児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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露天温泉盗撮事案(静岡地裁R4.10.20)

露天温泉盗撮事案(静岡地裁R4.10.20)
 被害児童との関係で、被告人も匿名報道になっていました。

静岡地方裁判所
令和04年10月20日
 上記の者に対する、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年、兵庫県条例第66号)違反被告事件について、当裁判所は、検察官風間康宏及び私選弁護人吉村健一郎(主任)、同竹内瑞穂各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
1 被告人を懲役2年に処する。
2 未決勾留日数のうち30日をその刑に算入する。
3 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。

理由
(罪となるべき事実)
第1 被告人は、別紙記載の甲(当時15歳)が18歳未満であることを知りながら、令和元年5月4日頃、別紙記載の本件脱衣所において、入浴を終えて衣服を着けようとしていた甲の全裸の姿態を、ひそかに、自己が使用する小型カメラで動画撮影し、その電磁的記録である動画データを同カメラ内部の記録媒体に記録させて保存し、もってひそかに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造した。
第2 被告人は、常習として、正当な理由がないのに、戊と共謀の上、令和2年3月14日午後1時34分頃から同日午後2時24分頃までの間、別紙記載の本件入浴施設周辺の山中において、当時、女性専用とされていた別紙記載の本件露天風呂に入浴中の別紙記載の乙(当時42歳)、丙(当時25歳)、丁(当時53歳)に対し、望遠レンズを接続させた動画撮影状態のビデオカメラを差し向けて撮影し、もって人が通常衣服等の全部若しくは一部を着けないでいるような場所に当該状態でいる人の姿態の映像を記録する目的で、写真機等を人に向けた。
(証拠の標目)
(法令の適用)
1 主刑
 (1) 構成要件及び法定刑を示す規定
 被告人の前記第1の行為は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項、2項、2条3項3号に該当する。
 被告人の前記第2の行為は、刑法60条、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年、兵庫県条例第66号)15条2項、1項、3条の2第3項に該当するが、被告人には常習者の身分がないので、刑法65条2項により同条例15条1項の刑を科することとする。
 (2) 刑種の選択
 前記の各罪についてそれぞれ懲役刑を選択する。
 (3) 併合罪の処理
 以上は、刑法45条前段の併合罪であるから、刑法47条本文、10条により重い前記第1の罪の刑に刑法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
 (4) 宣告刑の決定
 後記の量刑の理由により以上の刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処する。
2 未決勾留日数の算入
 刑法21条を適用して未決勾留日数のうち30日をその刑に算入する。
3 刑の執行猶予
 後記の量刑の理由により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
(量刑の理由)
 本件は、児童ポルノ製造1件及び盗撮による条例違反1件の事案である。
 法定刑の重い児童ポルノの事案についてみると、被告人は、かねてから着替え中や入浴中の盗撮画像等に性的興味を抱いていたところ、被害児童が一緒に泊まっていた機会を利用し、あらかじめ脱衣所に小型カメラを設置するなどして、着替え中の被害児童の裸を撮影して児童ポルノを製造しており、このような犯行は、計画的で巧妙であり、被害児童の心身の成長に有害な影響を与えるものであって、被害児童の母親が被告人に対して厳しい処罰を求めることも十分理解できる。
 盗撮による条例違反の事案についてみると、被告人は、盗撮サイトで知り合った共犯者と共謀し、知人女性らを露天風呂に誘い、共犯者をしてその入浴中の姿を盗撮させた上、その盗撮後の画像を共犯者から受け取っており、このような犯行は、被害者らの性的羞恥心を著しく害するものであって、被告人に常習性は認められないとしても、同種事案の中では軽く見ることができないものである。
 いずれの犯行も、自らの性的欲求を満たすためという身勝手かつ自己中心的な動機に基づく卑劣な犯行であり、被告人は厳しい非難を免れない。
 以上の重要な犯情を考慮すると、被告人に対しては、いずれの犯行も懲役刑を選択するのが相当であるが、同種事案における量刑傾向を踏まえて公平性の観点から検討すると、本件は、直ちに懲役の実刑を科すべき事案とまではいえない。
 そこで、被告人が、本件各犯行を認めて反省し、弁護人を通じて被害者の一部と示談を成立させた上、自らの心のゆがみを自覚し、医療機関による再犯防止のための心理教育プログラムを受け続ける旨誓っていること、被告人の母親が被告人の父親と共に同居して監督する旨証言していることなどの一般情状を考慮し、主文の刑を言い渡した上で、その刑の執行を猶予し、社会内で更生する機会を与えるのが相当と判断した。
(検察官の求刑意見 懲役2年)
(弁護人の量刑意見 刑の執行猶予)
刑事第1部
 (裁判官 國井恒志)
別紙(省略)