児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ製造の罪における「(児童に)姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により当該児童が当該姿態をとるに至ったことで足り,それ以上に強制や具体的又は明示的な指示等の働きかけを要するものではない(千葉地裁R03.5.28)

 札幌高裁判決があるんですけど、h26改正でひそかに製造罪が出来る前の判決ですので、姿態をとらせて製造罪の成立範囲を広めにとっています。これだと、学校の更衣盗撮・検診盗撮事案でも犯人に「じゃ、次は体育・検診だから着換えるように」などの明示暗示の言動があれば姿態をとらせて製造罪になってしまいます。
 ひそかに製造罪になるのは、部外者がカメラしかけた事案しか残らないでしょう。

札幌高裁H19.3.8
上記の者に対する児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成18年10月2日札幌家庭裁判所小樽支部が言い渡した判決に対し,被告人から控訴の申立てがあったので,当裁判所は,検察官大橋充直出席の上審理し,次のとおり判決する。
第3事実誤認ないし法令適用の誤りの控訴趣意について
1被告人は本件児童ポルノ製造罪に関して「姿態をとらせ」ていないとの控訴趣意について(控訴理由第1及び第2)論旨は,要するに,被告人は,児童との口淫等の性交類似行為ないし性交(以下,「性交等」という)の姿態を撮影しているが,児童に姿態をとらせておらず,児童ポルノ製造罪は無罪であるのに,姿態をとらせたと認めて有罪とした原判決には,判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認ないし法令適用の誤一りがある,というのである。
そこで,検討するに,児童ポルノ法7条3項の「姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により,当該児童が当該姿態をとるに至ったことをいい,強制を要しないと解されるところ,関係証拠によれば,被告人は,児童と性交等を行っているが,これらの行為は通常当事者双方の言動により行為に至るものであって,本件においても,被告人が警察官に対し,「(ビデオに撮影した)これらの場面はセックスの一連の行為の一場面であります」と述べているように,被告人は,自ら積極的に児童に性交等の行為を行い,あるいは,児童の性交等の行為に応じる言動をしているのであって,この被告人の言動等により児童は性交等の姿態をとるに至ったと認められる。被告人が児童に「姿態をとらせ」たことは明らかである。
なお,所論は,姿態をとらせる行為は,児童ポルノ製造に向けられた行為であるから,その時点において児童ポルノ製造の目的を要するが,被告人には,その時点において児童ポルノ製造の目的がない,という。しかし,被告人は,児童に性交等の姿態をとらせ,それを録画しているのであるから,正に,児童ポルノ製造行為に向けて姿態をとらせたというべきである。所論は採用できない。

【文献番号】25590059
千葉地方裁判所令和3年5月28日刑事第5部判決
 上記の者に対する監護者性交等,監護者わいせつ,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官竹生田哲郎及び国選弁護人宇藤和彦各出席の上審理し,次のとおり判決する。

【事実認定の補足説明】
1 本件の争点
 被告人は,判示第1の1記載の行為の日時に関する点を除き,判示各事実に係る性交等,わいせつ行為及び児童ポルノに当たる写真の撮影行為自体を行ったことは認めている。しかし,被告人は,〔1〕判示第2の1記載の性交及び判示第4記載の性交等は,いずれもAの方から誘われて行ったものであり,判示第3記載のわいせつ行為の内容をなす撮影行為は,Aが自らスカートをまくるなどしたために行ったもので,これらをはじめとして本件各監護者性交等(判示第1の1,第2の1及び第4)並びに監護者わいせつ(判示第3)の各事実については,いずれも「現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて」行ってはいない旨述べる。また,〔2〕本件各児童ポルノ製造罪(判示第1の2,第2の2及び第3)についても,写真を撮る際にAに対してポーズをとるように指示したことはなく,Aに「姿態をとらせ」てはいないと供述する。 
 そして,弁護人においても,上記被告人の供述に依拠し,〔1〕については,Aは,被告人と性交等やわいせつな行為をすることについて自ら望んでおり,少なくともAの性的自己決定権に反しないものであるから,「監護者の影響力があることに乗じて」行われたとは認められないとし,〔2〕については,被告人がAに指示して当該姿態をとるように強制したものではないから,「姿態をとらせ」には当たらないとして,被告人はいずれの犯行についても無罪であると主張する。
3 争点〔2〕について
(1)次に,いわゆる児童ポルノ製造の罪における「(児童に)姿態をとらせ」とは,行為者の言動等により当該児童が当該姿態をとるに至ったことで足り,それ以上に強制や具体的又は明示的な指示等の働きかけを要するものではない。
(2)これを本件についてみると,判示第1の2及び第2の2記載の各児童ポルノ画像は,同第1の1及び第2の1の各監護者性交等に係る被告人がAと性交等を行っている様子やその前後にAが陰部等を露出している様子などをAの面前で撮影したものであり,また,判示第3記載の児童ポルノ画像も,Aが歩道橋の階段部分に座って陰部等を露出している姿態に被告人が携帯電話機のカメラを向けて撮影したことそのものが,同様に監護者わいせつ行為を構成するものである。すなわち,本件各児童ポルノ画像におけるAの姿態は,いずれも被告人がAに対して敢行した監護者性交等や監護者わいせつの各行為及びその機会に,Aがとった姿態にほかならない。そうである以上,そのこと自体において,被告人が児童であるAに前記(1)の意味で「姿態をとらせ」たものであることは自明である(なお,この評価は,監護者としての影響力に乗じたという側面からも導き得るが,それ以前に,被告人がAに対してした各性交等やわいせつな行為を撮影したということ自体に包含される当然の帰結というべきものである。)。
 したがって,各判示の児童ポルノ製造の事実に疑いを入れる余地はなく,強制や明示的な指示の存在を否定することによって,姿態をとらせたことを争う被告人及び弁護人の主張は,ここでも失当である。