児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童淫行罪と製造罪は観念的競合か?併合罪か?

 ご親切な方から観念的競合だという判例(東京高裁H17.12.26)が送られてきました。
 ある事件でこっちは「大阪高裁H18.10.10では併合罪になっとる」と主張しています。
 どっちも奥村弁護士事件なんですが、高裁レベルじゃわからないですか?

ちなみに、東京高裁H17.12.26の上告審でも、弁護人は観念的競合→二重起訴・二重処罰・管轄違いを主張したのだが、棄却されているのだから、最高裁が観念的競合説であるというのは見当違い。

上告理由第4 法令適用の誤り〜二重起訴
1 はじめに
 本件製造罪と児童福祉法違反罪とは、手段結果の関係(牽連関係)にあるか、社会的にみて一個の行為(観念的競合)であるから、一罪である。
 先に家庭裁判所に起訴されているから、地裁への起訴は二重起訴であった。
 地裁事件の起訴は違法であるから、本件は公訴棄却*1とすべきであった。
 にもかかわらず実体判決をした原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するから、原判決は破棄を免れない。
 また、科刑上一罪の場合にも二重起訴と認めた判例にも違反する。

 以下、
① 家裁事件の審判対象が、「平成年月ころから平成年月日まで」の淫行(包括一罪)であること
② 地裁事件の「平成年月日から平成年月日までの間,前後6回」の製造行為とは期間が重なっていること
③ 個々の製造行為は同じ機会に行われた淫行と牽連犯ないし観念的競合の関係にある
④ 結局、「平成年月ころから平成年月日まで」の淫行(包括一罪)と、「平成年月日から平成年月日までの間,前後6回」の製造行為とは牽連犯ないし観念的競合の関係にあって、科刑上一罪となる。
という流れで説明する。

 奥村弁護士はこのころは観念的競合説で押してたんですが、通らないので、併合罪説に転向しました。

 東京高裁h17.12.26に出てくる家裁事件の控訴審では、児童淫行罪と製造罪とは併合罪とされています。

東京高裁h18.1.10
論旨は,要するに,被告人の同一被害女子児童に対する児童ポルノ製造の罪と本件淫行の罪とは科刑上一罪の関係にあるからいずれも家裁に起訴すべきところ,検察官は一罪の一部を地裁に起訴し,一部を家裁に起訴してあえて併合の利益を奪うような起訴をしており,かかる起訴は公訴権の濫用として無効であるにもかかわらず,原判決には公訴を棄却することなく実体判決をした違法があるばかりか,被告人の行為についてのみ併合の利益を奪って重い量刑をした憲法14条違反の違法がある,・・・というのである。
しかしながら,被告人の本件被害女子児童に対する各所為のうち,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反の罪に該当するとして地方裁判所に起訴された訴因は,本件当日以外の児童ポルノの製造行為を内容とするものであって(当審検1号証),児童福祉法違反の淫行をさせる行為を内容とするものではなく,他方,本件の原審である家庭裁判所に起訴された訴因は,本件当日の淫行をさせる行為を内容とするものである。これら二つの訴因を比較対照しても,両訴因が科刑上一罪の関係に立つと解することができる契機は存在せず,両罪の保護法益の違いにもかんがみると,両訴因は併合罪の関係に立つものと考えられる。そして,これと同旨の罪数判断を踏まえてなされたとみられる本件の各起訴は,それぞれの管轄のある裁判所に別々になされたものであって,そもそも併合審理や弁論の併合ができないものである以上,それらが被告人から併合の利益を奪うものでないことは多言を要しない。