未公開の判例も紹介されています。
P155あたりからファイル交換ソフトでばらまく行為を4項提供罪(不特定多数)・5項所持罪(不特定多数)に当たるとしていますが、shareに関する大阪高裁H21.9.2はメールで送る場合のみを提供罪だとしていますので、判例違反です。
P155
3 提供目的による児童ポルノ所持の罪(第7条第5項前段,第4条,第2条第3項第1号・第3号)
被疑者は,ファイル交換ソフトである「○○○○○」を利用して不特定若しくは多数のインターネット利用者に児童ポルノである画像データを送信して提供する目的で,平成○○年○月○○日,広島県○○市○○町○○番地○所在の被疑者方において,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである映像データ○個及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである画像データ○個を記憶・蔵置させたハードディスクを内蔵するパーソナルコンピュータ1台を所持したものである。
- 作者: 小川 賢一
- 出版社/メーカー: 立花書房
- 発売日: 2011/01/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
大阪高裁H21.9.2
また,弁護人は,本件は,児童ポルノ公然陳列罪ではなく,児童ポルノ提供罪が成立する旨主張するが,本件が児童ポルノ公然陳列罪に該当することは,一審判決が「補足説明」の項で正当に説示するところである。
なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には,上記電子データが記憶・蔵置された記録媒体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして,児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,これを前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する行為の処罰を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示したというものである。このような同法の改正の趣旨にかんがみれば,本件が児童ポルノ提供罪に当たらないことは明白である。
以上のとおり,一審判決に法令の適用の誤りはない。弁護人の主張は,採用できない。