児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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肛門性交による強制わいせつ致傷罪の事案(京都地裁h22.3.5)

京都地方裁判所判決平成22年3月5日
第3 (平成19年11月20日起訴分)
  自己が指導する少林寺拳法の道場の生徒であるD(平成8年○○月○○日生,当時10歳)が13歳未満であることを知りながら,同児にわいせつな行為をしようと企て,同月7日午後7時40分ころ,前記C指導室において,同児が着用していた道着のズボンとパンツを脱がせるなどした上,その陰茎を口淫し,さらに,その肛門に自己の陰茎を挿入するなどし,もって,わいせつな行為をし,その際,同児に加療約1週間を要する内痔核の傷害を負わせ

事実認定の補足説明)
第1 争点
   本件の争点は,(1)判示第3の事実について,同判示の日時場所において,被告人が同判示の被害児童の肛門に陰茎を挿入したかどうか及び被告人が挿入していた場合,被告人の挿入行為によって同児に内痔核の傷害が生じたかどうか,(2)判示第7の事実について,被告人が同児の口内に射精したかどうかであるので以下順次検討する。(なお,以下の検討においては,公判廷ないし期日外尋問における供述,公判調書中の供述部分,供述調書を区別することなく供述と表記する。また,平成19年の出来事については,年の記載を省略する。)
第2 判示第3の事実について
 1 前提事実
   関係各証拠によれば,以下の事実が認められ,当事者間にも争いがない。
  (1) 被告人は,8月当時,H院長として,判示Cにおいて,被害児童に少林寺拳法を教えていた。同所における少林寺拳法の練習は,通常,午後7時15分ころから黙想等の鎮魂行を行い,午後7時30分ころから10分ないし15分程度体操をした後,午後8時ころまで突き,蹴り,受け身の基本技の練習,午後9時ころまで技の練習や乱取り稽古を順に行うというものであった。
    判示××東棟の3階には,その北側に道場があり,廊下を挟んだ南側に東から指導室,I卓球スクールコーチ室が並び,その西側に階段がある。また,同棟2階には,東側に男子・女子シャワー室,南側に東から男子・女子トイレが並んでおり,その西側に階段がある。
  (2) 被告人は,平成18年7月ころから,上記鎮魂行や体操の途中に被害児童を判示C指導室(以下「指導室」という。)に呼び出し,頬や口にキスをするなどのわいせつ行為をするようになった。さらに,被告人は,6月ころからは,同様に,指導室において,被害児童の陰茎を口淫したり,被害児童の肛門に手指を挿入したりするなどのわいせつ行為を行っていた。
  (3) 被害児童は,少林寺拳法東京大会前の最後の練習である8月7日も,判示Cにおいて,少林寺拳法の練習に参加した。
  (4) 被害児童は,同日,父親に対し,肛門が痛いと訴え,父親が見たところ,肛門の周りが赤くなっていた。そして翌日も同様に肛門が痛いと訴えたため,同月8日,西京都病院において,医師G(以下「G」という。)の診察を受けたところ,肛門入口から2センチメートル程度の場所に,3か所内痔核を発症していた。
 2 被告人が被害児童の肛門に陰茎を挿入したかどうかについて
  (1) 被害児童の供述
    この点につき,被害児童は大要以下のとおり供述する。
    すなわち,「体操のときに,被告人に呼ばれ,指導室に行くと,被告人がソファーに座り,その足の上に抱っこされるように座らされ,口にキスをされ,続いて,座っている被告人と向かい合う形でソファーの上に立たされ,胸やおなか,陰茎を舐められた。その後,いったんソファーから下り,被告人に後ろを向いてと言われたので,被告人に背中を向ける形で立った。すると,被告人が,指で肛門周辺を触ってきて,べとべとした感触がした。これまでにも,被告人は,肛門に指を入れる前に,つばを指につけていたので,このときもつばを肛門周辺につけたのではないかと思う。そして,被告人は,自分の陰茎をズボンから出し,どちらかの手で陰茎を持つと,もう片方の手で被害児童のおなかあたりをもって引き寄せ,被告人のひざの上に座るような恰好にさせられた。被告人の陰茎は,最初,肛門とは違うところに当たっていたが,被告人はどちらかの手で陰茎と肛門の位置を合わせると,被害児童の太ももあたりを下に押し,肛門に陰茎を無理やりぐさっという感じで入れられた。『痛い,痛い。』と言い,被告人の太ももを両手で押して陰茎を抜こうとしたが,被告人は,もう一回太ももを押し,陰茎をさらに肛門に入れた。被告人にやめてもらうため,大便が出そうである旨のうそを言って被告人に解放してもらい,2階にあるトイレに行った。余りにも痛かったので,出血しているかと思い,パンツのお尻にあたる部分を触ってみたところ,湿った感触がしたので,見てみると,湿っている部分だけ,茶色のパンツが黒くなっており,血がついていると思った。そこで被告人にパンツに血がついている旨を言うと,被告人は,被害児童をシャワー室へ呼びよせ,脱いだパンツの血がついている部分をシャワーで洗い,濡れているところをトイレットペーパーでふき取った。その後,パンツとズボンをはいて練習に戻ると,練習は受け身の練習をしているところであり,大体午後8時くらいだったと思う。練習後,帰宅したが,肛門の痛みが続くので,父親に痛みを訴え,肛門にオロナイン軟膏を塗ってもらった。そして,その翌日になっても痛みが続くので,父親に病院に連れて行ってもらい,診察を受けた。」というのである。
  (2) 以上の被害児童の供述の信用性について検討すると,被害児童は,被害を受けた日時が8月7日の午後7時40分ころから同日午後8時ころまでであることや,自己の肛門に被告人の陰茎を挿入されたことなどについて,具体的に根拠を挙げて説明しているほか,被害を受けた際の体勢や感触などについても,自らの言葉,表現を交えて説明するなど,その供述は具体的で詳細である。しかも,その供述内容は,当時10歳という性的経験のない年齢からすると,自ら体験していない限り供述し得ないものであって,およそ想像や他からの暗示誘導によって語れるようなものではない。そして,その供述内容は,8月7日に父親に肛門痛を訴え,その際,肛門の周りが赤くなっていたことや,その翌日も肛門痛を訴え,病院に行ったことという客観的事実ともよく符合し,これによって裏付けられている。
    また,証人G(以下「G」という。)の供述によれば,肛門は広がるため,成人男性の陰茎を児童の肛門に挿入することは不可能ではなく,何らかの潤滑剤を使用すれば,可能性は高くなると認められるというところ,被告人が,被害児童の肛門につばを塗った後,被害児童を自己の足の上に座らせ,被害児童の太ももを強く押すことによって,肛門に陰茎を挿入したというのであるから,被害児童の肛門に被告人の陰茎を挿入することは可能であるといえ,その供述に格別不自然な点はないといえる。
    さらに,被害児童は,陰茎が挿入されているところを見たわけではないと供述するなど,その供述態度も真摯なもので,特に誇張等もうかがえず,反対尋問にも揺らいでいない。
    加えて,被害児童は,被告人から口止めをされていたことなどから,被害を両親に訴えることをしなかったが,被告人が別事件で逮捕されたのを聞き,被害児童も被害に遭っているのではないかと心配した母親から問われて初めて被害を申告したというのであって,被害を申告するに至る経緯にも不自然な点はない。また,証人Jの公判供述等によれば,被害児童は警察による事情聴取の当初から一貫して上記のとおりの被害を訴えていたと認められる。
    このほか,被害児童がその肛門に陰茎を挿入された経験は1回のみであり,肛門に指を挿入されるという経験とは,その痛みや感触において全く異なる経験であること,日時についても,その肛門痛を父親に訴え,翌日に病院に行ったということと結び付けられて記憶されていることなどに照らすと,被告人からされた他のわいせつ行為と記憶が混同するということも考えられず,以上からすると,その供述の信用性は極めて高いというべきである。
  (3)ア これに対し,弁護人は,?カルテの記載に基づくGの供述によれば,被害児童の父親は,被害児童が8月7日の夕方から肛門痛を訴えだした旨申告したのであり,被害児童の供述する被害時間と整合しない,?被害児童の供述する体勢からすると,被告人の陰茎は,被害児童の肛門に届かないか,わずかに触れる程度であり,被告人の陰茎を被害児童の肛門に挿入するのは不可能である,?肛門に陰茎を挿入された後,肛門からの出血をその場で確認せず,トイレでパンツに血がついているかどうかを確認したというのは不自然である,?指導室からトイレに行くまでの短時間にパンツに直径6センチメートルもの血の染みがつくほどの出血があったというのも不自然であるなどと主張して被害児童の供述の信用性を争う。
     イ しかしながら,?カルテの記載は,被害児童の訴えを聞いたその父親がGに申告し,それをGがカルテに書き留めたというものであって,その経過の中で,それぞれの訴えをどのように理解し表現するかなどによって,記載に若干のずれが生じることはあり得るところである。特に,被害児童の父親は,夕方ころは仕事に行っているというのであって(証人K公判供述),夕方ころの被害児童の様子を直接確認したわけではない上,被害児童は,肛門痛の原因として,父親に対し,大きな便をして切れたと虚偽の説明をしたというのであるから,被害児童の言葉次第で,肛門痛発生時期について被害児童の父親の認識が不正確なものになってしまう可能性がそれなりにある。したがって,被害児童の供述内容とカルテの記載内容が,時間の点で一致していないからといって,被害児童の供述の信用性が直ちに損なわれるとまではいえない。
       また,?被告人は,ソファに腰掛けた状態で,被害児童を膝の上に座らせ,被告人の腰のあたりまで引き寄せた上で陰茎を挿入したというのであるから,物理的な距離からいえば,被害児童の肛門に被告人の陰茎を挿入することは十分に可能といえる。弁護人は,被害児童の足が閉じ,かつ,被害児童の足が,背伸びのような状態にしたときに地面に着くか着かないかという距離にある体勢では陰茎を挿入することは不可能であると主張するが,被害児童は,被告人のひざの上に座らされている間,ずっと足を閉じていたと述べているわけではなく,被告人の太ももを押して陰茎を抜こうとするなど体勢を変えているのであり,被告人も足を完全に閉じていたわけではないのであるから,いずれかの時点において,被告人の足の間などから伸ばした足が地面につくような状態になることは考えられる。したがって,被害児童の供述に矛盾があるとはいえない。
       さらに,?被害児童は,被告人に「うんこ出そう。」などと言って解放してもらった手前もあって,パンツや道着を身につけ,2階にあるトイレに行ったのであり,出血を確認するためだけにトイレに行ったのではないし,被告人から被害に遭った直後であり,被告人から離れることを,出血を確認することより優先することは何ら不自然ではない。?確かに,直径約6センチメートル程度もの血の染みというのは大きく感じられるし,証人Jの供述によると,被害児童は,Jに対して,パンツに付いた血の大きさを1センチメートル程度と供述していたこともうかがわれるところであるが,前記のような被害児童の供述態度等に照らすと,この点も意図的な誇張とみるべきではなく,被告人の陰茎を肛門に挿入されたという被害児童の供述の核心部分を何ら揺るがすものではない。
     ウ その他,弁護人が,差戻し前第一審において主張していた,被害児童の供述する行動が時間的に困難であるという点についてみても,被害児童が移動した各場所が前記1(1)のとおりいずれも近接しており,わいせつ行為自体も一連のものであり,長時間かかるような行為を特段行っていないことからすると,15ないし20分程度の間に犯行を行うことは十分に可能であると考えられる。
     エ 以上のとおり,弁護人の指摘する点は,いずれも被害児童の供述の信用性を損なうものではないというべきである。
  (4) 被告人は,判示第3の事実を被疑事実として逮捕された直後の弁解録取において,被害児童の肛門に陰茎を挿入した事実を含めて被疑事実を認め,同日中にその旨の自供書を作成した上,検察官による弁解録取,裁判所における勾留質問においても同様の供述をしている。加えて,被告人は,捜査段階において,被害児童の肛門に陰茎を長さにして2〜3センチメートル挿入した(乙10)などと述べているほか,陰茎を被害児童の肛門に挿入した感触を具体的に述べて陰茎挿入行為を認めており,その内容も被害児童の供述に沿うものであって,陰茎を挿入した際の体勢やその後の行動について曖昧な点や被害児童の供述と食違う点はあるものの,被害児童の肛門への陰茎の挿入を含めたわいせつ行為の内容に関する被告人の捜査段階の供述は十分に信用することができる。
  (5)ア 他方,被告人は,公判廷(差戻し前の第一審も含む。)において,以下のとおり供述する。
     すなわち,「被害児童に七,八回わいせつな行為をしたことがあり,そのうち肛門に指を挿入したのが四,五回ある。自己の陰茎を露出させ,被害児童の道着やパンツ等を脱がせた上で,自分に向き合うような恰好で被害児童をひざの上に座らせたことも何回かある。そのときには,陰茎は勃起しておらず,被害児童の体のどこかに陰茎が当たっていたかもしれないが,被害児童の肛門に陰茎を挿入したことはない。特に,8月7日は,少林寺拳法東京大会前の最後の練習であり,同大会に出場する児童を指導していたので,起訴されているようなわいせつな行為をする余裕はなかった。捜査段階でこれを認める供述をしたのは,取調べ担当の刑事に,罪を認めなければ,刑が重くなる,いつまでも帰れない,彼女にも迷惑をかけることになるなどと言われるなど,強圧的・威圧的な取調べを受け,抵抗できなかったためである。」というのである。
     イ 以上の供述の信用性を検討すると,被告人は,差戻し前第一審では,被害児童のおしりの穴(少なくともその周辺)に陰茎を押し当てたことがある旨供述していたのであって,被害児童の肛門に陰茎を挿入したかどうかという本件の争点の核心部分というべき事実にかかわる部分について変遷があり,その理由もパニックになっていたなどというばかりでおよそ合理的とはいえないものである。
       また,捜査段階における取調べ状況についても,被告人は,差戻し前第一審においては,取調べ状況について弁護人に相談したことはないと供述していたにもかかわらず,当公判廷では,弁護人にも相談したと供述するなど,供述を変遷させている。その理由も,差戻し前第一審のときには確認しなかったメモを最近になって確認したところ,その記載から思い出したというもので,唐突であり,合理的とはいえないものである。加えて,取調状況に関する被告人の公判廷における供述は,前記のとおり逮捕直後の弁解録取で被害児童の肛門に陰茎を挿入した事実を含めて被疑事実を認め,同日中にその旨の自供書を作成し,検察官による弁解録取,裁判所における勾留質問においても同様の供述をしていることや,その供述調書において訂正申立てがなされていること(乙10,11)など,客観的な状況にそぐわないものでもある。
       このほか,被告人の公判供述は,被害児童が着用していたパンツのしみを拭きとってあげた状況等についても,差戻し前の第一審での供述と当公判廷での供述で合理的な理由もなく変遷が認められることなどを考慮すると,被告人の公判供述は,それ自体信用性に乏しいものといわざるを得ない。
  (6) 以上のとおり,被告人から肛門に陰茎を挿入されるなどのわいせつ行為を受けた旨の被害児童の供述は,その日時を含めて信用できるから,被告人は,判示第3記載のとおりのわいせつ行為を行ったものと認められる。
 3 被告人が被害児童の肛門に陰茎を挿入したことによって内痔核の傷害が生じたか否か
  (1) この点について検討すると,前記のとおり,8月8日時点において,被害児童が内痔核を発症していたことは明らかであるところ,消化器外科専門の医師であるGの公判供述によれば,内痔核は,高度の便秘等により静脈の環流が押さえられ,うっ血することにより発症するというのであり,成人男性の陰茎を肛門に挿入するというような外部的刺激によって痔核ができたとしても矛盾はしないという上,被害児童は,肛門のいわゆる3時,7時,11時の3か所に内痔核を発症していたが,これらはいずれも内痔核の好発部位であり,1回の刺激で,同時に3か所に内痔核が発症したとしても矛盾はしない,というのである。この供述は,その専門性にかんがみ,十分信用することができる。そして,被告人は約35秒程度というそれなりの時間(証人L公判供述),陰茎を2〜3センチメートル程度被害児童の肛門に挿入していた(乙10)と認められるのであって,肛門の入り口から2センチメートルほどの場所にある血管をうっ血させることができると考えられる。そして,被害児童は,被告人に陰茎を挿入された際,被告人の太ももを押して陰茎を抜こうとするなどしており,被告人自身も被害児童を押えつけるなどしているのであるから,被告人が意識的に陰茎を動かしたわけではないにせよ,被害児童の肛門に複数回の刺激が加えられたとしても不自然ではない。したがって,被告人が被害児童の肛門に陰茎を挿入したことによって,被害児童が内痔核を発症する可能性は十分にあるといえる。
  (2) そして,G供述によれば,内痔核を発症するほどの高度の便秘であれば,小学生程度の児童の場合,通常便秘による腹痛等を訴えるというところ,診察時に被害児童やその父親から腹痛の訴はなく,また,被害児童の父親の供述によれば,本件犯行以前に被害児童に高度の便秘や,排便の際の出血などの異常があったこともうかがわれない。
    なお,G医師は,下痢の場合にも,よく消化されていない刺激物が通るときの刺激により内痔核を発症することがある旨を認めるところ,9月19日以降被害児童を診察した京都桂病院からの回答書(差戻し前甲68)によれば,被害児童が同月28日に京都桂病院において診察を受けた際,被害児童ないしその親が,8月に腹痛があり,その後下痢があった旨申し立てていたことが認められる(なお,検察官は,この腹痛との記載は,肛門痛の誤記である旨主張するが,これを認めるに足る証拠はなく,検察官の主張は採用できない。)。そうすると,被害児童が,8月7日以前の可能性を含め,8月中に下痢を発症していたこと自体は否定できないが,被害児童の父親は平成19年夏ころに,被害児童が下痢になった旨は聞いていないと供述しており,被害児童も下痢はなかったと供述していること,被害児童の母親の警察官調書によっても,京都桂病院を受診する経緯に関し,被害児童が東京から帰った日(帰った当日であれば8月12日)の夜に40度くらいの高熱を出した旨の記載はあるものの,その前後を含め,下痢等の症状に関する記載はないこと,その下痢を原因として病院で診察等を受けた様子がうかがわれないことなどからすると,下痢の症状は記憶に残らないほどのものであり,仮に被害児童の下痢が8月7日以前に生じていたとしても,それはさほど重篤なものではなかったといえる。そうすると,本件犯行以前に被害児童が内痔核を発症していた可能性は考えにくいといえる。
    以上からすると,本件においては,被害児童の内痔核は被告人の陰茎挿入行為によって発症したと考えても矛盾がない一方で,これ以外の発症原因が見当たらないので,結局,被告人の陰茎挿入行為によって,被害児童が内痔核を発症したと認めた。