グーグルの画像検索「ヘアヌード」でヒットするような画像(股は閉じている)
について、性的姿態撮影罪(2条1項1号ロ)の「性器」ないし「性器の周辺部」露出として有罪になっていることがありますが、
性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律
(性的姿態等撮影)
第二条
1 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
「性器」について定義がありませんし、「周辺部」というのも無限定ですよね。
刑法典に「性器」「周辺部」が登場したのは、令和5年改正が初めてで、これまで、法律上、定義がありません。刑罰法規としての明確性に欠けていると考えます。
最初の説はたたき台になりますので、狭くする主張になっています。今年中にはどっかの裁判所で判断されます。
4 医学書の「性器」の説明
まず、医学書での性器は、恥丘・大陰唇・小陰唇・膣口・尿道口・会陰・肛門までを指すようである。
これが「通常の判断能力を有する一般人の理解」とは言えないが、性器の部位の説明として載せておく。
step産婦人科①婦人科第2版p14
標準産婦人科学 第4版第2刷(2013年 医学書院)
笠井寛司「日本女性の外性器 統計学的形態論」増補改訂版p57
5 国語辞典の「性器」の説明
他方、国語辞典では性器=生殖器と説明されるが、厳密には定まらない。生殖に関係がない肛門・尿道口は含まないことになる。https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E6%80%A7%E5%99%A8/#jn-121234
せい‐き【性器】 の解説
生殖器官。生殖器。広辞苑
せい‐き 【性器】 生殖器に同じ。普通には外生殖器をいう。明鏡国語辞典
せい‐き【性器】
[名]生殖器。特に、人の生殖器(の、体外に現れている陰茎・陰囊(いんのう)・陰唇など)。
明鏡国語辞典 第三版 (C) Kitahara Yasuo and Taishukan, 2023新明解国語辞典
せい き[1] 【性器】
動物、特に人間の生殖器。
性器ところで、肛門は別途規定されているので、「性器」には肛門は含まないことは、解釈上明らかで、医学用語・国語辞典とは別に刑法独自の定義が求められる。
さらに画像が撮影されることによる法益侵害という観点かの概念を決める必要がある。
警察学論集第77巻1号p37
特集刑法・刑訴法の改正と性的姿態撮影等処罰法の制定
保護法益
性的姿態撮影等処罰法第2章の罪は、人の意思に反して性的な姿態を撮影したり、これにより生成された性的な姿態の記録を提供するといった行為がなされると、当該記録の存在・流通等により、他の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、それらの行為を処罰するものであり、その保護法益は、意思に反して自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られないという性的自由・性的自己決定権である。性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案【逐条説明】法務省令和五年二月
【説明】第2条から第6条までの各罪は、人の意思に反して性的な姿態を撮影したり、これにより生成された性的な姿態の記録を提供するといった行為がなされれば、当該記録の存在・流通等により、性的な姿態が当該姿態をとった時以外の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、それらの行為を処罰するものであり、その保護法益は、
〇自己の性的な姿態を他の機会(すなわち、当該姿態をとった時以外の他の機会)に他人に見られるかどうかという意味での被害者の性的自由・性的自己決定権である。
○第2条(性的姿態等撮影)
【説明】1趣旨
本条は、人の意思に反して性的な姿態を撮影する行為がなされれば、当該性的な姿態が記録されて固定化されるため、性的な姿態が当該姿態をとった時以外の機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては、不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、これを処罰するものである。
2撮影対象本条の罪の撮影対象については、撮影された場合に自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという意味での性的自由・性的自己決定権が侵害されるものとして、「性的姿態等」、すなわち、
○人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)や、人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分
○わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態としている。他方、性的姿態等のうち、撮影対象者が、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れる状況にあることを認識しながら自ら露出し又はとっているものについては、
○衣服を着けるなどしていれば見られないにもかかわらず、あえて自ら露出し又はとったものである以上、当該撮影対象者が、保護法益を放棄している場合があると考えられること
○性的姿態等が不特定又は多数の者の目に触れる状況であることを認識しながら自ら露出し又はとっている者が、撮影行為までも許容する意思なのか、その場で見られることだけしか許容しない意思なのかは、外形的・客観的に区別が困難であり、撮影対象者の内心で区別するほかないが、そのような内心のみで犯罪の成否が分かれることとすると、処罰の外延が不明確になると考えられることから、一律に撮影対象から除外することとしている(注1)。6 弁護人の主張する「性器」
考慮要素を挙げていく。
①ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法三一条に違反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつてこれを決定すべきである(最判s50.9.10)判例番号】 L03010152
集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反被告事件
【事件番号】 最高裁判所大法廷判決/昭和48年(あ)第910号
【判決日付】 昭和50年9月10日しかしながら、およそ、刑罰法規の定める犯罪構成要件があいまい不明確のゆえに憲法三一条に違反し無効であるとされるのは、その規定が通常の判断能力を有する一般人に対して、禁止される行為とそうでない行為とを識別するための基準を示すところがなく、そのため、その適用を受ける国民に対して刑罰の対象となる行為をあらかじめ告知する機能を果たさず、また、その運用がこれを適用する国又は地方公共団体の機関の主観的判断にゆだねられて恣意に流れる等、重大な弊害を生ずるからであると考えられる。しかし、一般に法規は、規定の文言の表現力に限界があるばかりでなく、その性質上多かれ少なかれ抽象性を有し、刑罰法規もその例外をなすものではないから、禁止される行為とそうでない行為との識別を可能ならしめる基準といつても、必ずしも常に絶対的なそれを要求することはできず、合理的な判断を必要とする場合があることを免れない。それゆえ、ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法三一条に違反するものと認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによつてこれを決定すべきである。
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そして「通常の判断能力を有する一般人の理解」を探るには国語辞典や他の法令における同じ用語を参考にするようである。【判例番号】 L05950788
【事件番号】 広島地方裁判所判決
【判決日付】 平成16年7月16日
【掲載誌】 最高裁判所刑事判例集61巻6号645頁
(2) 当裁判所の判断
まず,「い集」及び「集会」について検討する。「い集」とは,「多数のものが一時に寄り集まる」ことを意味し(松村明編「大辞林」三省堂,新村出編「広辞苑」岩波書店等参照),「集会」が「ある共通目的のために多くの人が一定の場所に集まること」を意味することもまた明らかであって,いずれも定義規定を待たねば明確性を欠くとはいえない。弁護人は,これらを規制対象として併記することによって,全体として対象が不明確となっていると主張するが,上記のとおり,それぞれ語義の明確な言葉を,「又は」との接続詞で結んで規制対象として掲げているのであり,それぞれが単独で規制対象となることは明らかであるから,弁護人の主張は採用できない。
次に,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような」との文言であるが,ここでいう「不安」とは,「漠とした恐れの感情」あるいは「これから起こる事態に対する恐れから,気持ちが落ち着かないこと」を意味し,「恐怖」とは「悪いことが起こるのではないかという心配」を意味する(いずれも松村明編「大辞林」三省堂等参照)のであって,その言葉自体,一般人が十分理解できるものであり,現に,軽犯罪法1条28号,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律29条2号,ストーカー行為等の規制等に関する法律2条2項,3条でも同様の文言が用いられている。加えて,本件条例は,上記のとおり,16条1項1号で,「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会」を禁止する一方,17条で,16条1項1号の行為のうち,「特異な服装をし,顔面の全部若しくは一部を覆い隠し,円陣を組み,又は旗を立てる等威勢を示すことにより行われたとき」に,広島市長による中止命令あるいは退去命令の対象としている。これらの規定ぶりからすれば,本件条例16条1項1号にいう「公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会」とは,単に,公共の場所で人が「い集又は集会」を催した場合一般を指すのではなく,参加者が,本件条例17条に規定するような態様を取るなどすることによって,殊更に他の公衆に「不安又は恐怖」を覚えさせ,その結果,当該公衆をして当該公共の場所を利用することをためらわせるような「い集又は集会」をいうものと解するのが相当である。そして,通常の判断能力を有する一般人であれば,具体的場合において,自己が行おうとしている「い集又は集会」が,本件条例16条1項1号で禁止される「い集又は集会」,すなわち,本件条例17条で規定する態様等で行われ,そのため,公衆に「不安又は恐怖」を覚えさせる結果,当該公共の場所を利用することをためらわせるような「い集又は集会」であるか否かは,容易に想定できるものというべきである。したがって,この点についての弁護人の主張も採用できない。② 国語辞典では「生殖器」と説明されている
国語辞典を見ると、おおむね生殖器とある。
https://dictionaRy.goo.ne.jp/woRd/%E6%80%A7%E5%99%A8/#jn-121234
せい‐き【性器】 の解説
生殖器官。生殖器。広辞苑
せい‐き 【性器】 生殖器に同じ。普通には外生殖器をいう。明鏡国語辞典
せい‐き【性器】
[名]生殖器。特に、人の生殖器(の、体外に現れている陰茎・陰囊(いんのう)・陰唇など)。
明鏡国語辞典 第三版 (C) KitahaRa Yasuo and Taishukan, 2023新明解国語辞典
せい き[1] 【性器】
動物、特に人間の生殖器。
性器大辞泉
せい‐き【性器】
生殖器官。生殖器。
日常用語的には、恥丘や陰裂は「性器」そのものには含まれないと解されている。
尿道口・肛門も生殖器ではないから「性器」に含まない
実際、恥丘・陰裂の外側は、ただの皮膚である。③ 裁判例における「性器」の範囲はもっぱら「大陰唇,小陰唇,陰核の部分」を指す
エ 判例で用いられる「性器」という用語は、もっぱら「大陰唇,小陰唇,陰核の部分」を指しているようである。
「わいせつ」(刑法175条)の判例を見ると、「性器」の用法・範囲については、「大陰唇,小陰唇,陰核の部分」を指しているようである。恥丘や陰裂を「性器」とするものはない。
肛門も性器に含まれないようである。裁判年月日 平成28年 5月 9日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(刑わ)3268号
事件名 わいせつ物陳列,わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録記録媒体頒布被告事件
裁判結果 有罪 上訴等 控訴 文献番号 2016WLJPCA05096006
2 本件各造形物のわいせつ性
(1) 関係各証拠(甲1ないし4,5[不同意部分を除く],10[不同意部分を除く],99,100)によれば,以下の事実が認められる。
本件各造形物(甲2ないし4)は,いずれも,女性器に印象剤をあてがい印象剤が固まったところに石膏を流し込み,石膏が固まった後に着色や装飾などを施して作成されたものである。本件各造形物について,その特徴は以下のとおりである。
ア 本体の表面全体が濃い水色で着色されているもの(甲2。以下「造形物1」という。)は,その表面において,大陰唇,小陰唇,陰核などの女性器部分が露わになっているものの,女性器部分の周辺は表面に凹凸が見られる。造形物1は,縦約19センチメートル,横約12センチメートルであるが,このうち,女性器を含む水色部分が露出しているのは,縦約10センチメートル,横約4センチメートル四方であって,それ以外の表面及び裏面全体は毛皮様のもので覆われている。また,表面部分には小さな銀色のビーズが連ねられているものが複数個取り付けられている。
イ 本体の表面が白色と銀色であるもの(甲3。以下「造形物2」という。)は,白色の本体表面部分の一部に銀色の曲線が多数着色された縞模様のものであって,表面部分には多数のラメ加工がされている。その表面においては,大陰唇,小陰唇,陰核などが露わになっている。造形物2は,縦約14センチメートル,横約12センチメートルであるが,このうち,女性器を含む白色部分が露出しているのは,縦約10センチメートル,横約8センチメートル四方であって,それ以外の表面及び裏面全体は毛皮様のもので覆われている。また,女性器部分の下部に赤字で「MAX」との文字を表した物が貼られ,その隣には黄色のスマイルマークが貼り付けられている。
ウ 本体の表面が濃い茶色に着色されているもの(甲4。以下「造形物3」という。)は,その表面においては,大陰唇,小陰唇,陰核などが露わになっており,肛門様のものや女性器周辺の皮膚のしわ様のもの,臀部の皮膚様のものも見られる。造形物3は,縦約15センチメートル,横約7センチメートルであって,裏面は特に着色されていない。また,女性器部分の外縁には,クリーム・ビスケット・苺・真珠様のものが多数配置されている。裁判年月日 昭和59年 6月13日 裁判所名 東京高裁 裁判区分 判決
事件番号 昭59(う)452号
事件名 住居侵入、準強制わいせつ致傷被告事件
裁判結果 破棄自判(確定) 文献番号 1984WLJPCA06130006
よつて、原審の記録並びに当審における事実取調の結果に基いて考察するのに、原判決が、右主張に符合する原審における被告人の弁解並びにこれと同旨の原審弁護人の主張に対し、これを採用しなかつた理由の要点を補足説明しているところは、関係証拠に照らして十分これを是認することができる。すなわち、被告人の本件所為の客観的内容及び態様等が原判決摘示のとおりであることは証拠上明らかであるところ、右に摘示された被告人の所為の客観的内容及び態様等に照らせば、右行為は客観的にみて性欲を興奮、刺激させ、一般人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するということができ、右のような内容及び態様等の行為であつてみれば、それが専ら被害者の肛門部を対象とし、直接性器に及ばないものであつても、わいせつ性の点では性器に対する行為と同一視すべきであることは、社会通念上明らかというべきである。
④ 不同意わいせつ罪の接触部位との比較
保護法益が類似している不同意わいせつ罪では、典型例では、対面の関係で、暴行脅迫を用いて、物理的に接触することが予定されているので、接触部位は限定されていない。また、着衣の上からでも可能とされている。薄井判事の分析がある。薄井真由子「強制わいせつ罪における「性的意図」」植村立郎「刑事事実認定重要判決50選_上_《第3版》」2020立花書房
ア 判断基準
第1に,判断基準として,「いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪の一般的な受け止め方を考盧しつつ客観的に判断されるべき」であるとする。これは,一般人からみて刑法176条の「性的な被害」と評価できるかという観点の検討を求めているものと考えられる 5)。強制わいせつ罪のわいせつ概念については,「性的性質を有する一定の重大な侵襲」と定義する見解が示されている 6) が,本判決もこの見解に親和的と解される 7)。
イ 具体的判断方法
第2に,具体的判断方法としては,まず,①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる行為と,②当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為があるとした。そして,②の行為については,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,○アその行為に性的な意味があるといえるか否かや,○イその性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断するものとした。その上で,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があるというのである。
したがって,「わいせつな行為」該当性の判断に当たっては,まず,「行為そのものが持つ性的性質」を検討することになる。
(2)行為そのものが持つ性的性質の判断について 8)
上記(1)イ①行為そのものが持つ性的性質が明確で,直ちにわいせつな行為と評価できる場合とはどのような行為であろうか。
本判決で問題となった「被害者に対し,被告人の陰茎を触らせ,口にくわえさせ,被害者の陰部を触るなど」の行為が,①の場合に当たることは異論のないところである(なお,平成29年改正により刑法177条の強姦罪は強制性交等罪となり,同罪の処罰対象となる性交等に膣性交のほか口腔性交・肛門性交が含まれるようになったため,現在ではそもそも陰茎を口にくわえさせる行為は176条ではなく177条による処罰対象となっている。)が,①の場合に当たる行為について,部位と態様の2つの側面から検討することとしたい 9)。
なお,治療行為としての性器等への接触については,「行為」にどこまでを取り込むかという観点から異論もあるだろうが,治療行為であることで性的性質が否定されるものと解されるから,後記(3)で取り上げる。
ア 性器(陰茎・陰部)への直接の接触行為
どのような場合が①の場合に当たるのかについて,本判決の判示では「強姦罪に連なる行為のように」とされており,上記のとおり平成29年改正後の刑法177条は強制性交等罪として膣性交(陰茎の陰部への挿入)・口腔性交(陰茎の口腔への挿入)・肛門性交(陰茎の肛門への挿入)の3類型を処罰対象としているから,これらの性交等,すなわち性器(陰茎・陰部)の挿入に連なる行為は性的性質が明確で直ちにわいせつな行為と評価できるということになる。
直接の接触は挿入に次いで性的侵襲度の高い行為であるから,本判決で問題となった行為のように,被害者の性器(陰茎・陰部)を直接触る,あるいは行為者の性器(陰茎・陰部)を被害者に直接触らせる行為は,明らかに①の場合に当たるものといえる。
イ 肛門,口腔への挿入や直接の接触行為
口腔と肛門については,それ自体を性器と同視できるというわけではないが,性交の一形態として口腔性交や肛門性交があることからみて,口腔や肛門への挿入や接触行為には性的要素が認められよう。
とりわけ肛門については,日常生活において物が入ったり他者が触ったりする部位ではないから,被害者の肛門に手指や異物を挿入したり直接触ったりする行為,あるいは行為者の肛門に被害者の手指や異物を挿入させたり直接触らせたりする行為は,肛門性交に連なる行為として,①の場合に当たるものと解される 10)。
他方で,口腔については,日常生活上,さまざまな物が入る部位であるから,口腔に手指や異物を挿入するとか,直接触るとかいうことだけでは性的性質が明確ということはできない。挿入は侵襲度の高い行為であるが,口腔への挿入の場合には,何を挿入するかによりその性的性質の有無及び程度が大きく変わるものと解される。例えば,行為者の舌を被害者の口腔に挿入する行為は,挿入するものとの関連で性的性質が強く認められるから,①の場合に当たるといえるのではないだろうか。これに対し,直接の接触の場合(この場合は口腔への接触ではなく唇への接触というのが正確かもしれない)には,挿入よりも侵襲度が下がることから,それだけで①の場合に当たるというのは困難であるように思われる 11)。接触の執拗さ(継続性)も踏まえた上で,①の場合に当たるといえることもあろう。
ウ その他の性的部位への直接の接触行為
性器,肛門,口腔以外の性的部位としては,胸と臀部があげられることが多い。胸と臀部は性を象徴する典型的な部位といえるから、被害者の胸や臀部を直接触ったり揉んだりする行為,あるいは行為者の胸や臀部を直接被害者に触らせる行為は,瞬間的な接触や狭い範囲の接触でなければ,性的性質が強く,①の場合に当たるのではないかと思われる 12)。もっとも,接触の具体的態様を考慮することにはなろう。
なお,男性や児童の胸が女性の胸と性的性質が同じかどうかは議論のあるところだが,強制性交等罪において男女の別がなくなり,今日では性的な被害については男性や児童も女性と同じであると一般的に受け止められていることからすれば,男性や児童の胸の性的性質について女性の胸と区別する解釈は基本的に採り得ないものである 13)。
エ その他の行為
性器あるいは性的部位への着衣の上からの接触や,接触を伴わず,被害者の性器あるいは性的部位を見たり撮影したりする行為については,直接の接触よりは性的侵襲度が低いといえるから,①の場合ではなく,②の場合として,行為が行われた際の具体的状況等を踏まえて「わいせつな行為」といえるかを判断するのが相当と解される。これに対して、性的姿態撮影罪の性的な部位は、接触行為ではなく撮影行為による性的自己決定権侵害であって、最初から、侵害行為が限定されているし、対象の部位についても
イ人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)
に限定されていて、臀部の周辺部や胸部の周辺部は含まないとされていることから、「性器」「周辺部」についても、限定的に解釈される必要がある。⑤ 不同意性交罪における対象部位との比較
令和5年改正で、「膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為」が「性交等」に含まれることになった。対象部位は、「穴」ということで、膣・肛門に限定されており(口腔は除外された)明確になっている。性的姿態撮影罪の性的部位は、挿入ではなく撮影の対象であるから、これよりは広くてもいいことになる。
第一七七条(不同意性交等)
1 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。⑥ 「性器」の説明は性的姿態撮影の定義に置かれているから、性器・非性器の境界線は物理的形状を重視して、目で見て分かるという観点から決められるべきである。
わいせつ行為(176条)では接触による性的自由の侵害という点で、部位が無限定であるのとは対照的に、性的姿態撮影罪は撮影行為に特化した罪であるから、「胸部」という隆起部、「肛門」という穴、臀部という隆起部という外形的な物理的形状に着目して部位を極めて限定している。
だとすれば、「性器」の定義も、見て分かる形状に着目して部位が限定されると解すべきである。即ち、下腹部や鼠径部から連続して皮膚がつながっているのが落ち込んで、大陰唇方向に落ち込む場所=陰裂の内側が「性器」である。
恥丘は生殖とは関係ない皮膚であって、下腹部とは連続した皮膚であって、乳首・肛門と同様の特有の物理的形状がなく、触っても境界線がわからないことから、「性器」ではない。
陰裂の外側も、生殖とは関係ない皮膚であって、下腹部・鼠径部とは連続した皮膚であって、乳房・肛門・臀部と同様の特有の物理的形状がなく、外見上境界線がわからないことから、「性器」ではない。⑦ 男性・女性の統一的な解釈
これは男児の場合の性器の範囲とも整合する。即ち、男児の場合は、陰茎・陰嚢という生殖器が露出しているから、それが「性器」であって、その上の方の下腹部や鼠径部は性器ではなく、女児の生殖器は、股の内側にあって、生殖に関係するのは、陰核・大陰唇・小陰唇・膣口である(尿道口は排泄器官であるから含まれない。)から、これらを「性器」とすると、位置的に一致する。
これは性分化の過程とも一致する。http://jspe.umin.jp/public/img/seibunka01.jpg
⑧ 恥丘性器説・陰裂性器説の弊害
もしも恥丘までも「性器」や「周辺部」に含まれるとすると、連続している皮膚の上に境界線を観念することになって、恣意的になる。
公刊されているヌード写真で説明すると、
山本雄三「裸婦の描き方」p78
こんなところで線引きしたり
こんなところで線引きしたり
ということになる。また、その周辺部には恥丘のさらに外側、即ち例えば単なる下腹部も含まれてしまうことになるから、いわゆる「へそ出し」のアイドル写真等もいわゆる「性的姿態撮影罪」となってしまい、その範囲があまりにも広汎化してしまう。
こんな写真も性器の周辺部を露出していることになる。
https://www.google.com/search?q=%E3%83%93%E3%82%AD%E3%83%8B%E3%80%80%E5%B0%8F%E6%B3%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E5%AD%90&num=10&newwindow=1&sca_esv=1deeb23685599852&rlz=1C1CHZN_jaJP975JP975&udm=2&biw=1422&bih=701&sxsrf=ADLYWILOii9Dq-KuZgJhy-nGwnhSmYrUMA%3A1737143636463&ei=VLWKZ5L9G7WOvr0P9O-v6QU&ved=0ahUKEwiS9_-qxP2KAxU1h68BHfT3K10Q4dUDCBE&uact=5&oq=%E3%83%93%E3%82%AD%E3%83%8B%E3%80%80%E5%B0%8F%E6%B3%89%E4%BB%8A%E6%97%A5%E5%AD%90&gs_lp=EgNpbWciG-ODk-OCreODi-OAgOWwj-azieS7iuaXpeWtkEjLJlD-BlikIHABeACQAQCYAZIBoAGnD6oBBDAuMTW4AQPIAQD4AQGYAgSgApwEwgIHEAAYgAQYBMICBhAAGAQYHsICCBAAGAQYCBgemAMAiAYBkgcDMC40oAeBFw&sclient=img
⑧ 小括
かくして、上記の理由を総合して、弁護人は、
性器とは、陰裂(ワレメ)の内側にある器官、すなわち、陰核、小陰唇・大陰唇の内側・膣前提・膣口を含む領域(尿道口・会陰を含まない)を指し、そう解して初めて、刑罰法規としての明確性を備える
と主張する。7 「周辺部」という字句は全く無限定なので、無効な構成要件である。
わいせつ行為(176条)では接触による性的自由の侵害という点で、部位が無限定であるのとは対照的に、性的姿態撮影罪は撮影行為に特化した罪であるから、「胸部」という隆起部、「肛門」という穴、臀部という隆起部という外形的な物理的形状に着目して部位を極めて限定している。
そこで「性器」の定義も、見て分かる形状に着目して部位が限定されると解されるところ、「性器の周辺部」というのは、「通常の判断能力を有する一般人の理解」において、外見上範囲が限定できない。
すなわち、「性器の周辺部」についてこういう範囲と理解する人もいるだろうし
step産婦人科①婦人科第2版p14
こういう範囲と理解する人もいるだろうし
こういう範囲と理解する人もいるだろうし
こういう範囲と理解する人もいるだろう
裸婦の基本ポーズ(視覚デザイン研究所)p8
「通常の判断能力を有する一般人の理解」において、どれが正解で、どれが誤りかが定まらない。
かくして、「周辺部」という文言は、人体において、全く無限定であって、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれないから憲法31条に違反し(最判s50.9.10)、無効である。





