児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)」とした事件の概要

「①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解する」というのは結局本件を有罪にする理由付けだよね。

宮崎礼壹「青少年保護育成条例による『いん行』処罰の合憲性ー最高裁(大法廷)昭和60年10月23日判決ー」法律のひろば 第39巻1号
本件にかかわる生の事実を、公判記録や原審認定にもとづいて少しく具体的にみると、次のようである。
被告人(昭和三○年六月一二日生、独身)は、当時、複数の女性をドライブに誘っては山中に連れ込承強姦・同未遂を敢行したかどで懲役四年の実刑を言い渡され二年八か月服役したのち仮出獄中の身であったが、昭和五六年三月下旬ころ、路上で行き会ったA子(昭和四○年七月一日生、当時一五歳、のち一六歳)が中学校を卒業したばかりで高校入学前の女生徒であるのを知りながら、その場でドライブに誘い、海岸で駐車させた自動車の中で「俺の女にならんか」と言っていきなり性交をしたのを手始めに、同年九月ころまで主に車の中、ときに被告人方で同女と約二○回余の性交関係を重ねたが、二人が会っている問は専ら性交に終始し、中には高校通学途上のA子を被告人が車で待ち伏せ、制服のままそそくさと車中性交を済ませてそのまま登校させるという態様のものが少なくなかったほか、結婚の話などは全くしたことがなかった。
この間被告人は、A子と知り合い性交渉をもった当時平行的にB子なる一四歳の青少年とも継続的な性交渉を有していたところ、同年七月二日右B子との件で警察に逮捕され、同月一三日、本件と同じ福岡県青少年保護育成条例違反により罰金三万円の略式命令(これはそのまま未確定)を受け同日釈放されたが、その当日も被告人はA子を電話で呼出し、福岡市内のホテルで同女と性交をしている。
被告人は同年九月二九日、右A子の供述から、右七月一三日の性交の件で福岡県青少年保護育成条例違反として通常逮捕され、同年一○月八日、次の公訴事実をもって、小倉区検から小倉簡易裁判所に略式請求された結果、同裁判所は即日、当該事実により罰金五万円に処する旨の略式命令を発付した。
「被告人(昭和三○年月日生、当時二六歳)は、A子(昭和四○年月日生、当時一六歳)が一八歳に満たない青少年であることを知りながら、昭和五六年七月一三日午後三時ころ、福岡県遠賀郡内ホテルヨンゼル」の客室において右A子と性交し、もって青少年に対し淫行をしたものである。」