児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被告人が,同一被害者に対し,一定の支配関係の下に同一意思で継続的に行った複数の同種の犯行については,各行為の罪数評価において,併合罪ではなく包括一罪にすべきとし,これを各行為ごとの併合罪と評価した原判決には法令適用の誤りがあるとしたものの,その誤りが判決に影響を及ぼすものではないとした事案(名古屋高裁h26.10.22)判決速報

 脅迫罪も包括一罪
 弁護人も気付かなかった。

 半田支部で原判決を閲覧しました。 
 脅迫行為は起訴順にみるとこうなりますが、

犯行日 行為 起訴状 原判決
4月14日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
6月30日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
7月21日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
7月28日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
8月3日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
9月22日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
9月23日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
7月6日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
8月12日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
8月15日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
8月26日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
8月31日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
9月7日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
9月17日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7

 犯行日順にみるとこうなります

犯行日 行為 起訴状 原判決
4月14日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
6月30日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
7月6日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
7月21日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
7月28日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
8月3日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
8月12日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
8月15日 脅迫 h25.11.29起訴 判示第2
8月26日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
8月31日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
9月7日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
9月17日 脅迫 h26.2.13起訴 判示第7
9月22日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1
9月23日 脅迫 h25.11.21起訴 判示第1

 内容は、保護者にバラされたくなければやらせろというような脅迫です。
 起訴状も原判決もバカですよね。

1 本件各事実
本件は,被告人が離婚したかつての妻の姪であり,離婚後も,その祖母,実母らを含め,事実上の親戚付き合いをしていた被害者(女性,本件当時13歳)に対して行った一連の犯行であるところ,その具体的な概要は,被告人が?平成25年4月14日から同年9月23日までの間,合計14回にわたり,被害者に対し,被害者が被告人と性的関係を持たされたことや,被害者がその実母から渡されていた月謝の金を使い込んだことなどを実母にばらすなど,被害者の名誉等に危害を加えかねないさまざまな内容を記載した電子メールを送信して脅迫し(原判示第1,第2,第7の各脅迫),?同年7月6日の午前0時57分頃から58分頃までと同日の午後2時56分頃から57分頃までの2回にわたり,被害者に乳房を露出させたり,あるいは被告人の陰茎を触らせたりするなどの姿態をとらせ,その様子を携帯電話機付属カメラで撮影してその電子データを保存することにより,児童ポルノを製造し(原判示第3,第4の各児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反),また,?同月21日,同年8月17日及び同年9月22日の3回にわたり,それぞれ被害者がかねて被告人の脅迫により被告人の要求を拒むことが困難な状態であるのに乗じ,その立場を利用して,被害者に自己を相手に性交させて,児童に淫行させた(原判示第5,第6,第8の各児童福祉法違反)というものである。
2原判決の罪数評価に法令適用の誤りがあること
原判決は,?の脅迫事実を14個の脅迫と,?の児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反事実を2個の違反と,?の児童福祉法違反事実を3個の違反と評価している。
しかし,関係記録に照らすと,被告人は,被害者に対する性的な欲望の赴くまま,被害者のささいな弱みを握るなどすると,被害者の実母にばらすなどと脅して性的関係を求めるなどし,畏怖困惑した被害者が性的行為に応じると,更にそれを種にするなどして関係の継続を求め, 5か月余の間,同様の意図の下に,同種の脅迫行為を繰り返したものであるようにうかがえる。このような本件脅迫の動機,態様等の諸事情に照らすと,上記合計14回にわたる脅迫行為(前記?)は,同一の犯意に基づいて継続して行われたものであって,これを全体として考察して,脅迫罪の包括一罪を構成すると解するのが相当である。
また,児童に淫行させる罪(児童福祉法違反)についても,同一の児童に対し,一定の支配関係を形成してこれを継続的に利用した状態で,同一意思の下に行った場合は,複数の回数にわたっても,包括一罪に当たると解するのが相当であるところ,関係記録に照らすと,被告人は,自己の被害者に対する継続的な性的欲望に基づき,いずれも被害者が被告人に脅迫されて,被告人の要求を断ることが困難な状態にあるのに乗じて,約3か月間に3回にわたり被害者と性交したと認められるのであり,まさに被害者に対し,一定の支配関係を形成してこれを継続的に利用した状態で,同一意思の下に行ったものと見ることを妨げないから,本件児童福祉法違反の罪(前記?)の罪数関係についても,やはり包括一罪を構成すると解するのが相当である。
さらに,児童ポルノ製造の罪(児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反)についても,基本的に同様と解され,特に,関係記録に照らすと,被告人は,同一の性的な意図をもって,同一の日に被告人方で2回にわたり,被害者に原判示の性的な姿態をとらせて写真撮影し,そのデータを保存する行為を行ったのであり,これまた犯意と機会が継続する中で行われた犯行と考えられるから,同法違反の罪(前記?)の罪数関係についても,包括一罪を構成すると解するのが相当である。
3原判決の罪数評価の誤りが判決に影響しないとしたこと
原判決は,上記のとおり,その罪数評価について法令適用を誤っているが,前記?ないし?の各事実をそれぞれ包括一罪として,各罪が刑法45条前段の併合罪の関係に立つとした場合と,原判決のように,包括一罪とは考えないで,原判示第1から第8までの各罪が全て併合罪の関係にあるとした場合の処断刑の範囲との間に差異はないと考えられるし,原判決の量刑が正当な処断刑の範囲にあるのはもとより,原判決が上記のような独自の併合罪処理をしたために殊更重い量刑がされたことをうかがわせるような事情は見いだせない。そうすると,この誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとは認め難い
○参考事項
本件は,弁護人が量刑不当のみを理由に控訴した事案であり,罪数評価についての法令適用の誤りは主張されておらず,控訴審の裁判所は,原判決後,被告人と被害者との間に示談がなされて被害弁償がなされたことなどを理由に,原判決を刑訴法397条2項,381条(量刑不当)により破棄し,同法400条ただし書で自判したが,その際,職権調査により原判決の罪数評価について法令適用の誤りを指摘して判示した。