児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

自己性的好奇心目的所持罪における児童ポルノの特定

法文そのままでは、具体性に欠けると思います。

 

 最高裁判所第1小法廷判決昭和24年2月10日
 旧刑訴第三六〇条第一項に依れば、所論のごとく、有罪の言渡を為すには、判決書において罪となるべき事実を判示することを要する。蓋し、その趣旨とするところは、法令を適用する事実上の根拠を明白ならしめるためである。
 そして罪となるべき事実とは、刑罰法令各本条における犯罪の構成要件に該当する具体的事実をいうものであるから、該事実を判決書に判示するには、その各本条の構成要件に該当すべき具体的事実を該構成要件に該当するか否かを判定するに足る程度に具体的に明白にし、かくしてその各本条を適用する事実上の根拠を確認し得られるようにするを以て足るものというべく、必ずしもそれ以上更にその構成要件の内容を一層精密に説示しなければならぬものではないといわねばならぬ。

 

 

刑事判決書起案の手引き
第2 事実摘示の方法・程度一般
153 1 罪となるべき事実は,それがいかなる構成要件に該当するかが,一読して分かるように,明確にこれを記載しなければならない。そのためには,当言葉犯罪の構成要件要素に当たる事実のすべてを漏れなく記載しなければならない。そのほか,事案に応じいわゆる犯情の軽重を示す事実をも記載する方がよい。
154 他方,他の犯罪をも認定したのではないかと疑わせるおそれのある表現は,できる限り避けなければならない(例えば,屋内での強盗被告事件において,住居侵入の点については有罪の認定をしない事案で.「A方に押し入り」などの言葉を用いることは,たとえ情状を明らかにするつもりであっても,むしろこれを避けるべきである。)。
155 2「( 罪となるべき事実)」の見出しの下に摘示される事実は,それが本来の罪となるべき事実に当たるときはもとより,そうでない事実であっても,証拠によって認定されたものでなければならない。「(犯行に至る経緯)」等の見出しの下に摘示される事実についても同様である。
156 3 罪となるべき事実は,できる限り具体的に,かっ,他の事実と区別できる程度に特定して,これを摘示しなければならない。そのためには,犯罪の日待・場所はもとより,犯罪の手段・方法・結果等についてもできる限り具体的にこれを記載しなければならない。このことは既判力の及ぶ範囲や訴因との同一性を明確にするためにも必要である。
157 4 包括ー罪においては,犯罪の日時・場所・手段等について包括的な判示が許される。
158 5 事実はできる限り明確に摘示しなりればならない。したがって,日時・場所・数量等が証拠によって明らかに認められるのに「ころ」「付近」「等」「くらい」などの言葉を用いることは慎むべきである。
6 被害者の年齢については,それが構成要件に関する事実(刑176後等)である場合を除き,必ずしも檎示の必要はないが,犯罪の成否(脅迫・恐喝・強盗罪等)及び犯情(殺人・傷害罪等)に影響を与えるような場合には,これを摘示するのが通例である。
その方法としては, 「A (当時00歳)」とするのが通例である。 「B(当00年)」, 「C (平成O年O月O日生)」とする例もないではないが, 「当」は,犯罪時の年齢か判決時のそれかが必ずしも明確ではない。
7 犯行に用いた凶器等を罪となるべき事実の中に判示する場合,それが主文で没収を言い渡した物であるときは,河一性を明示するため,裁判所の押収番号(96参照)を記載することが望ましい(168参照)。没収を言い渡さなかった物であるときでも,証拠の標目中に掲げた証拠物との同一性を明示するため,その押収番号を記載する例が多い。
8 事実の摘示は,冗漫にならないように留意しなければならない。
9 事実摘示の末尾に,認定した事実に対する裁判所の法律的評価を明らかにする趣旨で,例えば, 「もって,自己の職務に関し賄賂を収受し」「もって横領し」等の言葉を記載する事例が多いが,この場合, 「自己の職務に関し賄賂を収受し」,「横領し」等の言葉は法律的評価を示すものにすぎないのであって,それ自体犯罪行為の事実的表現ではないことに留意すべきである。
10 併合罪の場合には,各個の犯罪事実ごとに,第1,第2というように番号を付け,かつ,行を改め,科刑上のー罪の場合には,そのようにせずに各事実を続けて摘示するのが通例である(なお, 214, 319参照)。
11 事実を摘示するに当たっては,起訴状等に記載された事実を引用することが許される(規218)。しかし,起訴状等の記載は裁判所の最終的な判断に必ずしも完全に一致するとは限らないから,漫然とこれを引用することがないように留意しなければならない。

 

 






大阪地裁 R2.12.16 第3 Aが18歳に満たない児童であることを知りながら,自己の性的好奇心を満たす目的で,同年9月17日,大阪市〈以下省略〉所在の被告人方において,同児童に自己の陰茎を口淫させる姿態及び同児童の乳房及び陰部を露出させる姿態をとらせた画像及び映像データ9点を記録した電磁的記録媒体を内蔵するパーソナルコンピュータ1台(大阪地方検察庁令和元年領第10850号符号5)を所持し,もって児童を相手方とする性交及び性交類似行為に係る児童の姿態並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
大阪地裁 R3.2.16 第19【平成30年3月28日付け訴因等変更請求書による変更後の平成29年12月27日付け起訴状記載の公訴事実第2の3】 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年4月14日,前記被告人方において,別表1記載のとおり,児童を相手方とする性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により電磁的記録媒体に描写した児童ポルノである静止画データ83点及び動画データ42点を記録したハードディスク1台(大阪地方検察庁平成29年領第3202号符号25)を所持し,
高松地裁 R2.9.17 第4(令和2年6月26日付け起訴状記載の公訴事実第2)
 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年3月24日,高松市〈以下省略〉の駐車場に駐車中の自動車内において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ4点及び静止画データ69点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持し
 たものである。
千葉地裁 R2.4.24 第3
2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年6月16日,東京都江戸川区〈以下省略〉所在の被告人方において,Cの左乳房が露出された姿態が撮影された動画データ1点が記録・保存されたハードディスク1台を所持し,もって衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノを所持した。
静岡地裁浜松 R2.2.21 第2 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年7月18日,浜松市〈以下省略〉所在の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD14枚を所持した。
東京高裁 R2.11.12  
静岡地裁 H31.3.28 【罪となるべき事実】
 被告人は,自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年1月25日,静岡県●●●静岡県●●●警察署において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した動画データ3点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したものである(平成30年5月7日付け起訴状記載の公訴事実)。
山形地裁 H31.3.12 第27【平成30年11月13日付け起訴状記載の公訴事実関係】
 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年5月8日,山形市〈以下省略〉所在の当時の本件会社の事務所兼被告人方において,児童を相手方とする性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの並びに衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ7点(いずれもAに対する前記第1又は第2の事実の際に撮影されたもの)を記録した外付けハードディスク1台(山形地方検察庁平成30年領第252号符号4)を所持した。
大阪地裁堺支部 H30.3.19  第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年9月29日,堺市a区の被告人方において,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものであって,いずれも視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ4点を記録及び蔵置した外付けハードディスク1台を所持した。
鹿児島地裁 H30.1.24 第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成29年11月12日,鹿児島市〈以下省略〉鹿児島中央警察署において,衣服の全部又は一部をつけない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ3点を記録したマイクロSDカード1枚を所持した。
大阪地裁 H3.2.17 第3 自己の性的好奇心を満たす目的で,令和2年2月9日,大阪府寝屋川市(以下略)Gにおいて,児童による性交類似行為に係る児童の姿態,他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの及び衣服の全部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データ1点を記録した児童ポルノであるハードディスク1台を所持した。
高松地裁 R2.10.28 第2 自己の性的好奇心を満たす目的で,同月27日,■■■の当時の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態及び衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写した児童ポルノである動画データ3点を記録した携帯電話機1台を所持した。
仙台地裁 H30.9.7 第5 自己の性的好奇心を満たす目的で,平成30年5月17日,前記第2記載の被告人方において,児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した電磁的記録である動画データを記録した児童ポルノであるDVD4枚を所持したものである。