実刑危険がある事件なので、こういうとこも間違えが無いようにいろいろ論難しています。
[認識不可能な遠方からの盗撮]は強制わいせつに当たらずという判断も出てきました
名古屋高裁平成31年3月4日
児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに’児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
主文
原判決を破棄する。
理由
(補足説明)
1判示第1(1)原判決は「罪となるべき事実」第1として要旨共犯者と共謀の上平成31年3月12日温泉施設北側森林内で同温泉施設で入浴中の女児5名が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオ~カメラの記録媒体等に記録した上,同年5月1日被告人方で同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造したとの事実(公訴事実同旨)を認定判示
(2)弁護人は被害児童(5名)ごとに犯罪が成立するのに1罪1罪特定できず訴因不特定というけれども,被害児童らの姿態撮影と記載されており,訴因特定に欠けない。
13歳未満の者の裸体撮影は強制わいせつに当たり公訴事実からは罪名特定できず訴因不特定というけれども,公訴事実,罪名及び罰条から強制わいせつ事実を起訴していないこと明らか(本件[認識不可能な遠方からの盗撮]は強制わいせつに当たらず弁護人の主張は前提においても失当)(3)弁護人は被告人ら撮影の大部分は老若女性で児童は一部であり公衆浴場での女児の入浴という普通の情景であって児童ポルノに当たらないというけれども,女児と,見られる客が現れると即座に照準を定め,その後乳房や陰部を中心にズームアップして撮影されていることからすれば,殊更に児童の性的な部位が露出強調され性欲を興奮させ刺激するものたること明らか。児童ポルノ禁止法2条3項3号に当たる。
(4)弁護人は被告人方での外付けハードディスクへの保存につき「ひそかに」児童の姿態を「描写」したといえないから児童ポルノ製造罪は不成立というけれども,ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる。
(5)弁護人は児童ポルノ提供目的があった(同法7条3項該当)から同条5項罪~は成立しないというけれども,訴因罪以外の罪の成立を主張して訴因罪の成否を争一うもので,訴因制度の趣旨に反し許されない(その他種々いうけれども,後記「法令の適用」に係る罪数主張以外理由なきこと明らか)。
(法令の適用)
1罰条
(1)判示第1各児童ごとに刑法60条,児童ポルノ禁止法7条5項,2項,2条3項3号(原判決は単純[又は包括]1罪。訂正)
(2)判示第2のうち児童ポルノ所持の点は同法7条7項前段,6項,2条3項3号。
わいせつ物所持の点は刑法175条2項
2科刑上1罪の処理‘
(判示第1,第2につき)
いずれも刑法54条1項前段,10条(判示第1は1個の行為が5個の罪名に触れる場合。1罪として犯情の最も重い甲39添付資料1-1の女児に係る罪の刑で処断。
原判決
(罪となるべき事実)
被告人は,
第1 分離前相被告人Nと共謀の上,平成31年3月12日北側森林内において,同施設で入浴中の氏名不詳の女児5名がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を,望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオカメラの記録媒体等に記録した上,同年4月1日,被告人方において,同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した
(法令の適用)
罰条
判示第1の事実につき 刑法60条,児童ポルノ法7条5項,2項,2条3項3号