児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

単純所持罪について2条3項1~3号の法文を並べただけの児童ポルノ認定方法(大阪地裁R03.2.17)

 判示第1の2の製造罪では「同児童に,その陰茎等を露出させる姿態,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で直接触る姿態及びCが同児童の陰茎を口淫する姿態をとらせ,」とい具体的事実を記載しているのに、判示第3の所持罪では具体的記載がありません。理由不備です。
 控訴すれば控訴審未決が全部算入されるので、弁護人は、判決書をチェックして下さい。1審で指摘すると訴因変更で修正されてしまうので、黙っておくという選択もあります。
 

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
2条
3この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

判例番号】 L07650279
       未成年者誘拐,強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 大阪地方裁判所判決/令和2年(わ)第1136号、令和2年(わ)第1504号、令和2年(わ)第2305号
【判決日付】 令和3年2月17日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載
(罪となるべき事実)
第1 別紙記載のB(当時12歳)が13歳未満の児童であることを知りながら,分離前の相被告人Cと共謀の上,
 1 令和元年9月16日午後1時1分頃から同日午後1時6分頃までの間,大阪府東大阪市(以下略)において,同児童に対し,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で弄ぶなどした上,Cが同児童の陰茎を自己の口腔内に入れて口淫し,もって13歳未満の者に対し,口腔性交をし,
 2 前記日時場所において,同児童に,その陰茎等を露出させる姿態,被告人及びCが同児童の陰茎を手指で直接触る姿態及びCが同児童の陰茎を口淫する姿態をとらせ,それらの姿態を被告人がビデオカメラで動画撮影し,その動画データ1点を同ビデオカメラに装着したSDカードに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの,衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造し,
第2 別紙記載のA(当時11歳)が未成年者であることを知りながら,同人を誘拐しようと考え,Cと共謀の上,Cが,令和2年1月19日午後2時15分頃,大阪市鶴見区(以下略)D株式会社E3階F西側通路において,Aに対し,「メダル増やせるところあるから行く。」などと甘言を用いて誘惑し,同人の親権者に無断でAを同所から被告人が賃借している同市城東区(以下略)□□106号室に連れ去り,同日午後2時49分頃から同日午後3時48分頃までの間,Aを前記□□106号室に留め置いて被告人及びCの支配下に置き,もって未成年者を誘拐し,
第3 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年2月9日,大阪府寝屋川市(以下略)Gにおいて,児童による性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持した。

(法令の適用)
 被告人の判示第1の1(柱書を含む)の所為は刑法60条,177条後段に,判示第1の2(柱書を含む)の所為は刑法60条,児童ポルノ法7条4項,2項,2条3項1号,2号,3号に,判示第2の所為は刑法60条,224条に,判示第3の所為は包括して児童ポルノ法7条1項前段,2条3項1号,2号,3号にそれぞれ該当するところ,

令和和3年2月18日
    大阪地方裁判所第7刑事部
        裁判長裁判官  佐藤弘規
           裁判官  延廣丈嗣
           裁判官  中村暢明

 「同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像」とちゃんと具体的事実を摘示している裁判例もあります。

判例番号】 L07551235

       強制性交等,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 大阪地方裁判所判決/令和元年(わ)第3842号、令和2年(わ)第885号
【判決日付】 令和2年12月16日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

第3 Cが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市城東区(以下略)所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
  大阪地方裁判所第12刑事部
        裁判長裁判官  増田啓祐
           裁判官  中山 知
           裁判官  尾嶋翔一

香川県青少年保護育成条例の「猥せつ」につき、法文にない「単に自己の性的欲望を満たす目的で,」を要件としているかのような裁判例(高松地裁r02.8.6)

「第3の1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし」という認定ですが、条例は

( 淫 行 又 は 猥 せ つ 行 為 等 の 禁 止 )
第 16条
1何 人 も 、 青 少 年 に 対 し 、 淫 行 又 は 猥 せ つ の 行 為 を し て は な ら な い 。

という法文なので、「単に自己の性的欲望を満たす目的」は明文にはありません。
 別件の高松高裁R03.3.2(上告中)では必ずしも不要とされています。
 最大判S60.10.23(福岡県青少年条例)に従えば必要説、最大判h29.11.29(強制わいせつ罪)に従えば不要説となるので難しいところです。

判例番号】 L07550667
       香川県青少年保護育成条例違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

【事件番号】 高松地方裁判所判決/令和2年(わ)第108号、令和2年(わ)第135号
【判決日付】 令和2年8月6日
【掲載誌】  LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
       理   由

(罪となるべき事実)
第1(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第1及び第2)
   被告人は,■■■(当時14歳。以下「A」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年7月13日午後2時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,高松市(以下略)被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Aに対し,その陰部を触り,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をし
 2 同日午後3時10分頃から同日午後3時32分頃までの間,同所において,Aに被告人の陰茎を口淫させる姿態,被告人がAの陰部を手指で触る姿態並びにAの乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ4点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
第2(令和2年4月3日付け起訴状記載の公訴事実第3)
   被告人は,■■■(当時13歳。以下「B」という。)が18歳に満たない青少年であることを知りながら,単に自己の性的欲望を満たす目的で,別表記載のとおり,令和元年12月27日午前10時頃から令和2年1月19日午後6時頃までの間に,3回にわたり,前記被告人方において,Bに対し,その乳首及び陰部を舐め,自己の陰茎を口淫させるなどし,もって青少年に対し,淫行及び猥せつの行為をした。
第3(令和2年4月24日付け起訴状記載の公訴事実第1ないし第3)
   被告人は,■■■(当時15歳。以下「C」という。)が18歳に満たない青少年ないし児童であることを知りながら
 1 令和元年11月22日午後4時19分頃から同日午後6時33分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首を舐めるなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 2 令和2年2月8日午後3時4分頃から同日午後6時10分頃までの間,前記被告人方において,単に自己の性的欲望を満たす目的で,Cに対し,その乳首や陰部を舐め,同人の膣内に性的玩具を挿入するなどし,もって青少年に対し,猥せつの行為をし
 3 同日午後5時2分頃から同日午後5時15分頃までの間に,同所において,Cにその乳房及び陰部を露出させる姿態並びに被告人がCの膣内に性的玩具を挿入する姿態をとらせ,これをスマートフォンで撮影し,その動画データ3点を同スマートフォンの内蔵記録装置に記録・保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを,視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。
(証拠の標目)
(法令の適用)
罰条
 判示第1の1,第2の別表番号1ないし3,第3の1及び2の各所為
        いずれも香川県青少年保護育成条例22条,16条1項
 判示第1の2,第3の3の各所為
        いずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項(判示第1の2につき,同法2条3項1号ないし3号,判示第3の3につき,同法2条3項1号及び3号)
刑種の選択   いずれも懲役刑選択
併合罪の処理  刑法45条前段,47条本文,10条(罪及び犯情の最も重い判示第1の2の罪の刑に法定の加重)
刑の執行猶予  刑法25条1項
保護観察    刑法25条の2第1項前段
(量刑の理由)
(求刑 懲役1年8月)
  令和2年8月6日
    高松地方裁判所刑事部
           裁判官  高橋貞幹

児童ポルノ単純所持罪の逮捕事例

 児童ポルノ単純所持罪については、それだけでは逮捕されません。
 相変わらず、「単純所持・逮捕」で煽る弁護士サイトがあって、ホントですかという相談も多いので、報道ベースでの単純所持罪の逮捕事例を載せておきます。

 逮捕されているのは、他の事件がある場合だけです。
 他の罪に小児性愛傾向とかの立証に使われているようです。
 単純所持罪って児童ポルノを押収してから立件するので、別件の逮捕勾留があるのなら、単純所持罪(7条1項)で逮捕勾留する必要は乏しいとも言えそうです。

 

2017/2/18 愛媛新聞 児童ポルノ所持 会社員を追起訴 地検支部
2017.02.18 愛媛新聞
 地検支部は16年12月、市の書店で2回にわたり、女性のスカートの下に盗撮目的でビデオカメラを差し入れたとしてA被告を地裁支部に起訴。署は1月、県内で初めて児童ポルノの単純所持容疑でA被告を逮捕していた。
2018/2/1 読売新聞 児童ポルノ所持容疑 元臨時職員再逮捕 署=和歌山
 2018.02.01読売新聞
 市で昨年12月、下校中の女子児童が顔にスプレーを吹きつけられてけがをした事件で、傷害容疑で逮捕された元同市臨時職員の容疑者について、署は1月31日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で再逮捕した。容疑を認めている。
2018/2/9 読売新聞 児童ポルノ所持 容疑で保育士逮捕=千葉
2018.02.09 読売新聞
 署が市内の民間保育所に勤務する保育士を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕していたことが8日、捜査関係者への取材でわかった。逮捕は5日付。
 同署によると、容疑者は児童のわいせつ画像を所持していた疑い。

児童ポルノ製造で保育士に有罪判決 地裁松戸支部
2018.05.25 千葉日報
2018/3/3 読売新聞 海保職員を停職処分=宮城
2018.03.03 読売新聞
 第2管区海上保安本部は2日、18歳未満の子供の性的な動画を所持していたとして昨年11月に児童買春・児童ポルノ禁止法違反(単純所持)容疑で逮捕され、罰金刑を受けた宮城海上保安部の2等海上保安正の男性を停職2か月の懲戒処分にした。
 同本部の発表によると、2等海上保安正は他にも、銃刀法で禁じられた模造拳銃を1丁所し、2016年9月~17年11月にはインターネット上でエアガンを営利目的で売買し、兼業していた。
2021/1/9 産経新聞 児童ポルノ所持で再逮捕 容疑のホスト、PCに写真数千枚
2021.01.09 産経新聞
 女性客から現金を詐取しようとしたとして、詐欺未遂容疑で逮捕された新宿区歌舞伎町のホストの男が、児童のわいせつな動画を入手して保管していた疑いが強まったとして、警視庁が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで再逮捕していたことが8日、捜査関係者への取材で分かった。男のパソコンには同様の写真が数千枚、保管されており警視庁は裏付けを進める。
2021/1/21 読売新聞 強制わいせつなど容疑=秋田
2021.01.21 読売新聞
 能代署は20日、被告を強制わいせつと児童買春・児童ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで再逮捕した。被告は昨年11月26日、小学生の女子児童の体を触ったとして強制わいせつ容疑で逮捕、起訴されている。
 発表によると、容疑者は2015年8月中旬、県北部の住宅で別の女子児童の体を触ってわいせつな行為をしたほか、その様子を撮影したDVDを昨年11月下旬に自宅で所持していた疑い。
2021/3/9 産経新聞 児童ポルノ動画所持容疑、中学校講師を逮捕
2021.03.09 産経新聞
 逮捕容疑は、1月20日、18歳未満が映った児童ポルノ動画5本を保存したスマートフォンを、自宅で所持していたとしている。
 同容疑者は、市内の路上で道を尋ねるふりをして女児(9)の体を触ったとして今年2月に強制わいせつ容疑で逮捕されたが、「わいせつな行為はしていない」と否認。3月1日に府迷惑防止条例違反罪(痴漢行為)で起訴された。
2021/6/11 茨城新聞 児童ポルノ所持容疑で男再逮捕
2021.06.11 茨城新聞
 署は10日、児童買春・ポルノ禁止法違反(所持)の疑いで、容疑者=窃盗罪などで起訴=を再逮捕した。

撮影送信させる型強制わいせつ罪と、わいせつ行為とされた範囲

こんな東京高裁があるので、撮影させるまでが強制わいせつ罪とされます。

東京高裁h28.2.19
すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。

 

 

東京 地裁   H18.3.24 撮影送信させ受信して
大分 地裁   H23.5.11 撮影送信させ
東京 地裁   H27.12.15 撮影送信させ
高松 地裁   H28.6.2 撮影送信させ
横浜 地裁   H28.11.10 撮影送信させ
松山 地裁 西条 H29.1.16 撮影送信させ
高松 地裁 丸亀 H29.5.2 撮影させ
岡山 地裁   H29.7.25 撮影させ送信させ
札幌 地裁   H29.8.15 撮影させ
札幌 地裁   H30.3.8 撮影させ
東京 地裁   H31.1.31 撮影させ
長崎 地裁   R1.9.17 送信させ
高松 地裁 丸亀 R2.9.18 撮影させ
京都 地裁   R3.1.21 撮影させ
熊本 地裁   R3.1.13 撮影させ
京都 地裁   R3.2.3 撮影させ
大阪 高裁   R3.7.14 撮影させ
京都 地裁   R3.7.28 撮影させ

女子高生TikToker(tiktok TikTok チックトック チックトッカー)の動画をダウンロードとか販売した人の対応 AiiPeep(アイイピープ)とか動画シェアとか、パンコレとか、アルバムコレクション等も

五月雨式に相談がくるので、まとめておきます

1 ダウンロード者

児童ポルノ単純所持罪が検討される。

7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する

 完全削除(できれば物理的破壊)で、刑事責任は回避できる。この罪だけでは逮捕はない。

 捜索を受けた時に備えて、
  ①間違ってダウンロードした場合は、「自己の性的好奇心を満たす目的」に欠けるという弁解
  ②ダウンロード元の情報として、児童(「15歳」とか「17歳」とか)と表示されていない場合には、「児童と知らなかった」という弁解
を用意しておく。弁護士に相談して、最寄り警察に相談しておけば捜索の危険はかなり下がる。

 被害者対応は、警察相談と併行して。
 あちらからの流出経緯・こちらの入手状況・児童性の認識の程度によっては、不法行為責任は小さくなる可能性。
 撮影した者は製造罪になる。出演児童も共犯になりうるという裁判例もある。

リベンジポルノ罪については、普通、画像上はわからないので、そう弁解する。

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律
(定義)
第二条 この法律において「私事性的画像記録」とは、次の各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像(撮影の対象とされた者(以下「撮影対象者」という。)において、撮影をした者、撮影対象者及び撮影対象者から提供を受けた者以外の者(次条第一項において「第三者」という。)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影をしたものを除く。次項において同じ。)に係る電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。同項において同じ。)その他の記録をいう。
一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
二 他人が人の性器等(性器、肛こう門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
三 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀でん部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
2 この法律において「私事性的画像記録物」とは、写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、前項各号のいずれかに掲げる人の姿態が撮影された画像を記録したものをいう。
(私事性的画像記録提供等)
第三条 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定又は多数の者に提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 前項の方法で、私事性的画像記録物を不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者も、同項と同様とする。
3 前二項の行為をさせる目的で、電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し、又は私事性的画像記録物を提供した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
4 前三項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
5 第一項から第三項までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

 捜索はあるかないかわからないし、破棄してあれば捜索は空振りに終わるので、捜索を甘受するという選択肢もあるという説明をします。
 どうしても、捜索を回避したい(士業・医師・歯科医・教授・教員・就職活動中の学生等)の場合には、弁護士が対応します。
 弁護士費用としては
  相談料は22000円(確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
  対応する場合の費用は、220000円程度(士業・教員・公務員は330000円 他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合、報酬金はなし。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。
 県警によっては、「捜索差押しない・刑事処分ない」という回答をもらえることがある。


2 販売者・アップロード者
 わいせつ電磁的記録頒布罪・公然陳列罪
 児童ポルノ提供罪・公然陳列罪・提供目的製造罪
 リベンジポルノ公表罪
などが検討されるので、弁護士に相談して、逮捕を回避したい。

7条
6児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
7前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。

 弁護士費用は、逮捕危険があるので、応相談としています。分割払は可能。
 中心的な弁護士費用としては
  相談料は22000円
  対応する場合の費用は、
   着手金330000円程度(他に出張日当55000円+交通費 被害者対応をしない場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
   報酬金220000円程度(逮捕されなかった場合。確実に支払って頂けるのであれば長期分割可能)
と回答しています。


追記2021/08/27
 ダウンロード・購入者の捜索回避の警察相談は各地に数件かかりました。
 いずれはどこかの警察(被害者の住所など)に集中するんじゃないでしょうか。

追記2021/09/17
 児童ポルノ製造罪・提供罪・単純所持罪について捜査している警察(A都道府県警察のB警察署)は判明し、連絡が取れました。
 購入者は地元警察・B警察署へ相談。
 販売者は、B警察署へ。(B警察署名は教えられません。例えば大阪市西天満に済む花子さん(17歳)が、「はなちゃん」という芸名で活動していて、その裸体画像が流出した場合に、「はなちゃんさんが天満警察署に相談した」と公表してしまうと、はなちゃんの児童ポルノであること・天満警察管内に住所があることがバレてしまい、被害者が特定されてしまうからです。)


 所持罪の捜索があったという知恵袋の書き込みがありましたが削除されました。 
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12249473407
推知報道禁止と思われます。

 第一三条(記事等の掲載等の禁止)
 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌ぼう等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

追記 2022/01/01
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたので、
埼玉県警からの情報提供を受けて各地の警察が捜査しているものと思います(全国協働方式)

追記 2022/03/31
AiiPeepの購入者については、
埼玉県警以外の警察による捜索が複数観測されましたが、
破棄して警察相談した人は捜索は受けず
捜索を受けて現認された人は、ほぼ罰金という処理になっています。

医師の診療の際の強制わいせつ事件について、1審で示談して100万円弁償したのに加えて、さらに1000万円支払い宥恕を得て、2項破棄で執行猶予にした事例(高松高等裁判所r03.2.18)

 医師免許についての記載がありません。
 医道審議会にかかるかな。

       判   決
 上記の者に対する強制わいせつ被告事件について,令和2年10月6日高知地方裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官岡本安弘及び弁護人谷脇和仁(私選)出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
原判決を破棄する。
被告人を懲役年月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。


       理   由

 本件控訴の趣意は,量刑不当の主張であり,刑の執行を猶予すべきであるというのである。
 本件は,精神科の医師である被告人が,患者である被害者(当時28歳)を診察していた際,同人に強いてわいせつな行為をしようと考え,病院の診察室において,同人の両肩付近を両手で押さえ,その両頬や唇にキスをしたという事案である。
 原判決は,本件犯行は,不眠を訴えて精神科の治療を受けている被害者に悪影響を与えかねない悪質なものである上,精神科医として豊富な経験を有する被告人にはこれが容易に想起できるにもかかわらず,後先を考えずに本件犯行に及んだものであって,医師としての良識を甚だ欠いた点でも悪質であること,被害者は,本件犯行により大きな精神的打撃を受け,本件を一つの要因としてPTSDを発症し,精神的苦痛に苛まれていて,被告人の厳重処罰を求めていることを指摘し,被告人が賠償金として100万円を被害者に支払い,被害者の生活圏に接近しないことなどを約束して示談が成立してはいるものの,被害者の精神的打撃に照らすと慰謝の措置が十分とはいえないことも指摘した上で,被告人に前科前歴がないことや,被告人なりに反省の態度を示していることなどを考慮しても,実刑は免れないとし,被告人を懲役1年に処した。
 原判決の量刑事情の認定及び評価は概ね相当ではあるものの,本件のわいせつ行為の程度や被害者と示談が成立したことなどからすれば,原判決の量刑は,同種事案の量刑傾向の中では重い部類に属するとはいえる。しかし,医師である被告人が診察中に患者である被害者にわいせつ行為をしたという本件事案の特殊性に照らすと,被告人の行為責任は重いとみた原判決の量刑が重過ぎて不当であるとまではいえない。
 所論は,本件犯行態様は,被害者の両頬や唇にキスをしたというものであり,わいせつ行為の程度は相対的に軽微であると主張する。しかし,被告人が,精神科医でありながら,精神的な不調を訴えて受診している被害者に与えた悪影響の大きさなどに照らせば,所論の指摘を踏まえても,被告人に対する非難の程度は高いとした原判決の量刑判断が重過ぎて不当であるとまではいえない。
 所論は,被告人と被害者との間で示談が成立し,賠償金が支払われていることを重視すべきであると主張する。しかし,被害者の精神的被害が大きく,処罰感情も厳しいことに照らせば,示談が成立したことなどを過大に評価するのは相当でないとした原判決の量刑判断が誤っているとまではいえない。
 もっとも,原判決後,被告人が被害者に対して,賠償金として支払済みの100万円に加え,更に1000万円を支払い,被害者が被告人を許すことなどを内容とする示談が新たに成立したこと,被告人が反省を深め,贖罪のために生活困窮者の居住支援等を行う法人に土地建物を寄付したことなどが認められる。これらの事情に加えて,同種事案の量刑傾向や前記の被告人のために酌むべき事情を併せ考慮すると、被告人に対しては,直ちに実刑に処するのではなく,社会内で更生する機会を与えることが相当になったといえる。
 そこで,刑訴法397条2項により原判決を破棄し,同法400条ただし書を適用して,被告事件について更に次のとおり判決する。 
 原判決の認定した罪となるべき事実に原判決挙示の法令を適用し,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,情状により刑法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとして主文のとおり判決する。
令和3年2月18日
高松高等裁判所第1部
裁判長裁判官 杉山愼治 裁判官 安達拓 裁判官 井草健太

第2記載の画像データ等を所持していることを利用して、Bに新たに陰部等が撮影された画像データを自己の携帯電話機に送信させようと考え脅迫して 新たな画像データの送付を要求したという強要未遂事件(山形地裁R030512)


 強制わいせつ未遂もあり得るところですが、未遂なので、性的意味合いとかその程度がわかりませんね。強要未遂罪との境界線事例では、強要未遂に落ちちゃいますね。

令和3年5月12日/山形地方裁判所刑事部/判決

判例ID 28292002
事件名 わいせつ誘拐(変更後の罪名わいせつ略取誘拐)、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件
D1-Law.com判例体系

 上記の者に対するわいせつ誘拐(変更後の罪名わいせつ略取誘拐)、強制性交等未遂、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反、強要未遂被告事件について、当裁判所は、検察官沖佑里乃及び主任弁護人菅原睦月(私選)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、

第2 ●●●(当時13歳。以下「B」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、同年8月5日午後零時2分頃から同日午後零時33分頃までの間、●●●のB方において、Bにその陰部、肛門及び乳房を露出させた姿態をとらせ、これをBが使用する携帯電話機で静止画像として撮影させた上、その頃、同画像データ4点を同携帯電話機からアプリケーションソフト「D」を使用して被告人が使用する携帯電話機に送信させ、その頃、宮城県内において、同画像データ4点を同携帯電話機で受信して同携帯電話機の内蔵記録装置に記録させて保存し、もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造した。

第3 第2記載の画像データ等を所持していることを利用して、Bに新たに陰部等が撮影された画像データを自己の携帯電話機に送信させようと考え、同日午後零時34分頃から同月14日午後3時3分頃までの間、宮城県内又はその周辺において、Bに対し、自己の携帯電話機から前記「D」を使用して、Bが利用する携帯電話機に「まんこもっと見たいです」、「のせてい?」、「いんたーねっつ」、「えーじゃもうのせちゃうね?」、「顔つきならいいよ」、「反応ないなら載せるね」、「番号付きで載せるね」、「広めるね」などのメッセージを送信して新たな画像データの送付を要求し、その頃、Bにこれらを閲覧させ、その要求に応じなければ被告人が所持する前記第2記載の画像データ等をインターネット上に拡散するなどしてBの名誉に対し害を加えかねない旨告知してBを脅迫し、Bに義務のないことを行わせようとしたが、Bがその要求に応じなかったため、その目的を遂げなかった。
(求刑 懲役5年)
刑事部
 (裁判長裁判官 今井理 裁判官 土倉健太 裁判官 佐藤元

監護者わいせつ罪と4項製造罪を観念的競合にした事例(千葉地裁R03.5.28)

 sexting事例では「撮影させ」までがわいせつ行為だとする東京高裁判例がありますので、「その陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もってAを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、同人に対し、わいせつな行為をするとともに」のうちの「その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、」はわいせつ行為ではないことになるのでは。

千葉地方裁判所令和03年05月28日
 上記の者に対する監護者性交等、監護者わいせつ、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について、当裁判所は、検察官竹生田哲郎及び国選弁護人宇藤和彦各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、平成18年12月22日に養子縁組した●●●A●●●と、遅くともその頃から令和元年5月10日頃までの間、同居してその寝食の世話をし、その指導・監督をするなどして、同人を現に監護していた者であるが、
第1の1 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交等をしようと考え、平成29年8月27日午後9時36分頃から同日午後9時53分頃までの間、●●●当時の被告人方●●●において、A(当時15歳)と口腔性交及び性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交等をし、
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、前記日時場所において、同人に、被告人と性交する姿態及びその陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ104点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第2の1 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交をしようと考え、令和元年5月5日午後零時58分頃から同日午後1時9分頃までの間、被告人方において、A(当時16歳)と性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交をし、
 2 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同日午後零時36分頃から同日午後1時13分頃までの間、被告人方において、Aに、被告人と性交する姿態及びその陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ113点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もって児童を相手方とする性交に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを、いずれも視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら、同人にわいせつな行為をしようと考え、同月9日午後6時23分頃から同日午後6時26分頃までの間、●●●橋において、A(当時16歳)に、その陰部等を露出する姿態をとらせ、その姿態を、携帯電話機のカメラ機能を用いて撮影し、その画像データ15点を同携帯電話機に内蔵又は接続された電磁的記録媒体に記録して保存し、もってAを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、同人に対し、わいせつな行為をするとともに、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造し、
第4 Aが18歳未満の者であることを知りながら、同人と性交等をしようと考え、同日午後6時36分頃から同日午後8時26分頃までの間に、●●●に駐車中の自動車内において、同人(当時16歳)と口腔性交及び性交をし、もって同人を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて同人と性交等をした。
(証拠の標目)
(事実認定の補足説明)
 1 本件の争点
 被告人は、判示第1の1記載の行為の日時に関する点を除き、判示各事実に係る性交等、わいせつ行為及び児童ポルノに当たる写真の撮影行為自体を行ったことは認めている。しかし、被告人は、〈1〉判示第2の1記載の性交及び判示第4記載の性交等は、いずれもAの方から誘われて行ったものであり、判示第3記載のわいせつ行為の内容をなす撮影行為は、Aが自らスカートをまくるなどしたために行ったもので、これらをはじめとして本件各監護者性交等(判示第1の1、第2の1及び第4)並びに監護者わいせつ(判示第3)の各事実については、いずれも「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」行ってはいない旨述べる。また、〈2〉本件各児童ポルノ製造罪(判示第1の2、第2の2及び第3)についても、写真を撮る際にAに対してポーズをとるように指示したことはなく、Aに「姿態をとらせ」てはいないと供述する。
 そして、弁護人においても、上記被告人の供述に依拠し、〈1〉については、Aは、被告人と性交等やわいせつな行為をすることについて自ら望んでおり、少なくともAの性的自己決定権に反しないものであるから、「監護者の影響力があることに乗じて」行われたとは認められないとし、〈2〉については、被告人がAに指示して当該姿態をとるように強制したものではないから、「姿態をとらせ」には当たらないとして、被告人はいずれの犯行についても無罪であると主張する。
 2 争点〈1〉について
 (1) 刑法179条の法意及び解釈
 しかし、刑法179条が定める監護者性交等罪及び監護者わいせつ罪は、18歳未満の者は、精神的に未熟である上、生活全般にわたって自己を監督し保護している監護者に精神的・経済的に依存しているところ、監護者が、そのような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる監護者であることによる影響力があることに乗じて、18歳未満の者に対し、わいせつな行為や性交等をすることは、強制性交等罪等と同じく、これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであることから、このような行為類型については、暴行・脅迫が用いられず、また、抗拒不能等に当たらないとしても、強制わいせつ罪、強制性交等罪等と同等の悪質性・当罰性が認められるとして設けられた犯罪類型である。したがって、ここにいう「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」とは、監護者の影響力が一般的に存在し、かつ、当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で性交等又はわいせつな行為をしたと認められれば足りるのであって、具体的な性交等又はわいせつな行為が、監護者の影響力と無関係に行われたと認められるような特別な事情がある場合のみが除かれる、というべきである。そして、性交等やわいせつな行為に及ぶ特定の場面において、監護者の影響力を利用するための具体的な行為を行う必要がないのはもちろん、18歳未満の者が監護者との性交等やわいせつな行為に応じるなど、その承諾があったとしても、さらには監護者との性交等やわいせつな行為を自ら求めたような場合であっても、その意思決定は、精神的に未熟で判断能力に乏しい18歳未満の者に対して、前記のような監護者の影響力が作用してなされたものとみるべきであって、被監護者の自由な意思決定ということはできないから、およそ監護者性交等罪や監護者わいせつ罪の成否を左右するものではないと解される。
 (2) 認定事実と評価
 ア 関係証拠によれば、被告人は、平成18年11月にAの実母と婚姻し、同年12月に当時4歳であったAとも養子縁組を行ってAの養父となったこと、そして、被告人は、遅くともその頃からAが警察に被害申告をした令和元年5月10日頃までの間、自宅でAと同居し、稼働した収入でAを含む家族の生計を支え、Aを学校に通わせ、その生活態度を注意するなどしてAを養育、監督、保護していたこと、このような関係下で、被告人は、Aと判示第1の1、第2の1及び第4各記載の性交等に及び、また、判示第3記載のわいせつな行為をしたものであることが明らかである。
 被告人は、上記性交等やわいせつ行為の時点において、法律上も事実上もAを「現に監護する者」であったことに加えて、当時まだ15歳から16歳であったAが幼少期から文字どおり生活全般を全面的に依存してきた存在であったのであり、このような被告人が、Aの意思決定に対し、物心両面から一般的かつ継続的に作用を及ぼし得る力を有していたことは明らかであり、Aが精神面で年齢相応の成長を遂げていたとしても、このような影響力の程度はなお圧倒的なものといってよいものであったと認められる。
 イ してみると、被告人が述べ、弁護人が主張するような事情が仮に認められるとしても、そこでAがとったとされる言動や態度自体が、上述のような監護者としての被告人の影響力が作用して導かれたものにほかならないというべきである。よって、前示のような監護者性交等罪や監護者わいせつ罪の法意との関係でその成立を妨げるような事情と評価することはできず、また、そこに法益主体の自律的な意思決定を観念すべきでない以上、犯情としても有意なものと評価すべきではなく、主張自体が失当に帰する。他に上記性交等やわいせつ行為について監護者としての影響力が遮断されていたと評すべき特段の事情も見当たらない。したがって、被告人がAに対してした上記性交等やわいせつの各行為は、「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」敢行されたものとして、各判示のとおりの監護者性交等罪又は監護者わいせつ罪を構成することに疑いはない。
 ウ なお、被告人は、判示第1の1記載の犯行について行為の日時を争うが、当該行為を撮影した画像データの撮影日時に関する情報等に照らせば、判示第1の1記載の日時に行われたものと認定でき、これに疑いを入れるべき事情は見当たらない。
 3 争点〈2〉について
 (1) 次に、いわゆる児童ポルノ製造の罪における「(児童に)姿態をとらせ」とは、行為者の言動等により当該児童が当該姿態をとるに至ったことで足り、それ以上に強制や具体的又は明示的な指示等の働きかけを要するものではない。
 (2) これを本件についてみると、判示第1の2及び第2の2記載の各児童ポルノ画像は、同第1の1及び第2の1の各監護者性交等に係る被告人がAと性交等を行っている様子やその前後にAが陰部等を露出している様子などをAの面前で撮影したものであり、また、判示第3記載の児童ポルノ画像も、Aが歩道橋の階段部分に座って陰部等を露出している姿態に被告人が携帯電話機のカメラを向けて撮影したことそのものが、同様に監護者わいせつ行為を構成するものである。すなわち、本件各児童ポルノ画像におけるAの姿態は、いずれも被告人がAに対して敢行した監護者性交等や監護者わいせつの各行為及びその機会に、Aがとった姿態にほかならない。そうである以上、そのこと自体において、被告人が児童であるAに前記(1)の意味で「姿態をとらせ」たものであることは自明である(なお、この評価は、監護者としての影響力に乗じたという側面からも導き得るが、それ以前に、被告人がAに対してした各性交等やわいせつな行為を撮影したということ自体に包含される当然の帰結というべきものである。)。
 したがって、各判示の児童ポルノ製造の事実に疑いを入れる余地はなく、強制や明示的な指示の存在を否定することによって、姿態をとらせたことを争う被告人及び弁護人の主張は、ここでも失当である。
 4 補足
 判示各事実の認定に必要な証拠説明は、以上に尽きるが、後述の量刑判断における犯情事実の認定・評価の前提となるため、A及び被告人の各公判供述の信用性について触れておく。
(法令の適用)
 罰条
  判示第1の1、第2の1及び第4の各所為
  いずれも刑法179条2項、177条前段
  判示第1の2及び第2の2の各所為
  いずれもそれぞれ包括して児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)7条4項、2項、2条3項1号、3号
  判示第3の所為
  監護者わいせつの点につき刑法179条1項、176条前段、児童ポルノ製造の点につき包括して児童買春法7条4項、2項、2条3項3号
 科刑上一罪の処理
  判示第3について 刑法54条1項前段、10条(重い監護者わいせつ罪の刑で処断)
 刑種の選択
  判示第1の2及び第2の2の各罪について いずれも所定刑中懲役刑を選択
 併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
刑事第5部
 (裁判長裁判官 前田巌 裁判官 安重育巧美 裁判官 井上寛基)

かすがい現象により女児2名に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交を科刑上一罪とした事例(岐阜地裁r030416)

 かすがい現象

裁判年月日 令和 3年 4月16日 裁判所名 岐阜地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(わ)527号
事件名 わいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件
文献番号 2021WLJPCA04166002

 上記の者に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等被告事件について,当裁判所は,検察官髙橋葵,弁護人(私選,主任)庄司友哉各出席の上審理し,次のとおり判決する。 
主文
 被告人を懲役11年に処する。
 未決勾留日数中110日をその刑に算入する。
 
 
理由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,通行中のA(当時10歳●●●)及びB(当時10歳●●●)がいずれも13歳未満であることを知りながら,同人らと強制的に性交等をしようと考え,令和2年4月27日午後2時35分頃,岐阜県内において,同人らに対し,手に持った折りたたみナイフの刃を出して示し,「殺されたくなければこっちに来い。」「言うことを聞いてくれたらけがも何もない。」などと言って脅迫し,同人らを同所から約121メートル先の山林内の空き地に連行し,同所において,同人らの片手にそれぞれ手錠の片輪を掛けて互いを結束させるなどの暴行を加え,不法に逮捕するとともに,同人らを自己の支配下に置き,もってわいせつ目的で前記A及び前記Bを略取し,その頃から同日午後5時頃までの間,同所において,同人らの反抗を抑圧した上,着衣等を脱がせて全裸にさせ,順次,同人らの胸及び陰部を手で触り,なめるなどし,自己の陰茎を前記A及び前記Bの陰部に押しつけて挿入しようとするも,同人らの性器が未発達ゆえに性交するには至らず,同人らの口の中にそれぞれ自己の陰茎を挿入し,同人らと口腔性交した。
 【法令の適用】
 罰条 AとBに対する各逮捕の点はいずれも刑法220条,各わいせつ略取の点はいずれも同法225条,各強制性交等の点はいずれも同法177条
 科刑上1罪の処理 刑法54条1項前段,後段,10条(Aに対する逮捕とわいせつ略取,Bに対する逮捕とわいせつ略取,AとBに対する各逮捕,AとBに対する各わいせつ略取は1個の行為が2個の罪名に触れる。AとBに対する各逮捕・わいせつ略取と強制性交等の間には手段結果の関係がある。結局以上を1罪として刑及び犯情の最も重いA又はBに対する強制性交等罪[AとBに対する各同罪の犯情に軽重はない]の刑で処断)
 未決勾留日数の算入 刑法21条
 【量刑の理由】
 女児2名(いずれも当時10歳)に対するわいせつ略取,逮捕,強制性交等である。公園で遊んでいた女児2名に対し,折りたたみナイフの刃を出して示すなどして脅し,人気のない空き地に連行して手錠をかけるなどし,略取,逮捕して行動の自由を奪った。そして,同人らを全裸にし,胸や陰部を触ったりなめたりした上,陰茎を陰部に押し付けて性交しようとしたが性交に至らず,口腔性交して陰部付近に精液をかけるなどした。2時間余にわたり,執ように種々性的暴行を加えた。さらに,被害状況を動画撮影し,犯行後他言したらネットに上げるなどと言って口止めした。誠に凶悪,卑劣な犯行である。性的自由侵害の程度は極めて強い。幼い女児に被らせた身体的・精神的苦痛は計り知れず,将来にわたる悪影響も懸念される。被害弁償や慰謝の措置は講じられていない。自己の性欲を満たすためにした誠に身勝手な犯行というほかない。あらかじめ折りたたみナイフ,手錠等を用意し,現場を下見し,標的とする女児を物色するなどして計画的に敢行した。厳しい非難が向けられるべきである。
。。。
本件の犯情は極めて悪く,強制性交等の事例の中で最も重い部類に位置付けられる。
 (求刑 懲役14年)
 岐阜地方裁判所刑事部
 (裁判長裁判官 出口博章 裁判官 堀田喜公衣 裁判官 金子隼人)

成人女性と共に青少年と淫行した青少年条例違反事案・児童が成人女性の乳首をなめる姿態を2号ポルノとした事例(宇都宮地裁R03.3.31)

成人女性と共に青少年と淫行した青少年条例違反事案・児童が成人女性の乳首をなめる姿態を2号ポルノとした事例(宇都宮地裁R03.3.31)
 「児童」と「青少年」の定義は違うので、「C(以下「C」という。)(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,」という年齢認識では青少年条例違反の故意としては足りません。

裁判年月日 令和 3年 3月31日 裁判所名 宇都宮地裁 裁判区分 判決
事件名 栃木県青少年健全育成条例違反、児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号 2021WLJPCA03316002


第3 C(以下「C」という。)(当時13歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,
1平成30年6月3日午前10時20分頃から同日午後1時7分頃までの間,宇都宮市〈以下省略〉bホテル(以下「bホテル」という。)212号室において,単に自己の性的欲望を満たすために,情を知らないD(以下「成人女性」という。)(当時26歳)と共にCと性交するなどし,もって青少年に対し,いん行をした。
2前記第3の1記載の日時場所において,Cに,被告人の陰茎を口淫する姿態,被告人がCの陰部を手淫する姿態,成人女性の乳首をなめる姿態をとらせ,これを被告人が使用する動画撮影機能付きスマートフォンで撮影し,平成30年6月9日頃,a町の被告人方において,その動画データ3点を電磁的記録媒体であるマイクロSDカードに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。


法令適用
第3の2の行為 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号,2号

13歳未満に触って撮った場合は強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪の併合罪になって、メール等で頼んで裸画像を撮影させた場合は、観念的競合になる (大阪高裁R03.7.14)

 13歳未満に触って撮った場合は強制わいせつ罪(176条後段)と製造罪の併合罪になって、メール等で頼んで裸画像を撮影させた場合は、観念的競合になる(大阪高裁R03.7.14)
 観念的競合になる場合があるようですね。
 「一個の行為とは、法的評価を離れ、構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で、行為者の動態が社会的見解上一個のものと評価される場合をいう。(最大判昭49・5・29刑集二八━四━一一四)」という判例に従って、構成要件的観点を捨象した自然的観察の下で2個の行為になるというと、触って撮るという強制わいせつ罪(176条後段)も2個になっちゃいますよね。
 執行刑期は求刑の半分になりました。
 強制わいせつ罪(176条後段)で起訴されたのは「撮影させ」させまでで「わいせつ」とされています。(送信させ・受信しというのはわいせつにならないという東京高裁判決がある)
 わいせつの認定方法について新判断が出ていますが、えげつない表現があるので掲載できません。京都府警・京都地検に問い合わせて下さい。

阪高裁令和3年7月4日
判決
第1 原判決の認定事実
2なお,前記(3)は,Aに対し,前記機能を使用して,その陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影して被告人のスマートフォンに送信するよう要求し,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させたという強制わいせつの事実(令和年月日付け起訴状記載の公訴事実第1)と,同要求をし,Aにそのような姿態をとらせてそれを撮影させた上,その画像データ2点を被告人のスマートフォンに送信させて前記サーバコンピュータ内に記憶・蔵置させたという児童ポルノ製造の事実(同公訴事実第2・原審第3回公判期日において令和年月日付け訴因変更請求書のとおり訴因変更許可決定)として別個の訴因で起訴され,検察官は併合罪の関係にあると主張したが,原判決が観念的競合の関係にあると判断したものである。
。。。
第2 当裁判所の判断
2第1事実及び第3事実の理由不備・法令適用の誤りの論旨について
所論は,原判決は刑法176条にいう「わいせつな行為」について定義を示せていないから,理由不備があり,また,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるにもかかわらず,原判決は第1事実及び第3事実について同条を適用したのであるから,法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,法規には通常ある程度の解釈の余地が含まれるものである。
そして,「わいせつな行為」という言葉は一般的な社会通念に照らせばある程度の具体的なイメージを持つことができ,また,あえて別の言葉で定義付けすること自体困難である上,定義付けしても,それで,いわゆる規範的要件である「わいせつな行為」への該当性判断が直ちに容易になるとも思われない。
「わいせつな行為」に該当するか否かを安定的に判断するには,後記3(1)のとおり,どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという判断の仕方こそが重要であるといえ,定義付けが必須とはいえない。
刑法176条の「わいせつな行為」について定義を示せていないから原判決には理由不備があるとか,同条は罪刑法定主義に反していて文面上無効であるなどというのは,独自の見解であって採用の限りではなく,第1事実及び第3事実について理由不備や法令適用の誤りがあるとはいえない。
3第3事実の法令適用の誤り(「わいせつな行為」該当性)の論旨について
・・・
しかし,まず,刑法176条の「わいせつな行為」に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,当該行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを具体的事実関係に基づいて判断するのが相当である(最高裁平成29年11月29日大法廷判決・刑集71巻9号467頁参照。)。
これを踏まえて検討すると,本件行為は・・・
・・・・


4 第1事実及び第2事実の法令適用の誤り(罪数),の論旨について
所論は,第1事実の各強制わいせつ罪及び第2事実の各児童ポルノ製造罪(児童ポルノ法7条4項のもの。以下同じ。)の関係について,同一機会の犯行に係る強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪は,重なり合うものであり,社会的見解上1個の行為と評価すべきであるから,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあるのに,同法45条前段の併合罪の関係にあるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあると主張する。
しかし,本件のように児童の陰部等を触るなどのわいせつな行為をするとともに,その行為等を撮影して児童ポルノを製造した場合,わいせつな行為と児童ポルノを製造した行為とは,かなりの部分で重なり合っていることもあるが,通常伴う関係にあるとはいえない上,強制わいせつ罪では児童の陰部を触るなどのわいせつな行為を行ったという側面から犯罪とされているのに対し,児童ポルノ製造罪ではそのような児童の姿態を撮影して記録・保存する行為を行ったという側面から犯罪とされているのであって,それぞれの行為は社会的評価としても別個のものといえる。
原判決は,これと同様の理由で,第1事実の各強制わいせつ罪と,それと同一機会における第2事実の各児童ポルノ製造罪をいずれも併合罪の関係にあるとしたものと解され,原判決の法令適用に誤りはなく,論旨は理由がない。
5 理由齟齬の論旨について
所論は,強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪の関係について,原判決が,第1及び第2事実の両罪を併合罪の関係にあるとしながら,第3事実の両罪を観念的競合とした点に理由齟齬があると主張する。
しかし,原判決は,第1及び第2事実の両罪と,第3事実の両罪とでは,強制わいせつ行為の内容・性質が大きく異なることなどを理由に,両罪の関係について異なる判断をしたものと解されるから,理由に齟齬があるとはいえない。

カナダ国における強制わいせつ罪(176条後段)・姿態をとらせて製造罪(7条4項)につき、国外犯規定を挙げていないもの(千葉地裁r03.3.22)

カナダ国における強制わいせつ罪(176条後段)・姿態をとらせて製造罪(7条4項)につき、国外犯規定を挙げていないもの(千葉地裁r03.3.22)

刑法第三条(国民の国外犯)
 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
五 第百七十六条から第百八十一条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪

児童ポルノ・児童買春法第一〇条(国民の国外犯)
 第四条から第六条まで、第七条第一項から第七項まで並びに第八条第一項及び第三項(同条第一項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条の例に従う。

裁判年月日  令和 3年 3月22日  裁判所名  千葉地裁  裁判区分  判決
事件番号  令2(わ)1990号・令2(わ)2193号
事件名  強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
文献番号  2021WLJPCA03226004
エストロー・ジャパン
 上記の者に対する強制わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官西岡理世並びに弁護人(私選)石川浩一郎(主任)及び同拝師徳彦各出席の上審理し,次のとおり判決する。
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
 第1  A(●●●当時8歳。以下「A」という。)が13歳未満であることを知りながら,平成29年6月27日午後5時8分頃から同日午後5時30分頃までの間(現地時間),留学中の寄宿先であったカナダ国ブリティッシュコロンビア州〈以下省略〉のA方(以下「A方」という。)において,Aに対し,その陰部にバイブレーション機能により振動させた携帯電話機を押し当て,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の男子に対してわいせつな行為をした。(令和3年1月8日付け訴因等変更請求書による訴因変更後の令和2年12月22日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 第2  A(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月14日午後3時31分頃から同日午後4時22分頃までの間(現地時間),A方において,Aに対し,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 第3  第2記載の日時・場所において,A(当時9歳)に対し,被告人がその陰茎を手淫するなどの姿態をとらせ,その姿態を動画撮影機能付き携帯電話機で撮影した上,その頃から同年12月26日頃までの間(現地時間)に,A方において,その動画データ2点をパーソナルコンピュータに内蔵されたハードディスクに記録させて保存し,もって児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録に係る記録媒体である児童ポルノを製造した。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 第4  A(当時9歳)が13歳未満であることを知りながら,同年10月19日午後3時27分頃から同日午後4時9分頃までの間(現地時間),A方において,Aに対し,その下着を引き下げて陰部や臀部を露出させ,その臀部を触り,さらに,その陰茎を手淫するなどし,もって13歳未満の者に対してわいせつな行為をした。(令和2年12月1日付け起訴状記載の公訴事実第3)
第5~9 省略

 (法令の適用)
 被告人の判示第1の所為は平成29年法律第72号附則2条1項により同法による改正前の刑法176条後段に,判示第2及び第4の各所為はいずれも刑法176条後段に,判示第3の所為は児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項,2項,2条3項1号に,判示第5,第7及び第8の各所為はいずれも同法7条4項,2項,2条3項3号に,判示第6及び第9の各所為はいずれも同法7条2項後段,前段,2条3項1号にそれぞれ該当するところ,
判示第3及び第5ないし第9の各罪について各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により刑及び犯情の最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の全部の執行を猶予し,なお同法25条の2第1項前段を適用して被告人をその猶予の期間中保護観察に付することとする。
 千葉地方裁判所刑事第4部
 (裁判官 谷口吉伸)

脅して裸を撮影・送信等させるという送信型強制わいせつ行為(不同意わいせつ)について、「わいせつ」と評価されるのは、「撮影させ」までか、「撮影・送信させ」までか、「撮影・送信させ受信し」までか

 わいせつ性も問題になっていますが、どの範囲までが「わいせつ」なのかについて裁判例もブレています。
 高裁判例(広島高裁岡山支部H22.12.1・東京高裁h28.2.19)は、「撮影させ」までがわいせつ行為で、送信・受信を含むと強要罪になるとされていますが、強要被告事件で、強制わいせつ罪(告訴無し・公訴棄却)だと主張する弁護人の屁理屈主張に対して、無理から強要罪と区別するために筆が滑った詭弁です。
 個人的には送信・受信までを認定しないと、犯人の性的意図が明らかにならないと思います。今流行の、性的意味合い論でも犯人が受信してないと性的意味合いが明らかじゃないと思います。

東京地裁H18.3.24 撮影・送信させ受信して
大分地裁H23.5.11 撮影・送信させ
東京地裁H27.12.15 撮影・送信させ
高松地裁H28.6.2 撮影・送信させ
横浜地裁H28.11.10 撮影・送信させ
松山地裁西条H29.1.16 撮影・送信させ
高松地裁丸亀H29.5.2 撮影させ
岡山地裁H29.7.25 撮影・送信させ
札幌地裁H29.8.15 撮影させ
札幌地裁H30.3.8 撮影させ
東京地裁H31.1.31 撮影させ
長崎地裁R1.9.17 撮影・送信させ
高松地裁丸亀R2.9.18 撮影させ
熊本地裁R3.1.13不明
京都地裁R3.1.21 撮影させ
京都地裁R3.2.3 撮影・送信させ受信し

 公開されているのは、長崎地裁R01.9.17 岡山地裁h29.7.25だけですが、送信が起訴されています。事実関係が争われていますが、送信はわいせつ行為ではないという高裁判例(広島高裁岡山支部H22.12.1・東京高裁h28.2.19)に抵触しているので、控訴すれば破棄されたと思われます。

D1-Law.com判例体系
■28274224
長崎地方裁判所
令和01年09月17日
理由
以下、匿名表記した被害者氏名は別紙のとおりである。
(犯罪事実)
第1 被告人は、A(当時16歳)から入手した同人の画像データ等を利用して強いてわいせつな行為をしようと考え、平成30年10月26日午後10時6分頃から同月27日午前2時21分頃までの間に、D市内又はその周辺において、自己の携帯電話機及びタブレットから、同人が使用する携帯電話機に、アプリケーションソフト「E」の通話機能及びビデオ通話機能を利用して通信し、D市内にいた同人に対し、「写真を援助交際サイトに載せる。」「学校や家の近くに何人かの人が来る。」「連れていかれたことがある。」などと脅迫し、もしこの要求に応じなければAの自由や名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨畏怖させ、その反抗を著しく困難にし、ビデオ通話機能を通じて、同人に胸や陰部を露出した姿態及び陰部を指で触るなどした姿態をとるよう指示し、同人にそれをさせた上、その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。

裁判年月日 平成29年 7月25日 裁判所名 岡山地裁 裁判区分 判決
事件名 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
文献番号 2017WLJPCA07256001
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第1 A関係
 1(平成28年9月9日付け追起訴状記載の公訴事実第1)
 スマートフォンのゲームアプリを通じて知り合ったA(当時11歳。以下「A」という)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年9月13日頃から同月21日頃までの間に,大阪市〈以下省略〉被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォン(平成29年岡地領第188号符号3,5)からAが使用するスマートフォンにアプリケーションソフト「LINE」を通じて,「B」を名乗る第三者を装い,Aが「C」を名乗る被告人を怒らせた旨及び「あなたが天誅リストに載っています。」「学校や家にあることないこと言われる。」「実際に学校にも来られる。」「その結果,学校に行けなくなる。」等のメッセージを送信し,さらに「C」を名乗り,「今頃きてなにいってんねんな」「天罰な」「後悔すればいいわ」「おまえがエッチ以外は何でもするって言ったんやろ」等のメッセージを送信して脅迫し,その反抗を著しく困難にした上,その乳房,陰部等を露出した姿態及びその陰部を指で開いた姿態をとり,スマートフォンに送信するよう要求し,同年9月21日頃から同年10月17日頃までの間に,20回にわたり,●●●内のA方において,Aに,衣服を脱いでその乳房,陰部等を露出した姿態及び全裸で陰部を指で開くなどした姿態をとらせ,Aが使用するスマートフォン付属のカメラでその姿態を撮影させ,別表1記載のとおり,同年9月21日から同年10月17日までの間に,16回にわたり,その画像データ合計20点をAが使用するスマートフォンから被告人が使用するスマートフォンに「LINE」を利用して送信させ,もって,強いてわいせつな行為をし,

京都地裁R3.2.3
第3 被告人は,■■■■■(当時13歳未満,以下「A」ともいう。)が13歳未満であることを知りながら,Aにわいせつな行為をしようと考え,令和年月日午前時分頃から同日午前時分頃までの間,所在の被告人方において,Aに対し,被告人が使用するスマートフォンからAが使用するタブレット端末に,アプリケーションソフト「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,陰部,乳房等を露出した姿態をとって撮影し,被告人が使用するスマートフォンに送信するよう要求し,その頃,回にわたり,県内のA方において,Aに,陰部,乳房等を露出した姿態をとらせ,これをAが使用する前記タブレット端末で撮影させた上,同画像データ2点を,前記「」のダイレクトメッセージ機能を使用して,同タブレット端末から被告人が使用する前記スマートフォンに送信させ,その頃,同画像データ点を,場所不詳に設置された「」社が管理するサーバコンピュータ内に記憶・蔵置させ,もって13歳未満の者に対し,わいせつな行為をするとともに,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを製造した。

東京高裁h28.2.19 (一審新潟地裁高田支部H27.8.25)
判例タイムズ1432号134頁
 (1) 強要罪が成立しないとの主張について
 記録によれば,原判決は,公訴事実と同旨の事実を認定したが,その要旨は,被害者が18歳に満たない児童であることを知りながら,同女に対し,要求に応じなければその名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して,乳房,性器等を撮影してその画像データをインターネットアプリケーション「LINE」を使用して送信するよう要求し,畏怖した被害者にその撮影をさせた上,「LINE」を使用して画像データの送信をさせ,被告人使用の携帯電話機でこれを受信・記録し,もって被害者に義務のないことを行わせるとともに,児童ポルノを製造した,というものである。
 すなわち,原判決が認定した事実には,被害者に対し,その名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨脅迫して同女を畏怖させ,同女をして,その乳房,性器等を撮影させるという,強制わいせつ罪の構成要件の一部となり得る事実を含むものの,その成立に必要な性的意図は含まれておらず,さらに,撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させるという,それ自体はわいせつな行為に当たらない行為までを含んだものとして構成されており,強要罪に該当する事実とみるほかないものである。
 弁護人は,①被害者(女子児童)の裸の写真を撮る場合,わいせつな意図で行われるのが通常であるから,格別に性的意図が記されていなくても,その要件に欠けるところはない,②原判決は,量刑の理由の部分で性的意図を認定している,③被害者をして撮影させた乳房,性器等の画像データを被告人使用の携帯電話機に送信させる行為もわいせつな行為に当たる,などと主張する。
 しかしながら,①については,本件起訴状に記載された罪名および罰条の記載が強制わいせつ罪を示すものでないことに加え,公訴事実に性的意図を示す記載もないことからすれば,本件において,強制わいせつ罪に該当する事実が起訴されていないのは明らかであるところ,原審においても,その限りで事実を認定しているのであるから,その認定に係る事実は,性的意図を含むものとはいえない。
 また,②については,量刑の理由は,犯罪事実の認定ではなく,弁護人の主張は失当である。
 そして,③については,画像データを送信させる行為をもって,わいせつな行為とすることはできない。
 以上のとおり,原判決が認定した事実は,強制わいせつ罪の成立要件を欠くものである上,わいせつな行為に当たらず強要行為に該当するとみるほかない行為をも含む事実で構成されており,強制わいせつ罪に包摂されて別途強要罪が成立しないというような関係にはないから,法条競合により強要罪は成立しないとの弁護人の主張は失当である。
 (2) 公訴棄却にすべきとの主張について
 以上のとおり,本件は,強要罪に該当するとみるほかない事実につき公訴提起され,そのとおり認定されたもので,強制わいせつ罪に包摂される事実が強要罪として公訴提起され,認定されたものではない。
 また,原判決の認定に係る事実は,前記(1)のとおり,強制わいせつ罪の構成要件を充足しないものである上,被害者撮影に係る画像データを被告人使用の携帯電話機で受信・記録するというわいせつな行為に当たらない行為を含んだものとして構成され,これにより3項製造罪の犯罪構成要件を充足しているもので,強制わいせつ罪に包摂されるとはいえないし,実質的に同罪に当たるともいえない。
 以上のとおり,本件は,強要罪および3項製造罪に該当し,親告罪たる強制わいせつ罪には形式的にも実質的にも該当しない事実が起訴され,起訴された事実と同旨の事実が認定されたものであるところ,このような事実の起訴,実体判断に当たって,告訴を必要とすべき理由はなく,本件につき,公訴棄却にすべきであるとの弁護人の主張は,理由がない。
。。。
広島高裁岡山支部H22.12.15*1(一審判決 岡山地裁H22.8.13*2)
 そして,強制わいせつ罪が個人の性的自由を保護法益とするのに対し,児童ポルノ法7条3項,1項,2条3項3号に該当する罪(以下「3項製造罪」という。)は,当該児童の人格権を第一次的な保護法益としつつ,抽象的な児童の人格権をも保護法益としており,両者が一致するものではない。しかも,原判示各事実は,前記のとおり,原判示第1及び第2の各事実については,各被害者に児童ポルノ法2条3項3号所定の姿態をとらせるに際し,脅迫又は暴行によった旨認定していないし,上記各事実と同旨の各公訴事実も同様に脅迫又は暴行によった旨訴因として掲げていない上,原判示各事実及びこれらと同旨の各公訴事実についても,それぞれ,各被害者をして撮影させた画像データを被告人の使用するパーソナルコンピューターに送信させてこれらを受信し,さらに,上記コンピューターに内蔵されたハードディスクに記録して蔵置した各行為を含んでいるところ,上記各行為はいずれも3項製造罪の実行行為(原判示第3の事実については強要罪の実行行為の一部でもある。)であって,強制わいせつ罪の構成要件該当事実には含まれない事実である。

顔舐め・足舐め行為のわいせつ性・・わいせつ行為(刑法176条)の限界事例

顔舐め・足舐め行為のわいせつ性・・わいせつ行為(刑法176条)の限界事例

 時々、こういう事案がありますが、捜査段階でわいせつ性を争うと一部起訴されないこともあります。

https://news.yahoo.co.jp/articles/d3a1f8db1dc1744e1344fe59157acfb5d98923c8
逮捕容疑は5月7日夕~夜、東京都豊島区の居酒屋で学生のひざや胸を触ったほか、近くの路上で抱きついたり顔をなめたりしたというもの。

 大法廷h29.11.29以降、わいせつの定義はありませんが、性的意味会い・その程度・社会通念の三要素で決められています。

タイミング的に大法廷h29.11.29は反映されていませんので、理由が変わる可能性があります。

嘉門優「強制猥褻と痴漢行為との区別について」季刊刑事弁護93号(出版年月日2018/01/20)
 そして、直接、性的部位に触れる行為(C類型)についても、被害者への性的な侵襲性が比較的高いために、強制わいせつ罪が認められる傾向にある一方24、被害者の性的部位を「着衣の上から」触る場合(D類型)、通常は痴漢行為と分類される。
ただし、態様が「執よう」な場合、つまり、着衣の上からでも「弄んだ」といえるような態様である場合、強制わいせつ罪とされてきた25。
 また、被害者の「非性的部位」に触れる場合(E類型)にも本罪が成立することがあり、その典型例は唇への接吻である26。
 ただし、接吻だけでは「性欲を刺激、興奮又は満足させる行為」とはいえず、相手方の意思に反して「無理やり」行われたといいうる場合にのみ強制わいせつ罪とされてきた27.
 他方、唇以外の非性的な部位(頬やあご等)にキスする場合には、その行為が、通常は性欲刺激・興奮・満足に結びつくとは評価しえないため28、無理やり行ったとしても、強制わいせつ罪を肯定すべきではないとされる29.
 同様の理由から、他の非性的部位(被害者の指や大腿部など)をなめたり触ったりする行為についても、無理やり行ったとしても強制わいせつ罪は認められない30.
 以上のように、強制わいせつ罪のわいせつ行為は、接触部位、接触行為の性的意味合い、態様の執よう性といった観点から、「性欲を刺激、興奮又は満足させる行為」と評価しうるかどうかが判断されている

26広島高松江支判昭27.9.24高刑判特20号187頁、東京高判昭32.1 .22高刑判特4巻l~3号l6頁。なお、「唇」を性的な領域と理解する見解もあるが(山中敬一「強制わいせつの罪の保護法益について」研修817号(2016年]10頁)、陰部・乳房・臂部とは異なり、唇に触れること自体をもって直ちに「性欲を刺激する行為」を有すると評価することはできない。そこで本稿では、唇への接触を「非性的部位への接触」として扱うこととする。
27福田平『全訂刑法各論〔第3版増補〕』(有斐閣、2004年)183頁、佐伯仁志「強制狼藝罪における狼褒概念」判タ708号(1989年)65頁。東京高判昭32. 1 .22高刑裁特4巻l~3号16頁。東京地判昭56・4・30判時1028号145頁。
28大阪高判昭41 .9.7判タl99号187頁。松原芳博『刑法各論』(日本評論社、2016年)87頁は、頬にキスする行為は「現在の性意識に照らせば、性的意味は認めがたい」とする。
29東京地判昭56.4.30判時1028号l45頁は、「頬にキスしようとした行為」について強制わいせつ未遂罪を肯定したが疑問である。また、東京地判平21.l0.8 LEX/DB25463736は、
「首筋に接吻する行為」についてわいせつ性を認めている。ただし、この事案では、被害者の乳房を直接もみ、下着の上から陰部に手指を押し当て、さらに、首筋に接吻したという一連の行為について、わいせつ性を肯定しており、首筋への接吻行為だけで強制わいせつ罪が成立すると判断されたものではない(ただし、結論として、被害者の供述の信用性が認められないとして無罪とされている)。
30裁判例において、足の指を舐める行為(神戸地判平15.4.1O LEX/DB28085644)や、太もも、膝頭付近を触る行為(東京高判平13.9.18LEX/DB28085248)について強制わいせつ罪が肯定されているものの、いずれも、より性的侵襲性の高い行為(陰部を弄ぶ、瞥部を直接触る)とともに行われており、一連の行為全体でわいせつ性が肯定されているにすぎない。

公判中の児童買春行為について執行猶予を付けた事例(某支部)

 ④は保釈中の事件、③は前刑の余罪になります。
 国選弁護人は「絶対実刑」と言ってたようですが、法律上は執行猶予の可能性があります。執行猶予の裁判例と、4件くらいで執行猶予になった裁判例を提供しました。

①H30.5.15 犯行日 Aと児童買春行為
②H30.6.21 犯行日 Bと児童買春行為
①H30.12.1 起訴  Aと児童買春行為
②H30.12.1 起訴  Bと児童買春行為
①②H31.2.24 判決  執行猶予
・・・
③H30.5.9 犯行日 Cと児童買春行為
③H30.11.19 起訴  Cと児童買春行為
④H31.2.12 犯行日 Dと児童買春行為
④R1.8.26 起訴  Dと児童買春行為
③④R1.11.24 判決  保護観察付き執行猶予