児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

弁護人の主張するとおり、Aは、平成五年五月末ころから約七か月間にわたって被告人と交際を継続し、その間、Aが被告人宅を訪れて性交渉を持ち、さらに、平成五年一二月二四日にも、妹や友人らと共に被告人宅で催されたクリスマスパーティに参加するなどした事実が窺われるのであるから、こうした事実に照らすと、A供述中、本件に至るまでの被告人との交際の全てが被告人の脅迫によって強いられたものである旨の部分は、刑事事件にまで発展した本件における自己の立場につきAが正当化を試みようとしたものというべきで、その限りで直ちに信用す

 児童は誇張するんですよ。
 暴行も認定されていて、青少年条例違反でなく強姦罪ですよね。親告罪の告訴無し。

東京地方裁判所
平成07年01月27日
 右の者に対する傷害、埼玉県青少年健全育成条例違反被告事件について、当裁判所は、検察官仲田章出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を罰金二〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は
第一 
第二 同月三一日午前零時三〇分ころ、同所において、結婚を前提としないで単に自己の欲望を満たすために一八歳に満たない青少年である前記Aと性交し、もって、青少年に対してみだらな性行為をした
 ものである。
(証拠の標目)

(弁護人の主張に対する判断)
三 さらに、弁護人は、公訴事実第二記載の日時場所において、被告人がAと性交した事実はなく、これを肯定するAの捜査段階における供述(以下、「A供述」という。)は、自らの生活態度や異性関係を父親や学校に対して弁解するためになされたもので信用できず、被告人は無罪であると主張する。
  弁護人の主張するとおり、Aは、平成五年五月末ころから約七か月間にわたって被告人と交際を継続し、その間、Aが被告人宅を訪れて性交渉を持ち、さらに、平成五年一二月二四日にも、妹や友人らと共に被告人宅で催されたクリスマスパーティに参加するなどした事実が窺われるのであるから、こうした事実に照らすと、A供述中、本件に至るまでの被告人との交際の全てが被告人の脅迫によって強いられたものである旨の部分は、刑事事件にまで発展した本件における自己の立場につきAが正当化を試みようとしたものというべきで、その限りで直ちに信用することはできない。
  しかしながら、犯行当日の被告人宅における被告人とAの行動、やり取りの状況に関して見る限り、A供述と被告人の公判供述とを対比すれば、全体としてA供述の方が信用できることは明らかである。以下、順次検討する。
1 A供述の要旨
  A供述の要旨は、概ね次のとおりである。
  「私は、被告人の自宅で、被告人から、『今まで嘘をついてきたのを話せ』などとさんざん言われ、他の男の人と肉体関係をもったことについて告白させられた。そして、被告人から合計すると二〇回くらい殴られ、殴られた際に倒れて部屋の中にあったスピーカー台のコンクリートブロックに頭を打ちつけてこぶができ、下あごにも出血する怪我をした。また、アイスホッケーのスティックでも腰やお尻を叩かれて、家から出ることも許されず、このとき初めて泊まっていくことまで強要された。その後、被告人は急に優しい声になって、怖くて震えている私に『何だ震えているじゃないか。寒いのか』などと言って、私を抱きかかえるようにしてストーブの前へ連れて行った。その後、午後一一時ころ、『おまえは馬鹿だなあ。こんなにきずを負って。おれは男の子にだってこんなに殴ったことはないよ』などと言い、怪我をした原因を階段から落ちたと言い繕えなどと話してきた。午後一二時ころになると、被告人は、私に風呂に入ろうと言って誘ってきたが、私は、殴られたところが痛くて風呂には入りたくなかったが、断るとまた暴行を加えられると思って、一緒に風呂に入った。被告人とは五回くらい一緒に風呂に入ったことがあるが、被告人は、いつものとおり、風呂場で私にキスをしたり、陰部に手を差し込んだりしてきた。風呂から上がり、翌日の午前零時半頃に、被告人は性交を求めてきた。私は、そのような気にはなれなかったが、逆らえば何をされるか分からないと思い、言われるままに性交に応じた。」
2 被告人の公判供述の要旨
  他方、被告人の公判供述の要旨は、以下のとおりである。
  「午後五時過ぎに自宅に着いてから、Aに別れ話をしたところ、Aは、泣きながら『別れたくない』と言って必死にすがりついてきた。私が『もし嘘を付いていることがあったら全部聞かせてくれ』と言うと、Aは、Eという歯医者をしている男と性交渉を持ったことなどを告白した。私は裏切られたという思いで、かっとなって、Aの頬を平手で二、三回殴った。すると、Aは、自分からEに電話をかけて『あなたとはもう会えない』と告げ、私に『生まれ変わるからやり直してくれ』と言ってきたが、私は、かっとなって再び二、三回叩いてしまった。Aが嘘を付いたことを謝罪したので、私は、叩いたことを後悔して、Aをもう一度信じてあげようと思った。その後、二人でいろいろ話をし、Aが一緒にいたいと言うので、Aを泊めることにした。午後一二時過ぎころに、私が入浴していたところ、Aが後から入ってきた。この日は、風呂の中で、Aの方から私に抱きついてキスをしてきたことがあっただけで、風呂場でそれ以上のことは何もなく、性交渉もなかった。」
3 各供述の信用性の検討
  A供述と被告人の公判供述をみると、いずれも、Aが被告人にその男性関係を告白したこと、被告人がAに対して顔面を平手で殴打するなどの暴行を加えたこと、入浴を共にしたこと、Aが初めて被告人宅に泊まったこと等の点で一致しているものの、被告人の暴行の態様や程度及びその後の状況については食い違いがみられる。
  そこで、まず、被告人の暴行によってAが被った傷害の程度と内容について見ると、関係証拠によれば、Aは被告人から加えられた暴行により、全治まで約五日間を要する下顎部擦過傷、打撲及び頭部打撲の傷害を負い、しかも、その下顎部及び胸部には一見してそれと分かる擦過傷あるいは痣が生じていることが認められるところ、右のような傷害の程度に照らすと、被告人がAに加えた暴行の程度ないし態様は、A供述にあるように、アイスホッケーのスティックで殴打されたかどうかは別としても、かなり強烈で、執拗なものであったと認めることができる。そして、関係証拠によれば、Aは、被告人の暴行により負傷した翌日(一二月三一日)には医師の診断を受けて診断書を取るとともに、中野警察署に行き、そこで負傷部位の写真撮影に応じており、さらにその翌日には同署で被害事実の申告をしていることが認められるところ、Aがこうした行動に出ていることに照らすと、Aに自分の生活態度や異性関係を父親や学校に対して弁解し、正当化しようとする気持ちがあったとしても、被告人が供述するAの言動、すなわち、その夜、Aは被告人に対して「被告人と別れたくない、やり直したい」と懇願していたということとは全く相反するものといわざるを得ないのであって、Aがとった右の行動はとりもなおさず、Aが被告人から受けた仕打ちに怒りを覚えた結果とみるのが自然であるというべきである。そうだとすると、Aが、被告人から暴行を加えられたその夜、被告人が供述するように、Aの方から被告人宅に泊まっていくと言い出したり、あるいは被告人が入浴中の風呂に入ってくるなど、被告人に対して甘えるかのような態度をとったとは到底考え難いところであり、Aが被告人宅に泊まったり、被告人と入浴を共にしたのも、すべてその夜の被告人の言動にAが畏怖した結果であると見るのが自然であると考えられる。
  以上のとおり、犯行当日、被告人宅で被告人がAに暴行を加えたことや、Aが被告人宅に宿泊することとなった経緯及びAが被告人と入浴を共にすることとなった経緯等について見る限り、A供述は自然で無理がなく、また、作為や誇張を窺わせるところもないのであって、十分信用性の高いものということができる。そして、Aが風呂から上がった後、トレーニングパンツとスポーツウエアーに着替えさせられ、二階の被告人の部屋のベッドの上で、被告人は腰が悪いと言って横になり、Aを被告人の身体の上に馬乗りにさせて性交したとの、その夜の被告人との性交渉の状況を述べる部分も、極めて具体的、かつ詳細で、迫真性に富むもので、この部分も前記供述部分と同様に、全体として信用できるものといってよい。
  他方、被告人の公判供述は、Aに加えた暴行の態様について捜査段階の供述を大きく変遷させている上、Aの方から被告人に対して、生まれ変わるからやり直して欲しい、交際を継続して欲しいと強く求めてきたので、もう一度Aを信じてやり直そうと思った旨強調し、その夜Aを自宅に泊めたのは、父親が不在であり、Aと喧嘩をしてしまったのでゆっくり話をしたいと思ったからで、Aが泊まっていきたいと言ったからであるなどというのであるが、被告人とAとのそれまでの交際状況、すなわち、被告人は、Aと交際を始めてから相当の期間、かなりの回数にわたって性交渉を重ねているもので、犯行当夜、Aの不実を怒って怪我を負わせるなどしており、その後仲直りをして自宅に泊め、一緒に入浴までしていながら、その夜は性交する気にならなかったなどというのは、余りにも不自然というほかなく、被告人の公判供述は全体として信用性に欠けるものといわざるを得ない。
  以上の次第であるから、この点に関する弁護人の主張も理由がない。
四 さらに、弁護人は、被告人はAに対して愛情を抱いており、被告人とAとの間には、結婚を前提としないまでも、人格的な交流があったから、両者の間の性交渉は「みだらな性行為」には該当しない旨主張する。
  しかしながら、被告人は、平成五年五月下旬ころまで、同じく高校の教え子であったDと交際していたが、Dとの交際が途絶えるや、直ちにAと交際を始め、まもなく性交渉を持ち、関係を続けていたもので、本件犯行に至るまで約七か月間にわたって交際を続けていたものの、その間、Aと結婚するような話などは一切なかったのであり、そして、Aとの関係が気まずくなるや、被告人は、本件犯行の直前である一二月中旬、Dに対し、「Each night and day I pray for your return.」「P.S.I love you forever.」などと記載したクリスマスカード(同年一二月二一日の消印のもの)を送付し、クリスマスカードに名を借りて復縁を求めているのである。このような被告人の教え子との交際の状況や、被告人は当時二八歳で、女子高の非常勤講師を勤める少なくとも社会的には一人前と見られる立場にあったのに対し、Aが高校二年に在学中で被告人の教え子であったという両者の関係、社会的地位、立場を考えると、被告人がAに対して真摯な愛情を抱いて交際していたとは到底認めることができず、本件が、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性行為をした場合に該当することは明らかであり、弁護人の右の主張も理由がない。
(法令の適用)
 被告人の判示第一の所為は刑法二〇四条に、判示第二の所為は埼玉県青少年健全育成条例二八条、一九条一項に該当するので各所定刑中いずれも罰金刑を選択し、右は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人を罰金二〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする(求刑罰金二〇万円)。
 よって、主文のとおり判決する。
刑事第2部
 (裁判長裁判官 川上拓一 裁判官 田島清茂 裁判官 丹羽敏彦)