児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

携帯サイトの管理者逮捕 投稿わいせつ画像掲載(兵庫県警)

 図表を作ってみました。↑→

 警察としては次々くる奴を検挙するのは当たり前だけど、実は、判例上、幇助か正犯かが判然としていない。
 
 だから、正犯はおかしいよね。>>東京高裁・最高裁

http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000236272.shtml
携帯サイトの管理者逮捕 投稿わいせつ画像掲載

投稿型アダルトサイトの構図  インターネット上に開設された携帯電話からの投稿型ホームページに、少女らのわいせつ画像を掲載したとして、兵庫県警生活安全企画課サイバー犯罪係と兵庫署などは八日までに、児童買春・ポルノ禁止法違反とわいせつ図画公然陳列のほう助容疑で、サイトを管理、運営していた愛知県岡崎市の会社員の女(32)を逮捕した。同日午後にも最終送検する。

 デジタルカメラや動画機能の付いた携帯電話の普及で、投稿型アダルトサイトの開設が近年急増。男女のわいせつ画像が多数投稿されており、画像を見た閲覧者が投稿者に交際を申し込む「出会い系サイト」としても使われ、未成年が性的被害に遭う温床になると問題となっていた。こうしたサイト管理者の刑事責任が問われ、立件されるのは全国でも異例。

 調べによると、会社員の女は、携帯電話のカメラで撮影したわいせつ画像を募集するサイトを開設し、二〇〇六年六-七月ごろ、自分の裸体などを撮影し、投稿した少女らのわいせつ画像を掲載。違法なわいせつ画像を不特定多数の人が目にする場をつくり、少女らの行為を助長した疑い。

 投稿型サイトは、利用者のアクセスが多いほど管理者に広告料が入る仕組み。会社員の女は、投票でわいせつ画像をランク付けし、アクセス数を増やしていたという。

 昨年夏ごろ、サイバーパトロールをしていた捜査員が、ネット上に少女のわいせつ画像を発見し、摘発につなげた。

 また同係などは、同サイトにわいせつ画像を投稿していた神戸市など兵庫県内外の十四-二十三歳の少女ら計六人を割り出し、八日までに同法違反(公然陳列)とわいせつ図画公然陳列容疑で書類送検した。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070208-00000030-san-soci
携帯電話のアダルトサイトで児童ポルノ画像などを公開していたとして、兵庫県警生活安全企画課と兵庫署などが、児童買春・児童ポルノ禁止法違反とわいせつ図画公然陳列幇助(ほうじよ)の疑いで、愛知県内に住む30代の店員の女を逮捕していたことが8日、分かった。
 県警の調べでは、女は「セクシー☆写メール」というタイトルで携帯電話のアダルトサイトを運営。昨年夏ごろ、14〜23歳の男女6人が投稿してきた女性や女児の裸のポルノ画像十数枚を、削除せず不特定多数の閲覧者に公開していた疑い。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070208-00000135-jij-soci
わいせつ図画公然陳列ほう助などの疑いで、同サイト管理者容疑者(32)を逮捕した。
 少女らは「たまたまサイトを見つけ、他の人のコメントを見てたら面白そうだと思った」などと話している。容疑者は「わいせつ画像を掲載すれば、アクセス数が増え、広告収入が増えると思った」と容疑を認めているという。 

<裸画像>「掲示板」に投稿した女子中高生ら送検 兵庫県
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070209-00000026-mai-soci
掲示板への投稿や閲覧は無料で、投稿者は閲覧者とメールでやりとりできる。人気投票をしており、上位になると投稿者のメールも増える仕組みで、少女らは「自分の写真がほめられると、うれしかった」などと話しているという。

 なお、起訴されるのが異例というほどではない。最近、多い。但し、擬律は混乱中。

3 画像掲示板管理者の刑事責任に関する裁判例
(1)幇助とするもの
①新潟簡裁H12.1.21
名古屋地裁H18.1.16(起訴は共謀共同正犯。不作為犯構成)←奥村弁護士
名古屋地裁H19.1.10(控訴中)←奥村弁護士
(2)単独正犯とするもの
横浜地裁h15.12.15(不作為犯構成)←奥村弁護士
②東京高裁H16.6.23(上告中)(作為犯構成)←奥村弁護士
京都地裁H9.9.24(不作為犯構成)
④大阪高裁H11.8.26(不作為犯構成)
(3)共謀共同正犯とするもの
千葉地裁H14.9.24(事前共謀による開設の事例)
東京地裁H18.4.21(名誉毀損
名古屋地裁H18.2.24

幇助の事実記載例だが、これでは削除義務の根拠が明らかでない。

被告人は,・・・が管理していた・・・に設置されたサーバーコンピュータに,不特定多数の者が児童ポルノ画像を送信することにより自動的にその画像が掲載されて,インターネットを利用する不特定多数の者において,これを受信して再生閲覧することが可能となる電子掲示板「」を開設し,これを管理しうる立場にあったものであるが,
上記掲示板の開設者としてこれを管理し,違法画像が同掲示板に受信掲載されているのを発見した場合には,これを削除するなどして,これが不特定多数のインターネット利用者に閲覧等されるのを防止すべき義務があるのに,別紙一覧表2記載のとおり,らに、平成17年月日ころから同年月日ころまでの間に,所在のほか3か所において,ABCDこもごも,衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法によって描写した電磁的記録である児童ポルノ画像合計○画像を,上記電子掲示板に送信して記憶蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,これらの画像の閲覧が可能な状況を設定し,もって,児童ポルノを不特定多数の者に公然陳列しようとした際,同掲示板にこれらの画像が受信掲載されていて,不特定多数のインターネット利用者が再生閲覧することが可能であることを知りながら,敢えてこれを放置し,もって,これを幇助した。

別紙一覧表記載のとおり、平成年月日から同年月日までの間、ほか1か所において、Aほか1名が、こもごも、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したものである児童ポルノ画像×画像及び前同様の児童ポルノであり、かつ女性器を露骨に撮影したわいせつ図画である画像合計×画像を、上記電子掲示板に送信して記憶・蔵置させ、不特定多数のインターネット利用者に対し、上記画像の閲覧が可能な状況を設定し、平成年月日、から上記画像情報にアクセスしたBら不特定多数の者に対し、上記情報を送信して再生閲覧させ、もって、上記Aらの上記犯行を容易ならしめて、これを幇助したものである。

 幇助とされた事件では、こんな主張を考えている。
 こんなこと上の事件の一審で言ったらだめですよ。

2 そもそも掲示板開設行為は「正犯」であること
 他人が投稿した画像について。
 掲示板開設者の刑事責任は作為犯・正犯とするのが判例である(東京高裁H16.6.23*1)。
 被告人の行為は正犯である。
 この東京高裁H16.6.23の事案(原審横浜地裁H15.12.15)は、管理者は児童ポルノ画像の存在を未必的にしか認識していない事例であって、それが正犯と評価されていることに注意しなければならない。(本件では確定的に予測していたのであるから東京高裁H16.6.23の行為を超えている。それが幇助というのは理屈が合わない。)
 ところで、幇助とは正犯行為(実行行為以外)で正犯の実行行為を容易にするものであるから、幇助行為には正犯の実行行為が含まれてはならない。
 そのときは端的に「正犯」となる。
(1)横浜地裁H15.12.15
横浜地裁平成15年12月15日は、掲示板管理者が、あえて放置した点を捉えて、不作為による公然陳列罪(正犯)であるとした。
 これによれば、実行の着手時期は、他人が投稿した児童ポルノ画像を認識した時であるから、本件で問題とされている違法画像投稿以前の掲示板の設置管理行為はせいぜい予備行為に過ぎず、不可罰である。

横浜地方裁判所平成15年12月15日
理由
児童ポルノ公然陳列罪において不作為の態様による犯罪の成立を否定すべき理由はなく,前掲各証拠によれば,被告人は本件ホームページの開設・管理者としてアップロードされた児童ポルノ画像を削除する作為義務も作為可能性もあったことは明らかであり,にもかかわらずこれを削除しなかった被告人の刑責はアップロード者の刑責とは別に追及されるべきものであると考えられるから,アップロード者の刑責で児童ポルノ画像が公然陳列されたことによる法益侵害が評価し尽くされるとはいえないし,被告人が事後従犯になるものでもない。以上のとおりであるから,弁護人の主張はいずれも理由がない。

(2)東京高裁H16.6.23
 上記洋子浜地裁の事案について、東京高裁H16.6.23は、掲示板設置管理行為+認めつつ削除しなかった不作為をまとめて実行行為として、作為の正犯であると判断した。

東京高裁平成16年6月23日
2当裁判所の基本的な判断
(1)本件で問題とされているのは,児童ポルノの陳列であるが,陳列行為の対象となるのは,前記のような児童ポルノ画像が記憶・蔵置された状態の本件ディスクアレイであると解される。
(2)原審以来被告人の行為の作為・不作為性も問題とされているが,被告人の本罪に直接関係する行為は,本件掲示板を開設して,原判示のとおり,不特定多数の者に本件児童ポルノ画像を送信させて本件ディスクアレイに記憶・蔵置させながら,これを放置して公然陳列したことである。
 そして,本罪の犯罪行為は,厳密には,前記サーバーコンピュータによる本件ディスクアレイの陳列であって,その犯行場所も同所ということになる。したがって,この陳列行為が作為犯であることは明らかである。そして,原判示の被告人の管理運営行為は,この陳列行為を開始させてそれを継続させる行為に当たり,これも陳列行為の一部を構成する行為と解される。この行為の主要部分が作為犯であることも明らかである。確かに,被告人が,本件児童ポルノ画像を削除するなど陳列行為を終了させる行為に出なかった不作為も,陳列行為という犯罪行為の一環をなすものとして,その犯罪行為に含まれていると解されるが,それは,陳列行為を続けることのいわば裏返し的な行為をとらえたものにすぎないものと解される。
 なお,更に付言すると,被告人は,児童ポルノ画像を本件ディスクアレイに記憶・蔵置させてはいないが,前記のように,金銭的な利益提供をするなど,より強い程度のものではなかったとはいえ,本件掲示板を開設して前記のように前記送信を暗に慫慂・利用していたのである。この行為は,陳列行為そのものではないから,開設行為以外の点は原判決の犯罪事実にも記載されていないが,陳列行為の前段階をなす陳列行為と密接不可分な関係にある行為であるから,これも広くは陳列行為の一部をなすものと解される。そして,これが作為犯であることは明らかである。

 すなわち、児童ポルノ掲示板開設行為は、刑法上正犯と評価されるのであるから、そこには幇助の要素はない。児童ポルノ掲示板開設行為のどこをとっても正犯の実行行為の一部であって、幇助の要素は微塵もない。
 開設行為を訴因とするなら、正犯と構成しなければならないのである。それが判例である。
 この点において、検察官の訴因変更請求は主張自体失当であったというべきである。
 判例によれば掲示板設置行為は児童ポルノ公然陳列罪の実行の着手であって、投稿されて初めて既遂になるのであるから、開設行為のみでは陳列罪未遂(不可罰)に過ぎない。。
 正犯者を幇助として起訴しても無罪である。

追記
 営利・非営利を問わず、掲示板管理者は通常、公判請求されますが、報道によると、児童ポルノは被害児童自身が投稿しているらしいので、個人的法益部分は放棄されているとか、帰責性があるという主張が可能でしょう。
 なお、擬律が難しい(というか、誰もわからない)ので、正犯か幇助か、どの部分を起訴するかで、起訴状の記載は変わってきます。