児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

医師・歯科医師の刑事事件の結果・時期と、行政処分結果・時期の関係を調べてみた。

医師・歯科医師の刑事事件の結果と、行政処分の関係を調べてみた。
いまも医師3名の弁護人・代理人なので、強く求められて調べてみました。
ソースは、厚生労働省のプレスリリースと、刑事確定訴訟記録法による判決閲覧。という公表資料の集積ですが、結果は公表できません。

傾向としては、
 実刑判決は、免許取消だが、最近は情状立証として返上するので、行政処分がない。
 薬物利用・治療装うなどの地位利用型は執行猶予でも取消
 地位利用がない場合で執行猶予事案でも悪質事案は取消
 刑事判決確定から、行政処分までの日数は、医業停止の場合、150日~706日。取消の場合は、288日~1046日

「「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)」とした事件の概要

「①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解する」というのは結局本件を有罪にする理由付けだよね。

宮崎礼壹「青少年保護育成条例による『いん行』処罰の合憲性ー最高裁(大法廷)昭和60年10月23日判決ー」法律のひろば 第39巻1号
本件にかかわる生の事実を、公判記録や原審認定にもとづいて少しく具体的にみると、次のようである。
被告人(昭和三○年六月一二日生、独身)は、当時、複数の女性をドライブに誘っては山中に連れ込承強姦・同未遂を敢行したかどで懲役四年の実刑を言い渡され二年八か月服役したのち仮出獄中の身であったが、昭和五六年三月下旬ころ、路上で行き会ったA子(昭和四○年七月一日生、当時一五歳、のち一六歳)が中学校を卒業したばかりで高校入学前の女生徒であるのを知りながら、その場でドライブに誘い、海岸で駐車させた自動車の中で「俺の女にならんか」と言っていきなり性交をしたのを手始めに、同年九月ころまで主に車の中、ときに被告人方で同女と約二○回余の性交関係を重ねたが、二人が会っている問は専ら性交に終始し、中には高校通学途上のA子を被告人が車で待ち伏せ、制服のままそそくさと車中性交を済ませてそのまま登校させるという態様のものが少なくなかったほか、結婚の話などは全くしたことがなかった。
この間被告人は、A子と知り合い性交渉をもった当時平行的にB子なる一四歳の青少年とも継続的な性交渉を有していたところ、同年七月二日右B子との件で警察に逮捕され、同月一三日、本件と同じ福岡県青少年保護育成条例違反により罰金三万円の略式命令(これはそのまま未確定)を受け同日釈放されたが、その当日も被告人はA子を電話で呼出し、福岡市内のホテルで同女と性交をしている。
被告人は同年九月二九日、右A子の供述から、右七月一三日の性交の件で福岡県青少年保護育成条例違反として通常逮捕され、同年一○月八日、次の公訴事実をもって、小倉区検から小倉簡易裁判所に略式請求された結果、同裁判所は即日、当該事実により罰金五万円に処する旨の略式命令を発付した。
「被告人(昭和三○年月日生、当時二六歳)は、A子(昭和四○年月日生、当時一六歳)が一八歳に満たない青少年であることを知りながら、昭和五六年七月一三日午後三時ころ、福岡県遠賀郡内ホテルヨンゼル」の客室において右A子と性交し、もって青少年に対し淫行をしたものである。」

「青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象としてのみ扱っていると認められる性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。青少年から行為者に働きかけて当該行為に至った場合も同様です。」という「大阪府青少年健全育成条例の改正案」

 威迫困惑欺罔という要件があるとほとんど検挙できないので「淫行特区」と呼んでいたんですが、改正されます。淫行の実態を説明してと奥村も大阪府庁に呼ばれました。
 山口県・長野県が同じ体裁ですので、青少年条例の趣旨としてはなお抽象的危険犯的な理解でいいと思います。
 警察官が検挙されるんじゃないかと予想しています。
 わいせつの定義ができないくせにどうするのかと思います。
 

http://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/attach/hodo-36748_4.doc
大阪府青少年健全育成条例の改正案」の概要

1 条例の概要について
  「大阪府青少年健全育成条例」は、青少年(18歳未満の者をいう。以下同じ。)の健全な育成を図ることを目的に、青少年を取り巻く社会環境を整備し、及び青少年をその健全な成長を阻害する行為から保護するために必要な規制を定めています。

2 条例改正の背景と検討経過について
スマートフォンの普及やインターネット利用の低年齢化に伴い、青少年がインターネットを介して児童ポルノや児童買春等の犯罪やトラブルに遭う事案が増加しています。
このような状況を踏まえ、大阪府から平成30年6月に大阪府青少年健全育成審議会(以下「審議会」という。)に対し、コミュニティサイト(以下「SNS」という。)に起因した青少年の性的搾取等への対応について問題提起しました。審議会において、この問題を専門的見地から調査・審議するため特別部会を設置し検討を重ね、同年11月に大阪府に対し第1回目の提言がなされました。今年度は、この提言において継続審議となったいわゆる「自画撮り被害」以外の性的搾取への規制の在り方等について、引き続き議論いただき、本年12月に審議会より2回目の提言を受理しました。
大阪府では、この提言を踏まえ、青少年に対する淫らな性行為及びわいせつな行為による被害を未然に防止し、もって青少年の健全な成長を阻害する行為からの保護を図ることを目的に、大阪府青少年健全育成条例を改正し、必要な規制を行うこととしました。

〔検討経過〕
平成30年6月26日から10月29日
  第1回審議会において、大阪府から「SNS等に起因した青少年の性的搾取等への対応につ
 いて」問題提起。特別部会を設置し、審議会(2回)・特別部会(5回)において審議。
同年11月28日 
審議会から大阪府に対して、「青少年を取り巻く有害環境への対応について~SNS等に起因した青少年の性的搾取等への対応~」提言。

令和元年5月31日から11月13日
  特別部会等(7回)において、昨年度継続審議となったいわゆる「自画撮り被害」以外の性
 的搾取への規制の在り方等について審議。
同年11月28日
  第1回審議会において特別部会報告書をもとに審議。
同年12月5日 
審議会から大阪府に対して、「青少年を取り巻く有害環境への対応について~SNS等に起因
  した青少年の性的搾取等への対応~」提言。

3 条例改正の内容について
現行の淫らな性行為及びわいせつな行為の禁止に関する規定は、青少年健全育成条例制定時の昭和59年に、青少年の性を弄ぶ心ない大人から青少年を保護し、行為者の社会的責任を追及するとともに、青少年に正しい性意識を持たせる一助とするために設けられたものであり、プライバシーその他の人権を不当に侵害することのないよう、取り締まりの対象行為をその動機や手段において社会的に非難を浴びるような性的行為(専ら性的欲望を満足させる目的で、威迫し、欺き、又は困惑させて行う性行為及びわいせつな行為)に限定して規定されました。
近年、スマートフォン等の普及により、青少年がSNS等で知り合った大人に軽い気持ちで会い、誘われる等して性行為又はわいせつな行為に至るケースが増えていますが、こうしたケースでは、行為者の威迫し、欺き、又は困惑させる行為がないまま青少年が被害に遭っている場合があります。
こうした現状を踏まえ、青少年保護の観点から規制の対象範囲を見直すものです。

(1)規制する行為及び対象
<現行規定>
第39条 何人も、次に掲げる行為を行ってはならない。
 ⑵専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと。

<改正後に規制の対象となる行為>
〇行為者が青少年を威迫し、欺き、又は困惑させたうえで行う性行為又はわいせつな行為に加え、青少年の未成熟に乗じた不当な手段(困惑状態にあることに乗じる等)により行う性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。
〇青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象としてのみ扱っていると認められる性行為又はわいせつな行為を規制の対象とします。青少年から行為者に働きかけて当該行為に至った場合も同様です。
〇真摯な交際関係における性行為又はわいせつな行為は規制対象ではありません。

(2)罰則
現行規定のとおり、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科します。
なお、本条例第61条により、この条例の罰則は、青少年に対しては適用されません。

4 今後の予定について
○令和2年2月府議会に提出予定です。 
○施行日は、令和2年6月1日を予定しています。

sextingの児童ポルノ製造容疑の相談に対して、「写真と動画はすぐに削除した方が良いです。持っておく方が危険です」として証拠隠滅を勧めるような弁護士の回答

 証拠隠滅しろというアドバイスになっています。
 単純所持罪については、捜査機関の方針として、削除されていると起訴されませんが(破壊するときにも警察と相談しつつです)、sextingの製造罪は、児童側の画像から捜査が始まるので、受信側で削除しても立件される危険は変わりません。
 「ココなら法律相談」は不正確であっても相談者を安心させる回答にするという傾向があります。
 登録弁護士もそういう回答を連発して高評価を得てランク上位に掲載されることを目指します。
 

https://legal.coconala.com/bbses/7478
公開日時: 2019年4月9日 19:14 刑事事件
19歳の大学生です。児童ポルノについての相談です。先月、ツイッターにおいて中学二年生で14歳と思われる女子とダイレクトメッセージ上で連絡を取り、彼女が提示してきた金額相応のプリペイドマネーと引き換えに彼女の裸の写真や自慰をしている動画を送ってもらいました。その後この一連の行為が児童ポルノの単純所持あるいは製造になる可能性があることを知り

弁護士からの回答タイムライン
馬場 龍行
馬場 龍行弁護士
東京都 > 立川市
刑事事件に注力する弁護士
写真と動画はすぐに削除した方が良いです。持っておく方が危険です。
自首は勇気を出して警察に行けばできますよ。弁護士が同行してくれれば万が一逮捕された時などの初動が早いですし,何より逮捕されないようにきちんとプレッシャーを与えることができるのですが,何れにしても,勇気を出して警察署に行ってください。
自首を勧めるかと言われると,難しいところですが,あなたが反省して二度とやらないと誓えるのであれば自首まではしなくても良いのかなとも思います。
2019年4月9日 19:14
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馬場 龍行弁護士
東京都 > 立川市
刑事事件に注力する弁護士
というよりは,削除しなければ常に児童ポルノ所持で取り調べを受けるリスクがあるからということです。持っている限り,罪を犯している状態になるからです。

最高裁判例解説「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」平成28年(あ)第1731号平成29年11月29日大法廷判決棄却第1審神戸地裁第2審大阪高裁刑集71巻9号467頁 法曹時報72巻1号(向井香津子)

 わいせつの定義はありません。

(後注) 本判決の評釈等として知り得た主なものとして,以下のものがある。
松木敏明=奥村徹園田寿「強制わいせつ罪の成立と行為者の性的意図の要否」法学セミナー758号48頁,
奥村徹最高裁大法廷平成29年11月29日判決の背景」判例時報2366号131頁

判例
「わいせつ」という用語は,刑法174条(公然わいせつ), 175条(わいせつ物頒布等)にも使用されているところ,昭和26年判例が,刑法175条所定のわいせつ文書に該当するかという点に関し, 「徒に性欲を興奮又は刺激せしめかつ普通人の止常な性的差恥心を害し善良な性的道義観念に反するものと認められる」との理由でわいせつ文書該当性を認め,最大判昭和32年3月13日・刑集11巻3号997頁(チャタレー事件) もその定義を採用しており, これ
が「わいせつ」の定義であるとされている。
さらに, 前褐名古屋高裁金沢支部判【裁判例①】は, 「刑法第176条にいわゆる「猥せつ』とは徒らに什欲を興奮又は刺戟せしめ, 且つ普通人の正常な性的蓋恥心を害し,善良な性的道義観念に反することをいうものと解すべき」とし,刑法176条の「わいせつ」についても,刑法175条に関して判示された上記定義と同内容の定義を採用し, 【裁判例①】は, 多くの文献等で刑法176条のわいせつの意義を示した高裁判例として引用されている。しかし,刑法176条の「わいせつな行為」の定義を示した最高裁判例はない。
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(5) 「わいせつな行為」の定義、判断方法
ア「わいせつな行為」の定義
以上のとおり,性的意図が強制わいせつ罪の成立要件でないとすれば,「わいせつな行為」に該当するか否かが強制わいせつ罪の成否を決する上で更に重要なものとなってくるが, 「わいせつな行為」該当性の判断に|際して,行為者の主観を一切考慮してはいけないのかどうかを含め, これをどのように、判断しし,その処罰範閉を明確化するのかが問題となる。
また,強制わいせつ致傷罪は,裁判員裁判対象事件であることも考えれば, 「わいせつな行為」の判断基準が明確であることが望ましい。
ところが,強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」の定義を明らかにした当審判例はなく,前記のとおり,学説上は様々な説があって,未だ議論が成熟しているとはいい難い状況にある。
しかし,そもそも, 「わいせつな行為」という言葉は,一般的な社会通念に照らせば,ある程度のイメージを具体的に持つことができる。
そして,「わいせつな行為」を過不足なく別の言葉でわかりやすく表現することには附難を伴うだけでなく,別の言葉で定義づけた場合に,かえって誤解を生じさせるなどして解釈上の混乱を招きかねないおそれもある。
また, 「わいせつな行為」を定義したからといって,それによって, 「わいせつな行為」に該当するか否かを直ちに判断できるものでもなく,結局,個々の事例の積み重ねを通じて判断されていくべき事柄といえるところ, これまでも実務上,多くの事例判断が積み重ねられており(前掲大コメ67頁以下等) ,それらの集積からある程度の外延がうかがわれるところでもある。
そうであるとすると,いわゆる規範的構成要件である「わいせつな行為」該当性を安定的に解釈していくためには, これをどのように定義づけるかよりも, どのような考慮要素をどのような判断基準で判断していくべきなのかという、'1断方法こそが重要であると考えられる。
本判決は, 「わいせつな行為」の定義に言及していないが, このようなことが考えられたものと思われる。
もっとも,本判決は,その判示内容からすれば, 【裁判例①】が示した定義を採用していないし,原判決の示す「性的自由を侵害する行為」という定義も採用していないことは明らかと思わ(注12)れる。
なお,実務上, 「わいせつな行為」該当性を判断する具体的場面においては、従来の判例・裁判例で示されてきた事例判断の積み重ねから「わいせつな行為」の外延を踏まえて判断していなければならないこと自体は,本判決も当然の前提としているものと思われる。
(注12) 私見によれば, 【裁判例①】及び原判決の各定義が妥当でない理由として,次のような点を指摘できると考える。
まず,原判決の定義「性的自由を侵害する行為」についてみると, 「わいせつな行為」が強制されたり, 13歳未満の者等に対して「わいせつな行為」が行われたりすることによって,性的自由が侵害されるのであって, 「わいせつな行為」自体が直ちに性的自巾を侵害する行為とはいえないし, また,性的自由を侵害し得るような行為と捉え直した場合には,その範囲は無限定に広がりすぎてしまい, 「わいせつな行為」の処罰範囲を画する定義としては不適当であるように思われる。
次に, 【裁判例①】が示す定義「徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ,且つ普通人の正常な性的董恥心を害し,善良な性的道義観念に反すること」についてみると,社会的法益を保護法益とする174条等とは異なり,強制わいせつ罪が個人的法益に対する罪であることに照らせば, 「善良な性的道徳観念に反するか」という観点は不要であろう。
そもそも, 「わいせつな行為」を暴行・脅迫を用いて他人に強制することや, 13歳未満の者等に対して「わいせつな行為」をすることは性的道徳観念に反することではあるが, 「わいせつな行為」とされる性的行為そのものに不道徳性が備わっているのではなく,性的行為自体は,本来的には価値中立的な行為と考えられる。
また, 「道徳」という言葉は多義的で不明確との批判を招くおそれもある(なお,究極的なわいせつ行為ともいえる姦淫行為の意義に関しても,その字義から不道徳な性交を連想させるとしながらも,単なる性交と解するのが通説であって,性交が不道徳なものかどうかは問われないと解されてきた。前掲大コメ76頁,前掲条解504頁,前掲注釈刑法(4)296頁)。
さらに, 「徒に性欲を興奮又は刺戟せしめ, 」「普通人の正常な件的蓋恥心を害する」という部分についても,それぞれ,誰の性欲を問題にしているのか, どのような性的羞恥心を問題にしているのかが必ずしも明らかではなく,誤解を招きかねない上(例えば,性的差恥心を想定しにくい幼児に対する行為の判断などで混乱を生じさせかねない。
また, 行為者の性欲を問題にするとすれば,性的意図を一律に要求しないことと矛盾を生じさせかねない。
),一般人を基準に考えるというのであれば,結局は「性的意味があるか否か, その程度はどのくらいか」という評価に収數されていくように思われる。
なお,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和40年北海道条例第34号) 2条の2第1項4りにいう「卑わいな言動」の意義については,最三小決平成20年11月10日・刑集62巻10号2853頁が, 「社会通念上,性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいう」としているが, 同条例の構成要件は, 「卑わいな言動をしたこと」であって,暴行脅迫要件も年齢要件もないことから, 「卑わいな言動」を価値中立的に理解すべきでないことは当然であり, 「わいせつな行為」とは自ずと異なる解釈になるべきと考えられる。

送信型強制わいせつ行為(長崎地裁R010917)

 脅して撮影送信させる行為がわいせつ行為かどうかの判例はありません。強制わいせつ罪ではなく強要罪だという高裁判例がいくつかあります。

 東京高裁判例などによれば「その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。」の部分はわいせつ行為と評価されないと思われます。




長崎地方裁判所令和1年9月17
強制わいせつ、長崎県少年保護育成条例違反被告事件
理由
以下、匿名表記した被害者氏名は別紙のとおりである。
(犯罪事実)
第1 被告人は、A(当時16歳)から入手した同人の画像データ等を利用して強いてわいせつな行為をしようと考え、平成30年10月26日午後10時6分頃から同月27日午前2時21分頃までの間に、D市内又はその周辺において、自己の携帯電話機及びタブレットから、同人が使用する携帯電話機に、アプリケーションソフト「E」の通話機能及びビデオ通話機能を利用して通信し、D市内にいた同人に対し、「写真を援助交際サイトに載せる。」「学校や家の近くに何人かの人が来る。」「連れていかれたことがある。」などと脅迫し、もしこの要求に応じなければAの自由や名誉等にいかなる危害を加えるかもしれない旨畏怖させ、その反抗を著しく困難にし、ビデオ通話機能を通じて、同人に胸や陰部を露出した姿態及び陰部を指で触るなどした姿態をとるよう指示し、同人にそれをさせた上、その姿態の映像を前記ビデオ通話機能を用いて被告人の携帯電話機に送信させ、もって強いてわいせつな行為をした。
第2 被告人は、平成30年12月2日、D市(以下略)「ホテルF」(省略)号室において、C(当時15歳)が18歳に満たない少年であることを知りながら、もっぱら自己の性的欲望を満足させる目的で同人と性交し、もって少年に対し、みだらな性行為をした。
(証拠の標目)(各証拠書類等に付記した番号は、検察官請求の証
(事実認定の補足説明)
1 弁護人は、被告人が、Aに写真を援助交際サイトに載せる旨などを言った事実はあるが、Bの代わりに交渉役として登場したAにBに対する怒りをぶつけたに過ぎず、Aにわいせつ行為をする目的で発したものではない旨主張し、被告人も、「最初は怒りに任せていろいろ言っていたと思うが、その後はAと仲良くなれたという感じだった。」などと弁護人の主張に沿う供述をしているが、裁判所は前記のとおりに認定をしたので、補足して説明をする。
2 Aの公判供述について
 (1) Aは、概ね以下のとおりに述べている。
  「被告人と電話で話を始めた時、被告人は怒っているように見えて、『Bの写真を援助交際サイトに載せる。』『援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。』という話をした。その後、落ち着いて雑談をするようになったが、被告人が怖かった。被告人から自分の写真を送るよう言われたので、3枚送った。自分の写真を送った直後に、被告人からそれを援助交際サイトに載せる旨言われたことはない。」
  「被告人との電話を早く切りたかったので終わらせようとしたが、被告人から『終わらせたら載せる。』と言われた。被告人からビデオ通話に応じるように言われ、応じないと『じゃ、切るね。』と言われた。被告人から胸を見せるよう言われたときは断っていたが、『もう切るから。』と言われたので見せた。陰部を見せた際に言われた言葉は覚えていないが拒否した覚えはある。勝手に通話を終了すると、写真を拡散されると思っていた。」
 (2) Aの公判供述の信用性について
  Aの公判供述は、その内容に覚えていない部分が多いなどあいまいな部分があることは否定できないものの、Aが虚偽の供述をしていることを窺わせるような不自然、不合理な点はない。供述内容があいまいな点については、Aの証人尋問が実施されたのは既に本件から9か月近く経過した時点であったことを考えると、時間の経過による記憶の劣化があったとしても何ら不自然ではないから、そのことが直ちにその供述内容の信用性に影響を及ぼすようなものではない。また、被告人がAが自己の要求に応じないと、連絡を絶つ旨をAに申し向けてAを困惑させ、自己の要求に従わせるという手法は、本件以後にEアプリで被告人がAに対し会うことを求める際の手口と全く同じであり、前記の供述内容は、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容に非常に整合している。
  次に、前記のとおり時間の経過によりAの記憶が劣化していることは否めないことから、Aの記憶が変容し事実と異なる供述をしている可能性について検討すると、本件の出来事は日常的な出来事ではなく、当時16歳のAにとって非常に衝撃的な出来事であったと考えられるから、前記公判供述のような出来事がなかったにもかかわらずあるものと記憶が変容するということはおよそ考え難いし、他の事実と混同するようなこともない。前記のとおりの客観的事実関係との整合性も考え合わせると、Aの供述内容にはあいまいな部分こそあるものの、その述べている限りの内容については記憶違いにより事実と異なる供述をしている可能性はないといえる。
 (3) 弁護人の主張について
  弁護人は、〈1〉Aは、被告人が写真を援助交際サイトに載せると言っているのを直接聞いておらず、Bから聞いたに過ぎないということを前提として、Aの供述は、Bから聞いた印象だけで被告人から脅されたと言っているに過ぎない旨、〈2〉Aは、被告人に顔写真を送った理由について「怖かった。」と述べているが、被告人のBに対する怒りがおさまった後、雑談をしている際に写真を送付しているのであるから「怖かった。」というのは信用性に乏しい旨主張している。しかし、〈1〉の点については、Aは「ビデオ通話をする前に、写真を援助交際サイトに載せる旨言われた。」旨明確に答える(A証人尋問調書203項)など、被告人がAに対し写真を援助交際サイトに載せる旨を言ったことを明言しているのであるから、弁護人の主張はその前提を欠くものである。また、〈2〉の点についても、前記(1)のとおり、Aは、被告人と電話で会話を始めた時点で、被告人がAに対し「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」「援助交際サイトに載せると、何人かの人が来て、連れていかれたこともある。」旨述べているのであり、当時16歳で社会経験も乏しいAの立場になれば、見も知らない被告人がそのようなことを語り、自身の親友であるBが同様の事態になるかもしれないというだけで、被告人に対し恐怖を感じるのは自然なことである。被告人とAが雑談を始め、被告人の会話内容が落ち着いてきていたのだとしても、Aが被告人に対し恐怖感を持っていたというのは非常に自然であり、この点の弁護人の主張も理由がない。
3 被告人供述について
  被告人は、「Bに対しては腹を立てていたが、Aがいい子そうだったので仲良くなりたいと思い、その旨をAに言うと『いいですよ。』と言ったので、雑談を始めた。その後、会って食事をするという話になったが、会うのをやめるという話になったので、Aの胸を見せてくれるという約束でビデオ通話をするようになり、ビデオ通話の中でAの胸や陰部の画像を送信してもらった。」旨述べている。
  しかし、被告人の公判供述の内容は、明らかに被害者の供述内容に整合しないし、本件より後のAと被告人のEアプリを通じた会話内容にも整合しない。また、当初、Bに対し腹を立て、Bの代わりに話をするようになったAに対しても30分くらいその怒りを示すなどしていたのに、被告人がAに仲良くなりたいというとそれをAがいきなり受け入れるというのは、被告人とAがそれまで全く面識がなかったことを考えるとあまりに唐突過ぎ、不自然である。また、被告人が述べるところによれば、Aが被告人と会うことを渋ったために会うのをやめてビデオ通話をすることになったというのであるが、被告人と会うことを渋ったAがビデオ通話に応じるようになった合理的な説明ができていないし、被告人と会うことを渋ったというAが、特に被告人がAを脅すこともなく、Aに金銭的な対価を示したわけでもないのに、これまで全く面識もない被告人に胸を見せる前提でビデオ通話に応じるというのもおよそ信じ難い。
  以上のとおりであるから、被告人の公判供述は信用できない。
4 結論
  関係証拠により認められる事実及び信用できるAの公判供述により認定できる事実によれば、判示の事実は優に認定できる。なお、弁護人は、「写真を援助交際サイトに載せる。」などという文言を言っていたとしても、被害者に対しわいせつ行為をする目的で発せられたものではない旨主張するが、一連の経過に照らせば、「写真を援助交際サイトに載せる。」などと言って、Aの恐怖をあおる理由はAに本件のようなわいせつ画像の送信を含む何らかの自己の性欲を満たす行為を求める以外に考えられないのであり、被告人が電話でAに対して、「Bの写真を援助交際サイトに載せる。」旨述べた時点から、被告人にはそのように述べることによりAを困惑させて何らかの自己の性欲を満たす行為を求める目的があったと推認でき、この時点が実行の着手といえる。

法令の適用)
 罰条
  被告人の判示第1の行為は刑法176条前段に該当する。
  被告人の判示第2の行為は長崎県少年保護育成条例22条1項1号、16条1項に該当する。
 刑種の選択
  判示第2の罪につき、所定刑中懲役刑を選択する。
 併合罪の処理
  判示各罪は刑法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第1の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重をする。
 宣告刑の決定
  以上のとおり加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役2年6か月に処する。
 未決勾留日数の算入
  刑法21条を適用して未決勾留日数中190日をその刑に算入する。
 訴訟費用の処理
  訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させない。
(量刑の理由)
 第1の犯行の態様は、被害者が当時16歳で社会経験が少ないことを利用して、インターネット上に顔写真を拡散させることによる害悪を告知し、被害者の恐怖をあおるというものであり、その脅迫行為はこの種事犯の中でも非常に悪質といえる。本件により被害者は、乳房を露出させた姿や陰部を露出させて触る姿をビデオ通話を通じて被告人に見せている。性的自由の侵害の程度も相当程度に及んでおり、これにより当時16歳であった被害者が受けた精神的苦痛には甚大なものがある。また、これを撮影した画像が拡散するおそれもあり、二次被害が生じるおそれについても指摘できる。
(検察官榊原詩音、国選弁護人池内愛各出席)
(求刑-懲役3年)

児童ポルノ写真集について、part1の提供の罪とその1年2ヶ月誤のpart2の提供の罪は包括一罪だという検察官の主張(CG事件控訴事件検察官答弁書)

 これ併合罪で起訴されたときに使えますよね。
 東京高裁h28.3.15はこれを認めなかったので、控訴審では破棄されて一部を除いて無罪判決になっています。

控訴審検察官答弁書
(2) part1の提供の罪とpart2の提供の罪は併合罪であるから,part1の提供の罪について無罪の言渡しをしなかったのは違法である旨の主張及び訴因変更が違法である旨の主張について
弁護人は,併合罪であることの根拠として,part1のアップロード時期とpart2のアップロードの時期はその期間が1年2か月間と離れている上,被写体となっている児童も別人であり,提供を受けた3名もダウンロードされた時期も約1年間の隔たりがあることを挙げている。
この点,原判決は,これを包括ー罪としているところ,包括一罪とは,数個の犯罪が成立する場合において,それを構成する数個の行為が,同一罪名に当たるか,若しくは同一法益を侵害するものであって,各行為の間に日時・場所の接近,方法の類似,機会の同一,意思の継続などの密接な関係が認められるものであることから,「数回の処罰」をするべきものではなく,「一回の処罰」で処遇することが相当と解される場合をいうと解されている(大コンメンタール刑法第2版第4巻20 2頁)。
本件において,part1のアップロード時期や提供を受けた者らのダウンロードの時期については,弁護人が指摘するとおり相当程度隔たりがあるものの,提供の方法や場所は,いずれも画像を同一の業者のサーバコンピュータに自宅からアップロードして販売を委託するというもので,全く同ーであるし,被告人がpart1を一応完成させて最初にアップロードしたのが平成20年8月頃であり,その後も,同年10月頃までに一部頁を入れ替え,再度,アップロードするなどする傍ら,同年8月以降, リクエストに応じて他のモデルの写真などを素材にCG画像を製作し続け,これをpart2として完成させてアップロードしているのであって, 被告人によるpart1の提供とpart2の提供の行為には,意思の継続が認められる。したがって,これらを全体として評価すれば,数回の処罰をするべきものではなく,一回の処罰で処遇することが相当といえ,包括一罪と認められる。
そうすると,原判決が包括ー罪としているのは正当であり,また, 1人に対する提供を3人に対する提供に訴因変更をすることも,同一の公訴事実の範囲内であって,これを認めた原審の訴因変更許可決定は正当であり,part1の画像の提供の事実について無罪の言渡しをしなかったのも正当である。

微罪処分の適用について(大阪地方検察庁検事正指示)

実務必携2010から。

微罪処分の適用について(大阪地方検察庁検事正指示)
司法警察員はその捜査した成人の刑事事件につき過去一○年以内に同種の前科・前歴のない者又は常習者でない者の犯した窃盗、盗品等関係、詐欺、単純横領、単純賭博、暴行の罪であって左記の基準により軽微と認められ処罰を要しないと明らかに思料されるものについては、送致の手続をとることを要せず、他の同一取扱をした事件とともにその処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業、住居、犯罪事実の要旨及び参考事項(被害届又は被害回復の有無等)を毎月一括して検察官に報告すれば足る。
但し
一被害者不明等の理由により証拠品(無価値物なることが明白なものは除く。)の還付不能の事件
二通常逮捕又は緊急逮捕の規定によって被疑者を逮捕した事件
三現行犯逮捕の規定により被疑者を逮捕した事件であって二四時間以上被疑者を留置した事件
四告訴、告発若しくは自首のあった事件
五法令が公訴を行なわなければならないことを規定している事件
六検事正が特に送致すべきものと指示した事件
についてはこの限りでない。
基準
一窃盗 例えば屋外窃盗、同居盗、雇人盗等であって犯情悪質でなく、被害額おおむね二万円以下の事件なお被害未届の事件又は被害回復の事件は右金額を多少超過する場合でも事案軽微と認めることができる。
二盗品等有償讓受け等犯情軽微で物件価格等一に準ずるもの
三詐欺 例えば寸借、無銭飲食、無銭宿泊、無賃乗車等の詐欺であって犯情悪質でなく被害額等について一に準ずるもの
四横領 単純な横領であって犯情悪質でなく被害額等について一に準ずるもの
五単純賭博 例えば賭金額、参加人員、参加者間の関係(知人同士なりや否や)、賭博の方法等により犯情軽微と認められる事件
六暴行 偶発的事件で犯情軽微、被害者が処罰を希望しないもの
 注 被害額が同基準以下の事件であっても事案の性質、犯人の性格及び境遇等により微罪処分に付することが相当でないと思料されるものについては、本特例によることなく、通常の送致手続による。

CG事件は上告棄却決定(最決R02.1.27)

 末席の弁護人として文献収集と罪数処理を担当していました。
 3年待たされて、罰金30万円が確定します。
 残念ながら有罪になりましたが、どこからともなく集まった若い弁護士8名が頑張ってくれました。

1審判決(東京地裁H28.3.15)
okumuraosaka.hatenadiary.jp

控訴審判決(東京高裁H29.1.24)
okumuraosaka.hatenadiary.jp

最高裁WEB
裁判所 | 裁判例情報:検索結果詳細画面

上告理由
第1上告趣意の骨子3
1原判決が罪刑法定主義に違反し被告人に罪の成立を認めた誤りについて(上告趣意書第2)3
2原判決が罪数論に関する判例に違反し法令の解釈の誤りを犯していること(上告趣意書第3)3
3著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反(上告趣意書第4)4
第2原判決が罪刑法定主義に違反し被告人に罪の成立を認めた誤り5
1原判決の判断5
児童ポルノ禁止法の趣旨6
3原判決の誤り10
4小括15
第3原判決が罪数論に関する判例に違反し法令の解釈の誤りを犯していること15
1数個の提供罪を併合罪とした誤り15
2提供目的製造罪と提供罪を併合罪とした誤り16
3数回の製造行為を単純1罪とした誤り17
第4著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反19
1横谷証人の証言の信用性に関する事実誤認19
2本件CG画像の作成方法28
3間接正犯と共同正犯について30
第1 上告趣意の骨子 2
1 原判決が、罪刑法定主義に違反し、被告人に罪の成立を認めた誤りについて(上告趣意書第2) 2
2 原判決が、罪数論に関する判例に違反し、法令の解釈の誤りを犯していること(上告趣意書第3) 2
3 著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反(上告趣意書第4) 3
第2 原判決が、罪刑法定主義に違反し、被告人に罪の成立を認めた誤り 4
1 原判決の判断 4
児童ポルノ禁止法の趣旨 5
3 原判決の誤り 9
4 小括 14
第3 原判決が、罪数論に関する判例に違反し、法令の解釈の誤りを犯していること 14
1 数個の提供罪を併合罪とした誤り 14
2 提供目的製造罪と提供罪を併合罪とした誤り 15
3 数回の製造行為を単純1罪とした誤り 16
第4 著しく正義に反する重大な事実誤認及び訴訟手続き違反 18
1 横谷証人の証言の信用性に関する事実誤認 18
2 本件CG画像の作成方法 27
3 間接正犯と共同正犯について 29

最決R02.1.27
平成29年(あ)第242号
決定
上記の者に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件について,平成29年1月24日東京高等裁判所が言い渡した判決に対し,被告人から上告の申立てがあったので,当裁判所は,次のとおり決定する。
本件上告を棄却する。
理由
弁護人山口貴士ほかの上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお,所論に鑑み,職権で判断する。
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成26年法律第79号による改正前のもの。以下「児童ポルノ法」という。)2条1項は,「児童」とは,18歳に満たない者をいうとしているところ,同条3項にいう「児童ポルノ」とは,写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって,同項各号のいずれかに掲げる実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいい,実在しない児童の姿態を描写したものは含まないものと解すべきである。
原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,被告人は,昭和57年から-同59年にかけて初版本が出版された写真集に掲載された写真3点の画像データ(以下,上記写真3点又はそれらの画像データを「本件各写真」という。)を素材とし,画像編集ソフトを用いて,コンピュータグラフィックスである画像データ3点(以下「本件各CG」という。)を作成した上,不特定又は多数の者に提供する目的で,本件各CGを含むファイルをハードディスクに記憶,蔵置させているところ(以下,被告人の上記行為を「本件行為」という。
),本件各写真は,実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり,本件各CGは,本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。
上記事実関係によれば,被告人が本件各CGを含むファイルを記憶,蔵置させたハードディスクが児童ポルノであり,本件行為が児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪に当たるとした第1審判決を是認した原判断は正当である。
所論は,児童ポルノ法7条5項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,児童ポルノの製造時において,当該児童ポルノに描写されている人物が18歳末満の実在の者であることを要する旨をいう。
しかしながら,同項の児童ポルノ製造罪が成立するためには,同条4項に掲げる行為の目的で,同法2条3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した物を製造すれば足り,当該物に描写されている人物がその製造時点において18歳未満であるごとを要しないというべきである。
所論は理由がない。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
なお,裁判官山口厚の補足意見がある。
裁判官山口厚の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に全面的に賛同するものであるが,補足して意見を述べておきた゜し‘児童ポルノ法2条3項に定める児童ポルノであるためには,視覚により認識することができる方法で描写されたものが,実在する児童の同項各号所定の姿態であれば足りる。
児童ポルノ法7条が規制する児童ポルノの製造行為は,児童の心身に有害な影響を与えるものとして処罰の対象とされているものであるが,実在する児童の性的な姿態を記録化すること自体が性的搾取であるのみならず,このように記録化されだ性的な姿態が他人の目にさらされることによって,更なる性的搾取が生じ得ることとなる。
児童ポルノ製造罪は,このような性的搾取の対象とされないという利益の侵害を処罰の直接の根拠としており,上記利益は,描写された児童本人が児童である間にだけ認められるものではなく,本人がたとえ18歳になったとしても,引き続き,同等の保護に値するものである。
児童ポルノ法は,このような利益を現実に侵害する児童ポルノの製造行為を処罰の対象とすること等を通じて,児童の権利の擁護を図ろうとするものである。
令和2年1月27日
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官深山卓也
裁判官池上政幸
裁判官小池幸裕
裁判官木澤克之
裁判官山口厚

児童の下半身裸画像につき、陰部を斜めから撮影した画像は陰部を露骨に撮影したとまではいえないからわいせつではなく、陰部を正面から撮影した画像は、陰部を露骨に撮影しているからわいせつだとした事例(名古屋高裁H31.3.4)

 最決R01.11.12
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89039
の原判決名古屋高裁H31.3.4が参考になります。

 弁護人は高裁で記録閲覧して、わいせつじゃないのもわいせつと認定しているし、だいたい、証拠のわいせつ画像と原判決が認定したわいせつ画像の枚数が合わないなどと主張してました。
 甲39は、いずれも児童の裸で、陰裂が写っているんですが、名古屋高裁は、
2-1,2-3は陰部を斜めから撮影していて陰部を露骨に撮影したとまではいえないからわいせつではなく
2-2,2-4、2-5、2-6は、陰部を正面から撮影していて陰部を露骨に撮影しているから、わいせつだ
というのです。
 1審は全部わいせつと認定してしまい、起訴状と枚数が合わなくなって、不告不理で破棄されました。
 画像見ないとわからないのですが、名古屋地検に閲覧申請しても不許可になると思われます。

弁護人は(訴因変更後の)公訴事実は電磁的記録(「画像」)のうちどれが児童ポルノでどれがわいせつか分からず訴因不特定という。検察官は各画像の女性の推定年齢を小児科医の供述(甲39)で立証しているところ,同医師の検察官調書添付の画像を起訴していること明らか。その画像から児童ポルノ画像(陰部を露骨に撮影したとまではいえない。甲39添付資料2-1,2-3)と児童ポルノかつわいせつ画像(陰部を露骨に撮影。同2-2,2-4から2-6まで)を区別可。訴因不特定といえない。

児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(児童ポルノ禁止法)違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
名古屋高等裁判所判決平成31年3月4日
       主   文

 原判決を破棄する。
 被告人を懲役2年に処する。
 この裁判確定の日から4年間その刑の執行を猶予し,その猶予の期間中被告人を保護観察に付する。

       理   由

 第1 控訴趣意は控訴趣意書,控訴趣意補充書(弁護人作成)のとおり。論旨は理由不備,訴訟手続の法令違反,法令適用の誤り,事実誤認,量刑不当(原判決懲役2年4年猶予付保護観察)
 第2 職権判断
 1 原判示第2に係る(訴因変更後の)公訴事実は要旨不特定多数の者に有償で頒布提供する目的で,平成30年2月20日,被告人方において,記録媒体である外付けハードディスクに,児童ポルノである電磁的記録2点及び児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録4点を保管した(児童ポルノ禁止法違反,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管)。
 原判示第2は要旨前記目的で,前記年月日,前記場所において,前記ハードディスクに「児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録2点及び児童ポルノであり,かつ,わいせつな画像データを記録した電磁的記録4点を保管した」旨
 2 原判決は検察官がわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管で処罰を求めず,児童ポルノ禁止法違反のみで処罰を求めた電磁的記録2点につき前者の罪も成立するとした。審判の請求を受けない事件について判決をした。破棄を免れない(刑訴法397条1項,378条3号後段,400条ただし書適用)。
 第3 自判
(原判示罪となるべき事実第2に代えて当裁判所が新たに認定した事実)
 第2 被告人は,不特定多数の者に提供有償頒布目的で,平成30年2月20日,原判示第1被告人方において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した画像データ2点に係る電磁的記録及び前同様の画像データであり,かつ,女児の性器を露骨に撮影した画像データ4点に係る電磁的記録に係る児童ポルノであり(前記画像データ2点及び4点関係),かつ,わいせつ物である(前記画像データ4点関係)記録媒体たる外付けハードディスク1台を所持した(事実[訴因変更後の]公訴事実同旨。第1は原判示第1のとおり)。
(前記当裁判所が新たに認定した事実についての証拠)
 原判決挙示の原判示全事実についての証拠,同第2の事実についての証拠と同一
(補足説明)
 1 判示第1
 (1) 原判決は「罪となるべき事実」第1として要旨共犯者と共謀の上平成28年4月9日温泉施設北側森林内で同温泉施設で入浴中の女児5名が18歳に満たない児童であることを知りながら,ひそかに,同児童らの全裸の姿態を望遠レンズを取り付けたビデオカメラで動画撮影し,その電磁的記録である動画データを同ビデオカメラの記録媒体等に記録した上,同年5月1日被告人方で同人が前記動画データを前記記録媒体等からパーソナルコンピュータを介して外付けハードディスクに記録して保存し,もってひそかに衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録に係る記録媒体に描写した児童ポルノを製造したとの事実(公訴事実同旨)を認定判示
 (2) 弁護人は被害児童(5名)ごとに犯罪が成立するのに1罪1罪特定できず訴因不特定というけれども,被害児童らの姿態撮影と記載されており,訴因特定に欠けない。13歳未満の者の裸体撮影は強制わいせつにあたり公訴事実からは罪名特定できず訴因不特定というけれども,公訴事実,罪名及び罰条から強制わいせつ事実を起訴していないこと明らか(本件[認識不可能な遠方からの盗撮]は強制わいせつに当たらず弁護人の主張は前提においても失当)
 (3) 弁護人は被告人ら撮影の大部分は老若女性で児童は一部であり公衆浴場での女児の入浴という普通の情景であって児童ポルノに当たらないというけれども,女児と見られる客が現れると即座に照準を定め,その後乳房や陰部を中心にズームアップして撮影されていることからすれば,殊更に児童の性的な部位が露出強調され性欲を興奮させ刺激するものたること明らか。児童ポルノ禁止法2条3項3号に当たる。
 (4) 弁護人は被告人方での外付けハードディスクへの保存につき「ひそかに」児童の姿態を「描写」したといえないから児童ポルノ製造罪は不成立というけれども,ひそかに同法2条3項3号の姿態を電磁的記録に係る記録媒体に描写した(温泉施設の盗撮がこれに当たること明らか)者が当該電磁的記録を別の記録媒体に保存させて(被告人方での外付けハードディスクへの保存がこれに当たること明らか)児童ポルノを製造する行為は同法7条5項に当たる。
 (5) 弁護人は児童ポルノ提供目的があった(同法7条3項該当)から同条5項罪は成立しないというけれども,訴因罪以外の罪の成立を主張して訴因罪の成否を争うもので,訴因制度の趣旨に反し許されない(その他種々いうけれども,後記「法令の適用」に係る罪数主張以外理由なきこと明らか)。
 2 判示第2
 (1) 同事実(被告人弁護人も争わない)は児童ポルノ禁止法7条7項,刑法175条2項の「所持」罪該当(検察官はこれらの「保管」罪該当をいうけれども,被告人は電磁的記録に係る記録媒体を所持したから「所持」該当。「保管」不該当。訴因変更不要)
 (2) 弁護人は(訴因変更後の)公訴事実は電磁的記録(「画像」)のうちどれが児童ポルノでどれがわいせつか分からず訴因不特定という。検察官は各画像の女性の推定年齢を小児科医の供述(甲39)で立証しているところ,同医師の検察官調書添付の画像を起訴していること明らか。その画像から児童ポルノ画像(陰部を露骨に撮影したとまではいえない。甲39添付資料2-1,2-3)と児童ポルノかつわいせつ画像(陰部を露骨に撮影。同2-2,2-4から2-6まで)を区別可。訴因不特定といえない。
(法令の適用)
 1 罰条
 (1) 判示第1 各児童ごとに刑法60条,児童ポルノ禁止法7条5項,2項,2条3項3号(原判決は単純[又は包括]1罪。訂正)
 (2) 判示第2のうち児童ポルノ所持の点は同法7条7項前段,6項,2条3項3号。わいせつ物所持の点は刑法175条2項
 2 科刑上1罪の処理(判示第1,第2につき)
 いずれも刑法54条1項前段,10条(判示第1は1個の行為が5個の罪名に触れる場合。1罪として犯情の最も重い甲39添付資料1-1の女児に係る罪の刑で処断。判示第2は1個の行為が2個の罪名に触れる場合。1罪として重い児童ポルノ所持罪の刑で処断)
 3 刑種の選択 いずれも懲役刑
 4 併合罪加重 刑法45前段,47条本文,10条(重い判示第2の罪の刑に法定の加重)
 5 刑の執行猶予 刑法25条1項
 6 保護観察 刑法25条の2第1項前段
 7 訴訟費用(原審)の処理 刑訴法181条1項ただし書(不負担)
(量刑の理由)
 ①共犯者と共謀の上の入浴中の女児5名の盗撮に係る児童ポルノ製造(判示第1),②不特定多数の者に提供有償頒布目的で児童ポルノ,わいせつ画像データ計6点に係る電磁的記録に係る記録媒体の所持(児童ポルノ不特定多数提供目的所持。わいせつ物有償頒布目的所持。判示第2)
(検察官溝口貴之出席。原審求刑懲役2年)
  平成31年3月4日
    名古屋高等裁判所刑事第1部
        裁判長裁判官  山口裕之
           裁判官  出口博章
           裁判官  山田順子

同一児童に対する数回の製造罪は包括一罪なので、「勾留期間の短縮、水戸地裁が決定 少女撮影容疑の男」については、再逮捕・再勾留自体が一罪一逮捕一勾留の原則違反だ

 
 判例たくさんあるよ。
 最決h21.10.21も、児童淫行罪と製造罪は併合罪だけど、数回の製造罪は包括一罪になる前提で書いているし、 
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38100
その原審の札幌高裁h19.3.8も包括一罪って判示してるじゃん
東京高裁h28.12.21,大阪高裁H28.6.9も包括一罪にしてるし。
保護法益が児童淫行罪と近接してるので、罪数評価も同じ。

児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反被告事件
【事件番号】 札幌高等裁判所判決/平成18年(う)第339号
【判決日付】 平成19年3月8日
【掲載誌】  高等裁判所刑事裁判速報集平成19年504頁

       理   由
2 児童ポルノの種類・個数の特定に関する控訴趣意について(控訴理由第9)
  論旨は,要するに,本件児童ポルノ製造罪の訴因は,児童ポルノの種類・個数を特定する必要があるにもかかわらず,本件起訴状の公訴事実には「ミニデジタルビデオカセットに描写し」と記載されているのみであり,各撮影行為により何個の児童ポルノが製造されたか,どの児童ポルノが製造されたのかが明らかでなく,本件公訴は訴因不特定の違法があるのに,公訴を棄却せず実体判断をし,また,製造された児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな訴訟手続の法令違反がある,という。
  しかし,本件児童ポルノ製造罪は,被告人が同一児童に対し反復継続したものであるから,包括一罪と評価され,その場合には,訴因を特定するために製造された児童ポルノの個数を明示することは必要でなく,行為の始期及び終期,行為の回数,児童の氏名・年齢,児童ポルノの種類及び描写媒体の種類を明示すれば訴因は特定されていると解されるから,本件起訴に訴因不特定の違法はなく,また,原判決が児童ポルノの個数を「罪となるべき事実」に判示していない点も違法とは認められない。なお,製造された児童ポルノの個数やビデオカセットテープは証拠上明らかにされている。
  その他,児童ポルノ製造罪は製造された児童ポルノの記録媒体毎に成立すると考えるべきであるとの点を含め,所論がるる主張する点を考慮検討しても,論旨は理由がない。

速報番号3589号
児童福祉法違反,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反
東京高等裁判所第1刑事部
平成28年12月21日
1審 千葉地方裁判所
○判示事項
児童ポルノ製造罪において,同一被害児童に対する27日間, 14回にわたる撮影等の行為を包括一罪とした事例
○裁判要旨
児童ポルノ製造罪の罪数判断においては,被害児童の撮影機会の同一性のみを基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同,製造日時,場所,工程及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により被害児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,包括して一罪を構成するというべきである。
被告人は,自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により14回の各犯行に及んだとみられるから, これらは包括一罪となる。
○裁判理由
原判決は,原判示第2の平成28年3月21日午後3時31分頃から同年4月16日午後10時40分頃までの計14回の各児童ポルノ製造の所為はそれぞれ(ただし,そのうち同月2日における11回の犯行,同月16日における2回の犯行は,いずれも同一の機会における犯行であるから各包括して)児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律7条4項, 2条3項1号, 3号に該当する旨判示している。
この点,同法7条4項の児童ポルノ製造罪を処罰する趣旨は, 当該児童の心身に有害な影響を与える性的搾取又は虐待であり,かつ,流通の危険性を創出する点で非難に値することに基づくものであることに照らすと,同法2条3項所定の姿態を被害児童にとらせて撮影した機会の同一性のみを罪数判断の基準とすることは相当ではなく,被害児童の異同のほか,製造日時,場所,工程(電磁的記録や記録媒体の同一性等)及び犯意等にも着目すべきであり,被告人が, 同一又は一連の機会に,単一又は継続した意思により当該児童に係る児童ポルノを製造したときは,構成要件を充足する行為が多数回にわたっていても,被害児童が同一である以上,
包括的に観察して一罪を構成するというべきである。被告人は, 自慰行為に用いるために, 27日間にわたり,被害児童に係る児童ポルノを撮影し, これを同一の記録媒体に集積していたもので,単一又は継続した意思により原判示第2の犯行に及んだとみられるから,原判示第2の所為は包括して同法7条4項, 2項(2条3項1号, 3号)に該当し,併合罪の処理に当たっても,刑法47条ただし書の制限内で重い原判示第1の罪の刑に法定の加重をすべきであり, これと異なる原判決の法令の適用には誤りがある。
しかしながら,原判決の宣告刑は,正当な処断刑の範囲内にあり,かつ原判示第2の撮影の機会ごとに併合罪とされたが故に殊更重く量刑された事情はなく本件事案の内容等に照らし,その量刑が重きに過ぎるとも認められないから,前記の誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。

阪高裁H28.6.9
2)児童ポルノ製造罪相互の罪数関係(上記②について)
 児童ポルノ製造罪は,児童を性欲の対象としてとらえる風潮を規制し,児童一般を保護するとともに,個々の児童が児童ポルノの対象とされることから保護することを目的とするものであるから,同じ児童を対象に,同様の目的で行われた,一連の児童ポルノ製造行為は,包括一罪の関係に立つと解するのが相当である。
 そして,原判示第2の1の児童ポルノ製造は平成年月12日に被害児童の自宅において,被告人が被害児童の陰茎を手指で触る姿態及び同児童に陰茎を露出させる姿態をとらせて動画撮影するなどしたもの,同第2の2の児童ポルノ製造は同年月16日に同じ場所において上記児童に対して上記同様の方法で行われたもので,いずれも,同児童に対する好意に基づき,同児童の陰茎等を撮影したいという性的欲求を満たすことを目的とするものであるから,少なくとも両行為は,包括一罪の関係に立つと見るべきである。したがって,これを併合罪とした原判決の法令の適用は誤っているものといわざるを得ない。
・・・
 しかし,原判示第1別表11の行為は,原判示第2の1,2の被害児童と同じ児童を対象として,同児童に対する好意等という前同様の目的で行われたもので,撮影が行われた日時も近接しているから,原判示第1別表11が陰茎を露出して放尿する姿態をひそかに撮影したものであり,同第2の1,2がいずれも陰茎を露出させて被告人が手指で触る姿態をとらせて撮影したものであるという行為態様・犯罪類型の相違を踏まえても,包括して評価するのが相当であり,結局,原判示第1別表11の行為,同第2の1,2の各行為は,包括して児童ポルノ法7条4項,5項の児童ポルノ製造罪を構成すると見るのが相当である。
 また,原判示第1別表1,3の行為,同2,6の行為,同4,5,8ないし10の行為,同7,12の行為は,いずれも,被害児童の陰茎等を撮影したいという性的欲求に基づき,それぞれ,同じ児童を対象に,同児童らがトイレに行くのに付き添った際にその様子をひそかに撮影等したというものであるから,それぞれ,別個の包括一罪を構成すると見るのが相当である。
 以上のとおり,原判決のこの点に関する法令の適用には,所論指摘のものを含め,誤りがあるといわざるを得ない。

名古屋高裁h22.10.6
第1法令適用の誤りの論旨について
1原判示第1,第2,第4及び第5の各罪の罪数について論旨は,①原判示第2及び第5(2個の3項児童ポルノ製造罪は包括一罪であり,同第1の強姦罪と同第2の3項児童ポルノ製造罪,同第4の強姦罪と同第5の3項児童ポルノ製造罪とは,それぞれ混合包括一罪又は観念的競合であるから,かすがい現象により,同第1,第2,第4及び第5は科刑上一罪であるのに,これらの罪を併合罪であるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
そこで,原審記録を調査して検討する。
原判示第1,第2,第4及び第5の各事実の要旨は次のとおりである。
すなわち,被告人は,平成年5月2日,被告人方において,被害児童が13歳未満の女子であることを知りながら,被害児童を姦淫し(原判示第1),その際,被害児童に性交に係る姿態等をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影し,電磁的記録に係る記録媒体であるsdに記録させて描写し,もって児童ポルノを製造し(同第2),平成年4月1日,被告人方において、被害児童が13歳未満の女子であることを知りながら,被害児童を姦淫し(同第4),その際,被害児童に性交に係る姿態等をとらせ,これをデジタルビデオカメラで撮影し,電磁的記録に係る記録媒体であるsdに記録させて描写し,もって児童ポルノを製造した(同第5),というものである。
原判決は,その(法令の適用)において,原判示第1及び第4の各行為がそれぞれ刑法177条後段に,同第2及び第5の各行為がそれぞれ児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童買春法」という。)7条3項,2条3項に該当するとした。
被告人は,平成年ころ,被害児童に声をかけ・・・被害児童を裸にしてビデオ撮影したり,女性器等を触ったりするなど性的行為を繰り返すようになり,平成年5月2日から平成年5月18日までの間,・・・などと告げて,被告人方において,約20回から30回にわたり,被害児童を姦淫し,そのうち18回については,その状況をビデオ撮影することを繰り返す中で,原判示第1,第2,第4及び第5の各犯行に及んだものである。
このような犯行状況に照らすと,原判示第2及び第5の児童ポルノ製造の犯行は,犯行の時期が約11か月離れているとはいえ,いずれも,同一の被害児童に対し,悪魔を追い払うためなどと言って性交等に応じさせ,その状況をビデオ撮影することを繰り返す中での犯行であり,その罪数については,包括して一罪であると評価するのが相当である。
他方,原判示第1及び第4の強姦の各犯行は,姦淫行為を内容とするものであり,同第2及び第5の児童買春法7条3項に当たる児童ポルノ製造(以下「3項児童ポルノ製造」という。)の各犯行は,児童に性交に係る姿態等をとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に描写する行為を内容とするものであって,それぞれにおける行為者の動態は社会見解上別個のものであるから,原判示第1と第2,同第4と第5は,それぞれの行為に重なる部分があるとはいえ,刑法54条1項前段の観念的競合の関係にはなく,また,それぞれ別の観点から法益を保護するものであるから,包括して一罪として処罰することで足りるものでもない。
そうすると,原判示第2及び第5の各3項児童ポルノ製造罪を併合罪とした原判決には法令適用に誤りがあるが,本件においては,これを前提として形成された処断刑は,これらを包括一罪とした場合の処断刑と同じであるから,この誤りは判決に影響を及ぼさないというべきである。

誘拐の被告 勾留短縮=茨城
2020.01.24 読売新聞
 大阪市の小学6年女児が連れ去られ、栃木県小山市で保護された事件で、茨城県警に児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)容疑で再逮捕された、被告(35)について、水戸地裁が22日、10日間の勾留延長を6日間に変更したことが取材でわかった。被告は10日、昨年8月に県内の女子中学生(15)の裸を撮影したなどとして同法違反で起訴され、同年7月にも同様の行為をしていた疑いで再逮捕された。水戸地検は12日に再逮捕の事案について地裁に勾留請求し、21日に10日間の延長が認められていた。
・・

勾留期間の短縮、水戸地裁が決定 少女撮影容疑の男 /茨城県
2020.01.24 朝日新聞
 大阪市住吉区の女児(当時12)が誘拐された事件に関連し、女児と共に保護された県内の少女(当時15)を撮影したとして、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで県警に再逮捕された容疑者(35)に対し、水戸地裁が10日間の勾留延長を取り消し、6日間に変更する決定を出していたことが23日、分かった。
 伊藤は昨年12月、少女を同年8月に撮影し画像を保存したとして、県警に同法違反容疑で逮捕され、水戸地検が今月10日、同罪で起訴。県警は同日、同年7月にも少女を撮影したとして再逮捕していた。水戸地裁は勾留期間を短縮した理由を明らかにしていない。短縮により、新たな勾留期限は27日となった。

非親告罪化の遡及適用の論点は最高裁で判決(予定)になりました。

 決定かと思ったら、判決期日の通知でした。
 期日は最高裁webに掲載されると思います。

判決速報平成30年3号
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反,強制わいせつ,県青少年健全育成条例違反,都青少年の健全な育成に関する条例違反被告事件
〇判示事項平成29年法律第72号により強制わいせつ罪等を非親告罪化するに際し,同法施行前にした行為についても,同法施行後は原則として非親告罪として取り扱うことを規定した同法附則2条2項は,遡及処罰の禁止を定めた憲法39条前段あるいはその趣旨に反するものではないとした事例

児童ポルノ犯の児童が「「友人から見たいと頼まれて送った」「おもしろ半分で送った」など、罪の意識が感じられない動機を供述している」という報道


 法律上は、児童ポルノ罪の主体に児童も含まれていて、自分の画像であっても児童ポルノを公然陳列・提供すると、犯罪少年として検挙されます。
 おっさんに頼まれて撮影送信する(sexting)のも、理論的には、児童が3項提供目的製造・2項提供罪の正犯で、おっさんは教唆犯なんですが(高裁岡山支部判例がある)、捜査実務では児童の罪には目をつぶって、おっさんだけを4項製造罪の正犯とするという運用になっています。
 存在自体が違法・権利侵害だとして、所持者を検挙するところまでやっているのに、児童も犯罪主体になるのかを議論して決めないで現場の運用でごまかしているので、取締が徹底しないのだと思います。現行法ではsexting児童も検挙するようにすれば、一般予防が徹底されるでしょう。

第七条(児童ポルノ所持、提供等)
2児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
3前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200121-00010002-mrt-l45
MRT宮崎放送
中高生が、知り合いの少女のわいせつ画像を同級生に送り拡散させる児童ポルノ提供事件が、去年、宮崎県内の中学と高校であわせて6件発生していたことが分かりました。
このうち3件では、男子中高生7人が児童ポルノ法違反の疑いで逮捕または書類送検されたほか11人が補導されています。
宮崎県警察本部によりますと、去年、県内にある3つの中学校と3つの高校で、中高生がスマートフォンSNSアプリを利用して、知り合いの少女のわいせつな動画などを同級生らに送り拡散させる事件が発生しました。

このうち、3校で発生した事件では、児童ポルノ法違反の疑いで男子生徒1人が逮捕、6人が書類送検され、11人が補導されました。警察の調べに対して、摘発された7人は、「友人から見たいと頼まれて送った」「おもしろ半分で送った」など、罪の意識が感じられない動機を供述しているということです。

(県警察本部少年課少年対策係・黒木 龍也 係長)「インターネットに一度拡散すると回収が不可能になるので犯罪の怖さをしっかり認識してもらい悪質なサイトにアクセスできないようなフィルタリングの活用をしっかりしていただきたい」

裁判員対象事件ではない(強姦・強制性交)のに、裁判所が裁判員事件用量刑DBを用いて量刑していると思われる事件

 部類論は、h22ころから見受けられますが、最近では検索項目まで示したものもでています。
 非対象事件の弁護人は量刑DBにアクセスできず検索項目について意見を述べられないのに、それで量刑されるというのは不満があります。

津地裁 H30.12.21 同種の事案(膣内性交,肛門性交この事案を含む。なお,示談・宥恕がなく,量刑上考慮された前科がない事案に限った。)と比較すると,暴行・脅迫の強さ・執拗さ,性的行為の執拗さなどの観点から,やや軽い部類というべきである。
松山地裁 H30.7.13 本件の暴行は同種事案の中では強度のものとまでは認められず,上記の犯罪行為に関する事情を踏まえ,口腔性交による強制性交等1件の量刑傾向の中で,重い方の部類に属するとまではいえないことからすると,その他の事情の内容によっては,刑の執行猶予を検討し得る余地のある事案ということができる。
宮崎地裁 H26.5.16 してみると,本件検察官の論告・求刑は,特段の合理的な理由もなく,明らかに軽きに失する量刑傾向を念頭にしたか,又は前記1のような量刑傾向の中で本件を軽い部類に位置付けたとしかいいようがない。少なくともこのような場合には,判断者の立場である裁判所としても,検察官の求刑に配慮することには限度があり,本件においてこれを上回る量刑判断を行うのはやむを得ないと考える。
水戸地裁 H28.9.12 同種事案(単独で犯した13歳未満の女子に対する強姦)の中では,軽い部類に属する。
横浜地裁横須賀支部 H28.12.15 その行為責任は,致傷結果を伴わない1名の者に対する強姦等の事案の中でも相当重い部類に属するものと位置付けることができる。
宮崎地裁 H29.2.3 同種事案(単独で,知人等に対し,凶器を用いずに強姦したもの1件の事案で,量刑上特に考慮すべき前科がないもの)の量刑傾向を踏まえて検討すると,本件は同種事案の中で決して軽い部類に属する事案とはいえない。




強姦・強制性交被告事件で、量刑理由に「部類」を含む裁判例

東京地裁立川支部 H22.2.24 本件は,強盗強姦未遂事件の中でもかなり悪質な部類の犯行であることからすると
東京地裁 H24.8.10 このように,本件犯行は,強姦未遂の事案の中では,相当悪質な部類に属する。被害者が被った衝撃は大きく,被害者が本件手続に参加し,被告人に対し強い憤りと厳しい処罰感情を述べるのも当然のこととして理解できる。
横浜地裁 H24.12.3 以上によれば,本件の犯情は悪質であり,被告人の刑事責任は,同種事犯の中で,軽い部類に属するものではない。
横浜地裁 H25.7.19 本件は,行きずりの被害者5名に対する強制わいせつ(未遂)の事案としては,やや重い部類に属するものと認められる。
鹿児島地裁 H26.2.24 典型的な路上強姦の中では,相対的には,中間よりやや軽い部類に属するといえる。
宮崎地裁 H26.5.16 してみると,本件検察官の論告・求刑は,特段の合理的な理由もなく,明らかに軽きに失する量刑傾向を念頭にしたか,又は前記1のような量刑傾向の中で本件を軽い部類に位置付けたとしかいいようがない。少なくともこのような場合には,判断者の立場である裁判所としても,検察官の求刑に配慮することには限度があり,本件においてこれを上回る量刑判断を行うのはやむを得ないと考える。
福島地裁 H26.10.6 本件は,その犯情がすこぶる悪く,同種の犯罪類型の中でより犯情の重い部類に属する事案というべきである。
横浜地裁 H27.3.12 以上によれば,本件の犯情を強姦罪を複数犯した事案の中で見ると,①の一連の犯行のみをもってしても,かなり重い部類に属すると考えられる上,上記②から④までの量刑上の加重要素をも考慮すると,最も重いとまではいうことができないものの,非常に重い部類に属する事案と認められ,これまでの同種事案の量刑分布の中でも相当長期の懲役刑は免れない。
神戸地裁 H27.7.7 被害者1名の強姦罪の中でも重い部類に属する事件というべきで
高松地裁 H27.12.8 被告人の行為責任は,強姦罪を処断罪とする事案の中でも相当に重い部類に属すると言わざるを得ない。
千葉地裁松戸支部 H28.1.13 本件一連の犯行は,準強姦罪及び準強制わいせつ罪を繰り返した事案の中で,かなり重い部類に属するものであり
熊本地裁 H28.6.29 本件は同種事案の中で中程度の部類に属する事案であると評価できるから
那覇地裁 H28.7.15 本件は既遂に達した準強姦1件の同種事案との比較の限りにおいては比較的軽い部類に属する事案といえる。
水戸地裁 H28.9.12 同種事案(単独で犯した13歳未満の女子に対する強姦)の中では,軽い部類に属する。
横浜地裁横須賀支部 H28.12.15 その行為責任は,致傷結果を伴わない1名の者に対する強姦等の事案の中でも相当重い部類に属するものと位置付けることができる。
宮崎地裁 H29.2.3 同種事案(単独で,知人等に対し,凶器を用いずに強姦したもの1件の事案で,量刑上特に考慮すべき前科がないもの)の量刑傾向を踏まえて検討すると,本件は同種事案の中で決して軽い部類に属する事案とはいえない。
東京地裁 H29.3.21 強姦の手段たる暴行の強度に関しては,強姦罪が成立する事案の中ではそれほど強い部類に属するものではないといえる。
鹿児島地裁 H29.4.11  以上の行為責任を前提とした上で,宥恕は得られていないものの,両親の助力を得て200万円を支払って被害者との間で示談が成立していることも踏まえ,単独犯による強姦既遂1件のうち,被害者との間で示談が成立している事件類型の中で本件をみると,被害者宅に侵入し,悪質性の高いわいせつ行為を伴っている上,被害者に落ち度のない身勝手な犯行であることなどからすれば,本件は,中間より重い部類に属し,実刑をもって臨むべき事案といえる。
千葉地裁 H29.4.17 被害者の抗拒不能に乗じ,現場において集団で姦淫したという類型の中では,被告人の行為の客観的な重さは,比較的軽い部類に属する。
山形地裁 H29.7.14 以上によれば,本件の犯情は甚だ悪質といわざるを得ず,本件は,「交際相手に対する強姦」というこの種類型の中でも重い部類に属する事案といえ,犯情に照らし,かなり長期の実刑は免れない。
福井地裁 H29.8.4 本件の犯行態様は,低年齢の女子に対して敢行された強姦を中心とする事案の中で,悪質な部類に属するといわざるを得ない。
京都地裁 H29.8.10 同種類型の中でとりわけ重い部類に属するとまではいえないが,相応の悪質性を示す犯行である。
京都地裁 H29.10.5 以上の犯情に照らせば,本件強姦は,住居侵入を伴う単独犯の既遂事案の中でも比較的重い部類に属する
松山地裁 H30.7.13 本件の暴行は同種事案の中では強度のものとまでは認められず,上記の犯罪行為に関する事情を踏まえ,口腔性交による強制性交等1件の量刑傾向の中で,重い方の部類に属するとまではいえないことからすると,その他の事情の内容によっては,刑の執行猶予を検討し得る余地のある事案ということができる。
鹿児島地裁 H30.10.18 本件は,既遂に達した準強制性交等1件の同種事案との比較の限りにおいて,特に重い部類に属する事案とはいい難い。
名古屋地裁 H30.12.17 強制性交等の事案の中でも特に悪質な部類に入る。
津地裁 H30.12.21 同種の事案(膣内性交,肛門性交この事案を含む。なお,示談・宥恕がなく,量刑上考慮された前科がない事案に限った。)と比較すると,暴行・脅迫の強さ・執拗さ,性的行為の執拗さなどの観点から,やや軽い部類というべきである。
前橋地裁 H31.4.3 以上の本件各犯行の重要な犯情によれば,本件は,同種事案の中でも軽くない部類に位置付けられ,懲役刑の実刑を免れない。
佐賀地裁 R1.6.18 本件は,同種事案の中で,中間よりもやや軽い部類に属すると考えられるものの,刑の執行を猶予するのが相当な事案とはいえず,法定刑の最下限(懲役5年)から酌量減軽をした範囲内での実刑が考えられる。
宮崎地裁 R1.6.20 13歳に満たない者に対し監護者としての立場を利用して性交等に及ぼうとするといった類型の行為は,それ自体が厳しい非難に値するといえるところ,前述したその他の犯情も踏まえると,本件は,そのような類型の事犯の中でも,やや重い部類に属する犯行といえる。

本件担当の最高裁調査官である馬渡香津子氏は、「『わいせつな行為』該当性を安定的に解釈していくためには、これをどのように定義づけるかよりも、どのような判断要素をどのような判断基準で考盧していくべきなのかという判断方法こそが重要である」と述べている(馬渡香津子「時の判例」ジュリスト1517号[2018年]85頁)。しかし、判断対象の定義を明らかにしないままで判断方法を論じることは、解釈の三段論法に反した非論理的な思考方法である。

 耳なめとか足舐めとか写真送らせるとか、トイレの扉を開けて用便姿を凝視するなどの新型行為については、わいせつの定義が必要です。
 
 控訴事件が来たら毎回聞くことにしていますが、バラバラです。広島高裁なんてわからないことを聞くなと逆ギレです。
① 「性的自由を侵害する行為」(大阪高裁H28.10.27 大法廷h29.11.29の控訴審
② 「一般人の性欲を興奮,刺激させるもの,言い換えれば,一般人が性的な意味のある行為であると評価するものと解されるから,強制わいせつ行為に該当する。」(東京高裁H30.1.30)
③「被告人が~~などしたもので,わいせつな行為の一般的な定義を示した上で該当性を論ずるまでもない事案であって,その性質上,当然に性的な意味があり,直ちにわいせつな行為と評価できることは自明である。」(広島高裁H30.10.23 上告中)
④「わいせつな行為」に当たるか否かは,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断すべきである。(福岡高裁H31.3.15)

















松宮孝明「ロー・クラス 現代刑法の理論と実務:各論(第4回)強制わいせつの罪、住居・秘密を侵す罪」法学セミナー 第780号.
最大判平成29. 11 .29刑集71巻9号467頁(以下、「平成29年大法廷判決」という)は、「行為者の性的意図を同罪の成立要件とする昭和45年判例の解釈は、その正当性を支える実質的な根拠を見いだすことが一層難しくなっているといわざるを得ず、もはや維持し難い。」とした。もっとも、平成29年大法廷判決は、176条にいう「わいせつ」の定義を示すことなく(1)、「行為そのものが持つ性的性質が不明確で、当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為」については、「行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得る」とも述べている。
(1)本件担当の最高裁調査官である馬渡香津子氏は、「『わいせつな行為』該当性を安定的に解釈していくためには、これをどのように定義づけるかよりも、どのような判断要素をどのような判断基準で考盧していくべきなのかという判断方法こそが重要である」と述べている(馬渡香津子「時の判例」ジュリスト1517号[2018年]85頁)。しかし、判断対象の定義を明らかにしないままで判断方法を論じることは、解釈の三段論法に反した非論理的な思考方法である。