児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自称18~22歳(実は児童)との児童買春容疑で逮捕された場合の弁解~沖縄簡裁H30.4.19を題材に

 釈放された一心で捜査段階でいい加減な自白をしたので、それを根拠に有罪になっています。
 児童の体格データを開示させて、児童にも見えるし、それ以上にも見えることを立証した上で、金髪・化粧・言動からは児童に見えないという立証をして、控訴審で無罪になっています。(福岡高等裁判所那覇支部平成30年11月14日)

 この判例を参考にすると、年齢知情を否認するには、こういう弁解が有効だと思います。捜査段階でも公判段階でも。

一般的に、16歳児童一般と18歳一般とは体型が変わらないこと(政府統計+法医学文献)

本件被害児童は、平均的な身長体重であるから、一般人が見ても、18歳と区別が付かないこと

サイトの表示・言動は21歳であった+化粧・金髪(塗り絵)
犯行時の乳房・陰毛のタナースケール(塗り絵)

被告人から見ても、児童には見えなかった

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
沖縄簡易裁判所判決平成30年4月19日
LLI/DB 判例秘書登載

       主   文
 被告人を罰金50万円に処する。
 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,平成29年9月16日午後7時51分頃から同日午後9時10分頃までの間に,那覇市(以下略)において,■■■(当時16歳)が18歳に満たない児童である可能性を認識しながら,あえて,同児童に対し金銭を対償として供与する約束をして,同児童と性交し,もって児童買春をした。
(証拠の標目)なお,括弧内の番号は証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。
(事実認定の補足説明)
3(1) 当公判廷において,被告人は,本件女性に会った際の印象につき,やや頭でっかちの小柄な体型で児童体型という言い方もでき,社会生活や仕事生活の経験が乏しく会話の内容が乏しい感じがした,△病にり患していると二次性徴の発達が遅れることが一般的な傾向としてあり,△病の治療をしているために勉強や仕事が十分に行われていないことがあるので,本件女性が21歳であるとしてもおかしくないと思った,しかし,本件女性につき18歳未満であることを疑う所見はなかったことから,自分の感覚を信じて,それ以上に年齢を確認することはしなかったなどと供述する。
   しかるに,上記2(1)で認定した本件女性の顔つきや体型からすると,被告人も本件女性が18歳未満である可能性を認識し得たと認められる。被告人は,上記のとおり,本件女性が児童体型であったことや会話の内容の乏しさを感じつつも,△病の影響としておかしくないと思ったと供述しているところ,この供述は被告人が本件女性につき21歳よりも若いのではないかという印象を受けたことを自認するものにほかならない。そして,被告人の公判供述によれば,△病による二次性徴の発達の遅れ等も必ず生じるものではないというのであるから,本件女性から受けた21歳よりも若いという印象が△病に起因するものではなく,本件女性の実際の年齢が18歳未満である可能性を認識していたというべきである。
 (2) これに対し,被告人は,△△の登録の際に免許証等による年齢確認がされており,本件女性のプロフィールにある年齢が虚偽であるとは思わなかったと供述する。
   しかし,上記2(4)のとおり,18歳未満の児童が出会い系サイトを通じて知り合った男性と売春をしている例が多々あることは広く知られた事実であって,出会い系サイトへの登録の際の年齢確認は必ずしも厳密にされているわけではない。また,プロフィールの年齢は自己申告によるものであって自動車運転免許証等の身分証明書に記載されたとおりでないことは,上記2(1),(2)のとおり,被告人も62歳のところを40代後半と登録していることからして,被告人も十分に認識していたと認められる。
 (3) また,被告人は,出会い系サイトを通じて知り合った買春の相手方に対し,その年齢を確認するために,生年月日を尋ねたり身分証明書の提示を求めたりすることはしない,年齢の確認は自分の感覚でやるしかない,自分の感覚はかなり正しいと思っているなどと供述する。
   しかし,本件女性の語った21歳という年齢と18歳未満とはさほどの年齢差があるわけではなく,その違いにつき感覚で正しく判断できるとはおよそ考え難いのであり,被告人の供述は採用することができない。被告人の上記供述は,結局のところ,性交という目的を達するまでの男女間の雰囲気を良好に保つとともに,買春の相手が18歳未満であることを知ってしまった場合に直面する性交を断念するかどうかの判断から逃れるために,あえて,更なる年齢確認をしなかったにすぎないというべきである。
4(1) さらに,被告人は,捜査段階において,当初は本件女性が18歳未満であることを知らなかったと供述していたものの,その後に自白に転じ,「もしかしたら18歳未満で17歳くらいかもしれないと一瞬頭をよぎった」(乙2),「実際にその女の子と会ったり話をすると,頭が大きめで,児童体型でしたし,女の子の肌もハリがあり,そして,立ち振る舞いやしゃべり方からしても18歳にはなっておらず,まだ,17歳とか16歳くらいではないかと思いました。」(乙3)と供述し,本件女性が18歳未満である可能性を認識していたことを自白している。
 (2) この点,被告人はこれらの自白にづき,否認していたために勾留され,経営する○院での診察ができなくなって多くの患者に迷惑をかけたことから,早期に釈放されるために虚偽の自白をした旨供述する。
   しかし,被告人は,自白すれば釈放されるなどとは誰からも告げられておらず,逮捕された直後からt弁護士を弁護人に選任しており,その弁護人からは自分が思ったとおり答えるのが一番いいと助言を受けていたことを自認していることからすると,虚偽の自白をすることやそのことを弁護人に一切相談しなかったというのは不自然であるといわざるを得ない。そして,被告人は,自白することにした理由につき,捜査段階で検察官に対し,「自分が大人としてやってはいけない恥ずかしい行為をしたことを知られたくなかったこと,そして,自分の罪が重くなるのではないかという気持ちもあって正直に言えませんでした。しかし,私は,刑事さんたちに女の子の年齢について嘘を言い張ることがきつかったこと,そして,自分がやったことはありのまま話をして罪滅ぼしをしようという気持ちになったので,女の子の年齢については,18歳未満であると思っていながらセックスしたことをお話ししたのです。」と語っているところ,これは自白するに至った心情を素直に,かつ具体的に供述したものと認められる。
   したがって,被告人の捜査段階の自白は,十分に信用することができる。
5 以上によれば,被告人は,本件女性の顔つきや体型,会話の内容等から同人が18歳未満である可能性を十分に認識しながら,あえてその年齢を確認することなく18歳未満であっても構わないと考えて性交したと認定することができ,未必の故意があったと認められるのであり,これに反する被告人の弁解及び弁護人の主張は採用することができない。
(法令の適用)
 罰条    児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条,2条2項1号
 刑種の選択 罰金刑
 労役場留置 刑法18条
(量刑の理由)
 本件は,被告人が児童買春をした事案である。
 本件は,被告人がもっぱら自己の性欲を満たす目的で敢行した犯行であって,その自己中心的な犯行動機に酌むべき事情はない。被告人は那覇市内に○院を開設する○○○として多額の収入を得ているところ,いまだ16歳で資力に乏しい本件女性の浅慮に乗じ,ホテル代とは別に対価1万5000円及びタクシー代3000円を渡して性交に及んでいるのであって,本件女性の健全な育成を害する悪質な犯行というべきである。以上によれば,被告人の刑事責任は軽くない。
 しかしながら,本件女性が年齢を21歳と偽っており,被告人も本件女性が18歳未満であることにつき確定的な認識があったとまではいえないこと,被告人はこれまで出会い系サイトを利用して週1回くらいのペースで15人から40人の女性に金を渡して性交していたが,今後は同サイトの利用をやめて二度と買春をしないと誓っていること,被告人に前科前歴がないことなど被告人にとって酌むべき事情も認められる。
 これらの事情を考慮して,被告人に対しては罰金刑を科す主文の量刑が相当であると判断した。(求刑-罰金60万円)
  平成30年4月19日
    沖縄簡易裁判所
           裁判官  後藤 誠