児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

強姦場面の盗撮行為は強制わいせつ罪~久保田英二郎「強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りしたデジタルビデオカセットが供用物件に当たるとされた事例ー最一小決平成30年6月26日刑集72巻2号209頁」阪大法学 第69巻6号


 これだと、更衣室盗撮・トイレ盗撮も準強制わいせつ罪でいけそうですね。ひそかに製造罪も不要になります。
 カメラを手に持って触って撮るとか、脱がせて撮るという撮影行為はわいせつ行為でしょうが、ちょっと離れて撮るのは、わいせつ行為とはされてないような気がします。名古屋高裁でそんな判示をもらいました。

久保田英二郎「強姦及び強制わいせつの犯行の様子を隠し撮りしたデジタルビデオカセットが供用物件に当たるとされた事例ー最一小決平成30年6月26日刑集72巻2号209頁」阪大法学 第69巻6号
それゆえ、本件でも、本件デジタルビデオカセットを供用物件として没収し得るかどうかについては、制度の目的等に遡った根本的な検討が必要となろうが、本稿では、紙幅の関係上、これを詳細に検討することはできない。もっとも、次に検討するとおり、少なくとも本件の事案では、本件『アジタルビ『ナオカセットを生成物件として没収することができ、かつ、そのほうがより実態に即しているため、本件デジタルビ『アオカセットを没収した本決定の判断自体は妥当である。
(二)②(生成物件としての没収)について
「犯罪行為によって生じた物」(生成物件)は、没収することができる(刑法一九条一項三号)。生成物件の没収は、犯罪行為による不当の利得(成果)を保持させないようにすることを目的とするものである(もっとも、供用物件の没収との関係で汚れの除去を目的として承認するのであれば、生成物件の没収との関係でも、汚れの除去が少なくとも目的の一つとして位置付けられることになろう。)。
生成物件は、従来、犯罪行為によって存在するに至った物をいう、と定義されてきた。しかし、犯罪行為により、物の存在自体を作出した場合のみならず、既存の物に新たな特性を付与した場合にも、犯人が犯罪行為によって成果を得たといえるから、前記の生成物件没収の目的に照らせば、後者の場合にも、当該物が生成物件に当たると解すべきである。それゆえ、本件でも、本件デジタルビデオヵセット自体が犯行以前から存在していたことは、本件デジタルビデオカセットの没収を妨げる理由にはならない。しかし、生成物件に当たるためには、物が犯罪行為に「よって」生じる必要がある。ここでの「よって」を直接性と解するにせよ、因果関係と解するにせよ、起訴された姦淫行為やわいせつ行為自体は、そもそもその犯行の様子を撮影録画する性質の行為ではないから、本件デジタルビデオカセットは、当該犯罪行為との関係では、生成物件に当たるとはいえない。もっとも、このことは、本件デジタルビデオカセットを生成物件として没収し得ないことを意味するわけではない。
 本件では、被告人は、被害者らにアイマスクを着用させた上、同人らに無断で自らビデオカメラを設置、操作し、強制わいせつや強姦の犯行の様子等を隠し撮りしていたところ、隠し撮りは、強制わいせつや強姦の犯行の様子等を撮影対象とするものであるから、性的な意味の強い行為としてわいせつな行為に当たる。そして、被告人の暴行は、被害者らの反抗を著しく困難にする程度に達していたのであるから、被害者らは、被告人の指示で着用していたアイマスクを外すことも著しく困難な状態に陥っており、そのために隠し撮りを認識し得ず、これに抵抗し得なかったといえる。それゆえ、本件では、被告人が被害者らに暴行を用いてわいせつな行為をしたとして、隠し撮りに基づく強制わいせつ罪が別途成立し、当該犯罪行為によって本件デジタルビデオカセットに新たな特性が付与されたといえるから、その生成物件として、本件デジタルビデオカセットを没収することができると解すべきである。隠し撮りが性犯罪の被害を継続させるものであり、本件デジタルビデオカセットの没収の実質的な意義が犯人からの映像の剥奪による被害者保護にあることからすれば、映像の作出に着目した生成物件としての没収は、事柄の性質に適したものであるともいえよう(このような特徴は、後記のとおり、更なる問題にも影響を及ぼす。)・
起訴された姦淫行為やわいせつ行為に基づく強姦罪及び強制わいせつ罪と隠し撮りに基づく強制わいせつ罪は、同一機会に同一被害者の性的な法益を侵害するものであるから、包括して一罪となるが、だからといって、隠し撮りに基づく強制わいせつ罪がなかったことになるわけではないから、同罪を根拠として没収を言い渡すことができると解すべきである。もっとも、隠し撮りに基づく強制わいせつ罪を根拠として没収を言い渡す以上、両者がいかなる罪数関係に立つにせよ、隠し撮り自体が起訴され、有罪認定されるべきだろう(このような取扱いは、隠し撮り自体に対する否定的評価を明示することにもつながる。)