児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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東京高裁h18.1.10も児童買春罪・製造罪観念的競合説

 なんやかんや理由を付けて併合罪にしようとするのですが、その理由付けが「判例」なので、他の事件では観念的競合になる理由になります。

 東京高裁の裁判例を検索すると、同一被害者に対する日時を異にする児童淫行罪と3項製造罪とを訴因を比較して日時が違うことを主な理由として併合罪にされている。

東京高裁h18.1.10(児童福祉法違反)
しかしながら,被告人の本件被害女子児童に対する各所為のうち,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪に該当するとして地方裁判所に起訴された訴因は,本件当日以外の児童ポルノの製造行為を内容とするものであって,児童福祉法違反の淫行をさせる行為を内容とするものではなく,他方,本件の原審である家庭裁判所に起訴された訴因は,本件当日の淫行をさせる行為を内容とするものである。これら二つの訴因を比較対照しても,両訴因が科刑上一罪の関係に立つと解することができる契機は存在せず,両罪の保護法益の違いにもかんがみると,両訴因は併合罪の関係に立つものと考えられる。そして,これと同旨の罪数判断を踏まえてなされたとみられる本件の各起訴は,それぞれの管轄のある裁判所に別々になされたものであって,そもそも併合審理や弁論の併合ができないものである以上,それらが被告人から併合の利益を奪うものでないことは多言を要しない。

 この「被告人の本件被害女子児童に対する各所為のうち,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪に該当するとして地方裁判所に起訴された訴因は,本件当日以外の児童ポルノの製造行為を内容とするものであって(当審検1号証),児童福祉法違反の淫行をさせる行為を内容とするものではなく,他方,本件の原審である家庭裁判所に起訴された訴因は,本件当日の淫行をさせる行為を内容とするものである。これら二つの訴因を比較対照しても,両訴因が科刑上一罪の関係に立つと解することができる契機は存在せず,両罪の保護法益の違いにもかんがみると,両訴因は併合罪の関係に立つものと考えられる。」という考え方によれば、本件の児童買春罪と製造罪は観念的競合である。
 すなわち、両訴因を比較すると、となっており、「h20.8.7大阪市のホテルで児童Aに対して」という点で日時・場所・被害児童が共通である。「性交等する場面」や「児童に衣服の全部又は一部を着けない姿態」を取らせたのは性行為の一部である。
 このように高裁の見解によれば、二つの訴因を比較対照しても,両訴因が科刑上一罪の関係に立つと解することができる契機が存在することが明かである。
 しかも、児童ポルノ罪と児童買春罪は同一法典であって立法趣旨も同一である。「両罪の保護法益の違いにもかんがみると」などとは言えない。

◎児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律
この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、あわせて児童の権利の擁護に関する国際的動向を踏まえ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利を擁護することを目的とする。

 従って、東京高裁h18.1.10の見解に立っても、両罪は観念的競合である。