http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20140616#1402717552の続報
最近、こういう傾向ですので、強要罪を受任したときには、強制わいせつ罪との区別を聞くことにしています。性的傾向で区別するしかないので。
この大阪高判平25. 5. 8の弁護人はどうして傾向犯の主張をしなかったんだろうか。
最近においても,例えば,女性である被告人が,被害者(女性)を監禁した上で,わいせつ行為を行った事案において強制わいせつ致傷罪の成立を認めた事例(大阪高判平25. 5. 8 公刊物未登載)(注10)なども存在しているところである。
(注10)同事案は,女性(同性愛者ではない)である被告人が,少女らと共謀の上,被害者(女性)を自宅に監禁した上陰部に下着の上からパイプレーターを押し立て,さらに,睡眠薬及び精神安定剤を無理矢理服用させて心身喪失状態にさせ,パイプレーターやコンドームを被せた皮付きバナナを被害者の陰部に挿入して前後に動かすなどした強制わいせつ致傷等の事案である。一審大阪地裁(大阪地判平24. 12. 25 公刊物未登載)及び控訴審はいずれも強制わいせつ致傷罪の成立を認めた(確定)。同事案においては,性的意図の点については争点とはなっていないが,(同性愛傾向のない)同性による強制わいせつ事案であることから性的意図必要説に立った場合には強制わいせつ罪が成立しないといえるから,性的意図不要説を前提とした裁判例と考えることができょう。
尼崎支部にも2件ある。母親自身の強制わいせつ罪がh26.7.30で、共犯者の強制わいせつ罪がh26.7.29。いずれも一審で確定。どっちの弁護人も母親には性的傾向がないことに気付かないのが不思議。
神戸地方裁判所尼崎支部
平成26年7月30日判決
上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,児童福祉法違反被告事件について,当裁判所は,検察官早川志津及び牧野善憲並びに弁護人遠藤創史(国選)各出席の上審理し,次のとおり判決する。
第2 被告人は,Bと共謀の上,被告人の娘であるE(平成15年○月○○日生,当時9歳。以下,「E」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成25年4月21日,同市β××番××号cd店において,Eの胸部,陰部等を露出した姿態をとらせ,Bが,デジタルカメラを用いてその状況を動画として撮影し,その動画データ10画像を,デジタルカメラに装着した電磁的記録に係る記録媒体であるSDカードに記録させて保存し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第3 被告人は,Bと共謀の上,E及び同じく被告人の娘であるF(平成20年○月○○日生,当時5歳。以下,「F」という。)がそれぞれ13歳未満であることを知りながら,平成25年4月23日,兵庫県尼崎市γ×丁目××番地の×所在の当時被告人が借りていたメゾンe×××の居室内において,E及びFの下半身を裸にして,その陰部を露出する姿態をとらせ,デジタルカメラを用いてその状況を動画として撮影し,その動画データ5画像を,デジタルカメラに装着した電磁的記録に係る記録媒体であるSDカードに記録させて保存し,もって13歳未満の女子に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
追記平成28年8月12日(金)
東京高裁h26は、性的傾向も認定しているので、不要説の判例ではないと判明しました。
別件の検察官答弁書でもそう主張されています。
検察官答弁書
なお,控訴趣意書18頁記載の東京高判平成26年2月13日東京高刑裁速報35 1 9号は,確かに,なお書きとして,強制わいせつ罪の成立に性的意図は不要であるかのような説示をしている。しかし,当該事件は,まさに同事件の被告人が犯行当時性的意図を有していたか否かが争点であり,同事件の第一審判決は,同事件が性的意図を欠いた報復目的で行われたとする同事件の第一審弁護人の主張を排斥し,同事件の被告人に性的意図と共に報復目的が併存していたことを認定しているところ,控訴審たる東京高等裁判所判決も,同事件が報復目的のみで行われたとする同事件の控訴審弁護人の主張を排斥して,第一審の判断を支持し,同事件の被告人に性的意図と共に報復目的が併存していたことを明確に認定した上,更に,なお書きで,上記の説示をし,弁護人の控訴を棄却したのである。そこで,上告審弁護人は,上告趣意として,同東京高判が最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁に反していると主張したが,最高裁判所第二小法廷は,当該判例違反の論旨は原判決に影響のないことが明らかな事項に関する判例違反の主張であって刑訴法第405条の上告理由に当たらない旨判示して,決定で上告を棄却し,同事件の被告人からの異議申立てをも決定で棄却したのである。よって,上記東京高判の存在にもかかわらず,最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁は,判例として変更されてはいないことになる。