児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

「児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。」のに、姿態をとらせて製造罪の未遂類型みたいな行為を「要求行為」として青少年条例で規制出来るか?

児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。」のに、姿態をとらせて製造罪の未遂類型みたいな行為を「要求行為」として青少年条例で規制出来るか?
 児童買春罪については、未遂を処罰しない趣旨。
 児童ポルノについても「児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。」というのだから、未遂処罰しない趣旨だろう。

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_11643611_po_20200305.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
論題
Title
SNS の利用に起因する児童の性被害の現状と対策―自画撮
り被害を中心に―
他言語論題
Title in other language
Fighting the Sexual Abuse of Children on Social Networking
Services: Victims of Indecent Selfies
著者 / 所属
Author(s) 髙山 善裕(TAKAYAMA Yoshihiro)/行政法務課
書名
Title of Book
青少年をめぐる課題 総合調査報告書
(Challenges Facing Young People in Japan)
シリーズ
Series 調査資料 2020-3 (Research Materials 2020-3)
編集
Editor 国立国会図書館 調査及び立法考査局
さらに、裁判実務上、児童に自画撮り(児童自身の裸体を撮影)させた後、その画像や動画を犯人のパソコンや携帯電話等に送信させた場合は、児童買春・児童ポルノ法の姿態をとらせ製造罪が成立するが、犯人に画像等が送信されなければ処罰対象とはならないとされている(34)
34) 瀧本 前掲注(24), p.703。裁判実務でこのような処理が行われる理由として、姿態をとらせ製造罪に未遂罪の規定がないことが挙げられる(同, p.703.)。なお、未遂罪を置かなかった理由として、同法制定時の国会答弁において、「児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。」との提案議員(大森礼子参議院議員(当時))の発言がある(第 145 回国会衆議院法務委員会議録第 12 号 平成11 年 5 月 14 日 p.21.)。

https://kokkai.ndl.go.jp/txt/114505206X01219990514/148
第145回国会 衆議院 法務委員会 第12号 平成11年5月14日
坂上委員 お聞きをいたしておきます。御検討を私は求めておきたいと思います。
 その次に、第八条は未遂罪を罰しておりますが、その他のものについて未遂罪を罰しないのはどういう理由ですか。
○大森参議院議員 児童買春罪につきましては、この構成要件に規定します行為が、性交、性交類似行為だけでなく、性器等への接触等も含み、非常にその行為の範囲が広くなっております。これに未遂規定を設けますとかえって構成要件が不明確になるということで、未遂規定を置いておりません。
 それから、周旋、勧誘等につきましては、周旋目的の勧誘というものは、言ってみれば周旋の未遂的な形態である。この点をとらえまして、あえて未遂を処罰するというのではなく、独立に犯罪として構成いたしました。
 それから、児童ポルノ頒布等の罪につきましては、これは製造、所持、運搬、輸出入といった流通のすべての過程をカバーしているので、あえてここの行為につきましては未遂罪というものを想定いたしませんでした。
坂上委員 刑法のわいせつ関係のところについては未遂は処罰をしておりますが、本件の場合の、特に児童買春の場合などは、例えば、児童に金をやった、児童がその金を親に見つけられた、どうしたんだ、あした相手の人に会うことになっている、とんでもない、行っちゃならぬ、こういうことになって、この行為が未遂に終わる場合があるんです。
 私は、こういうようなことは、やはり未遂罪を処罰することによって防止ができるんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございまして、何か、あいまいになるとかなんとかおっしゃいますが、ちょっと私は、御見解が違うんじゃなかろうか、こう思っております。私はこれも、児童買春などは少なくとも未遂の対象にすべきものなんじゃなかろうか、こう思っておりますが、どうでしょうか。
○大森参議院議員 確かに、先生のおっしゃるようなお考えは理解できます。
 例えば、対償とか物を出したときに既に実行の着手を認めるということがありますけれども、ただ刑法上も、未遂罪というものはすべてについて認められておりませんで、重大な法益侵害の場合に未遂罪が設けられております。
 それで、ここの場合でも、要するに、未遂罪を処罰するかどうかということは一つの私たちの判断ということでございまして、お答えになるかどうかわかりませんが、私どもの勉強会の結果、未遂罪はまだ処罰するに及ばない、こういうふうに判断したということでございます。
坂上委員 どうでしょうか、こういう被害者を未然に防ぐというのが目的なんじゃないでしょうか。そうだとすれば、私は、やはり未遂罪というものは大変重要な条文になるんじゃなかろうか、こう思っております。刑法における強制わいせつ罪等は、わいせつ文書頒布は別ですが、全部未遂の処罰をしているのですね。
 そんなような観点からいって、この未遂罪を黙っておるというのは、どうもちょっと片手落ちという感じが私はしているのですが、いかがでしょうか。簡単でいいですよ。
○大森参議院議員 簡単と言われても、繰り返しお尋ねになるからきちっとお答えしなければいけないかなと思うのですが、ここは結局、未遂罪という修正された構成要件というものを設けるかどうか、これは、一つの政策判断と言っていいのか、価値判断の問題であると思います。
 それで、未遂罪の構成要件、実行の着手、このところから犯罪の成立を認める未遂罪、構成要件的結果を惹起する現実的危険性をはらんだ行為をもって実行に着手して、そしてまた法益侵害がすべてに至らない場合までも、これは処罰すべきであるというのが未遂罪でございますけれども、今回の児童買春につきましては、さまざまな態様があるということ、そしてまた、十三歳以下の児童に対しまして行った場合には刑法の方の適用がございます。それで、この児童買春の罪につきましては、さまざまな態様があるということから、刑罰の方も三年以下の懲役それから罰金がありますけれども、このような評価をさせていただいております。
 だから、未遂罪を処罰するかどうか、そうした場合に、実行着手行為を特に設けるかどうかということを検討した結果、この罪については、私たち発議者については未遂罪を設けなかったという、こういう答弁になります。