児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

児童ポルノ撮影の際,行為者が遠隔地から電話で被害者を脅してポーズ等を指示し,被害者自身に写真撮影させて自己に送信させるなど,強制わいせつに当たらないものの,「姿態をとらせ」たことが強要に当たる場合は,強要罪と牽連犯になる。(性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック』訂正及び説明追加)

http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20131229#1389341416
で指摘したら正誤表が出たそうです。
 田中検事がこういうので、次の強要+製造事件で牽連犯を主張します。検察官も裁判所も多分、観念的競合だと言われると思います。

 ちなみに、岡山支部h22は、強制わいせつ罪を否定していますが、これは訴因に性的意図がなかったからという理由ですので、訴因に「性欲を満たすため」と記載すれば強制わいせつ罪になります。(送らせた画像は3号ポルノで「性欲を興奮させ又は刺激するもの」なのに、どうして被告人に性的意図がなかったという起訴になったのかは理解不能です)

広島高裁岡山支部H22.12.15
 ところで,原判示第3の事実は,被告人が,当時16歳の被害者Aを脅迫し,同人に乳房及び陰部を露出した姿態等をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電話機で撮影させたなどの,強制わいせつ罪に該当し得る客観的事実を包含しているが,強制わいせつ罪の成立には犯人が性的意図を有していることが必要であるところ,原判示第3の事実に,被告人が上記性的意図を有している事実が明示されてはいない。
 また,原判示第3の事実にかかる起訴状には,原判示第3の事実と同旨の公訴事実が記載され,その罰条として,3項製造罪のほか,「強要 刑法223条」と記載されているのみであるから,検察官において,上記性的意図を有していることも含めて訴因を設定する意思があったとは認められず,原判決が,被告人が上記性的意図を有していることも含めた訴因であることを前提に原判示第3の事実を認定したとも認められない。なお,所論は,原判決が上記性的意図を認定している旨も指摘するが,原判決は,(量刑の理由)欄において被告人に性的欲望を満たすためという動機があった旨説示しているにすぎず,(罪となるべき事実)として性的意図の存在を認定したものではないから,原判決の上記説示が上記結論を左右するものではない。

http://tachibanashobo.co.jp/upload/save_pdf/01231212_52e08888c51d8.pdf
性犯罪・児童虐待捜査ハンドブック』訂正及び説明追加
下記箇所に誤解を招く記述があったため,説明を追加いたします。
該当箇所 148頁 19〜20行目
⑸ 罪 数
イ 児童ポルノ撮影の際,行為者が遠隔地から電話で被害者を脅してポーズ等を指示し,被害者自身に写真撮影させて自己に送信させるなど,強制わいせつに当たらないものの,「姿態をとらせ」たことが強要に当たる場合は,強要罪と牽連犯になる。

 もとは、こう↓なっていたんですが、メールで脅迫して撮影・送信させても強制わいせつ罪だという裁判例大分地裁)もあるのに、「強制わいせつに当たらない」というのは間違ってるし被害者保護に欠ける方向になっています。
「強要に当たる場合は,強要罪と牽連犯になる」というのも初耳で、判例(大阪高裁・広島高裁岡山支部)に反しますし、同書のp241で「観念的競合」としているのと一貫していません。

P148
イ 児童ポルノの撮影の際「姿態をとらせ」たことが強要に当たる場合は,強要罪と牽連犯になる。
 処断刑が重くなるわけではないが情状面や被害者の心情面からも,
強要に当たる場合は,強要罪をも立件することを検討すべきであろう。
P241
事例2 中学生の娘に対する強姦・児童ポルノ製造・強要事件被害者が裸体のまま笑顔で加害者と写っている写真を児童ポルノとして性的虐待を認めた事例]
(1)事実の概要
加害者C雄は,養女桜子が長期間にわたりC雄から虐待を受けたためにC雄を極度に畏怖していることに乗じ,?平成X年7月頃,自宅において,桜子(当時13歳)を強姦し,?同年4月から7月までの間,数回にわたり,桜子を脅迫し同女をして陰部等を露出させた姿態等を取らせ,携帯電話機のカメラで撮影・送信させ,計30ファイルを自己のSDカードに保存・記録し児童ポルノを製造した(注78)。

注(78)児童ポルノ画像を「記録媒体に記録した」ときに製造罪が成立し,「記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為」も製造罪に当たる(最判平18・2・20刑集60巻2号216頁)。強要罪は観念的競合であえて起訴する必要はないという意見もあり得るが,被害者の心情と情状面からいっても起訴し得るときはした方が良い。