児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させる行為は~その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要がある(大阪高裁R02.10.02)

被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させる行為は~その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要があることに加え,原判決が被害者をして画像ないし動画データを送信させるという,それ自体は性的な意味合いがなく強制わいせつには当たらない事実を含まれる。(大阪高裁R02.10.02)
 不利益主張って言われるので、軽く主張したんですが、長々と判示いただきました。
「その性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要がある」そうですから、強制わいせつ罪で起訴されている事件では、そういう事実を認定してください。


阪高裁令和2年10月2日
1 原判示第1及び第3の各事実に関する法令適用の誤りの主張について
論旨は,原判決が認定した原判示第1及び第3の各事実について,いずれも強制わいせつ罪又は同未遂罪が成立し,このような場合には法条競合により強要罪または同未遂罪が成立しないのに,それらの成立を認めた原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,原審記録を調査して検討するに,強制わいせつ罪にも強要罪にも該当する事実について,強制わいせつ罪が適用された場合,法条競合により強要罪の規定は適用を排除されるが,そのような場合においても実体法上およそ強要罪が成立し得ないことを意味するものではないと解されるところ,以下のとおり,原判決は,原判示第1及び第3の各事実につき,強制わいせつ罪ないし同未遂罪の該当性を認定しながら強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したものとみることはできず,その法令適用に何ら誤りは認められない。
すなわち,原判決が認定した原判示第1及び第3の各事実の要旨は,被告人が各被害者に対し,それぞれ脅迫文言を記載したメッセージを送信するなどして脅迫し,これによって被害者らを畏怖させ,被害者らに裸の姿態をとらせて自らこれを撮影させた上,その画像ないし動画データを被告人の携帯電話機に送信させ,又は送信させようとしたが未遂にとどまったというものであるところ,なるほどこれらの事実中には,各被害者を脅迫し畏怖させた上,同人らに裸の姿態をとらせて自ら撮影させ,又はさせようとしたという点では,性的な意味合いを持つ行為が含まれている。
しかし,このような行為がその性質上当然に強制わいせつ罪に当たる行為とみることはできず,その該当性を判断するに当たっては,当該事案における具体的状況等に則して強制わいせつ罪に係る構成要件を充足するに足る事実があるか否かを総合的に考慮する必要があることに加え,原判決が被害者をして画像ないし動画データを送信させるという,それ自体は性的な意味合いがなく強制わいせつには当たらない事実を含めて,これら一連の行為が被害者に義務なき行為を行わせたものとして強要罪ないし同未遂罪に当たる旨認定し,法令の適用欄においてもこれらの罪を適用していることにも照らすと,原判決が強制わいせつ罪ないし同未遂罪に当たる事実を認定しながら,強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したものではないことは,原判決の記載自体から明白というべきである。
したがって,原判決が原判示第1及び第3の各事実について,強要罪ないし同未遂罪の規定を適用したことが誤りであるとは認められない。
論旨は理由がない。

検察官もわいせつではないと主張していたことがある。

答 弁 書
平成27年5月18日
                     名古屋高等検察庁金沢支部

 強要,同未遂,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反 
 上記被告人に対する頭書被告事件について,弁護人の平成27年4月6日付け及び同月10日付け各控訴趣意に対する答弁は下記のとおりである。


(3) 判示第1の1~2の事実,判示第2の1の各事実は,告訴なき強制わいせつ罪(同未遂罪)を構成するので,無罪である旨の主張について
ア 一般論として,「実体法のレベル」では,強制わいせつ罪が成立すればその一般法的性格を有する強要罪は法条競合により成立しないことは,弁護人による懇切丁寧なご指摘を待つまでもなく,検察官としても異論を唱えるものではない。具体的な事実関係を離れた,抽象的な法理論としてはそのとおりである。しかし,かかる一般論はさておき,本件における弁護人の前記主張は,以下の点において理由がない。
イ 弁護人は,多数の判例を挙げて,本件においても,これらの判例同様に,被告人が被害児童らをして自らの写真撮影行為が強制わいせつ罪における「わいせつ行為」に該当する旨主張する。
 しかしながら,弁護人が掲げる判例は,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」に関する判断であって,被害者自身に「撮影させる行為」に関するものではないし,他の裁判例の事案においても同様である。
 例えば
①東京高判昭29.5.29(特報40号138頁)~写真師が15ないし22歳の女性に対し水着写真を撮ってやるなどと申し向け,着替えるや水着や下着をはぎ取って裸にし,手で陰部を開いて写真を撮った事案につき,強制わいせつ罪の成立を認めた事例
②東京地判昭62.9.16(判時1294号143頁)~全裸写真を撮影して弱みを握り,自己の店舗で従業員として稼働することを承諾させようとして,女性に暴力を加え負傷させた事案につき,被害者を全裸にして写真を撮影する行為が自らを男性として刺激興奮させる性的意味を有した行為であることを認識しながらあえて敢行した以上,強制わいせつ致傷罪が成立するとした事例
③静岡地浜松支判平11.12.1(判タ1041号293頁)~幼児性癖(ロリータコンプレックス)を有する被告人が11歳と8歳の少女二人を言葉巧みに自己の自動車内に連れ込み,全裸にさせてわいせつ写真を撮影した事案につき,強制わいせつ罪(176条2項)を適用した事例
などについても,撮影に至る経緯や撮影状況については若干の差異はあるものの,いずれも,被告人自らが「撮影する行為」を強制わいせつ罪における「わいせつ行為」として認定したものであって,被害者自身に「撮影させる行為」に関する判断ではない。
 被告人自らが撮影する場合と,被害者に撮影させる場合とでは,被害者にとってみれば,他人に自らの恥ずかしい姿態を撮影されることと,自らがそれと知りつつ撮影することの違いが生じているのであって,その性的差恥心の程度には格段の差があり,必然的に強制わいせつ罪の保護法益である「性的自由」の侵害の程度も両態様を比較すれば大きく異なる。
 かかる差は強制わいせつ罪における「わいせつ行為」か否かの判断においては重要な要素を占めているものと思われるのであり,被害者の恥ずかしい姿態を被告人自ら撮影する行為がわいせつ行為であると認定されたとしても,被害者に恥ずかしい姿態を撮影させる行為をもって,直ちに強制わいせつ行為であると認定するには躊躇せざるを得ない。弁護人が縷々掲げる判例,裁判例が存在するにもかかわらず,これまで,本件のみならず,暴行脅迫により被害者自らに恥ずかしい姿態を「撮影させた」事案は多数件にわたり発生しているものと思われるところ,かかる事案を強制わいせつ罪として積極的に処断した事例はほとんどないものと思われるが,それはかかる理由によるものであろう。
ウ この点,弁護人は,「被害者を強要して撮影させる行為も間接正犯と構成するまでもなく,性的意図を満たす行為であれば,わいせつ行為である」とのみ記載する。弁護人が「間接正犯と構成するまでもなく」との文言の意味は定かではないが,間接正犯として構成できるかどうかは,実際に撮影した者が被害者自身であっても,行為者自らが「撮影する行為」として認定できるかどうかの分水嶺であるほど重要な争点であって,およそ「間接正犯と構成するまでもなく」の一言で片付けられる事情ではない。また,強制わいせつの間接正犯が成立するような場合は,むしろ準強制わいせつ罪の対象になるものと思われる。しかしながら,本件の事実関係を前提にするならば,およそ準強制わいせつ罪の成否が問題となる事案ではなく,また,間接正犯の成立が考えられる事案でもないことは明らかである。この点につき,弁護人何ら理由が示されていない。加えて,「性的意図を満たす行為」であればわいせつ行為である旨の論旨はおよそ理由がない。
エ 確かに,被害者との直接的な身体的接触が要件でないことは弁護人のご指摘のとおりである。しかしながら,判例の判示部分については,およそ判断の前提となる具体的事実関係を離れて,当該判示部分のみが独立した普遍的な規律として定立されるものではないというのもまた,法理論としては常識中の常識ともいうべき事項である。したがって,「わいせつ行為は身体的接触を要件としない」との判示部分が,その判断の前提となる具体的事例を離れて,独立した普遍的かつ抽象的な基準として機能することはない。
 したがって,本件において,身体的接触がないからといって,これを「わいせつ行為」の判断の基準と考え,これを理由に直ちに「撮影する行為」と同様に,「撮影させる行為」についても,強制わいせつ罪における「わいせつ行為」であると認定することは,論理飛躍以外の何物でもない。この点に関する弁護人の主張は理由がない。
オ なお,弁護人は,医師による準強制わいせつ事案において,被害者の抗拒不能に乗じてわいせつ写真を「撮影させた行為」につき,「わいせつ行為」であると認定した下級審裁判例(東京地判平18.3.24)をもって前記主張の根拠のーつとして主張するようである。しかしながら,わいせつ概念については共通するものがあるとはいえ,同事例は,いわば強制わいせつの間接正犯的な事実関係を基にした準強制わいせつの事案に対する判断である。その前提となる事実関係は,前記のとおり,被告人自らが被害者を利用した間接正犯的形態として,被告人自らが「撮影した行為」と評価する余地がある事案であるといえ,本件事案と明らかに前提とする事実関係が異なる。したがって,同裁判例の存在を根拠とする弁護人の主張は理由がない。

答 弁 書

平成27年12月18日
                  東京高等検察庁

 被告人に対する強要,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件につき,弁護人の控訴趣意に対する検察官の答弁は,下記のとおりである。


2 原判決に法令適用の誤りがないこと
(1) 原判決が強要罪及び児童ポルノ3項製造罪の成立を認めたことに法令適用の誤りがないこと
 弁護人は,本件訴因が実質的には親告罪である強制わいせつ罪に該当する旨主張する。そこで,原判示事実及びそれと同旨の公訴事実のみでも強制わいせつ罪の成立を認めることができるかどうかにつき,検討する。
 確かに,原判示事実もそれと同旨の公訴事実も,被告人が,被害者を脅迫して,同人に乳房,性器等をタブレット端末で撮影させたなど,強制わいせつ罪の構成要件に該当し得る客観的事実を含んでいるが,同罪の成立には,判例上,犯人が性的意図を有していることが必要とされる(最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁。この判例が変更されていないことについては,後述する。)。しかるに,原判示事実にもそれと同旨の公訴事実にも,被告人が性的意図を有している事実は明示されていない。しかも,起訴状には,「罪名及び罰条」欄に,児童ポルノ3項製造罪のほか,「強要 刑法223条1項」と記載されているのみである。したがって,検察官において,被告人が性的意図を有していることを含めて訴因を設定する意図があったとは認められず,原判決において,被告人が性的意図を有していることを含めた訴因であることを前提に原判示事実を認定したとも認められない。なお,原判決は,「被告人は,主として自らの性的欲求を満たすために本件犯行に及んだものと認められる。」と説示してはいるが,それは,「量刑の理由」として,被告人にそのような犯行動機があった旨説示しているに過ぎず,「罪となるべき事実」として,性的意図の存在を認定したものではないから,この説示の存在が上記結論を左右するものではない。
 したがって,原判示事実及びそれと同旨の公訴事実のみでも強制わいせつ罪が成立するとは認められない。
 よって,原判決が強要罪及び児童ポルノ3項製造罪の成立を認めたことに法令適用の誤りはない。論旨に理由はない。
 なお,控訴趣意書18頁記載の東京高判平成26年2月13日東京高刑裁速報3519号は,確かに,なお書きとして,強制わいせつ罪の成立に性的意図は不要であるかのような説示をしている。しかし,当該事件は,まさに同事件の被告人が犯行当時性的意図を有していたか否かが争点であり,同事件の第一審判決は,同事件が性的意図を欠いた報復目的で行われたとする同事件の第一審弁護人の主張を排斥し,同事件の被告人に性的意図と共に報復目的が併存していたことを認定しているところ,控訴審たる東京高等裁判所判決も,同事件が報復目的のみで行われたとする同事件の控訴審弁護人の主張を排斥して,第一審の判断を支持し,同事件の被告人に性的意図と共に報復目的が併存していたことを明確に認定した上,更に,なお書きで,上記の説示をし,弁護人の控訴を棄却したのである。そこで,上告審弁護人は,上告趣意として,同東京高判が最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁に反していると主張したが,最高裁判所第二小法廷は,当該判例違反の論旨は原判決に影響のないことが明らかな事項に関する判例違反の主張であって刑訴法第405条の上告理由に当たらない旨判示して,決定で上告を棄却し,同事件の被告人からの異議申立てをも決定で棄却したのである。よって,上記東京高判の存在にもかかわらず,最判昭和45年1月29日刑集24巻1号1頁は,判例として変更されてはいないことになる。

名城大学法学部准教授 滝谷英幸「児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と児童ポルノ規制法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」刑事法ジャーナル64号

名城大学法学部准教授 滝谷英幸「児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と児童ポルノ規制法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」刑事法ジャーナル64号
 姿態をとらせて製造罪について、複製行為に処罰範囲を広げたのは、押収された複製物を没収するためです。理論的根拠はありません。ひそかに製造罪についても結論は決まっていて、理由は説明できないようです。

第2 複製行為と製造罪,
問題の所在
本件同様、児童ポルノの作成は、対象児童をビデオカメラ等で撮影→ビデオカメラ等に(3)データを記録(以下、このような行為を「1次製造行為」という)→保存・視聴等を容易にするためデータをパソコンのハードディスク等にコピー(以下、このような行為を「複製行為」という)、といった経過をたどることが多い。
ある記録媒体に蔵されたデータを別の記録媒体にコピーすれば新たな児童ポルノが生み出され、それに伴う種々の問題(4)が生じ得るから、複製行為をも製造罪として罰すべきではないか、ということになる。
しかし、特に4項製造罪や5項製造罪においては(5)、複製行為の時点では「姿態をとらせ」るとか「ひそかに」撮影するとかいった行為は存在しない(6)ため、「プラスアルフア」と複製行為の結びつきが認められず、これらの罪は成立しないのではないか、との疑問が生ずるのである。
(5) 3項製造罪・7項製造罪については、一貫して提供目的のもとに1次製造行為と複製行為がなされることが多いためこの問題は比較的生じにくいと思われる。
(6) 5項製造罪については、複製行為を「ひそかに」行った-たとえば、撮影したデータを自宅で「ひそかに」パソコンにコピーしたとして同罪の成立を認める解釈が文理上不可能とまではいえないかもしれない。
しかし、その実質は単純製造の処罰であろう。

・・・・・・・
(2) 製造罪における「プラスアルファ」の意義
処罰の必要性という側面から(1)でみた主張がなされることは理解できる。
しかし、問題は、前述のように、「プラスアルファ」との結びつきが説明できなければ複製行為の処罰が実質的には単純製造の処罰になってしまう、ということである(10)。
この点を検討するには、製造罪において「プラスアルファ」がもつ意味を考える必要があろう(11)。
まず、3項製造罪及び7項製造罪については、提供目的の存在により製造された児童ポルノの流通可能性が高まるという意味で、提供目的は-たとえば私文書偽造罪(刑法159条1項)における行使の目的とパラレルに製造行為の危険性を増大させる主観的違法要素として理解できる(13。
これに対し、4項製造罪と5項製造罪における「プラスアルファ」の意味については、次の2つの方向性が考えられる。
第1は、「姿態をとらせ」たり「ひそかに」撮影したりすることは、それ自体が対象児童の権利を侵害するものであり、それが製造行為自体の-単独では可罰的ではない二侵害性に合算されることで、4項製造罪・5項製造罪として処罰される、という理論構成である(以下、「理論構成A」という)('3X」4o第2は、「姿態をとらせ」て、あるいは、「ひそかに」なされた児童ポルノの作成であることが、何らかの意味で製造行為の評価に影響を及ぼす、という理論構成である(以下、「理論構成B」という)。
「製造罪」の解釈としてはこちらの方が素直といえるかもしれない(前述のような3項製造罪の理解はこれに分類される)。
まず、4項製造罪について、「姿態をとらせ」ることは、行為者が-状況・態様次第で程度の差はあろうが-能動的に児童ポルノの内容を決めることを意味する。
多くの場合、その内容は、より過激な-それゆえ、対象児童への侵害性の大きい(15)ものとなろう。
そうした観点から、「姿態をとらせ」ることが製造行為の侵害性を高めるという理解があり得よう(以下、「理論構成B/4項」という)(16。
また、5項製造罪については、「ひそかに」撮影等をする場合はそうでない場合に比べ児童ポルノの作成が成功する可能性が高まるという意味で、「ひそかに」という要素が製造行為の危険性を高めるという理解が可能であろう(以下、「理論構成B/5項」という)(17。
(3) 複製行為の処罰の可能性さしあたり1次製造行為(のみ)の処罰を念頭に置くならば理論構成A・Bはいずれも成り立ち得ると思われるが、複製行為の処罰との関係ではどうか。
まず、理論構成B/4項では、複製行為の侵害性の大きさは説明できても、条文上、1次製造行為者=複製行為者であることが要求されている点の説明に窮する。
仮に「姿態をとらせ」ることが児童ポルノの内容に影響を及ぼすとすれば、「姿態をとらせ」た上で作成された児童ポルノを複製する行為は1次製造行為と同等の侵害性を有することになるはずであるが、この理は1次製造行為者と複製行為者が一致しない場合にも当てはまってしまうからである。
次に、理論構成B/5項においては、複製行為の時点ではすでに1次製造物が存在しているところ、それが「ひそかに」作成されたものであるか否かは複製行為の評価に影響を及ぼすことはないはずであるから、「ひそかに」という要素と複製行為の結びつきが認められなくなる。
もっとも、このように1次製造行為と複製行為とを各別の2個の行為として把握するのではなく、両行為を「1個の行為」として一体的に把握できるのであれば、「ひそかに」という要素がその「1個の行為」全体と結びつくものと解する1次製造行為が「ひそかに」なされることで、(同行為を含む) 「1個の行為」全体が成功する可能性が高まると考える-ことができるため、複製行為まで含めて5項製造罪により処罰することが可能になろう(なお、1次製造行為者≠複製行為者の場合、〔少なくとも共犯関係が存在しない限り〕両行為を「1個の行為」として一体的に把握することはできないと思われる。
それゆえ、このように「両行為の一体的把握が可能であること」という条件を課すことで、同時に、両行為を同一人物が行ったことも要求されることになる)。
また、理論構成Aにおいては、「プラスアルファ」と製造の両方を行っていなければならないのであるから、1次製造行為者=複製行為者であることが当然に要請される。
もっとも、1次製造行為と複製行為をまったく別個の行為と評価せざるを得ないような状況では「プラスアルファ」と複製行為との結びつきを認めることが難しくなるため、やはり、1次製造行為と複製行為の一体的把握が必要になろう。
以上より、5項製造罪については、理論構成Aによるにせよ理論構成B/5項によるにせよ、1次製造行為と複製行為を「1個の行為」として一体的に把握できる限度において、複製行為をも処罰対象に含めることが可能になる。
その上で、さらに、いかなる根拠で、また、どの範囲で「1個の行為」という評価をなし得るかが問われるのである。
この点については、児童ポルノ法が児童ポルノの代表例として「写真」を挙げている(2条3項柱耆) ことが注目される(18
 すなわち、写真が完成するまでの途中過程(未現像フィルムの作成→現像によるネガの作成→印画紙への焼付け)においても対象児童の姿態を視認できる有体物は介在しており、それも児童ポルノに当たるが、同法は写真ないしそれと同等以上の鮮明さ.容易さで視認できるレベルのものを児童ポルノのいわば「単位」として想定しており、それに対応する形で、そこに至るまでの数次の作業過程を包括して「1個の行為」と理解している、とするのである。
本件に即していうと、ビデオカメラからパソコンのハードディスクに動画データを取り込むことは、写真でいえば印画紙への焼付けに相当する(19)と考えられるため、少なくともこの段階までは「1個の行為」として「ひそかに」という要素との結びつきを肯定できるであろう。
(4) 本決定の評価本件のようなケースを児童ポルノ法が処罰対象としておよそ想定していないとは考えにくいため、一切の複製行為を処罰対象外とすることは妥当ではあるまい。
前述のような説明が可能な範囲で複製行為にも5項製造罪を適用すべきである。
したがって、本決定の思考過程は明らかではないものの鋤、その結論には賛成できる。
ただし、仮に、本決定が、どの範囲であれば「1個の行為」と評価できるか、という視点に基づく限定を一切設けず、(1次製造行為者=複製行為者である限り) 1次製造行為とは完全に別個の行為と評価すべき複製行為についてまで5項製造罪が成立するという立場であるなら、疑問がある(20)。
(たきや.ひでゆき)

監護者わいせつ罪の実刑事案(佐賀地裁R2.6.11)

 監護者わいせつ罪の科刑状況をみると、1回だけなら執行猶予になるんですが、「自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,」ということで、起訴されてない余罪があると考慮されて実刑になります。
 ということは、弁護人は、訴因では1回のわいせつ行為とされていても、余罪の回数・期間を争うことになります。児童淫行罪の実務と同様です。

監護者わいせつ被告事件
佐賀地方裁判所令和2年6月11日

       主   文

 被告人を懲役1年8月に処する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,別紙の2記載の者(以下「A」という。)の実母と婚姻してその娘であるAと養子縁組をし,同人と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護する者であるが,同人が18歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,令和元年11月中旬頃,別紙の3記載の当時の被告人方において,就寝するために横たわっているAの着衣の中に手を差し入れて直接その胸をもみ,もって,同人を監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした。
 【法令の適用】
罰条       刑法179条1項,176条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
 【量刑の理由】
 被告人は,被害者が就寝しているときを狙い,本件犯行が発覚しても薬を塗布していただけであるとの弁解ができるようにクリーム等を準備して,被害者の背中等にクリームを塗布しながら本件犯行に及んでおり,わいせつ行為の態様も直接的であり,本件犯行は巧妙で悪質なものである。被害者は本件被害を受けた際,被告人に怒られることを恐れて,寝たふりをして耐え,その後もなかなか周囲に被害を打ち明けられずに悩んでいたのであり,被害者が感じた屈辱,恥ずかしさ,恐怖は大きい。被告人は,被害者が小学校低学年のころから養父としてその監護をしてきたものであり,本来であれば,被害者の心身の健全な発達のために同人を守るべき立場であるにもかかわらず,自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,被告人のことを父親として信頼してきた被害者の心を深く傷付け,今後の心身の健全な発達にも深刻な影響を及ぼしかねない点は,強い非難に値する。
 このような本件犯行の重さを考慮すれば,被告人の刑事責任もこれに応じて重いというべきであり,執行猶予を付するのが相当な事案とはいえず,実刑が相当である。
 なお,弁護人は,被告人は本件犯行時,被害者が就寝していると思っており,監護者としての影響力を利用しようとの積極的な意図までは有していなかったから,この点は被告人にとって有利な情状として考慮すべきであると主張する。
 しかしながら,本罪においては,監護者として有する一般的かつ継続的な影響力がある状態でわいせつ行為に及ぶことが非難されるべきであるから,前記影響力を基礎付ける事情を認識していれば,ことさらに前記影響力を利用しようとの積極的・具体的な意図を有していなかったことをもって,刑を軽くすべき事情であると評価することは相当でない。被告人は,被害者が自己の養女であり同居して指導監督している等の,前記影響力を基礎付ける事情を認識していることはもちろん,本件犯行時においても,被害者が目を覚ますかもしれないとの認識も有しながら犯行に及んでいたことが認められ,被告人の主観面について刑を軽くすべき事情があるとはいえないから,この点についての弁護人の主張は採用することができない。
 他方,被告人が前科を有しないこと,被害者の母親との離婚及び被害者との離縁が成立し,被告人の母親宅に転居して生活環境を変え,被害者に対して総額360万円を今後10年間かけて支払う旨の示談をするなど,再犯防止と被害弁償に向けた意欲を示していることを,被告人にとって酌むべき事情として考慮し,主文の期間の刑とする。
(求刑 懲役2年6月)
  令和2年6月11日
    佐賀地方裁判所刑事部
           裁判官  西村彩子

検察官が「証拠に基づかない弁論だ」と文句付けた「大法廷h29.11.29を受けて青少年条例の「わいせつ」の定義も再定義が必要だという主張」

 判例を立証しろ言われましてもね。

 青少年の健全育成という保護法益からみても、行為者の性的意図は不要だと思うので、従前の定義(刑法176からの借用)では通用しないと思うんですよ。

 


 本件条例は
■■■■■■■■■■■■■■■■

としており、「淫行」については、判例最判S60.10.23)により「青少年を誘惑し、威迫し、欺罔しまたは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交または性交類似行為をいうものと解すべきである。」と合憲限定解釈がなされているのであるから、「わいせつな行為」についても同様の限定解釈が必要である
 条例の「わいせつ行為」の定義に関する判例を見ると、判例も刑法176条と同義と考えているようである。
 しかし、いずれも最判S60.10.23以前のものであって、限定解釈を加えていない点で相当でない。
 また、最判S60.10.23のように条例の「淫行」に性交類似行為を含めるとすれば、条例の「わいせつな行為」からは性交類似行為を除外する必要があるから、刑法とは別に定義する必要がある。

①東京高裁s39.4.22
昭和39年 4月22日 東京高裁 昭38(う)2587号
裁判区分 判決  文献番号 1964WLJPCA04220007
◆埼玉県青少年愛護条例一〇条一項の合憲性(合憲)◆同条例にいう「みだらな性行為又はわいせつな行為」の意義.
出典  高検速報 1182号

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②大阪高裁s48.12.20

 

 

 

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高松地裁S43.5.6

 

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最高裁判例解説
 高橋判事は最判S60.10.23の判例解説で、「わいせつな行為」についても判決の影響があるとされているが、最判の事例は性行為の事案であるから、「わいせつ行為」についての解釈は変更されていない。再定義が必要である。
最高裁判所判例解説
刑事篇昭和60年度201頁
最高裁判所大法廷判決昭和57年(あ)第621号
福岡県青少年保護育成条例違反被告事件
昭和60年10月23日高橋省吾

 

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中尾佳久 前最高裁判所調査官「ひそかに児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為と同法7条5項の児童ポルノ製造罪の成否」ジュリスト1549号

 ひそかに製造というのは、法文上は撮影者以外の者による単純複製行為も含みうるところ、最決R1.11.12で、盗撮者・撮影者が複製する場合だけが処罰されると判示した点に意味があると考えています。

Ⅱ、審理の経過
1審において, 弁護人は、事実関係を争わず, 被告人は懲役2年, 4年間執行猶予,付保護観察に処せられた。

被告人は控訴し・理由不備訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当と
多岐にわたる主張をしたところ, 原判決は,職権判断として, 1審判決は審判の請求を受けない事件について判決をしたから破棄を免れないとした上で,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないとの所論に対しては, 「ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる」との判断を示し,被告人を懲役2年,4年間執行猶予,付保護観察に処した。
これに対し,被告人は,①事実について児童ポルノ製造罪は成立しないなどと主張して上告した。


Ⅲ5項製造罪の立法趣旨等
5項製造罪は,盗撮により児童ポルノを製造する行為が,通常の生活の中で誰もが被害児童になり得ることや,発覚しにくい方法で行っている点で巧妙であることなど, その行為態様の点において違法性が高く, 当該児童の尊厳を害する行為であるとともに, 児童を性的行為の対象とする風潮が助長され,抽象的一般的児童の人格権を害する行為であり,流通の危険性を創出する点でも非難に値することから,新設されたものである。
5項製造罪においても, 4項製造罪と|司様,複製の問題が生じることが予想されたところ,立法関与者の解説を見ると, 5項製造罪は,手段の限定がされているため, 盗撮により製造された児童ポルノを後に複製する行為は,基本的に同項の処罰対象ではないと考えられるが,少なくとも,撮影者本人による「製造」として予定される一連の行為までもが5項製造罪の対象から除外されるものではないと考えられるとの見解が示され, 平成18年判例が紹介されている(坪井麻友美「児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律について」曹時66巻11号3045頁)。

Ⅳ本決定について
本決定は, 「ひそかに児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が, 当該電磁的記録を別の記録媒体に記録させて児童ポルノを製造する行為は, 同法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たる」と判示し, 原判決の判断を是認しているが, 平成18年判例と同じような表現を用いていることから, 同判例と同様盗撮をして製造を行った者が, その電磁的記録を別の記録媒体に複写するなどして二次的製造行為に及んだ場合には, 「ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造した」と法的に評価できるとして, 5項製造罪の成立を認めたものと思われる。
本決定は, その理由を示していないが, 盗撮行為をする者については,撮影後盗撮データを保存管理して自己利用するため. 当該盗撮に係る電磁的記録を他の記録媒体にコピーするなどして管理することが当然想定されることなどを考盧したのではないかと考えられる。
5項製造罪は, 平成18年判例後の法改正で新設されたものであるが, 4項製造罪と同様の論点が残る形の立法がされていた。
このことを踏まえると,本決定は, 5項製造罪に関する法令解釈を示したものとして実務上重要なものと考えられる。

性犯罪民事「同じマンションに住む被告による、原告の腰に両手を回して抱きつく暴行を加え,着衣の上から原告の臀部及び乳房を触った」という態様の強制わいせつ行為につき 50万円認容。 東京地裁r011031 訴額は500万

 強制わいせつ罪の慰謝料は態様によりますね。

裁判年月日 令和元年10月31日 
事件名 損害賠償請求事件
 1 被告は,原告に対し,50万円及びこれに対する平成29年8月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 原告のその余の請求を棄却する。
 3 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
 
 
事実及び理由
第1 請求
 被告は,原告に対し,500万円及びこれに対する平成29年8月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は,原告が,同じマンションの別階に居住する被告による強制わいせつ行為によって精神的苦痛を被ったとして,被告に対し,不法行為に基づき,慰謝料500万円の支払を求める事案である(附帯請求は,不法行為日である平成29年8月15日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金)。
 1 前提事実(後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。)
  (1) 原告は,肩書住所地所在のマンション「a」の204号室に住む昭和25年月日生まれの女性である。《甲3,弁論の全趣旨》
  (2) 被告は,同マンションの701号室を所有し,同室において妻と暮らす昭和24年月日生まれの男性である。《乙1,4》
  (3) 被告は,平成29年8月15日午後3時35分頃,被告方において,原告に対し,原告の腰に両手を回して抱きつく暴行を加え,着衣の上から原告の臀部及び乳房を触ったとの事実により,同年11月16日,懲役1年(執行猶予3年)の有罪判決を受けた(東京地方裁判所平成29年刑(わ)第2043号)。《甲1》
 2 争点
  (1) 被告の行為の態様
  (2) 相当な慰謝料の額
 3 争点に関する原告の主張
  (1) 被告の行為の態様について
 原告は,以前に自宅のインターネット回線が故障し電話が使えなくなった際,被告の妻に頼んで,被告宅の電話を貸してもらったため,平成29年8月15日午後3時35分頃,そのお礼の為,手土産を持って,被告宅を訪問した。
 被告の妻が外出していたため,原告は,被告に玄関先で礼を伝え,手土産を渡して帰ろうとしたところ,被告は,以前原告が右足を骨折して入院していたことがあったことを知っていたようで,原告の左腰の骨盤のあたりに手を当てて撫でるように上下にさすり,「折ったのはこっちの足?」「けがをしたのはここですか?」などと言った。原告は,いきなり腰を触られて気持ちが悪く,「違います。」「そちらじゃないです,右です。」などと答えたが,被告は「じゃあ,こっち?」と言いながら,原告の右腰に手を当ててきた。被告の力が強かったため,原告は,両腰を持たれた状態になってしまった。
 被告が両手を原告の体に沿って撫でながら,「ハグさせて。」と言ったため,原告は「NO」と言ったが(原告は,長く米国に住んでいたため,とっさのときには英語が出る。),被告は無視して,原告の両腕を両手でつかんで引っ張るようにして,原告の体を自分の体に引き寄せ,両腕を原告の腰のあたりに回して,抱きついてきた。原告は,いきなりの事に驚き,被告の力の強さに恐怖を感じ,体を動かすことができず立ちすくんでしまった。
 被告が更に「お尻を触らせてよ。」と言ってきたため,原告は,瞬間的に「NO」「よしてください。」などと言ったが,被告は無視して,両手を原告の臀部の方に下ろし,スカートを上にたくし上げるようにしながら,原告の臀部を両手で触りつかんだ。
 原告は,嫌悪や羞恥心を感じ,「なにするんですか,(妻の名)も帰ってくるのに。」と言葉で抵抗したが,被告からは「6時までは帰ってこないから。」と言われ,この後2時間も襲われ続けるのではないかと思い,強い恐怖を感じ,体を右後ろに捻って逃げようとしたが,被告の力が強く逃げられなかった。
 原告は,被告に何度も「やめてください。」と言ったが,被告は「おっぱい触らせてよ。」などと言い,原告の左の乳房を強引につかむように触ってきた。原告は,このままでは強姦されてしまう恐怖に駆られ,再び全身の力を込めて体をよじったところ,右肩で玄関のドアを押すことができ,ドアが大きく開いたため,何とか外に逃げ出すことができ,急いで帰宅した。
 被告の行為は,故意によって,原告の性的自由,身体の安全という法律上保護される利益を侵害したものであり,不法行為を構成する(以下「本件不法行為」という。)
  (2) 相当な慰謝料の額について
 原告は,本件不法行為の際,被告から妻は6時まで帰ってこないと言われたため,これから2時間以上も被害に遭い続けるのかと絶望を感じ,このままだと強姦され,事件が発覚しないようにするため殺されてしまうかもしれないという強い恐怖を感じた。
 原告は,本件不法行為に遭ってから,毎日毎日悔しさと怖さで涙が止まらない状態になり,被告が同じマンションに住んでいることから,エレベーターなどで被告と出くわすのではないかと思うと恐怖で外出することもできず,家に引きこもって生活する状態になり,死ぬことまで考えるほどに至っている。原告の経済状況から転居することは難しく,被告がマンションから転居しない限り,この状態を強いられることになる。
 被告は,本件不法行為について刑事訴追され,有罪判決を受けたが,被告は,自らの罪を軽くしようと不法行為時間を不自然に短く断言したり,わいせつの意図はなくスキンシップを取りたかっただけだと主張したり,真摯な反省の態度が見られなかった。
 被告の妻からは,脚が見える洋服など着ているのが悪いと言われ,まるで,被害に遭い,警察に被害届を出した原告の方が悪いかのように非難され,原告がマンションから出て行くべきであるかのような扱いを受けている。
 原告は,本件不法行為により,甚大な精神的損害を被った。上記事情から,その額は,500万円を下回ることはない。
 4 争点に関する被告の主張
  (1) 被告の行為の態様について
   ア 本件事件の数日前の夕方,原告が被告の自宅に電話を借りに来た際,原告がいったん自分の都屋に帰った後に,原告が電話を架けた先から被告の固定電話に電話がかかってきた。被告の妻が原告を呼んだところ,再度被告の部屋に現れた原告は,かなり丈の短い服を着ていたので,被告の妻は驚いた。
   イ 事件当日の昼は,被告の仕事が休みだったこともあり,被告は妻とレストランで食事をし,生ビールを中ジョッキ2杯飲んだ。2人で帰宅後,しばらくして被告の妻が外出したので,被告が1人で過ごしていたところ,原告が,被告の部屋を訪ねてきた。
 玄関先で,原告は被告に,「Aさん(被告の妻)いますか?」と尋ねたので,被告は「6時くらいに帰ると思います」と答えた。原告は,先日の電話のお札とのことで,手土産を渡してくれたので,被告は原告に「どうやって食べるんですか?」などと尋ねたりした。
   ウ 被告は,原告が電話を借りに来た際に足を伸ばして座り,その理由として「足の付け根を骨折した」という話をしていたことを思い出し,「足は大丈夫ですか?どちらの足でしたか」などと言いながら,原告の左腰に右手を当てた。それに対して,原告から,「違います」「そちらじゃないです,右です」と言われたため,被告は「このへんですか」と左手で原告の右腰のあたりを指し示したが,右腰には触れなかった。
 その後,被告は「お尻を触らせて」と言いながら,右手で原告の左臀部を撫でたが,「嫌」と言われたため,すぐに手を離した。そして,被告は「ハグさせて」と言いながら,両手で原告の両肩に手を回して抱きついたが,原告が嫌がる様子で半歩後ろに下がったので,すぐに手を離した。被告は,手を離しながら,右手で原告の左胸を下から上にさするように触った。
 その後,原告は玄関のドアを開けて被告の玄関口から出て行ったのである。
   エ 被告が行った行為は以上のとおりであり,被告は,「左腰の骨盤のあたりに手を当てて撫でるように上下にさす」ったり,「右腰に手を当て」たり,「両腰を持」ったり,「両手で原告の体に沿って撫で」たり,「原告の両腕を両手でつかんで,引っ張るようにして,原告の体を自分の体に引き寄せ,両腕を原告の腰のあたりに回し」たり,「両手を原告の臀部の方に下ろし,スカートを上にたくし上げるようにしながら,原告の臀部を両手で触りつかんだ」り,原告が逃げるのを力ずくで妨げるようなことはしていない。
  (2) 相当な慰謝料の額について
   ア 被告の行為は到底許されるべき行為ではないが,その慰謝料が500万円というのは,あまりに過大な請求というべきである。
 被告は,事件当日は仕事が休みで,昼間に生ビール中ジョッキ2杯を飲み,気が大きくなり,いい気分で家で休んでいたところ,たまたま数日前に電話を貸してあげた,被告と同年代の原告(当時67歳)が訪ねてきたことで,つい出来心で上記の行為を犯してしまったのであり,決して計画的な犯行でもなければ,強姦や殺人事件に発展するような行為でもない。
   イ 被告は,本件により,3ヶ月もの間身柄拘束を受けた。被告は,国選弁護人を通じて示談交渉を申し出たが,原告に拒絶された。
 原告は,被告の身柄拘束中,被告の妻に現在居住している部屋が分譲か賃貸かを問い合わせたり,被告の妻や原告に被告との示談を勧めた被告の隣人との面会を求めて,夜中であるにも関わらず,何度も玄関のドアを叩いたりした。
 被告は,平成29年11月16日の判決後に釈放され,自宅に戻ったが,肉体的にも体調が思わしくなく,精神科に通院したり,胆石性緊急胆嚢炎で入院手術をしたり,腎結石の手術をしたが石を取りきれず,仕事ができる状態にない。被告の妻もパニック障害を抱え,現在無職である。
 被告には,自宅マンション以外に見るべき資産はなく,親戚やクレジット会社から100万円ほどの借金もある。
   ウ 以上のとおり,被告は,本件により,3ヶ月もの間,身柄拘束を受け,懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受け,仕事を失い,健康も失い,既に十分な社会的制裁を受けている。被告は経済的な余裕もない状態であり,原告に支払われるべき慰謝料額としては,5万円程度が相当である。
第3 当裁判所の判断
 1 被告の行為の態様について
  (1) 被告の行為の態様について,原告及び被告の主張には食い違いがあるものの,被告が自認する範囲内においても,被告が,①電話を借りた礼のために被告方に手土産を持参したにすぎない原告に対し,②原告と被告以外の者がいない被告方の玄関内で,③原告が骨折のため足が不自由であったことを知りながら,④足の心配をする素振りで被告の右手で原告の左腰辺りに触れ,⑤「お尻を触らせて」と言いながら,着衣の上から右手で原告の左臀部を撫で,⑥原告に「嫌」と言われた後にも,「ハグさせて」と言いながら両手で原告の両肩に手を回して抱きつき,⑦原告が嫌がる様子を見て後ろに下がったが,その際に被告の右手で原告の左胸を下から上にさするように触るという行為をしたことが認められる。
  (2) 原告は,これらに加えて,被告が「左腰の骨盤のあたりに手を当てて撫でるように上下にさす」ったり,「右腰に手を当て」たり,「両腰を持」ったり,「両手で原告の体に沿って撫で」たり,「原告の両腕を両手でつかんで,引っ張るようにして,原告の体を自分の体に引き寄せ,両腕を原告の腰のあたりに回し」たり,「両手を原告の臀部の方に下ろし,スカートを上にたくし上げるようにしながら,原告の臀部を両手で触りつかんだ」りし,原告が逃げるのを妨害したと主張するところ,原告が警察官及び検察官の面前でした供述(甲2・17頁以降及び24頁以降)には同旨を述べる部分があるほか,原告は,陳述書(甲4)及び本人尋問においても,被告が唇が触れるのではないかというくらい顔を原告の顔に近づけ,「あなたのことを何年も想っていた。」などと言った旨や,被告が原告に寝室へ行こうと言い,両手でスカートを捲り始めた旨などを供述している。
 しかしながら,被告の手の動きや力の強さ,被告と原告との間の距離については,原告の主観的な受け止めが客観的事実に比べて誇張された形で記憶・再現された可能性を否定することができず,これらの供述を必ずしも全面的に信用することはできないから,被告の行為態様が,原告主張どおりのものであったと認めることはできない。
  (3) 他方,被告は,原告が足を骨折したのが左ではないと言われた際に原告の右腰には触れなかった旨や,被告の右手で原告の左臀部を撫でた際には,「嫌」と言われたためすぐに手を離した旨,「ハグさせて」と言いながら抱きついた際には,原告が嫌がる様子で半歩後ろに下がったので,すぐに手を離した旨など,被告の行為が出来心からごく短時間行われただけの軽微なものであったかのように主張し,本人尋問においても,「嫌って言ったからすぐやめた」等と,同主張に沿う供述をする。
 しかし,他方において,被告は,本人尋問において,「アメリカ人は何かあったときにはすぐにハグをするもの」であると思っており,原告はアメリカに長く住んでいたと聞いていたから,たとえお尻を触ることを拒絶されても,「ハグならいいか」と思った旨を述べており,同供述からは,被告が,自己の行為について,アメリカ暮らしの長かった原告に対してするのであれば許容されるのだと一方的に思い込み,拒絶されるとは思っていなかったことがうかがわれることや,被告は,両腕を原告の背中に回すようにして抱きついていたところから抱きつくのをやめて手を戻す際に,「そこに左胸があったので」下から上にすっと撫で上げるようにして触った旨も述べているところ,このような行動は,原告の身体に触れることについての執着と未練を示すものと言えることからすると,このような思い込みや執着を抱いていた被告が「嫌と言われてすぐに」手を離したとは解し難いものと言わざるを得ない。
 したがって,被告の行為がごくあっさりとした軽微なものであったとは認め難いところであって,原告が上記(2)のとおり供述していることを勘案すると,被告による原告の身体への接触は,ある程度執拗なものであったと解するほかない。
 2 相当な慰謝料の額について
 上記1のとおり,被告は,原告の意に反して,少なくとも,原告の着衣の上から左腰辺りに触れ,左臀部を撫で,原告の両肩に手を回して抱きつき,左胸を撫で上げるという行為をしたものであり,こうした一連の行為は,原告の性的羞恥心を害し,原告の人格的利益を侵害する行為であって,原告に精神的苦痛を生じさせるものであることは明らかである。
 そこで,原告の精神的苦痛に対する慰謝料の額について検討すると,被告の行為が臀部及び胸部を含む身体の複数箇所へのある程度執拗な態様での接触を含むものであったことや,他者の目のない被告の自宅の玄関内で行われ,原告が強姦される危険を感じたというのも無理からぬ状況で行われたこと,被告は,原告の足が不自由な状態であることを知りながらこれを利用する形で本件の行為に及んだこと,他方において,被告の加害行為は,立ったままの体勢での着衣の上からの比較的短時間の接触にとどまり,計画性もない一回的なものであったことに加え,被告が約3か月間にわたる身柄拘束の後,本件について刑事処分を受けており,原告に対する謝罪と反省の意を述べ,今後も原告との接触を極力避ける旨を約束していること等の事情に鑑みれば,本件における慰謝料の額は,50万円とするのが相当である。
 この点,原告は,被告の妻やその知人が被害者である原告を非難し,マンションから出て行くよう求めていると主張し,同旨の供述をするが,原告の供述のみによってかかる事実を認めることはできず,ほかにこれを認めるに足る証拠はない。また,原告は,被告と同じマンションに居住することが苦痛であるとも主張するが,性犯罪行為であるとはいえ,上記の態様にとどまる行為をしたにすぎない被告に対し,自宅マンションを処分する等までして転居するよう求めるのは,いかにも行き過ぎというべきであるから,被告が転居しないために原告が被告と同じマンションで生活をせざるを得ないとしても,これを慰謝料の増額事由として勘案することは相当でない。
 3 結論
 以上によれば,原告の本訴請求は,50万円の慰謝料の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。
 よって,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第17部
 (裁判官 早田久

わいせつ概念について(大阪高裁r020901)

 事案は、性器に接触する行為でした。
 定義は言えないが、こういうのはわいせつ行為に決まっておるということでした。

なお,所論は,最高裁平成29年11月29日大法廷判決(刑集71巻9号467頁)において,従来の判例を変更し,行為者の性的意図は強制わいせつ罪の要件ではないとの判断が示されて以降,刑法176条の規定する「わいせつな行為」の則概念は流動的になっていて,裁判所においてその定義を示さない限り,同条は漠然として不明確で,その適用は憲法31条の保障する罪刑法定主義の趣旨に反するとも主張する。
しかし,「わいせつ」概念は規範的なものであるから、社会情勢の変化に伴い変容し得るものであることは否定できないとしても,その影響が及ぶのは,性的意味について評価が分かれ得るような-部の行為に限られ,それ以外については,本件のように行為自体から性的意味や当罰性が明らかといえるから,刑法176条所定の「わいせつ行為」に犯罪構成要件要素としてあいまい・不明確な点があるなどとはいえない。
国民の予測可能性を害するほどに漠然として不明確であるという見解は採用できず,同条の規定が憲法31条の保障する罪刑法定主義の趣旨に反するなどとは到底いえない。

ひそかに製造罪10件で懲役2年実刑(帯広支部R2.3.17)

「至近距離から怪しまれずに撮影するための眼鏡型のカメラ」といういのは、そういう姿態を取るように仕向ける言動があると、ひそかに製造罪ではなく姿態とらせて製造罪の可能性があります。

令和 2年 3月17日 
釧路地裁帯広支部 
事件名 児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件

 上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件について,当裁判所は,検察官田中昭博及び私選弁護人佐々木誠各出席の上審理し,次のとおり判決する。
主文
 被告人を懲役2年に処する。
理由
 (罪となるべき事実)
 被告人は,
第1(令和元年12月18日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 平成29年7月1日午前10時50分頃から同日午前10時51分頃までの間,北海道内の保育園ログハウス内において,同保育園1階南側テラスで水遊びをしていた同保育園の園児A(当時6歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,北海道帯広市〈以下省略〉当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第2(令和元年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 平成29年7月5日午前10時43分頃から同日午前10時44分頃までの間,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラスで水遊びをしていた同保育園の園児B(当時3歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同月6日頃,前記当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第3(令和元年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 平成29年7月14日午前11時16分頃から同日午前11時17分頃までの間,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラス付近で水遊びをしていた同保育園の園児C(当時4歳)及びD(当時5歳)がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,前記Cらの全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,前記当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第4(令和元年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 平成29年7月15日午前10時44分頃から同日午前10時45分頃までの間,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラス付近で水遊びをしていた同保育園の園児E(当時4歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,前記当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第5(令和元年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第4)
 平成30年7月2日午前11時頃から同日午前11時1分頃までの間,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラス付近で水遊びをしていた同保育園の園児F(当時5歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,前記当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第6(令和元年12月18日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 平成30年8月3日午前10時46分頃,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラス付近で水遊びをしていた同保育園の園児G(当時4歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,前記当時の被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第7(令和元年10月23日付け起訴状記載の公訴事実第1)
 令和元年6月26日午前10時24分頃から同日午前10時25分頃までの間,前記保育園2階廊下において,同所で着替えをしていた同保育園の園児らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,別紙1記載の各児童の全裸の姿態を眼鏡型カメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラ内蔵メモリに記録させ,さらに,同日午後5時13分頃,同市〈以下省略〉被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第8(令和元年12月18日付け起訴状記載の公訴事実第3)
 令和元年7月29日午前11時12分頃から同日午前11時13分頃までの間,前記保育園物品庫内において,前記保育園園庭砂場付近で水遊びをしていた同保育園の園児H(当時4歳)が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同人の全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同日頃,前記被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第9(令和元年12月18日付け起訴状記載の公訴事実第4)
 令和元年7月31日午前10時53分頃から同日午前10時55分頃までの間,前記保育園ログハウス内において,前記保育園1階南側テラス付近で水遊びをしていた同保育園の園児I(当時6歳)及びJ(当時5歳)がいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,前記Iらの全裸の姿態をデジタルカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させ,さらに,同年8月1日頃,前記被告人方において,その動画データをパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録させて保存し
第10(令和元年10月23日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 令和元年9月9日午前10時56分頃から同日午前11時13分頃までの間,北海道内の前記保育園専用駐車場に駐車中の自動車内において,前記保育園1階南側テラス付近で着替えをしていた同保育園の園児らがいずれも18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,別紙2記載のとおり,5回にわたり,各児童の全裸の姿態をビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録を同カメラに装着したSDカードに記録させて保存し
 もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写し,児童ポルノを製造したものである。
 (証拠の標目)
 (法令の適用)
 被告人の判示各所為はいずれも児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条5項,2項,2条3項3号に該当するところ(判示第3,第7,第9及び第10はいずれも包括一罪),各所定刑中いずれも懲役刑を選択し,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の最も重い判示第10の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年に処することとする。
 (量刑の理由)
 本件は,犯行時に保育園職員であった被告人が,同保育園の園児である女児らを盗撮して記録媒体に保存し,児童ポルノを製造したという児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反10件の事案である。
 被告人は,女児の裸に性的な興味を抱くようになり,自己の性的欲求を満たす目的で,本件各犯行に及んだのであるから,その身勝手な動機に酌むべき事情は全くない。被告人は,自ら勤務していた保育園において,その日に水遊びが行われ,園児が裸になることを把握した上,勤務時間中に,園内の建物内や駐車場の発覚しにくい場所からひそかに盗撮行為を繰り返していたのであり,本件各犯行は計画的であるだけでなく,児童を守るべき立場にある職員が,その立場を利用した卑劣で背信的な犯行というほかなく,強い非難を免れない。また,被告人は,遠距離から撮影可能なビデオカメラを用いたり,至近距離から怪しまれずに撮影するための眼鏡型のカメラを購入したりして盗撮行為に及んで児童ポルノを製造したのであるから,犯行態様は巧妙で悪質である。被告人は,2年余りの間に,合計10回にわたり,合計18人に上る女児の裸を盗撮して児童ポルノを製造したのであり,被害児童の人格を無視した本件各犯行に対して,被害児童の保護者の多くが被告人に対して厳重処罰を望むのは十分理解できるところである。
 以上のとおり,本件各犯行の内容や結果からすれば,被告人の刑事責任は非常に重く,本件は実刑相当の事案である。
 しかしながら他方,被告人は,捜査・公判を通じて本件各犯行を認め,大多数の被害児童の保護者に対して謝罪文を送付しているほか,二度と盗撮をしない旨を述べるなど反省の情を示していること,2名の被害児童の保護者と示談し,宥恕を受けたこと,被告人は,勤務していた保育園から懲戒解雇されたこと,被告人には,これまで前科・前歴がないこと,被告人の妻が,当公判廷において被告人の監督を誓約していることなど被告人のために酌むべき事情も認められる。
 以上の事情を総合考慮し,被告人に対しては主文のとおり刑の量定をした。
 (求刑 懲役3年)
 釧路地方裁判所帯広支部
 (裁判官 小西慶一)

司法面接による児童の供述の信用性が否定された事例(高松地裁h31.4.17監護者わいせつ)

司法面接による児童の供述の信用性が否定された事例(高松地裁h31.4.17監護者わいせつ)
 この記事で判決を特定して、刑事確定訴訟記録法で閲覧しました。
 まず司法面接1回やって、被疑者供述とすりあわせるためにもう1回司法面接した事案でした。

男性無罪 被害者供述「信用性低い」 地裁 /香川県
2020.07.16 朝日新聞
 高松市で2018年、13歳だった養女の体に触ったとして、監護者わいせつの罪で起訴された同市の男性(43)に対し、高松地裁(湯川亮裁判官)が無罪判決を出し、確定していたことがわかった。高松地検が6月までに事件記録を開示した。

 判決は19年4月17日付。事件記録によると、男性は18年8月、市内の自宅で、養女の胸を2度にわたって触ったなどとして逮捕、起訴された。

 捜査当局の調べに、養女は「(男性が)上に乗って触られた」と供述。男性は触ったことを自白する一方、上には乗らず、座った状態だったと話した。

 だが、公判になると、男性は「触っていない」と起訴内容を全面的に否認。男性の自白と、養女の供述の信用性が争点になった。

○県青少年○○条例違反(深夜外出等の制限)事件捜査要領

 古本で買いました。
 

○県青少年○○条例違反(深夜外出等の制限)事件捜査要領

2 検挙基準
構成要件を満たす事犯のうち、
○違反の時間帯が、午後11時から翌日の午前4時までの間であって、下記に掲げる
○悪質な行為者が、悪質な違反行為を行った場合
○悪質な行為者が、違反行為(前記1.(4)の違反行為)を行った場合
○行為者(前記1 . (1)の何人も)が、悪質な違反行為を行った場合を検挙の対象とする。
(1) 悪質な行為者
(1) ○暴力団、チーム、暴走族等の犯罪組織あるいは非行集団に加入し、又は関係する者
○警察官の注意、指導、警告等に従わない者
○常習者
○再犯のおそれが認められる者
○否認又は虚偽の申し立てをしている者
○非行歴、補導歴が多数あり、保護者、学校等の指導に限界がある者
(2)悪質な違反行為
○ 目的が犯罪の加害又は被害の準備行為
・青少年が犯罪を犯し、若しくはそのおそれがあることを知っての行為
・青少年に対して犯罪が行われることを知っての行為
・青少年に対して犯罪を行うための行為
○ 目的が不健全な行為
・カラオケ店、居酒屋、風俗店、-ゲームセンター等の遊興、飲食
・飲酒、喫煙、薬物使用
・暴走族、非行集団等の集会への参加
○保護者の制止を無視した行為
○いわゆるナンパ行為
○出会い系サイトを利用した行為
○青少年が帰宅意思があったり、困っていたり、嫌がっている行為

数回の(私事性的画像記録公然陳列罪・わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪)は併合罪(神戸地裁R2.03.09)

「犯情の最も重い第1別表1番号1の罪の刑に法定の加重」とされていることから、各わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪が併合罪になっています。
 わいせつ図画の包括一罪性というのは、児童ポルノ罪の併合罪で切れると主張したことがあって、切れなかったんですが(最決平成21年7月7日https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37814 )、リベンジポルノ罪だと切れるようです
 

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件神戸地裁R2.03.09
 (犯罪事実)
 被告人は,
 第1  別表1記載のとおり,平成29年9月3日頃から平成30年12月16日頃までの間,6回にわたり,大阪府藤井寺市〈以下省略〉所在の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,A(当時23ないし25歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータにそれぞれ送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第2  平成30年7月16日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,B(当時18歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して,記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第3  平成30年8月5日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,B(当時18歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第4  別表2記載のとおり,平成30年12月31日頃から平成31年4月12日頃までの間,4回にわたり,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,C(当時32歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータにそれぞれ送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第5  平成31年4月7日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,D(当時21歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第6  平成31年4月7日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介してE(当時23歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第7  平成31年4月12日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,F(当時23歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第8  令和元年5月4日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,G(当時21歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して,記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第9  令和元年5月12日頃,大阪市〈以下省略〉所在の当時の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,H(当時24歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 もって第三者が撮影対象者を特定することができる方法で,性交又は性交類似行為に係る人の姿態である私事性的画像記録物を公然と陳列するとともに,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した。
 (法令の適用)
 罰条 各行為(第1及び第4は各別表の番号ごと)中,私事性的画像記録物を公然と陳列した点はいずれも私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項,1項,2条1項1号,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した点はいずれも刑法175条1項前段
 科刑上一罪の処理 いずれも刑法54条1項前段,10条(それぞれ1罪として重い私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反の懲役刑及びわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の罰金刑で処断)
 刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段
 懲役刑について 刑法47条本文,10条(犯情の最も重い第1別表1番号1の罪の刑に法定の加重)
 罰金刑について 刑法48条2項(罰金の多額を合計)
 労役場留置 刑法18条(1万円を1日に換算)
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 本件は,判示のとおりの私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の事案である。被告人は,専ら利欲目的から,被害者の人格を何ら顧みることなく,その名誉や私生活の平穏を著しく侵害する本件各犯行に及んだものである。被害者数は8名,訴因の数は17にも及んでおり,本件は常習性が明らかに認められる職業的犯行というべきである。被害者らは,本件各犯行によって多大な精神的苦痛を被るとともに,性交場面の動画がインターネット上に拡散したことで,現在もなお不安な日々を送っているのであって,生じた結果は重大である。これらによれば,被告人の刑事責任を到底軽視することはできず,その責任を服役によって果たさせることも十分に考えられる。
 しかしながら他方で,8名の被害者のうち,7名との間で示談が成立していること,罪を素直に認め,反省の態度を示していること,母親が情状証人として出廷し,監督を誓約していること等の事情も認められる。これらの被告人にとって酌むべき事情をも考えると,自由刑の前科がない被告人に対しては,なお懲役刑の執行を猶予することも許されるというべきである。
 そこで,主文のとおりの刑を量定した上で,懲役刑の執行を法定の最長期間である5年間猶予し,今回に限り,社会内で反省と更生の日々を送らせる機会を与えることとした。
 (求刑・懲役3年及び罰金100万円)
 (検察官橋本純一 私選弁護人田中今日太[主任] 各出席)
 神戸地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 安達拓)

「児童買春は児童が18歳未満であることを知らなかったとしても、刑事処罰を免れることはできません。ただ、知らなかったことについて過失がない場合はこの限りではありません。」という弁護士ドットコムの誤答

「児童買春は児童が18歳未満であることを知らなかったとしても、刑事処罰を免れることはできません。ただ、知らなかったことについて過失がない場合はこの限りではありません。」という弁護士ドットコムの誤答
 とにかく早く、相談者が期待する方向の回答をしないと、高い評価が得られないので調べないで誤回答するんでしょうね。
 過失処罰条項に児童買春罪(4条)は含まれませんし、一見の客は「使用する者」には当たりません。

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(H26改正後)
第九条(児童の年齢の知情)
 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条、第六条、第七条第二項から第八項まで及び前条の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

 一般論としては、児童でなかった・児童とは知らなかったという資料を集めて、弁解を固めておくことでしょうね。逮捕が怖い場合には警察に相談(自首ではない)しておくこともあります。

 児童であった場合には否認のまま逮捕されることがあって、その結果は次の裁判例で明らかです。

「自称18歳」の児童(16)との買春行為について児童買春罪を認めたもの(山形地裁H29.8.17)

「自称21歳」の児童(16)との買春行為について未必の故意で児童買春罪を認めたもの(沖縄簡裁H30.4.19)

「自称21歳」の児童(16)との買春行為について青少年条例違反(過失)は適用せず、児童買春罪について無罪としたもの(福岡高裁那覇支部H30.11.14)

「年齢自称ない」の児童(14)との買春行為について、青少年条例違反(過失)で有罪としたもの(那覇地裁H27.1.7)

自称20歳との買春行為 2020/8/18 15:18

日下貴弘弁護士 2020/8/18 15:32
 児童買春は児童が18歳未満であることを知らなかったとしても、刑事処罰を免れることはできません。ただ、知らなかったことについて過失がない場合はこの限りではありません。

 ご相談者さまのお話しを伺うと、相手方が20歳と言っていただけでなく、4つほど大きなタトゥーが入っていたことや、飲み会が遅くまであったと話していたということですので、本当に20歳なのであろうと判断したことに過失はないであろうと思います。
 警察の取り調べがある可能性は極めて低いと思いますが、仮にあったとしても、以上のような事実を話して18歳未満とは思わなかったとご主張になるといいでしょう。
 また、そもそも本件で、相手方が18歳未満かどうかも不明ですので、現段階で過度にご心配されることはないと思います。

日下貴弘弁護士2020/8/18 16:23
ご相談者さまのおっしゃる通り、犯罪成立の要件としては、相手方が18歳未満であったということの認識が必要です。
 ご質問の、18歳未満と認識していたかどうかわからないようなケースの場合は、微妙な判断ですが、18歳未満かもしれないと思っていたとすれば未必の故意として認識ありととられる可能性はあります。
 本件では、ご相談者さまは当初、20歳だと思っていたとのことですから、認識はないと考えてよいかと思います。

シャワーを浴びるように仕向けて撮影する行為は、ひそかに製造罪ではなく姿態をとらせて製造罪である(札幌地裁r02.5.22)

 予めカメラを仕掛けておいて、児童にシャワーを浴びるように仕向けて撮影する行為は、ひそかに製造罪ではなく姿態をとらせて製造罪である(札幌地裁r02.5.22)
 盗撮なんだけど、ひそかに製造罪ではない。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

令和02年05月22日
札幌地方裁判所
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は、●●●(以下「本件施設」という。)の●●●管理責任者をしていたところ、
第1 令和元年6月20日午後5時20分頃から同日午後6時頃までの間に、本件施設において、その利用者である●●●(当時16歳、以下「A」という。)が18歳に満たない児童であることを知りながら、Aに対してシャワーを浴びるよう申し向け、本件施設事務所南側敷地内に所在する仮設シャワー室に向けて設置した動画撮影機能付きカメラを用いて、Aにその衣服を脱がせ、乳房及び陰部等を露出させ、その姿態を撮影し、その動画データを同カメラに装着した電磁的記録媒体に記録して保存した上、同日午後9時9分頃、本件施設事務所において、パーソナルコンピュータを使用して同動画データを編集して作成した動画データをSDHCカードに記録して保存し、もって衣服等の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写することにより、児童ポルノを製造し、
第2 
(争点に対する判断)
第1 児童ポルノ製造(判示第1)の事実について
 1 弁護人は、被告人の供述に依拠し、Aが撮影された動画データを保存して児童ポルノを製造したことは争わないが、Aを撮影したことについてはその故意がないとして、事実の一部を争っている。
 2 関係各証拠によれば、本件撮影に係る経過として、以下の事実が争い無く認められる。
  (1) 被告人は、本件日時以前に、本件施設事務所南側所在の仮設シャワー室(以下、「シャワー室」という。)前におかれた棚に、シャワー室内に向けて、動画撮影機能付きのビデオカメラ(以下「本件カメラ」という。)を設置したが、そのことを本件施設の他の職員には周知していなかった(被告人供述、甲1、7、8)。
  (2) Aは、被告人からシャワーを浴びるように勧められたことから、令和元年6月20日午後5時20分頃から午後6時頃までの間に、シャワー室でシャワーを浴びた(被告人供述、A供述)。
  (3) 被告人は、Aがシャワーを浴び終わった後、直ちに本件カメラを回収したが、そのことをAらには話さなかった(被告人供述)。
  (4) 被告人は、同日午後9時頃、他の職員が帰宅した後に、本件カメラに記録されていた動画データの内容を本件施設のパーソナルコンピュータで確認し、そのデータに編集を加えた上、被告人が私的に使用していたSDHCカードに保存した(被告人供述、甲5)。
  (5) 保存されていた動画データには、Aが衣服を脱いでシャワーを浴び、その後に体をふいて衣服を身に着ける様子が撮影されており、直立しているAの膝から胸の下付近までや立ちながら上半身を曲げているAの全身が映っていて、概ねAの下腹部付近が画像の中心にあった(甲5)。
 3 以上から認められる本件カメラの設置場所、被告人がシャワーを浴びるように勧めた後に本件カメラでAの姿が撮影されていること、実際に撮影された動画の内容、被告人がその日のうちに本件カメラを回収して撮影された動画データを編集・保存したこと、被告人が本件カメラの設置、回収及び動画データ確認の事実を他の職員やAに全く伝えていないことからすると、被告人が当初からAの裸体を撮影することを考えて一連の行動をとったと考えるのが最も合理的である。
 4 この点、被告人は、本件カメラを設置したのは、ネズミが出るという話を聞いたので、ネズミが出るかどうかを確認するためである、本件の四、五日前に、本件カメラを動体検知モードに設定して設置していたところ、そのことを忘れたままAにシャワーを浴びるよう言ってしまったなどと供述する。
  しかし、仮設とはいえシャワー室としても利用される可能性のある場所に、他の職員にも知らせずにカメラを設置するというのは、本件施設の管理責任者としてネズミの有無を確認するという行動としては何とも不自然である。しかも、本件カメラに記録された動画には、まさにAの裸が映っていたのであり、その画角や内容をみると、たまたまシャワー室を利用したAが映りこんだというよりも、そこを利用する者を撮影するために設置していたといえるような画角であり、ネズミが走る可能性のある地面に焦点が当たっているものではない。被告人は設置の際に映り方を確認することはしなかったと供述するが、わざわざカメラを設置してまでネズミの有無を確認しようとする者の行動として合理的ではない。
  また、証拠(甲11、12)によれば、本件カメラについては、被告人が説明する操作方法など様々な方法で撮影を実施しても、動体検知モードと認められる状態で撮影されることはなく、連続して撮影することが可能な時間は約4時間にとどまることが認められ、本件の四、五日前に動体検知モードにして本件カメラを設定した旨の被告人の供述は客観的証拠とも整合しない。
  したがって、上記の被告人の供述は信用できない。
 5 以上からすれば、被告人は、自分が設置した本件カメラにAの裸体が映ることを認識してAにシャワーを浴びさせたと推認できるから、Aを撮影したことに故意はないとする弁護人の主張は採用できない。
刑事第2部
 (裁判長裁判官 中川正隆 裁判官 田中大地 裁判官向井志穂は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 中川正隆)

千葉県のエアドロップ痴漢


 不特定又は多数の者にわいせつ画像を送信すると、わいせつ電磁的記録頒布罪(刑法175条)が成立して、迷惑条例違反罪は成立しないと思います。1審では主張できませんが。

女子大生にエアドロップ痴漢、千葉県初の逮捕者
https://news.yahoo.co.jp/articles/d9489ee0e9600c29231688f8cefd05d423b595e8
容疑者は先月29日、市川市内の飲食店で、スマートフォンの通信機能「AirDrop」を悪用して見ず知らずの19歳の女子大学生に男性器などわいせつな画像を送りつけ、閲覧させた疑いが持たれています。こうした、いわゆる「AirDrop痴漢」の検挙は千葉県では初めてだということです。

 兵庫県の事例

被告人は、令和2年7月2日 1413~1450ころ、兵庫県○○駅間走行中の列車内において A(21)に対して 携帯電話機を利用して男性器を露骨に撮影したわいせつ画像データ1点をAの携帯電話機に送信し、もって公共の乗物において 不安を覚えさせるような卑わいな言動をした。
 兵庫県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反 15条1項 3条の2 第1項1号

罰条
第3条の2 
1何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 人に対する、不安を覚えさせるような卑わいな言動
第15条
1 第3条の2第1項から第3項まで、第5条第1項若しくは第2項又は第10条の2第1項の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
昭和三十九年四月一日条例第三十一号
(粗暴行為(ぐれん隊行為等)の禁止)
第三条
2 何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゆう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。

〔本条の趣旨〕
第3条は、公共の場所又は公共の乗物における粗野又は乱暴な行為を禁止する規定である。
第2項は、女子に対してなされる卑わいな言動を対象としてそれぞれ規制し、もって街頭や乗物等における個人の意思及び行動の自由を保護し、善良な風俗環境を阻害する言動を防止しようとするものである。
第2項
15 「女子」とは、成年、未成年を問わないが、ここでいう女子とは、卑わいな行為の相手方であるから、その行為を卑わいなものとして感じうる能力を有するものであることを要する。
また、卑わいな言動は、女子に対するものであれば足り、その直接たると間接たるとを問わないo
行為者が女子の認識しうるものであることを知ってなす場合には、本項に触れる
ものと解すべきである。
本項の「女子」又は「女子を」とは、女子を相手方としていう意味で、女子のいない場所で男同士が大きな声で卑わいなことを話し合うていても、本項の対象とはならない。しかし、男同士の話であっても、女子のいる場所において女子に聞こえよがしに大声で話し合っているような場合は、女子に対するものであるか否かの点について問題はあるが、女子を意識しての行為であれば、本項違反となる。
「男子」に対する行為も、同様に規制したが、その解釈について変わることはない。
16 「しゅう恥させ」とは、性的な恥じらいを感じさせることを意味している。しゅう恥は、卑わいな言動によって引き起こされるものであるから、当然、性的しゅう恥心と考えられる。
しゅう恥心とは、幅の広い概念であるから、本条においては「著しく」という限定を付したものである。
17 「不安」とは、前記9において説明したとおりであるが、ここでは、卑わいな言動によって身体に対する危険を覚えさせ、心理的圧迫を与えることをいう。
なお、不安を覚えさせる行為は、客観的に不安を覚えさせるに足るものであることを要する。
18 「卑わいな言動」とは、野卑でみだらな言語、動作であって、普通人の性的道徳観念に反し、性的しゅう恥心を起こさせ、嫌悪の念を催させ、また、それによって不安を覚えるような言動をいう。 〔本条と他の法令との関係〕
1軽犯罪法との関係
(2)本条第2項と軽犯罪法第1条第20号(身体露出の罪) との関係は、観念的競合である。
2刑法との関係
(2)本条第2項と刑法第174条(公然わいせつ罪) との関係は、法条競合である。

「高級ホテルに女子高生モデル(17)を“持ち帰り”」は深夜同伴罪(東京都青少年の健全な育成に関する条例)にはならない  罰則は16歳未満の場合。

「高級ホテルに女子高生モデル(17)を“持ち帰り”」は深夜同伴罪(東京都青少年の健全な育成に関する条例)にはならない
 罰則は16歳未満の場合。

東京都青少年の健全な育成に関する条例の解説 令和元年8月
(深夜外出の制限)
第15条の4保護者は、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜(午後11時から翌日午前4時までの時間をいう。以下同じ。)に青少年を外出させないように努めなければな
らない。
2何人も、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめてはならない。
3何人も、深夜に外出している青少年に対しては、その保護及び善導に努めなければならない。ただし、青少年が保護者から深夜外出の承諾を得ていることが明らかである場合は、この限りで
ない。
4深夜に営業を営む事業者及びその代理人、使用人、その他の従業者は、当該時間帯に、当該営業に係る施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すように努めなければならない。
【要旨】
本条は、第1項において保護者に対し、深夜に青少年を外出させない努力義務を課し、第2項においてすべての者に対し、保護者の委託又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出すこと等を禁止した規定である。さらに、第3項においてすべての者に対し、深夜に外出している青少年の保護及び善導を、第4項において深夜に営業を営む事業者等に、その施設内及び敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すことをそれぞれ努力義務として定めている。
【解説】
本条でいう「保護者」とは、第4条の2第1項の「保護者」と同義である。
近年、生活時間帯が深夜に及ぶとともに、深夜に営業する施設も増加したことなどから、青少年が深夜に繁華街を俳個し、コンビニエンスストア内や駐車場の敷地内、店の前の路上でたむろするなどの行動が目立つようになり、また、事件や犯罪に巻き込まれる事例も増えている。これらを背景に、平成16年の条例改正により新設された。
第1項は、本来第一義的に保護者が自覚を持つべき事項であるが、子供が深夜に俳個していたり、無断外泊をしていても、無関心であったり、携帯電話で連絡が取れるから問題がないとしてすぐに迎えに来ない保護者もいるなど、保護者の責任感が希薄化していることから、通勤又は通学その他正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させない努力義務を保護者に課したものである。
これにより、保護者の責任を明確にし、自覚を促すことを目的としている。
ここでいう「正当な理由」とは、勉強又は就労(労働基準法で認められている範囲内に限る。)のように定例的なもの、本人又は保護者・親戚等の病気や事故、旅行先からの帰宅等の突発的又は一時的なものの両方が想定される。
第2項は、保護者の委託を受け、又は同意を得た場合その他正当な理由がある場合を除いて、深夜に青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめることを禁止する規定である。保護者の同意等を受けず、また、その他正当な理由がないのに、青少年を深夜に連れ回すことは、まさに犯罪に巻き込まれる危険性があることから、設けられたものである。
保護者の委託又は同意の有無は、例えば、塾等に迎えに行くなど保護者の委託を受けて定例的に行っている場合、毎回必ず確認することまでは要さない。
また、ここでいう「正当な理由」とは、本人又は保護者の急な病気や事故等により、保護者に確認することが不可能な場合、事件や事故等に遭遇した青少年を助ける等、偶発的な理由により、結果として同伴することになった場合等を指す。
「連れ出し」とは、深夜に、青少年を東京都内の住居、居所等から離れさせることであり、その手段等は問わず、携帯電話やメール等での呼び出しであっても該当する。
「同伴」とは、現に同行し、又は同席する等、青少年と同一の行動を取っていることをいい、青少年が単独であると複数であるとは問わない。また、既に深夜に外出している青少年と同伴する場合も含む。
「とどめ」とは、深夜に連れ出している、あるいは深夜に既に外出している青少年が、帰宅の意思を表しているにもかかわらず、それを翻意させ、又は制止することをいい、その手段は問わない。
本条において、本項のみが罰則の対象となるが、罰則を適用されるのは、16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた者に限る。これは、中学生以下と高校生以上とでは、生活実態が異なることを考盧したものである。
第3項は子供に対する大人の本来の責任を明確にするためのものである。
第1項及び第2項を受けて、すべての者が、深夜に青少年が外出することは望ましくないとの認識を持ち、そのような青少年と会った場合は、保護するとともに、今後は深夜に外出しないように促すことを求めた規定である。
「保護」とは、深夜外出している青少年が被害に遭わないための未然防止策であり、例えば、飲酒、喫煙、けんか等自身を損ない、又は周囲に迷惑をかける行為をしている場合に、警察や消防などへ通報することが挙げられる。
「善導」とは、深夜外出している青少年に帰宅を促すとともに、犯罪に巻き込まれないため等の注意喚起を促すことである。
なお、保護者から深夜外出の承諾を得ている場合には、やむを得ない場合と考えられることや、保護者が責任をもって行わせていることであるため、必ずしも保護及び善導に努める必要はない。
第4項は、第16条にいう深夜立入制限施設には該当しないが、深夜に営業を営んでいる事業者等は、本条及び第16条の制定趣旨を十分に理解し、協力する必要があるとして、特に、当該営業に係る施設内等にいる青少年に対する帰宅を促す責任があることを規定したものである。
「深夜に営業を営む者」とは、深夜に営業しているスーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどの経営者等を想定している。また、帰宅を促す方法としては、掲示や放送等が有効と考えられる。
【本条第2項に違反した者】
第26条第5号により30万円以下の罰金(直罰)
※深夜に16歳未満の青少年を連れ出し、同伴し、又はとどめた場合のみ適用