児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録記録被告事件弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 hp3@okumura-tanaka-law.com)

性犯罪・福祉犯(監護者性交罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

警察でのセクハラ強制わいせつ事案で懲役2年の実刑としたもの(和歌山地裁H27.1.26)

 自白事件で、示談未了ということです。
 この程度の事件は、普通は、執行猶予になる方が多いと思います。

和歌山地方裁判所平成27年1月26日刑事部判決
       判   決
無職(元地方公務員) a 昭和53年○月○○日生
 上記の者に対する強制わいせつ被告事件について,当裁判所は,検察官吉田誠及び弁護人(私選)波床昌則各出席の上審理し,次のとおり判決する。
       主   文
被告人を懲役2年に処する。
未決勾留日数中10日をその刑に算入する。
       理   由

(罪となるべき事実)
 被告人は,b(当時21歳)に強いてわいせつな行為をしようと考え,平成26年9月26日午後11時頃から同月27日午前1時過ぎ頃までの間,和歌山市α×××番地の×所在の民家から南方約100メートル先の雑賀崎灯台駐車場に駐車中の自動車内において,同人に対し,抱きつきながら接吻し,その右手をつかんで自己の陰茎を触らせ,同人が着用していたトレーナーをまくり上げてブラジャーを外した上,その身体に覆い被さりながら乳房を揉んで舐めるなどし,もって強いてわいせつな行為をしたものである。
(証拠の標目)《略》
(法令の適用)
罰条 刑法176条前段
未決勾留日数の算入 刑法21条
(量刑の理由)
 本件は,当時,和歌山県警察の警察官であった被告人が,勤務終了後の夜間,同じ警察署に所属する後輩の警察官である被害者をドライブに誘い出し,自動車内において,わいせつ行為に及んだ事案である。
 本件におけるわいせつ行為は,夜間人気のない駐車場の自動車内において,被害者に対し,何度も接吻し,着衣の上から乳房を揉んだだけでなく,自己の陰茎を触らせ,トレーナーをまくり上げてブラジャーを外し,直接乳房を揉んでなめるという,強度,かつ,執拗なものである。そして,本件において特に考慮すべきは,被告人と被害者との間柄であり,警察官はその職制上,上官の指揮命令を受けて,事務を執行するという強い上意下達の関係にあり,被害者において,10年程先輩の警察官である,被告人に抵抗することは,心理的に困難な状況にあったもので,被告人は,このような地位を利用して,夜間人気のない場所まで,被害者を誘い出し,本件犯行に及んでいるものである。したがって,暴力行為や脅迫行為という典型的な意思抑圧行為はなかったとはいえ,被害者が精神的に強く抗いがたい状況にあったことは疑いがなく,このことも踏まえると,本件の犯行態様は強制わいせつ事案の中でも相当に悪質であり,実際に被害者が受けた精神的苦痛も大きく,処罰感情が厳しいことも当然である。
 これに対し,弁護人は,被害者は,被告人との間で,本件の約1週間前からLINEのメールのやり取りをしており,その中には,被告人に対し,好意を抱いていると思わせる内容があり,本件当日も,被害者が,被告人からのドライブの誘いを断らず,自動車内や人気の少ない灯台で,被告人と深夜2人で居たのに,わいせつ行為を受けるまで嫌がる素振りを見せなかったのであるから,本件被害を受けたことについて,被害者にも軽率さがある旨指摘し,このことは被告人にとって有利に斟酌すべきである旨主張する。しかしながら,被害者と被告人との間のメールを見ても,被告人から被害者への好意を示すメールに対し,被告人の機嫌を損ねないような内容を返信していたものが主であり,本件のような性的な接触行為を許容すると解釈されるようなものではないばかりか,本件のきっかけとなった,夜間のドライブの誘いに対しては,寝るつもりです,お風呂に入ってしまった,髪の毛とかボサボサなんで無理です,というように被害者において,婉曲ではあるが拒絶の意思を示していることは明らかな内容もある。にもかかわらず被害者が被告人の誘いに応じたのは,警察特有の上下関係から上司に当たる被告人の機嫌を損ねてはいけないという気持ちを抱いたことに加え,警察官である被告人が,無理やりわいせつ行為をするとは思っていなかったという,警察官である被告人に対する信頼からであり,これをもって被害者の行為が軽率であったとは評価できず,このような弁護人の挙げる事情は,被告人にとって有利に斟酌することはできない。
 このように,本件のわいせつ行為の内容や,動機,経緯において,職場の特性や上司という立場を悪用していることも考慮すると,被告人の刑事責任は重く,刑の執行を猶予することもあり得る事案ではあるが、当然に執行猶予を選択できる事案ではない。
 そうすると,被告人は,当初は本件犯行を否認していたものの,後に犯行を認め,謝罪文を作成する等して反省の態度を示し,被害者も謝罪文を受け取っていること,被害者に対し示談の申入れをし,拒絶されたものの,慰謝料200万円及びその遅延損害金を供託していること,懲戒免職処分及び退職金の不支給処分を受ける等,一定の社会的制裁を受けていること,もとより,前科はなく,公判廷に被告人の父が出廷し,被告人の監督を誓っていること,被告人の再就職先が決まっており,養うべき2人の幼い子がいること等,被告人に有利な事情を最大限斟酌しても,示談が成立しておらず,被害者の宥恕が得られていない本件においては,主文のとおりの実刑に処することはやむを得ないと判断した。 
(求刑−懲役3年)
平成27年1月29日
和歌山地方裁判所刑事部
裁判長裁判官 浅見健次郎 裁判官 田中良武 裁判官 藤田洋祐