児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

監護者わいせつ罪の実刑事案(佐賀地裁R2.6.11)

 監護者わいせつ罪の科刑状況をみると、1回だけなら執行猶予になるんですが、「自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,」ということで、起訴されてない余罪があると考慮されて実刑になります。
 ということは、弁護人は、訴因では1回のわいせつ行為とされていても、余罪の回数・期間を争うことになります。児童淫行罪の実務と同様です。

監護者わいせつ被告事件
佐賀地方裁判所令和2年6月11日

       主   文

 被告人を懲役1年8月に処する。

       理   由

 【罪となるべき事実】
 被告人は,別紙の2記載の者(以下「A」という。)の実母と婚姻してその娘であるAと養子縁組をし,同人と同居してその寝食の世話をし,その指導・監督をするなどして,同人を現に監護する者であるが,同人が18歳未満の者であることを知りながら,同人にわいせつな行為をしようと考え,令和元年11月中旬頃,別紙の3記載の当時の被告人方において,就寝するために横たわっているAの着衣の中に手を差し入れて直接その胸をもみ,もって,同人を監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした。
 【法令の適用】
罰条       刑法179条1項,176条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
 【量刑の理由】
 被告人は,被害者が就寝しているときを狙い,本件犯行が発覚しても薬を塗布していただけであるとの弁解ができるようにクリーム等を準備して,被害者の背中等にクリームを塗布しながら本件犯行に及んでおり,わいせつ行為の態様も直接的であり,本件犯行は巧妙で悪質なものである。被害者は本件被害を受けた際,被告人に怒られることを恐れて,寝たふりをして耐え,その後もなかなか周囲に被害を打ち明けられずに悩んでいたのであり,被害者が感じた屈辱,恥ずかしさ,恐怖は大きい。被告人は,被害者が小学校低学年のころから養父としてその監護をしてきたものであり,本来であれば,被害者の心身の健全な発達のために同人を守るべき立場であるにもかかわらず,自らの性的欲求を優先し,被害者に対して同様の行為を繰り返す中で本件犯行に及んでおり,被告人のことを父親として信頼してきた被害者の心を深く傷付け,今後の心身の健全な発達にも深刻な影響を及ぼしかねない点は,強い非難に値する。
 このような本件犯行の重さを考慮すれば,被告人の刑事責任もこれに応じて重いというべきであり,執行猶予を付するのが相当な事案とはいえず,実刑が相当である。
 なお,弁護人は,被告人は本件犯行時,被害者が就寝していると思っており,監護者としての影響力を利用しようとの積極的な意図までは有していなかったから,この点は被告人にとって有利な情状として考慮すべきであると主張する。
 しかしながら,本罪においては,監護者として有する一般的かつ継続的な影響力がある状態でわいせつ行為に及ぶことが非難されるべきであるから,前記影響力を基礎付ける事情を認識していれば,ことさらに前記影響力を利用しようとの積極的・具体的な意図を有していなかったことをもって,刑を軽くすべき事情であると評価することは相当でない。被告人は,被害者が自己の養女であり同居して指導監督している等の,前記影響力を基礎付ける事情を認識していることはもちろん,本件犯行時においても,被害者が目を覚ますかもしれないとの認識も有しながら犯行に及んでいたことが認められ,被告人の主観面について刑を軽くすべき事情があるとはいえないから,この点についての弁護人の主張は採用することができない。
 他方,被告人が前科を有しないこと,被害者の母親との離婚及び被害者との離縁が成立し,被告人の母親宅に転居して生活環境を変え,被害者に対して総額360万円を今後10年間かけて支払う旨の示談をするなど,再犯防止と被害弁償に向けた意欲を示していることを,被告人にとって酌むべき事情として考慮し,主文の期間の刑とする。
(求刑 懲役2年6月)
  令和2年6月11日
    佐賀地方裁判所刑事部
           裁判官  西村彩子