児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

数回の(私事性的画像記録公然陳列罪・わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪)は併合罪(神戸地裁R2.03.09)

「犯情の最も重い第1別表1番号1の罪の刑に法定の加重」とされていることから、各わいせつ電磁的記録記録媒体公然陳列罪が併合罪になっています。
 わいせつ図画の包括一罪性というのは、児童ポルノ罪の併合罪で切れると主張したことがあって、切れなかったんですが(最決平成21年7月7日https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=37814 )、リベンジポルノ罪だと切れるようです
 

私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反、わいせつ電磁的記録記録媒体陳列被告事件神戸地裁R2.03.09
 (犯罪事実)
 被告人は,
 第1  別表1記載のとおり,平成29年9月3日頃から平成30年12月16日頃までの間,6回にわたり,大阪府藤井寺市〈以下省略〉所在の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,A(当時23ないし25歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータにそれぞれ送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第2  平成30年7月16日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,B(当時18歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して,記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第3  平成30年8月5日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,B(当時18歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第4  別表2記載のとおり,平成30年12月31日頃から平成31年4月12日頃までの間,4回にわたり,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,C(当時32歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータにそれぞれ送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第5  平成31年4月7日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,D(当時21歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第6  平成31年4月7日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介してE(当時23歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第7  平成31年4月12日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,F(当時23歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第8  令和元年5月4日頃,前記第1の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,G(当時21歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,前記「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して,記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 第9  令和元年5月12日頃,大阪市〈以下省略〉所在の当時の被告人方において,パーソナルコンピュータを使用し,インターネットを介して,H(当時24歳)の顔貌及び同人が被告人と性交する場面が露骨に撮影された動画データを,「a,Inc.」が管理するサーバコンピュータに送信して記録,保存させ,不特定多数のインターネット利用者が同動画の閲覧が可能な状態を設定し,
 もって第三者が撮影対象者を特定することができる方法で,性交又は性交類似行為に係る人の姿態である私事性的画像記録物を公然と陳列するとともに,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した。
 (法令の適用)
 罰条 各行為(第1及び第4は各別表の番号ごと)中,私事性的画像記録物を公然と陳列した点はいずれも私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律3条2項,1項,2条1項1号,わいせつな電磁的記録に係る記録媒体を公然と陳列した点はいずれも刑法175条1項前段
 科刑上一罪の処理 いずれも刑法54条1項前段,10条(それぞれ1罪として重い私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反の懲役刑及びわいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪の罰金刑で処断)
 刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑
 併合罪の処理 刑法45条前段
 懲役刑について 刑法47条本文,10条(犯情の最も重い第1別表1番号1の罪の刑に法定の加重)
 罰金刑について 刑法48条2項(罰金の多額を合計)
 労役場留置 刑法18条(1万円を1日に換算)
 刑の執行猶予 刑法25条1項
 (量刑の理由)
 本件は,判示のとおりの私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反,わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の事案である。被告人は,専ら利欲目的から,被害者の人格を何ら顧みることなく,その名誉や私生活の平穏を著しく侵害する本件各犯行に及んだものである。被害者数は8名,訴因の数は17にも及んでおり,本件は常習性が明らかに認められる職業的犯行というべきである。被害者らは,本件各犯行によって多大な精神的苦痛を被るとともに,性交場面の動画がインターネット上に拡散したことで,現在もなお不安な日々を送っているのであって,生じた結果は重大である。これらによれば,被告人の刑事責任を到底軽視することはできず,その責任を服役によって果たさせることも十分に考えられる。
 しかしながら他方で,8名の被害者のうち,7名との間で示談が成立していること,罪を素直に認め,反省の態度を示していること,母親が情状証人として出廷し,監督を誓約していること等の事情も認められる。これらの被告人にとって酌むべき事情をも考えると,自由刑の前科がない被告人に対しては,なお懲役刑の執行を猶予することも許されるというべきである。
 そこで,主文のとおりの刑を量定した上で,懲役刑の執行を法定の最長期間である5年間猶予し,今回に限り,社会内で反省と更生の日々を送らせる機会を与えることとした。
 (求刑・懲役3年及び罰金100万円)
 (検察官橋本純一 私選弁護人田中今日太[主任] 各出席)
 神戸地方裁判所第2刑事部
 (裁判官 安達拓)