児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

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児童福祉法違反(淫行させる行為)で、同一児童に対して証拠上「1/1、2/1〜6/1」と複数回の淫行があるのに、起訴状には「6/1」の淫行のみが記載されている場合の審判対象はどの行為か?

 児童福祉法違反(淫行させる行為)は常習的行為も含まれるので(その場合は、被害児童ごとに包括一罪)、 起訴状である程度期間が限定されていれば、その期間全部に及ぶということですね。
 常習罪、包括一罪の訴因特定の程度の問題です。
 控訴審弁護人としては、審判対象くらい一審で明確にして来て欲しいものです。

 なお、こういう理由で、児童福祉法違反(淫行させる行為)は表示と実体とが乖離していることがあるので、家裁に児童福祉法違反(淫行させる行為)が、地裁にその関係の罪が起訴されている場合には、家裁事件の審判範囲を吟味して、地裁事件との罪数関係・裁判管轄の当否を検討する必要があります。

 家裁事件の認定事実は表示としては、「6/1」の淫行であるが、家裁事件の淫行させる行為は、1/1〜6/1間に被害児童に対して継続反復的に行われたものであって、公訴事実としてはその一部が記載されているが、審判対象及び既判力(再訴遮断効)は、全期間の淫行に及ぶ。
 判例も同旨である。

東京高等裁判所昭和29年9月29日
論旨第一点について。
(一)児童に淫行をさせるという児童福祉法第三十四条第一項第六号違反の行為は、その淫行の回数が多数である場合にも、個々の淫行ごとに同条違反の罪が成立するのではなく、その全部を包括してただ一個の犯罪が成立するものと解するのが相当である。そこで多数回に亘り児童に淫行をさせているとき、同条違反の訴因を明示するに当つては、必ずしも個々の淫行の日時、場所等をすべて掲げなければならないものではなく、包括的一罪を構成する淫行の中の一つだけを例示的に挙げることによつても目的を達し得るものといわなければならない。

東京高等裁判所昭和27年9月2日
一、複数行為のそれぞれが、仮令業務上横領の罪の同一類型に該当する場合であつても、これを包括して一個の犯罪行為として観念するを相当とする場合には、公訴事実における罪となるべき事実の特定として、その行為についての日時、場所、被害者の氏名、被害額等の訴因を一々具体的に示ずの要はなく、日時についての始期と終期を掲げ、場所についてはこれこれの外何個所とし、被害額についてはその合計を示すだけで充分である。

東京高等裁判所判決昭和26年10月22日
そして連続犯の廃止せられた現行刑法の下にあつても原判示第二の(ニ)及び(三)のような事実関係においては各被頒布者の数に応ずる各独立の前記法条違反の罪を認むべきでたく被害法益の単一、その他個々の頒布行為の間の関係特にそれらが同一機会を利用した単一の犯意の発現たる一連の動作に過ぎない等の点に鑑みるときは右(ニ)及び(三)を夫々包括的に観察し右法条違反の各一罪と認定するのが相当である。然りとすれば原判決が被頒布者の一人一人につき逐一その氏名を挙け且つ各その頒布の日時場所を各別に特記することなく、包括一罪と認定した一連の行為につき犯罪の日時としてその始期及び終期を明らかにし、犯罪の場所としてその主要なもの数ケ所を列挙し、個六の被頒布者の氏名数名を具体的に掲げた上外伺名と判示するだけであつても包括一罪を構戎すベき罪となる事実の摘示としては何等欠けるところなく原判決には所論指摘のようた理由のくいちがいはないと謂わねばならぬ

名古屋高等裁判所昭和30年1月25日
 訴訟記録を調査するに、本件起訴状の公訴事実第二において、「その間(昭和二十九年八月二日頃より同年九月十四日までの間)接
続して前後数十回位にわたり云々」と記載されていることは論旨指摘のとおりである。刑事訴訟法第二百五十六条第三項において、公訴事実は、訴因を明示してこれを記載して、訴因を明示するには、できる限り、日時、場所及び方法を以て、罪となるべき事実を特定して、これをしなければならない旨を規定しているのであるが、その趣旨とすることろは、他の訴因との同一性を区別するに足る程度に、具体的に犯罪の日時、場所、目的物等を記載すれば足るものであり、本件のような包括一罪を構成する覚せい剤譲渡の罪については、犯行の始期と終期、場所、回数、相手方、その数量等を明らかにすれば、訴因は特定するというべきである。

名古屋高等裁判所金沢支部昭和34年12月17日
 第一点について。
 記録によれば公訴事実第一の記載が前掲の原判決第一事実と同一であることは所論のとおりである。所論は、「わいせつ図画陳列罪は観客を異にする毎に別個の犯罪が成立するものであるから、検察官は別個独立の映写行為毎に犯行日時及び観客を特定して起訴すべきである。然るに本件においてはかかる訴因の特定を欠くから、原審は本件公訴を棄却すべきであるに拘わらず右公訴を受理判決したことは不法に公訴を受理した違法がある」旨主張する。併し原審第一回公判において検察官は右公訴事実第一は包括一罪として起訴した旨釈明しているのであり右公訴事実の記載は犯行の始期終期場所方法を特定し包括一罪としての記載に欠けるところはない。従つて原審が右公訴を受理し判決したことは何等違法でない。論旨は理由がない。