児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

淫行(京都府青少年の健全な育成に関する条例)容疑について、「性行為はしたが、性欲を満たす目的ではない」と弁解しているという報道。

 京都府の青少年条例違反というのも珍しいです。
「青少年に対し、~~~、精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。」という法文なのに、

「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきでなく、①青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、②青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。(最大判S60.10.23)

という判例があるので、被疑事実に「単に自己の性的欲望を満足させるため」が挙げられています。
 真剣交際でも婚姻関係でもナンパでも、性交時に「単に自己の性的欲望を満足させるため」というのは変わらないので、なんの縛りになるのかわかりませんし、刑法では、強制わいせつ罪の関係では性的意図不要で(大法廷H29.11.29)、強制性交の関係でも不要なので、青少年条例との整合性はどうかなと見ています。




16歳であれば、性的同意年齢で婚姻可能年齢なので、メール等の連絡状況を援用して、「精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、」を否認するのも有効でしょう。

京都府青少年の健全な育成に関する条例解説R01
(淫行及びわいせつ行為の禁止)
第21条
1何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為を教え、又は見せてはならない。
【解説】
1 本条は、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為をすること及び当該行為を教え、又は見せることを禁止し、刑法その他関係法令では規制し得ない反社会的行為から青少年を保護しようとするものである。
なお、淫行罪及びわいせつ行為罪は、相手方たる青少年の(形式的な意味での) 同意又は承諾がある場合にも成立する。
この点で刑法第177条の強姦罪及び第176条の強制わいせつ罪が、13歳以上の者については暴行又は脅迫による等自由な意思決定ができない状態の下での行為だけを規制対象にしているのとは異なる。
注) 『脅迫」とは、人に恐怖心を生じさせるに足る害悪を加える旨を通告することであり、相手方の反抗を著しく困難ならしめる程度のものをいう。
2 「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう。
3 「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識ある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいう。
4 「金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより」とは、青少年に対し、金銭や物品を与え、又は職務(仕事) を世話し、あるいはそうしたことを約束することにより、淫行又はわいせつ行為を行うことをいう。
5 「その他財産上の利益」の供与とは、債務の免除(借金の棒引き)や債権の譲渡等をいう。
また、「約束する」とは、行為者の申し出に対する青少年の黙示の認容で足り、かつ、その約束が結果的に履行されたかどうかを問わない。
6 「精神的、知的未熟若しくは情緒不安定に乗じて」とは、性的な道徳観が十分確立していない青少年の未熟さや一時の感情におぼれやすい青少年の情緒的不安定を利用して、誘惑、威迫、立場利用、欺岡といった手段を用いて、あるいは、青少年自身の困惑、自棄等につけこんで、淫行又はわいせつ行為を行うことをいう。
注l) 『威迫』とは、人をおどして従わせることであるが、その程度が脅迫までに至らないものをいう。
2) 『欺岡』とは、人をだますことをいう。
『自棄』とは、自暴自棄、やけくそになることをいう。
7 第2項は、第1項が青少年の身体に向けてなされる淫行又はわいせつ行為の禁止を規定しているのに対し、青少年の意識面に向けて淫行又はわいせつ行為による悪影響を与えることを禁止するものである。
なお、第2項の罪は、公然性(不特定又は多数の人が知り得る状態にあること) の有無を問わず成立し、この点で刑法第174条の公然わいせつ罪とは構成要件を異にする。
8 第2項の「教え」とは、淫行又はわいせつ行為の方法等を教示することであり、単なるわい談等の漠然としたものではなく、具体的、直接的に教えることである。
また、「見せ」とは、自己又は他人の淫行又はわいせつ行為を直接的に見せることをいう。
【関係法令】○刑法第174条(公然わいせつ) 、第175条(わいせつ物頒布等) 、第176条(強制わいせつ) 、第177条(強制性交等) 、第178条(準強制わいせつ及び強制性交等) 、第182条(淫行勧誘)○売春防止法第1条~第13条(第1章総則~第2章刑事処分)○軽犯罪法第1条(罪)○児童福祉法第34条(児童保護のための禁止行為)○児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条(定義) 、第4条(児童買春) 、第5条(児童買春周旋) 、第6条(児童買春勧誘) 、第8条(児童買春等目的人身売買等) 、第9条(児童の年齢の知情)【参考】
○昭和60年10月23日最高裁判決(福岡県青少年保護育成条例違反)条例10条1項にいう「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺岡し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解すべきである。
昭和39年4月22日東京高裁判決(埼玉県青少年愛護条例違反)「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を刺激興奮せしめたり、その露骨な表現によって健全な常識のある一般社会人に対し、性的に差恥嫌悪の情をおこさせる行為をいうものと解する。

https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20201029/2010008366.html
警察によりますと、医師はことし4月、当時住んでいた京都市内のマンションで、16歳の女子高生を18歳未満と知りながらみだらな行為をしたとして、京都府青少年健全育成条例違反の疑いが持たれています。
医師は去年の秋ごろに、飲食店で女子高生に声をかけて知り合ったということです。
警察の調べに対して「性行為はしたが、性欲を満たす目的ではない」と供述しているということで、警察がいきさつをさらに調べています。
今回の逮捕について、京都府立医科大学の竹中洋学長は「医師としてあるまじき行為で関係者に深くおわびします。早急に事実を確認し、厳正に対処してまいります」とコメントしています