児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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被告人が指導者としての自己の立場を利用して行ったものであるし,Aに対しては,抱きしめるなど身体を密着させ,でん部をなで回すなどし,Bに対しては,陰部を露出させた上,陰部を見ることのできる体勢で,でん部からふくらはぎにかけてなで回したという強制わいせつ事件(2件)につき懲役2年2月執行猶予3年とした事例(行為否認)(名古屋地裁H25.9.9)

強制わいせつ被告事件
名古屋地方裁判所
平成25年9月9日刑事第1部判決
       判   決
       主   文
被告人を懲役2年2月に処する。
未決勾留日数中190日をその刑に算入する。
この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。


       理   由

(罪となるべき事実)
第1 被告人は,顧問をしていた高校の柔道部所属のB(以下「B」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成22年11月下旬頃から同年12月上旬頃,愛知県弥富市α×丁目××番地×所在の柔道部寮1階被告人居室において,B(当時16歳)の腰にテーピング用テープを貼った際Bが身に着けていた半ズボン,下着を下ろした上,同女のでん部等を両手でなでるなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
(平成23年8月8日付け起訴状記載の公訴事実)
第2 被告人は,顧問をしていた高校の柔道部所属のA(以下「A」という。)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成23年2月21日午前9時頃から同日午前10時30分頃までの間,三重県亀山市β×××番地×ホテル「a」×××号室において,ベッド上で身体を横にして寝そべっていたA(当時17歳)の肩に両手をかけて身体を引き寄せ,「1万円あげるから10分我慢して。」などと言いながら,自己の身体を正面から密着させてAの身体を抱きしめた上,Aの尻を着衣の上から手の平でなで回し,着衣の中に手を入れて背中を手の平でなで回し,さらに,仰向けの体勢の同女の腹部付近にまたがり,Aの身体の上に覆いかぶさるなどし,もって強いてわいせつな行為をした。
(平成23年6月14日付け起訴状記載の公訴事実)
(証拠)《略》
(争点に対する判断)
第1 弁護人及び被告人の主張等
1 弁護人は,〔1〕判示第1の事件(以下「B事件」という。)について,被告人は,平成22年11月下旬頃から同年12月上旬頃のいずれの日においても,Bの半ズボン及び下着を下ろしたことやBのでん部等をなでるなどしたことがないから,強制わいせつ罪における暴行は存しないし,わいせつ目的も存しないから,Bに対する強制わいせつ罪は成立しないと主張し,〔2〕判示第2の事件(以下「A事件」という。)について,被告人のAに対する接触態様は,性的行為を求め説得する外観を呈するにすぎず,抵抗を排するものではないから,強制わいせつ罪における暴行脅迫には当たらないし,「わいせつ」と評価することもできない上,わいせつ目的も存しないから,Aに対する強制わいせつ罪も成立せず,被告人は無罪であると主張し,被告人も弁護人の前記各主張に沿う供述をする。
2 また,弁護人は,B事件について,平成24年8月10日,検察官から訴因変更の請求がなされ,当裁判所がそれを許可したことは,〔1〕当初の訴因と変更後の訴因との間に公訴事実の同一性がないこと,〔2〕時機に後れた訴因変更請求であること,〔3〕変更後の訴因は「できる限り」の特定性を欠くこと,の3点から違法であると主張する。
3 しかしながら,当裁判所は,弁護人及び被告人の前記いずれの主張も採用せず,前記罪となるべき事実を認定したので,以下,その理由を補足して説明する。
第2 当裁判所の判断

量刑の理由)
 本件各犯行は、前記認定のとおり,被告人が指導者としての自己の立場を利用して行ったものであるし,Aに対しては,抱きしめるなど身体を密着させ,でん部をなで回すなどし,Bに対しては,陰部を露出させた上,陰部を見ることのできる体勢で,でん部からふくらはぎにかけてなで回しており,各犯行態様は悪質である。被害者らは,指導者として信頼していたはずの被告人からわいせつ行為を受けており,その精神的苦痛はいずれも大きく,未成年者である同人らの人格形成に悪影響を与えることも懸念される。被害者らの母親らは,それぞれの意見陳述において被告人に対する厳しい処罰感情を表しているが,被害者らに対する慰謝の措置は全くとられていない。
 被告人は,本件各犯行についていずれも不合理な弁解を繰り返しており,反省は認められない。 
 他方,被告人には,前科前歴がないことなど,記録からうかがえる有利に斟酌すべき事情もあるので,被告人に対しては,主文の刑に処した上,その刑の執行を猶予するのが相当である。
(求刑 懲役4年)
(検察官J,私選弁護人金岡繁裕(主任),同佐竹靖紀各出席)
平成25年9月9日
名古屋地方裁判所刑事第1部
裁判長裁判官 天野登喜治 裁判官 鈴木秀雄 裁判官 古賀千尋