①は強制性交未遂、②は強制わいせつ罪とする裁判例もあるのに、軽い罪名で起訴されているので、実刑にはなりません。
強要未遂,強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
千葉地方裁判所判決平成31年2月22日
被告人を懲役2年に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 ■■■(当時16歳)の性行為を撮影した動画を入手したと装って同人を脅迫し,被告人との性交等に応じさせようと考え,
1 平成30年11月5日午後2時34分頃から同日午後8時8分頃までの間,千葉市若葉区(以下略)千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,アプリケーションソフト「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「あなたの,はめどり見してもらったけど」「なら動画はまわるけど」「やってくれるなら動画消してあげる」「口でいかしてくれたら本番はないかもねー」「じゃー明日フェラ動画撮らせて」「ゆうこと聞けないなら回すからいいや」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,■■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,被告人との性交及び前記■■が口淫する様子を動画撮影させることを要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,もって同人に義務のないことを行わせようとしたが,同人が同月6日に警察に届け出たため,その目的を遂げなかった。
2 同月5日午後4時10分頃から同日午後7時54分頃までの間,前記千葉市□□消防署△△出張所において,被告人の使用する携帯電話機から,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,前記■■が使用する携帯電話機に,「今日暇だから自撮りでも送ってよ」「むねとかね」「あーいいんだー」「まわっても」等のメッセージを送信し,いずれもその頃,前記■■において,前記■■にこれらを閲覧させ,同人の胸を撮影した画像の送信を要求し,その要求に応じなければ,同人の名誉に危害を加えかねない旨を告知して同人を脅迫し,同人を怖がらせ,よって,同日午後7時37分頃から同日午後7時59分頃までの間,3回にわたり,同人に,乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを同人の携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ3点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,もって前記■■に義務のないことを行わせた。
第2 前記■■が18歳に満たない児童であることを知りながら,同日午後7時59分頃,前記■■■において,前記■■にその乳房を露出させる姿態をとらせ,これを同人の使用する携帯電話機で撮影させた上,前記「ツイッター」のダイレクトメール機能を利用して,その画像データ1点を被告人の使用する携帯電話機に送信させ,その頃,前記千葉市□□消防署△△出張所において,上記画像データを受信して同携帯電話機の記録装置に記録させて保存し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である前記■■に係る児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
以下,括弧内の甲乙の番号は,証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す。
判示事実全部について
・ 被告人の公判供述
・ 被告人の検察官調書(乙3)
・ ■■■の検察官調書(甲2-ただし,不同意部分を除く。)
・ 電話聴取書(甲3)
・ 写真撮影報告書(甲4,5,8)
・ 捜査報告書(甲7)
(法令の適用)
被告人の判示第1の1の所為は刑法223条3項,1項に,判示第1の2の所為は同項にそれぞれ該当するが,これらを包括して一罪として処断することとし,被告人の判示第2の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項3号に該当するところ,判示第2の罪について所定刑中懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第2の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用は,刑訴法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。
(量刑の理由)
被告人は,自己の性欲を満たすため,被害女児の性行為を撮影した動画を入手したと装い,当時16歳の被害女児に対し,被告人との性交に応じること,被害女児が口淫する様子を動画撮影させること,被害女児に乳房を露出するなどした姿態をとらせ,これを撮影した画像データを送信することなどを要求し,これらの要求に応じなければ,被害女児の性行為を撮影した動画を拡散させるなどのメッセージを伝えて脅迫し,上記画像データを被告人の使用する携帯電話機に送信させて保存し,児童ポルノを製造したものである。動機が自己中心的で身勝手極まりなく,態様も執拗で卑劣なものである。被害女児は本件被害に遭い,多大な恐怖心や羞恥心を抱くなどの精神的苦痛を被っており,将来にわたる精神的な悪影響も懸念されるところであって,被害結果を軽視することはできない。被害女児は,被告人側からの示談の申入れを拒絶し,被告人を厳重に処罰するよう求めているが,上記のような被害結果等に照らすと,その心情も十分に理解できるところである。そうすると,被告人の刑事責任については決して軽く見ることができない。
もっとも,これまで前科がなく,21歳と若年の被告人が,素直に事実関係を認めて反省の態度と更生の意欲を示し,精神科クリニックに通院するなどして再犯防止に努めていること,被告人と同居している母親が,当公判廷に出廷し,被告人の監督を誓約したこと,本件が発覚したことで,自業自得とはいえ,被告人の名前等が広く報道され,消防士の職を懲戒免職されるなど,既に大きな社会的制裁を受けていることなど,被告人のために酌むべき事情もある。
そこで,以上の事情を総合考慮した結果,被告人を主文のとおりの懲役刑に処してその刑事責任を明確にした上で,今回に限りその刑の執行を猶予して,被告人に社会内で更生する機会を与えるのが相当であると判断した。
(求刑 懲役2年)
平成31年2月22日
千葉地方裁判所刑事第3部
裁判官 高橋正幸