児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自己性的目的所持罪・単純所持罪(7条1項)の取締方針

自己性的目的所持罪・単純所持罪(7条1項)の取締方針
 児ポ対ニュースなどから。

自己の性的好奇心を満たす目的による児童ポルノ所持罪の取締り方針
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第79号。以下「改正法j という。)により新設された「自己の性的好奇心を満たす目的」による児童ポルノ所持罪(第7条第1項)(以下「自己性的目的所持罪」 という。) の罰則が、本年7月15日から適用開始となります。
自己性的目的所持罪については、改正法案を審議した参議院法務委員会において、「児童を性的搾取及び性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用を行うこと」、「第7条第1項の罪の適用に当たっては、同項には捜査権の濫用を防止する趣旨も含まれていることを十分に踏まえて対応すること」に政府は格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされたことから、以下の方針に基づく適正な取締り及び関係部署への指示を徹底願います

1 基本方針
自己性的目的所持罪の取締りは、以下の基本方針に基づき行うこととする。
○児童を性的搾取・性的虐待から守るという法律の趣旨を踏まえた運用
 児童ポルノ禁止法第3条(適用上の注意)は、「この法律の適用に当たっては、学術研究、文化芸術活動、報道等に関する国民の権利及び自由を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。」と規定している。また、参議院法務委員会でも、この規定と同趣旨の附帯決議がなされていることから、この基本原則に則り自己性的目的所持罪の罰則の適用に当たること。
○製造・提供罪等、より重い罰則の適用
児童ポルノの製造、提供、公然陳列等の事案については、自己性的目的所持罪ではなく、より重い本来の罰則を適用することを原則とする。

○客観的・外形的証拠に基づいた適正な取締りの徹底
自己性的目的所持罪は、「自己の性的好奇心を満たす目的」及び「自己の意思に基づき所持するに至った」ことを、できるだけ客観的・外形的証拠により立証することが必要とされていることから、被疑者の供述を裏付ける客観的・外形的証拠(所持態様・分量・内容、通信ログ・内容等)を確保すること。

警察庁少年課に対する事前協議の徹底
既述のとおり、自己性的目的所持罪については、参議院法務委員会において、捜査権の濫用を防止することについて格段の配慮をすべきとの附帯決議がなされるなど、本罪の適用は慎重に行わなければならない。こうしたことから、警察として全国的に斉一な取締りが実施されるよう、全ての事案について、平成26年6月25日付け少年課長通達「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に基づく取締りの報告について」に基づき、確実に警察庁少年課(福祉犯第三係)に事前報告を行い、協議すること

2 重点検挙対象事犯
児童を性的搾取・性的虐待から守るとしづ児童ポルノ禁止法の目的及び参議院法務委員会附帯決議を踏まえ、「児童に対する新たな性的搾取文は性的虐待の防止」又は「供給者側の犯行の抑止」に繋がる以下の事案を「重点検挙対象事犯」とする。
なお、以下に示す重点検挙対象事犯は、重点となる対象を示したものであり、重点対象であることの立証(を求めるものではない。また、重点検挙対象事犯に該当しない事案であっても、悪質なものについては、検挙対象となり得る(下記{自己性的目的所持罪取締り方針概念図】参照)。



※児童に対する新たな性的搾取又は性的虐待の防止
○年齢児童ポルノ愛好者の検挙
低年齢児童ポルノ愛好者による所持事犯
児童ポルノの製造を助長させる悪質な需要者の検挙
他人を煽るなどして,他人をして,新たに児童ポルノを製造させ,入手した事犯

※供給者側の犯行(複製・提供等)の抑止抑止
○常習的な児童ポルノ所持者の検挙
改正児童ポルノ禁止法施行日(H26.7.15)以降反復して有償で児童ポルノを入手している事犯


3 任意廃棄を含む注意警告の措置めるべき事案
○自己の性的好奇心を満たす目的が,所持の態様分量,所持している対象の内容等の客観的状況から推認できない場合は, 自己性的目的所持罪で検挙することなく,任意廃棄を含む注意・警告の措置に留める。
○どのような事案を警告等の措置に留めるべきかは,事案ごとに少年育成課と警察庁少年課との協議において判断する。


4自己性的目的所持罪での現行犯逮捕
自己性的目的所持罪は,客観的・外形的証拠により立証することが必要とされているため,現行犯逮捕できる場合は極めて限定的である。
ただし,逮捕時に以下の全ての要件を満たしている場合には, 例外的に現行犯逮捕も可能と解される。
なお,現行犯逮捕した場合は,少年育成課に速報すること。
①被疑者が自己性的目的所持罪を犯したことが明白
○「児童ポルノ該当性」が明白一児童ポルノ画像の被写体が特定され,又は医師の鑑定により児童と認定されている(警察官による予備年齢鑑定は行わない)。
○「自己の性的好奇心を満たす目的」が明白ー自己の性的好奇心を満たす目的が,客観的証拠(児童ポルノの内容,所持量、所持態様、閲覧履歴等)により明白
○「自ら所持するに至った者」であることが明白一自ら所持するに至った者であることが,客観的証拠により明白(ダウンロード・購入履歴等から,入手先・時期が特定されている。所持態様から,自ら所持する意思が明らか。)
②証拠隠滅・逃亡のおそれがある
被疑者が現に証拠隠滅や逃亡の素振りを見せたり,他の共犯者と通謀したり,犯行を否認している場合など,直ちに逮捕しなければ,証拠隠滅・逃亡のおそれがある。