児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪で逮捕されて地裁に係属している事案

 阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」で見つけました。
 おそらく、児童淫行罪でなく、強制わいせつ罪などに切り替えて地裁に起訴しているものと思われます。
 13歳未満の撮影行為については

1 児童淫行罪と観念的競合の3項製造罪(姿態とらせて製造)→ぜんぶ家裁へ
2 児童淫行罪と併合罪の3項製造罪(姿態とらせて製造)→児童淫行罪は家裁、製造罪は地裁へ
3 強制わいせつ罪→ぜんぶ地裁へ
4 強制わいせつ罪と製造罪の観念的競合→ぜんぶ地裁へ
5 強制わいせつ罪(撮影行為除く)と製造罪の併合罪→ぜんぶ地裁へ

という選択肢がありますが、手堅くいくなら、
5 強制わいせつ罪(撮影行為除く)と製造罪の併合罪→ぜんぶ地裁へ
という起訴をおすすめします。
 訴因不特定の危険もないし、一応児童ポルノ法益侵害も押さえているし。最近の東京高裁も併合罪だと言ってるし・・・ということです。
 弁護人の主張としては、観念的競合だとか、実は児童淫行罪だから管轄違だとか、言えばいいですよね。
 

http://www.nikkansports.com/general/asozan/top-asozan.html
3月4日(火):児童福祉法違反(初公判)
<10歳の男児にわいせつな行為をした事件> 08年1月、コンピューターグラフィックス制作会社社長(32)は、10歳の男児にわいせつな行為をしたとして、児童福祉法違反容疑で逮捕された。07年9月に小学校5年の男児に「プロレスごっこをしよう」と持ちかけ、裸にしたうえで写真を撮影するなどしていた。

 児童ポルノ法以前から、裸を撮影するという態様の強制わいせつ罪があった。

 強制わいせつ被告事件
静岡地方裁判所浜松支部判決平成11年12月1日
判例タイムズ1041号293頁
 (罪となるべき事実)
 被告人は、平成一一年四月二五日ころ、静岡県浜松市〈番地等略〉五階駐車場に駐車中の普通乗用自動車内において、甘言を用いて誘い出した甲野春子(当一一年。昭和五三年五月一八日生)および乙山夏子(当八年。平成三年七月一日生)に対し、同女らが満一三歳未満であることを知りながら、「ゲームボーイを買うお金をあげるから、裸の写真を撮らせて。」などと申し向け、同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し、もって一三歳未満の婦女に対しわいせつな行為をしたものである。

13歳未満なので、暴行脅迫はなく、

同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し

というのが、わいせつの実行行為。
 ところで、

同女らをしてその着衣を脱がせて全裸にさせたうえ、同女らの陰部等の写真を撮影し

というのは、今で言えば、3項製造罪(姿態とらせて製造)の実行行為。

第7条(児童ポルノ提供等)
3 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。

 じゃあ、同じ行為なんだから、強制わいせつ罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)の観念的競合にすれば、両方の保護法益をカバーできて良さそうなものです。

 ところが、東京高裁h19.11.6によれば、強制わいせつ罪と3項製造罪(姿態とらせて製造)は併合罪にすべしと。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080229/1204245750
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080220/1203484345
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20071215/1197693981

 えーっ? 同じ撮影行為が強制わいせつ罪と製造罪の併合罪
 強制わいせつ罪の保護法益一事不再理効の広さからは併合罪という結論になりそうですが、行為としては一個にしかみえない。
 これは難しい問題です。
 僭越ながら、国権の最高機関を構成する議員の皆さんにお尋ねしたい問題点です。