児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化

 やっときたかという感じですが、「有害」の中身が問題です。
 

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080104AT3S2400H03012008.html
有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化
 民主党は18歳未満の若年者が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、インターネット上の違法・有害サイトの削除をプロバイダーなどに義務付ける法案の国会提出に向け、党内調整を始めた。自殺勧誘や、児童買春の温床とされる出会い系や児童ポルノなどに簡単にアクセスできないようにする狙い。与党との共同提出も視野に入れており、今月召集の通常国会での成立を目指す。
 検討中の法案では、サイト開設者やプロバイダーは違法情報を発見し次第、削除しなくてはならないと規定。違法かどうか明確でなくとも、有害な恐れがある場合は児童が閲覧できなくなるような措置を講じるよう義務付ける。罰則を設けることも視野に入れる。 (09:18)

 立法で削除義務の根拠と内容を決めてもらえば、不作為犯構成も楽なんですが、裁判所では幇助か正犯かでもめています。そこは公然陳列罪の正犯かという評価の問題なので、国会にはわからないでしょう。
 だとすると、立法としては、削除義務の根拠と内容+違法情報保管罪的な軽い罰則しか付けられないような気がします。場合によっては過失犯も定めるのかもしれません。
 立法の中身はわかりませんが、救いがたい違法・有害情報である児童ポルノ類の管理責任についての裁判所の見方が参考になるでしょう。管理者は最悪こういう処分になる。

  • 不作為による幇助の事例

名古屋地裁H18.1.16
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反
(罪となるべき事実)
被告人は,・・・が管理していた・・・に設置されたサーバーコンピュータに,不特定多数の者が児童ポルノ画像を送信することにより自動的にその画像が掲載されて,インターネットを利用する不特定多数の者において,これを受信して再生閲覧することが可能となる電子掲示板「ロリータなんでも」を開設し,これを管理しうる立場にあったものであるが,
第1 単独正犯
第2 
上記掲示板の開設者としてこれを管理し,違法画像が同掲示板に受信掲載されているのを発見した場合には,これを削除するなどして,これが不特定多数のインターネット利用者に閲覧等されるのを防止すべき義務があるのに,別紙一覧表2記載のとおり,らに、平成年月日ころから同年月日ころまでの間に,所在のほか3か所において,ABCDこもごも,衣服の全部または一部を着けない児童の姿態であって,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法によって描写した電磁的記録である児童ポルノ画像合計11画像を,上記電子掲示板に送信して記憶蔵置させ,不特定多数のインターネット利用者に対し,これらの画像の閲覧が可能な状況を設定し,もって,児童ポルノを不特定多数の者に公然陳列しようとした際,同掲示板にこれらの画像が受信掲載されていて,不特定多数のインターネット利用者が再生閲覧することが可能であることを知りながら,敢えてこれを放置し,もって,これを幇助した。

  • 不作為による幇助の事例

神戸簡裁H19.2.9
被告人は  ・・・ サーバーコンピュータに、不特定又は多数の者がわいせつ画像のデータを送信することにより自動的にこれが掲載され、不特定又は多数ののインターネット利用者においてこれを受信して再生閲覧できるで無料電子掲示板「」を開設しこれを管理していた者であるが、わいせつ画像が上記掲示板に受信掲載されているのを発見した場合には、これを削除するなどして、これが不特定のインターネット利用者に閲覧などされるのを防止すべき義務があるのに、Aが、ころからまでの間 において 携帯電話のインターネット機能を利用し 自己の性器等を露骨に撮影したわいせつ画像合計10画像の各データをそれぞれ順次上記掲示板に送信して上記サーバーのHDDに記憶蔵置させ、不特定多数のインターネット利用者が同画像を閲覧できる状況を設定し、これらを公然陳列した際、上記掲示板にこれらが送信掲載され、不特定又は多数の者が再生閲覧できることを知りながら、あえてこれを放置して、もって、Aがわいせつな図画を公然と陳列するのを幇助したものである。

  • 不作為による単独正犯

横浜地裁H15.12.15
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
(犯罪事実)被告人は,平成12年ころから,東京都渋谷区所在g株式会社が管理するサーバーコンピュータの記憶装置であるディスクアレイに「p掲示板」と称するインターネット上のホームページを開設し,○○県××番地又はその周辺等において管理運営するものであるが,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像を送信するかもしれないことを認識しながら,あえて,平成年月日ころから平成年月日ころまでコンピュータのディスクアレイに,別紙一覧表記載のとおり,前後22回にわたり,インターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者が送信した衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像合計22画像分を記憶・蔵置させたままこれらを削除せず,もって,上記児童ポルノをインターネットに接続したコンピュータを有する不特定多数の者に閲覧可能な状況を設定し,上記日時ころ,上記児童ポルノ画像データにアクセスしたAほか不特定多数の者に対し,上記画像データを送信して再生閲覧させ,児童ポルノを公然と陳列した。

↓この動きの延長なんでしょうね。

http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=12400
子どもたちを守る法改正に向けて インターネットホットラインセンターを視察
 民主党こども・男女共同参画調査会・総務部門・内閣部門は18日午後、子どもが安心してインターネットを利用できる環境の整備について検討することを目的に、財団法人インターネット協会「インターネットホットラインセンター」を視察。神本美恵子『次の内閣』ネクスト子ども・男女共同参画共同参画担当大臣、原口一博ネクス総務大臣松井孝治ネクス内閣府担当大臣をはじめ多くの議員が参加した。

 インターネットホットラインセンターは、近年、インターネット上における児童ポルノや規制薬物の広告等の違法情報や、犯罪その他の違法行為を引き起こす原因となるなど公共の安全や秩序に対する危険を生じさせる情報の流通が社会問題となっていることを背景に、インターネット上の違法・有害情報への対応を効果的かつ効率的に推進していくためには、広くインターネット利用者からの情報提供を受付け、情報選別が必要であるとして警察庁からの業務委託として設置されたもの。

 視察ではまず、担当者から(1)インターネットホットラインセンターの業務概要(2)違法・有害情報の実例――の説明を聴取。(1)については、インターネット利用者から違法・有害情報に関する情報提供を受付け、提供された情報を分析した結果、違法情報であれば警察庁へ通報、有害情報(公序良俗に反する情報)と判断すれば、プロバイダや電子掲示板の管理者等へ、契約に基づく対応依頼を行う等の内容が示された。(2)については、わいせつ物公然陳列、出会い系サイトでの様々な誘引、規制薬物の広告といった違法情報、復讐請負、自殺仲間の勧誘・誘引といった有害情報の具体例が紹介された。

 その後の現場視察では、1日平均250件の情報提供に対して職員7人が対応、現在作業している案件は緊急性の高いものを除き1週間前のものであるという実態を確認。情報提供のあったサイトの過激な画面と、違法、有害情報の通報文書作成画面と、2台のパソコンを前に作業を行う職員を目の当たりにした議員たちからは同情と感嘆の意が寄せられた。センター側からは、日々の業務での過激なサイト閲覧により女性職員にトラウマが生じる例を指摘、カウンセリングケアの必要性があるとの説明もなされた。

 現場視察後の質疑応答では、人員増員等の体制強化の必要性とともに、技術開発が急務であることを共通認識として確認。有害サイトの削除については、サイト開設者に作為義務があるか否かの判断が難しいことにも言及、プロバイダは基本的にはセンターの削除依頼に対して応じるものの、稀に応じない場合もあり、直接の発信者でないが故の対応の難しさも指摘した。そのうえで、民主党としては有害サイトから子どもたちをどう守るか、学校裏サイト援助交際サイト等から子どもたちを守るために法改正を行う方針を表明。センター、警察庁ともに賛同の意を示した。

 視察後の会見で松井ネクス内閣府担当相は、視察の主旨と実態を報告。高井美穂衆議院議員は、「児童が安全で安心してインターネットを利用できる環境整備に関する法律」として、2006年提出の「電気通信事業法の一部を改正する法律案(携帯電話有害サイト接続制限法案)」をさらにブラッシュアップした法案を検討中、来年の通常国会において提出する意向を明らかにした。内容については、電気通信事業者に対する有害サイト等を規制するフィルタリングサービスの促進に加えて、携帯電話やパソコンの有害サイトから子どもたちを守る観点から作成する方針であることを強調した。

 神本ネクスト子ども・男女共同参画共同参画担当相は子どもたちを蝕む様々な有害サイトを実際に閲覧したショックを述べたうえで、1年間約6万件の通報に対して違法情報については約86%、有害情報については約75%を削除している実態を指摘。「フィルタリングだけでは子どもを守れない」と強く訴え、子どもを守るために法案作成は急務であるとの認識を述べた。
 松井ネクス内閣府担当相は与党でも同主旨の法案が作成中であるとの意見に対して
「内閣法では時間がかかる」として、子どもたちを救済する意味においても緊急性が求められると主張、民主党としての議員立法作成の必要性を述べた