ行為(長崎地裁R010917)

 脅して撮影送信させる行為がわいせつ行為かどうかの判例はありません。強制わいせつ罪ではなく強要罪だという高裁判例がいくつかあります。

 東京高裁判例などによれば「その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。」の部分はわいせつ行為と評価されないと思われます。




長崎地方裁判所令和1年9月17
強制わいせつ、長崎県少年保護育成条例違反被告事件
理由
以下、匿名表記した被害者氏名は別紙のとおりである。
(犯罪事実)
第1 被告人は、A(当時16歳)から入手した同人の画像データ等を利用して強いてわいせつな行為をしようと考え、平成30年10月26日午後10時6分頃から同月27日午前2時21分頃までの間に、D市内又はその周辺において、自己の携帯電話機及びタブレットから、同人が使用する携帯電話機に、アプリケーションソフト「E」の通話機能及びビデオ通話機能を利用して通信し、D市内にいた同人に対し、「写真を援助交際サイトに載せる。」「学校や家の近くに何人かの人が来る。」「連れていかれたことがある。」などと脅迫し、もしこの要求に応じなければAの自由や名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨畏怖させ、その反抗を著しく困難にし、ビデオ通話機能を通じて、同人に胸や陰部を露出した姿態及び陰部を指で触るなどした姿態をとるよう指示し、同人にそれをさせた上、その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。
第2 被告人は、平成30年12月2日、D市(以下略)「ホテルF」(省略)号室において、C(当時15歳)が18歳に満たない少年であることを知りながら、もっぱら自己の性的欲望を満足させる目的で同人と性交し、もって少年に対し、みだらな性行為をした。
(証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は、検察官請求の証
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は、被告人が、Aに写真を援助交際サイトに載せる旨などを言った事実はあるが、Bの代わりに交渉役として登場したAにBに対する怒りをぶつけたに過ぎず、Aにわいせつ行為をする目的で発したものではない旨主張し、被告人も、「最初は怒りに任せていろいろ言っていたと思うが、その後はAと仲良くなれたという感じだった。」などと弁護人の主張に沿う供述をしているが、裁判所は前記のとおりに認定をしたので、補足して説明をする。
2 Aの公判供述について
 (1) Aは、概ね以下のとおりに述べている。
  「被告人と電話で話を始めた時、被告人は怒っているように見えて、『Bの写真を援助交際サイトに載せる。』『援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。』という話をした。その後、落ち着いて雑談をするようになったが、被告人が怖かった。被告人から自分の写真を送るよう言われたので、3枚送った。自分の写真を送った直後に、被告人からそれを援助交際サイトに載せる旨言われたことはない。」
  「被告人との電話を早く切りたかったので終わらせようとしたが、被告人から『終わらせたら載せる。』と言われた。被告人からビデオ通話に応じるように言われ、応じないと『じゃ、切るね。』と言われた。被告人から胸を見せるよう言われたときは断っていたが、『もう切るから。』と言われたので見せた。陰部を見せた際に言われた言葉は覚えていないが拒否した覚えはある。勝手に通話を終了すると、写真を拡散されると思っていた。」
 (2) Aの公判供述の信用性について
  Aの公判供述は、その内容に覚えていない部分が多いなどあいまいな部分があることは否定できないものの、Aが虚偽の供述をしていることを窺わせるような不自然、不合理な点はない。供述内容があいまいな点については、Aの証人尋問が実施されたのは既に本件から9か月近く経過した時点であったことを考えると、時間の経過による記憶の劣化があったとしても何ら不自然ではないから、そのことが直ちにその供述内容の信用性に影響を及ぼすようなものではない。また、被告人がAが自己の要求に応じないと、連絡を絶つ旨をAに申し向けてAを困惑させ、自己の要求に従わせるという手法は、本件以後にEアプリで被告人がAに対し会うことを求める際の手口と全く同じであり、前記の供述内容は、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容に非常に整合している。
  次に、前記のとおり時間の経過によりAの記憶が劣化していることは否めないことから、Aの記憶が変容し事実と異なる供述をしている可能性について検討すると、本件の出来事は日常的な出来事ではなく、当時16歳のAにとって非常に衝撃的な出来事であったと考えられるから、前記公判供述のような出来事がなかったにもかかわらずあるものと記憶が変容するということはおよそ考え難いし、他の事実と混同するようなこともない。前記のとおりの客観的事実関係との整合性も考え合わせると、Aの供述内容にはあいまいな部分こそあるものの、その述べている限りの内容については記憶違いにより事実と異なる供述をしている可能性はないといえる。
 (3) 弁護人の主張について
  弁護人は、〈1〉Aは、被告人が写真を援助交際サイトに載せると言っているのを直接聞いておらず、Bから聞いたに過ぎないということを前提として、Aの供述は、Bから聞いた印象だけで被告人から脅されたと言っているに過ぎない旨、〈2〉Aは、被告人に顔写真を送った理由について「怖かった。」と述べているが、被告人のBに対する怒りがおさまった後、雑談をしている際に写真を送付しているのであるから「怖かった。」というのは信用性に乏しい旨主張している。しかし、〈1〉の点については、Aは「ビデオ通話をする前に、写真を援助交際サイトに載せる旨言われた。」旨明確に答える(A証人尋問調書203項)など、被告人がAに対し写真を援助交際サイトに載せる旨を言ったことを明言しているのであるから、弁護人の主張はその前提を欠くものである。また、〈2〉の点についても、前記(1)のとおり、Aは、被告人と電話で会話を始めた時点で、被告人がAに対し「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」「援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。」旨述べているのであり、当時16歳で社会経験も乏しいAの立場になれば、見も知らない被告人がそのようなことを語り、自身の親友であるBが同様の事態になるかもしれないというだけで、被告人に対し恐怖を感じるのは自然なことである。被告人とAが雑談を始め、被告人の会話内容が落ち着いてきていたのだとしても、Aが被告人に対し恐怖感を持っていたというのは非常に自然であり、この点の弁護人の主張も理由がない。
3 被告人供述について
  被告人は、「Bに対しては腹を立てていたが、Aがいい子そうだったので仲良くなりたいと思い、その旨をAに言うと『いいですよ。』と言ったので、雑談を始めた。その後、会って食事をするという話になったが、会うのをやめるという話になったので、Aの胸を見せてくれるという約束でビデオ通話をするようになり、ビデオ通話の中でAの胸や陰部の画像を送信してもらった。」旨述べている。
  しかし、被告人の公判供述の内容は、明らかに被害者の供述内容に整合しないし、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容にも整合しない。また、当初、Bに対し腹を立て、Bの代わりに話をするようになったAに対しても30分くらいその怒りを示すなどしていたのに、被告人がAに仲良くなりたいというとそれをAがいきなり受け入れるというのは、被告人とAがそれまで全く面識がなかったことを考えるとあまりに唐突過ぎ、不自然である。また、被告人が述べるところによれば、Aが被告人と会うことを渋ったために会うのをやめてビデオ通話をすることになったというのであるが、被告人と会うことを渋ったAがビデオ通話に応じるようになった合理的な説明ができていないし、被告人と会うことを渋ったというAが、特に被告人がAを脅すこともなく、Aに金銭的な対価を示したわけでもないのに、これまで全く面識もない被告人に胸を見せる前提でビデオ通話に応じるというのもおよそ信じ難い。
  以上のとおりであるから、被告人の公判供述は信用できない。
4 結論
  関係証拠により認められる事実及び信用できるAの公判供述により認定できる事実によれば、判示の事実は優に認定できる。なお、弁護人は、「写真を援助交際サイトに載せる。」などという文言を言っていたとしても、被害者に対しわいせつ行為をする目的で発せられたものではない旨主張するが、一連の経過に照らせば、「写真を援助交際サイトに載せる。」などと言って、Aの恐怖をあおる理由はAに本件のようなわいせつ画像の送信を含む何らかの自己の性欲を満たす行為を求める以外に考えられないのであり、被告人が電話でAに対して、「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」旨述べた時点から、被告人にはそのように述べることによりAを困惑させて何らかの自己の性欲を満たす行為を求める目的があったと推認でき、この時点が実行の着手といえる。

法令の適用)
 罰条
  被告人の判示第1の行為は刑法176条前段に該当する。
  被告人の判示第2の行為は長崎県少年保護育成条例22条1項1号、16条1項に該当する。
 刑種の選択
  判示第2の罪につき、所定刑中懲役刑を選択する。
 併合罪の処理
  判示各罪は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
 宣告刑の決定
  以上のとおり加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6か月に処する。
 未決勾留日数の算入
  刑法21条を適用して未決勾留日数中190日をその刑に算入する。
 訴訟費用の処理
  訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
 第1の犯行の態様は、被害者が当時16歳で社会経験が少ないことを利用して、インターネット上に顔写真を拡散させることによる害悪を告知し、被害者の恐怖をあおるというものであり、その脅迫行為はこの種事犯の中でも非常に悪質といえる。本件により被害者は、乳房を露出させた姿や陰部を露出させて触る姿をビデオ通話を通じて被告人に見せている。性的自由の侵害の程度も相当程度に及んでおり、これにより当時16歳であった被害者が受けた精神的苦痛には甚大なものがある。また、これを撮影した画像が拡散するおそれもあり、二次被害が生じるおそれについても指摘できる。
(検察官榊原詩音、国選弁護人池内愛各出席)
(求刑-懲役3年)

児童ポルノ写真集について、part1の提供の罪とその1年2ヶ月誤のpart2の提供の罪は包括一罪だという検察官の主張(CG事件控訴事件検察官答弁書)

 これ併合罪で起訴されたときに使えますよね。
 東京高裁h28.3.15はこれを認めなかったので、控訴審では破棄されて一部を除いて無罪判決になっています。

控訴審検察官答弁書
(2) part1の提供の罪とpart2の提供の罪は併合罪であるから,part1の提供の罪について無罪の言渡しをしなかったのは違法である旨の主張及び訴因変更が違法である旨の主張について
弁護人は,併合罪であることの根拠として,part1のアップロード時期とpart2のアップロードの時期はその期間が1年2か月間と離れている上,被写体となっている児童も別人であり,提供を受けた3名もダウンロードされた時期も約1年間の隔たりがあることを挙げている。
この点,原判決は,これを包括ー罪としているところ,包括一罪とは,数個の犯罪が成立する場合において,それを構成する数個の行為が,同一罪名に当たるか,若しくは同一法益を侵害するものであって,各行為の間に日時・場所の接近,方法の類似,機会の同一,意思の継続などの密接な関係が認められるものであることから,「数回の処罰」をするべきものではなく,「一回の処罰」で処遇することが相当と解される場合をいうと解されている(大コンメンタール刑法第2版第4巻20 2頁)。
本件において,part1のアップロード時期や提供を受けた者らのダウンロードの時期については,弁護人が指摘するとおり相当程度隔たりがあるものの,提供の方法や場所は,いずれも画像を同一の業者のサーバコンピュータに自宅からアップロードして販売を委託するというもので,全く同ーであるし,被告人がpart1を一応完成させて最初にアップロードしたのが平成20年8月頃であり,その後も,同年10月頃までに一部頁を入れ替え,再度,アップロードするなどする傍ら,同年8月以降, リクエストに応じて他のモデルの写真などを素材にCG画像を製作し続け,これをpart2として完成させてアップロードしているのであって, 被告人によるpart1の提供とpart2の提供の行為には,意思の継続が認められる。したがって,これらを全体として評価すれば,数回の処罰をするべきものではなく,一回の処罰で処遇することが相当といえ,包括一罪と認められる。
そうすると,原判決が包括ー罪としているのは正当であり,また, 1人に対する提供を3人に対する提供に訴因変更をすることも,同一の公訴事実の範囲内であって,これを認めた原審の訴因変更許可決定は正当であり,part1の画像の提供の事実について無罪の言渡しをしなかったのも正当である。

微罪処分の適用について(大阪地方検察庁検事正指示)

実務必携2010から。

微罪処分の適用について(大阪地方検察庁検事正指示)
司法警察員はその捜査した成人の刑事事件につき過去一○年以内に同種の前科・前歴のない者又は常習者でない者の犯した窃盗、盗品等関係、詐欺、単純横領、単純賭博、暴行の罪であって左記の基準により軽微と認められ処罰を要しないと明らかに思料されるものについては、送致の手続をとることを要せず、他の同一取扱をした事件とともにその処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業、住居、犯罪事実の要旨及び参考事項(被害届又は被害回復の有無等)を毎月一括して検察官に報告すれば足る。
但し
一被害者不明等の理由により証拠品(無価値物なることが明白なものは除く。)の還付不能の事件
二通常逮捕又は緊急逮捕の規定によって被疑者を逮捕した事件
三現行犯逮捕の規定により被疑者を逮捕した事件であって二四時間以上被疑者を留置した事件
四告訴、告発若しくは自首のあった事件
五法令が公訴を行なわなければならないことを規定している事件
六検事正が特に送致すべきものと指示した事件
についてはこの限りでない。
基準
一窃盗 例えば屋外窃盗、同居盗、雇人盗等であって犯情悪質でなく、被害額おおむね二万円以下の事件なお被害未届の事件又は被害回復の事件は右金額を多少超過する場合でも事案軽微と認めることができる。
二盗品等有償讓受け等犯情軽微で物件価格等一に準ずるもの
三詐欺 例えば寸借、無銭飲食、無銭宿泊、無賃乗車等の詐欺であって犯情悪質でなく被害額等について一に準ずるもの
四横領 単純な横領であって犯情悪質でなく被害額等について一に準ずるもの
五単純賭博 例えば賭金額、参加人員、参加者間の関係(知人同士なりや否や)、賭博の方法等により犯情軽微と認められる事件
六暴行 偶発的事件で犯情軽微、被害者が処罰を希望しないもの
 注 被害額が同基準以下の事件であっても事案の性質、犯人の性格及び境遇等により微罪処分に付することが相当でないと思料されるものについては、本特例によることなく、通常の送致手続による。

CG事件は上告棄却決定(最決R02.1.27)

 末席の弁護人として文献収集と罪数処理を担当していました。
 3年待たされて、罰金30万円が確定します。
 残念ながら有罪になりましたが、どこからともなく集まった若い弁護士8名が頑張ってくれました。

1審判決(東京地裁H28.3.15)
okumuraosaka.hatenadiary.jp

控訴審判決(東京高裁H29.1.24)
okumuraosaka.hatenadiary.jp

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上告理由
第1上告趣意の骨子3
1原判決が罪刑法定主義に違反し被告人に罪の成立を認めた誤りについて(上告趣意書第2)3
2原判決が罪数論に関する判例に違反し法令の解釈の誤りを犯していること(上告趣意書第3)3
3著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反(上告趣意書第4)4
第2原判決が罪刑法定主義に違反し被告人に罪の成立を認めた誤り5
1原判決の判断5
児童ポルノ禁止法の趣旨6
3原判決の誤り10
4小括15
第3原判決が罪数論に関する判例に違反し法令の解釈の誤りを犯していること15
1数個の提供罪を併合罪とした誤り15
2提供目的製造罪と提供罪を併合罪とした誤り16
3数回の製造行為を単純1罪とした誤り17
第4著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反19
1横谷証人の証言の信用性に関する事実誤認19
2本件CG画像の作成方法28
3間接正犯と共同正犯について30
第1 上告趣意の骨子 2
1 原判決が、罪刑法定主義に違反し、被告人に罪の成立を認めた誤りについて(上告趣意書第2) 2
2 原判決が、罪数論に関する判例に違反し、法令の解釈の誤りを犯していること(上告趣意書第3) 2
3 著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反(上告趣意書第4) 3
第2 原判決が、罪刑法定主義に違反し、被告人に罪の成立を認めた誤り 4
1 原判決の判断 4
児童ポルノ禁止法の趣旨 5
3 原判決の誤り 9
4 小括 14
第3 原判決が、罪数論に関する判例に違反し、法令の解釈の誤りを犯していること 14
1 数個の提供罪を併合罪とした誤り 14
2 提供目的製造罪と提供罪を併合罪とした誤り 15
3 数回の製造行為を単純1罪とした誤り 16
第4 著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反 18
1 横谷証人の証言の信用性に関する事実誤認 18
2 本件CG画像の作成方法 27
3 間接正犯と共同正犯について 29

最決R02.1.27
平成29年(あ)第242号
決定
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成29年1月24日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から上告の申立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。
本件上告を棄却する。
理由
弁護人山口貴士ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み,職権で判断する。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの。以下「児童ポルノ法」という。)2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,昭和57年から-同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した上,不特定又は多数の者に提供する目的で,本件各CGを含むファイルをハードディスクに記憶,蔵置させているところ(以下,被告人の上記行為を「本件行為」という。
),本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
上記事実関係によれば,被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。
所論は,児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,児童ポルノの製造時において,当該児童ポルノに描写されている人物が18歳末満の実在の者であることを要する旨をいう。
しかしながら,同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であるごとを要しないというべきである。
所論は理由がない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
なお,裁判官山口厚の補足意見がある。
裁判官山口厚の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に全面的に賛同するものであるが,補足して意見を述べておきた゜し‘児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。
児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化されだ性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。
児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。
児童ポルノ法は,このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて,児童の権利の擁護を図ろうとするものである。
令和2年1月27日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官深山卓也
裁判官池上政幸
裁判官小池幸裕
裁判官木澤克之
裁判官山口厚