児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

生後8ヶ月の男児に対する強制わいせつ罪

は成立するか?
 「わいせつとは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ普通人の正常
な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するものをいう。(最判昭26・5
・10刑集5-6-1026)」という従来の基準に照らすと、一般人はそんなことで性
的に興奮しないので、当たらないんじゃないですか。
 最近流行の性的傾向不要説に立つと、8ヶ月の男児に性的自由は観念できな
いとすれば、わいせつ行為に当たりませんよね。
 弁護人、これ主張できてるんかな?

原判決(東京地裁h25.9.9)
被害者に対して復讐したいとの感情を抱くに至り,被害者に強制わいせつ行為
をしようと考え。。。
。。。
東京高裁h26.2.13
東京高等裁判所判決速報3519号
なお,本罪の基本犯である強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由であ
ると解されるところ.同罪はこれを侵害する行為を処罰するものであり,客観
的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ,行為者がその旨認識していれ
ば,同罪の成立に欠けることはないというべきである。本件において,被告人
の行為が被害者の性的自由を侵害するものであることは明らかであり被告人も
その旨認識していたことも明らかであるから,強制わいせつ致傷罪が成立する
ことは明白である。被告人の意図がいかなるものであれ本件犯行によって被害
者の性的自由が侵害されたことに変わりはないのであり犯人の性欲を刺激興奮
させまたは満足させるという性的意図の有無は上記のような法益侵害とは関係
を有しないというべきである。そのような観点からしても,所論は失当である
・・・
広島高裁岡山支部h22.12.25
ところで,原判示第3の事実は,被告人が,当時16歳の被害者Aを脅迫し,
同人に乳房及び陰部を露出した姿態等をとらせ,これをカメラ機能付き携帯電
話機で撮影させたなどの,強制わいせつ罪に該当し得る客観的事実を包含して
いるが,強制わいせつ罪の成立には犯人が性的意図を有していることが必要で
あるところ,原判示第3の事実に,被告人が上記性的意図を有している事実が
明示されてはいない。
また,原判示第3の事実にかかる起訴状には,原判示第3の事実と同旨の公訴
事実が記載され,その罰条として,3項製造罪のほか,「強要刑法223条」
と記載されているのみであるから,検察官において,上記性的意図を有してい
ることも含めて訴因を設定する意思があったとは認められず,原判決が,被告
人が上記性的意図を有していることも含めた訴因であることを前提に原判示第
3の事実を認定したとも認められない。
なお,所論は,原判決が上記性的意図を認定している旨も指摘するが,原判決
は,(量刑の理由)欄において被告人に性的欲望を満たすためという動機があ
った旨説示しているにすぎず,(罪となるべき事実)として性的意図の存在を
認定したものではないから,原判決の上記説示が上記結論を左右するものでは
ない。
そうすると,原判示第3の事実だけでも強制わいせつ罪が成立するとは解され
ず,所論は前提を欠いており,原判示第3の事実中,強要の点に刑法223条
を適用して強要罪の成立を認めた原判決に法令適用の誤りがあるとは認められ
ない。
なお,所論は,法条競合という実体法上の問題であるから,訴訟法上の問題は
無関係であり,強制わいせつ罪を構成する事実が認定された場合には強要罪
成立しない旨も主張するが,独自の見解といわざるを得ない上,原審記録を精
査しても上記特段の事情があるとは認められないから,所論は失当である。

シッター初公判 6月10日=神奈川
2016.03.25  読売新聞
 被告は、男児の弟に対する保護責任者遺棄致傷罪や、預かった別の子供への
児童買春・児童ポルノ禁止法違反でも起訴されており、共に審理される。

男児の裸撮影などシッター男追起訴 横浜地検
2015.04.08 産経新聞
 埼玉県富士見市で昨年3月、ベビーシッターに預けられた男児の遺体が見つ
かった事件に絡み、横浜地検は7日、強制わいせつ致傷罪や児童買春・ポルノ
禁止法違反罪で、被告(27)=殺人罪などで起訴=を追起訴したと発表し
た。
 起訴状によると、被告は平成25年3月、東京都内で当時生後8カ月の男児
の下半身を携帯電話で写真撮影してデータを保存し、その際に全治5日間ほど
のけがを負わせたほか、24年11月から25年8月にかけ、12回にわた
り、神奈川県内などで18歳未満の男児十数人の裸をデジタルカメラなどで撮
影してデータを保存したとしている。
 追起訴は2月26日および3月31日付。