児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

不特定又は多数の者に提供する目的製造行為(7条7項)を姿態をとらせて製造罪(4項)で起訴したら不成立無罪になるよ

児童ポルノ画像を送らせて売ってる人について

公訴事実
被告人はA(15歳)が18歳未満であることを知りながら,令和2年6月1日,大阪府内のA方において,被告人が,Aに乳房,陰部等を露出した姿態等をとらせ,これを同人の携帯電話機で動画撮影させた上,それらの動画データ11点を同携帯電話機から前記「」を使用して被告人の携帯電話機に送信させ,その頃,兵庫県内又はその周辺において,同動画データ11点を同携帯電話機で受信して同機に記録させて保存し,もって,衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した

という起訴状がある。

 4項製造罪は「4前項に規定するもののほか」とされていて、提供目的がある場合には成立しないから、この訴因では不成立無罪になる。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

 こういうと、不特定又は多数の者に提供する目的製造は7項だから、「4前項に規定するもののほか」に含まれないという反論が予想される。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
 しかし「提供目的」には、不特定又は多数の者に提供する目的も含む。不特定又は多数の者に提供する目的であっても、「提供する目的」であるからである。
 島戸判事もそういう。
 h26改正で項がずれたので島戸論文の「第3項」が姿態をとらせて製造罪(4項)となっている。島戸判事のいう、「第2項」が提供目的製造罪(現行法の3項製造罪)、「第5項」が不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(現行法の7項製造罪)である。

島戸「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」警察学論集57-08
なお、第2項は、第5項に該当する場合を含むものであり、第3項においては、第2項に規定する場合のみを除けば、当然に第5項に該当する場合も除くこととなるものであるから、第3項において、第5項に該当する場合を除くこととはしなかったものである

 改正経緯からみても、制定時点では販売目的製造罪だけだったものが、H16で、提供目的製造罪と、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪が新設され、さらに、目的が無い場合にも広げて姿態をとらせて製造罪も置いた経緯からは、目的製造罪が優先的に成立する趣旨が読み取れる。

 ということで、不特定又は多数の者に提供する目的製造罪(7項)が成立するときは、姿態をとらせて製造罪は不成立だ。



 なお公然陳列目的製造行為(7項)については、提供目的ではないので、姿態をとらせて製造罪で起訴してもいいみたいだ。なんかお粗末な立法だ。