児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者の過去の性体験を聴取する場合

 マニュアルには、必要性があって聴取されますが、聞き方には注意するように言われています。

田中壽寿子検事「性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック」p56
(9)被害者供述調書作成上の留意点
性被害者の供述調書の記載要領は,前掲『性犯罪被害者対応ハンドブック[再訂版]』73頁以下記載のとおりである。
犯人性,罪体(構成要件の各要素) 情状に関する事実を漏れなく聴取する必要がある。
特に留意すべき事項は,以下のとおりである。
ア被害者特定事項(住所,職業,電話番号)等を調書に記載しない。
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イ被害者のプライパシーにわたる事情は,不必要に記載しない。
被害者の過去の性体験については,
?姦淫既遂・未遂の判断ができた理由
?膣内精液のDNA型鑑定資料が被疑者のものであって他者のものではあり得ないことの確認
?和姦主張への反論
等に必要な範囲でのみ聴取する。
聴取時に,被害者に対し,その必要性を説明し不信を抱かれないように十分配慮する。
ただし被疑者の弁解内容によっては,被害者のプライパシーに踏み込んだ質問をせざるを得ない場合もあり得るので,その場合は被害者にその旨説明して必要最小限の聴取を行う倒。
ウ性器や性交方法等についての表現は,原則として被害者が使う表現をそのまま用いる。ただし被害者の表現が暖昧な場合は,医学用語を用いる。
例: 成人の場合
?犯人の男は,ズボンを脱ぐと,既に勃っていた「男のアレ」をいきなり私の「アソコ」に入れてきました。
? 中学の性教育で,医学的には,「男のアレ」は陰茎,私の「アソコ」は「腫Jと呼ぶのは習ったので,調書ではその言葉を使って説明します。
例: 子供の場合
間男の人に何をされましたか。
答オチンチンをここに刺された。
間今「ここ」って指でさしたのは, A子ちゃんの股の間ですね。
答うん,おしっこが出るところのそば。
間男の人のオチンチンはどんな様子でしたか。
答お風日で見るパパのと違っておつきくて,硬かった。
問「刺された」っていうのは,どういう感じだったのかな?
答オチンチンをブスッと刺すみたいに押してきて,これくらい(定規に指で示させて写真を撮り,調書に添付するか,又は,絵に描かせる。)入れられた。ズキーンって痛かった。

性犯罪捜査研究会「性犯罪被害者対応ハンドブック〔再訂版〕」

O わいせつ,姦淫行為
着衣の脱着状況
わいせつ行為の内容(強制わいせつ・姦淫前の前戯行為)
陰茎没入の有無と所用時間(性体験の有無)
射精の有無及び場所
射精後の措置

記載例
〈陰茎の挿入〉
? 犯人は私を全裸にしてしばらく両方の乳房をなめたり,陰部に指を入れてた後,着ていたTシャツとジーパン,パンツを脱いで全裸になりました。そして,私の体の上に乗ってきて勃起した男性のものを私の陰部に無理矢理入れようとしたのですが,陰部に男性のものが当たるもののなかなか入らず,犯人は怖い顔をして……と言いながら自分の唾を男性のものに塗って再度全身の力を込めるようにして無理矢理入れたのです。そして男性のものが入ると20回くらい腰を前後に動かし荒い息づかいをしていたのですが.「うっ」と言って腰が止まりました。
私は今回の被害前に性経験がありますので,男性のものが陰部に挿入されたかどうか分かります。
男性のものとは男性器のことです。
〈射精の有無〉
? 私は怖さで目を閉じていたのですが,犯人が私の体の上に乗ってきたことはその重みや感じから判りました。そのとたん陰部が張り裂けるような,割れるような痛みを感じ思わず痛い,痛い,やめて
と言っていましたが,犯人は止めずその後体を4, 5回上下に動かしました。そして体を私の体から離したと思った瞬間,私はおへその辺りに生暖かい液状のものが出されたことを感じたのです。そしておそるおそる目を聞けながらその液状のものを手で触ってみたのです。
なお,私は今回の被害前に性体験はありません。
?犯人は私の陰部に勃起した男性のものを無理矢理入れると20回くらい腰を前後に動かし荒い息づかいをし
ていたのですが, 「うっ」と言って腰を止めたのです。
その瞬間陰部に生暖かさを感じ,夫とのセックス経験からそれが精液であることが判りました。

・・・
Q3 被害者の過去の性体験lこついて調書上どの程度配載すればよいのですか。
a被害者の過去の性体験に関しては,被害者にとって精神的に極めて大きな負担となる部分であり,場合によっては興味本位で聞かれているとの誤解を与えかねない部分ですので,調書記載以前に事情聴取する上で十分な配慮が必要です。
事件立証上性体験について聴取が必要なのは,次のような理由からで,被害者に納得をしてもらうことが大切です。
O 強姦の既遂,未遂を判断する場合は,性器への陰茎の挿入事実の有無を立証しなければなりません。そのため,被害者の認識について明らかにする必要があり,その供述の正確性を高めるために,必要な範囲で、被害者の性体験について事情聴取することとなります。
O 膣内容物の採取等が行われた場合は,被疑者の犯行であることを立証するため, 事件の直前,直後における性体験についても聴取することとなります。
O 被害者と被疑者に面識がある場合には,和姦主張の可能性があるので,過去の被疑者との性的関係を必要な範囲で聴取することとなります。
O 被害に至る経緯から和姦主張の可能性がある場合には,強姦であるという客観的状況のほか,過去の被害者の日常の生活行動や性体験についても必要な範囲で聴取することとなります。
したがって,調書への記載についてもこうした観点からの内容を矛盾なく整理して記載することとなります。