児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

知能犯的カンニング行為についての犯罪の成否(偽計業務妨害,軽犯罪法違反等)

 カンニングの刑事事件なんて無いんでしょうけど、分からない事があれば、城検事に聞きましょう。

城祐一郎(たち ゆういちろう)
実践志向の捜査実務講座特別刑事法犯の理論と捜査[2]P274
第3章
知能犯的カンニング行為についての犯罪の成否(偽計業務妨害軽犯罪法違反等)
第1節 はじめに
平成24年6〜 7月ころ,中国人グループによる自動車運転免許試験のカンニング事件により.中国人数名が逮捕,起訴されました。彼ら中国人グループは,運転免許試験場で学科試験を受けた際,ワイヤレスイヤホンなどを用いて試験の正解を聞いて解答するというカンニング行為を行っていたものであります。その結果.試験に合格し運転免許証を不正に取得しました。
また,平成23年3月には,大学入試に際して,携帯電話を使って外部と連絡を取り,正解を教示してもらおうとしてカンニング行為に及んだ予備校生が逮捕されるという事件が起きました。
それら事件においては,いずれも電子機器を用いて外部と連絡を取り,正解を教えてもらうというカンニング行為であり,古典的なカンニング行為に比べて,高度な手法を用いた知能犯的側面を有しているものであります。
そこで,それらカンニング行為については,どのような犯罪が成立するのでしょうか。
まず,上記大学入試におけるカンニング行為における犯罪の成
否について,それが偽計業務妨害罪を構成するものであるかどうかに焦点を当てて検討ししかるのち,上記中国人グループによるカンニング行為については,どのような犯罪が成立するのか検討することとします。

第2節 カンニング行為の法的な位置付け
カンニング行為については,筆者の知る限り,法的に特段の定義付けがされているわけではないと思われますが,一般的には,合格の判定を得るために試験においてなされる様々な不正手段全般を指すものと考えてよいと思われます。そのような行為は法的にどのような意味を持つのでしょうか。
受験行為は,試験を提供する側とそれを受ける側との聞の一種の契約でしょう。そこには,適正な受験態度で臨むということが当然の了解事項として含まれているはずでありますし試験場でも注意的にその旨は告知されています。そして,その契約内容において,試験の際に不正行為があった場合には不合格と判定するという内容が含まれていると考えられるので,不正行為に及べば,民事法的には契約の効果として不合格という結果をもたらすことになるでしょう。
では,これは刑事法的にはどのようなものと位置付けられるのでしょうか。
上記のように民事法的には不合格という不利益を被る結果となりますが,刑事法的にはこれを直接的に処罰する規定は存しません。これはあくまで試験を実施する側とこれを受験する側との聞の民事的なものとして捉えれば足り,国家が刑罰権を発動してまで臨むべきものとは考えられなかったことによるものと思われます。そうであるのなら,カンニング行為は,いかなる場合においても犯罪を構成することはないのでしょうか。ここでは,まず,偽計業務妨害罪の成否を検討した上,さらに,その他の犯罪の成否についても検討いたします。