児童淫行罪に関する東京高裁H17.12.26と札幌高裁H19.3.8の観念的競合説をさらに推していくと、すべての性犯罪で観念的競合といえる。
青少年条例違反、強制わいせつ罪、強姦罪・・・
原判決は、児童買春罪と児童ポルノ製造罪を併合罪として処断していることが明らかである。
しかし、買春の場面を、買春しながら撮影していたことが本件児童ポルノ製造の実行行為にほかならないのであるから、買春と撮影は1個の行為であり、両罪は観念的競合である。
これを併合罪とした原判決には法令適用の誤りがあるから破棄を免れない。
確かに、一見すると、児童と買春する行為と撮影行為は別の行為と評価することもできる。しかし、本件児童ポルノ製造行為は、自分は被害者B子と淫行しながら、たまたま他人と他人が行う性行為を撮影するというのではなく、被告人自らが児童と性行為を行う模様を撮影するというものであって、ここで被告人が被害者B子と性行為を行わなければ児童ポルノの要件を満たさないのであるから、買春行為は児童ポルノ製造行為の一部を構成している。
図示すると、「性交ないし性交類似行為」の点は明らかに重なっており、しかも買春罪においても児童ポルノ製造罪においても「性交ないし性交類似行為」は最も重要な構成要件であるから、1個の行為と言うべきである。