児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

日常の暴行脅迫で畏怖させて強姦罪が成立するような状況で、裸を撮影すると、強要罪です(神戸地裁H21.12.10)

 田中検事は強要罪での起訴を進めるのですが、強姦罪が立つくらいの状況なら、撮影は強制わいせつ罪ですよね。ちなみに、この神戸地裁H21.12.10は強要罪と3項製造罪は観念的競合としていて、控訴審の大阪高裁H22.6.18は破棄自判して観念的競合で処理しています。田中検事は牽連犯説だそうですが。

田中壽寿子性犯罪・児童虐待捜査ハンドブックp241
事例2 中学生の娘に対する強姦・児童ポルノ製造・強要事件
【被害者が裸体のまま笑顔で加害者と写っている写真を児童
ポルノとして性的虐待を認めた事例】
(1)事実の概要
加害者C雄は,養女桜子が長期間にわたりC雄から虐待を受けたためにC雄を極度に畏怖していることに乗じ,①平成X年7月頃,自宅において,桜子(当時13歳)を強姦し,②同年4月から7月までの間,数回にわたり,桜子を脅迫し同女をして陰部等を露出させた姿態等を取らせ,携帯電話機のカメラで撮影・送信させ,計30ファイルを自己のSDカードに保存・記録し児童ポルノを製造した倒。
(2)発覚の経緯
C雄(30歳代,会社員)は,妻(30歳代,パート),妻の連れ子である
桜子とその兄妹らと団地に居住していた。
C雄は,妻及び連れ子らに「しつけ」と称して激しい暴力を振るい,
家庭を支配していた。
桜子は,小学生のときから頻繁に,他の家族がいないときにC雄に強姦され,抵抗すると腹部など着衣で隠れる部位を足蹴りされるなどの暴行を受け,児童ポルノ画像の撮影も強要されていた。
平成X年8月, C雄と妻が離婚した後,桜子の妊娠が判明して被害申告に至った。

(72)児童ポルノ画像を「記録媒体に記録した」ときに製造罪が成立し,「記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為」も製造罪に当たる(最判平18・2・20刑集60巻2号216頁)。強要罪は観念的競合であえて起訴する必要はないという意見もあり得るが,被害者の心情と情状面からいっても起訴し得るときはした方が良い。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100406170426.pdf

第1(平成20年12月9日付け起訴状記載の公訴事実第1の1関係)同児童を強要して児童ポルノを製造しようと企て,平成19年5月2日午後8時41分ころから同日午後9時23分ころまでの間,神戸市a区b町居住c番地のd所在の県営B住宅e号室の当時の被告人方において,同児童(当時12歳)が18歳に満たない者であることを知りながら,上記のとおり同児童が極度に畏怖しているのに乗じて,別表番号1ないし5のとおり,同児童に対し 「胸寄せろ 」などと申し向けて脅迫し,同児童をして,これに応じなければ自己の自由,身体等にいかなる危害を加えられるかもしれない旨さらに畏怖させ,よって,同児童をして,その両乳房,陰部を露出させた姿態等をとらせ,これを所携の携帯電話機内蔵のデジタルカメラにより撮影させ,同携帯電話機に装着されたマイクロSDカード(神戸地方検察庁-平成20年領第1336号符号2−2)に画像データ5ファイルを保存して記録し,もって,同児童に義務なきことを行わせるととともに,児童ポルノを製造した,
・・・・・・・
第7 まとめ
以上の検討によれば,本件では,被告人が,別表番号1ないし29の各撮影日に,以前から虐待を受けて被告人を極度に畏怖していた被害者を脅して各画像にあるとおりの姿態をとらせて,これを撮影した画像ファイルをそれぞれ本件カードに保存するとともに,別表番号10の画像を撮影した平成19年5月11日及び別表番号27の画像を撮影した同年7月19日に,いずれも着衣を脱ぐよう申し向けるなどして被害者を畏怖させ,その反抗を抑圧して強姦したとの事実が認定できる