児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

執行猶予期間の満了と「禁錮以上の刑を受け、その執行を終わりもしく受けることがなくなった日から 年を経過しない者」という資格制限

 例えば、宣告刑が「執行猶予5年」で「禁錮以上の刑を受け、その執行を終わりもしく受けることがなくなった日から5年を経過しない者」という資格制限があると、判決確定後10年はその資格を取れないのかという質問が時々あります。
 弁護士にも間違う人がいますが、執行猶予が無事満了すれば、資格制限はなくなります。

条解刑法第2版
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2) 言渡しの効力の消滅刑の言渡しが効力を失うとは,言渡しに基づく法的効果が将来に向かつて消滅するという意味である(最決昭45・9・29集24-10-1421。なお.34条の2参照)。
執行猶予の要件との関係では,刑の言渡しが失効することになるから, 25条1項I号の「前に禁鋼以上の刑に処せられたことがない者」などに該当することになる(25条注9(イ).12・16参照)。これに対し併合罪の成否に関しては,刑の言渡しが失効しでも,確定裁判を受けたという事実自体が消滅するわけではないから,執行猶
予の裁判の確定前に犯した罪とは45条後段の併合罪となる(45条注2参照)。
また,刑の言渡しが失効しても,言渡しを受けたという事実そのものをその後の犯罪の量刑資料に使うことは許される(最決昭33・5・1集12-7-12930なお, 34条の2注7参照)。
執行猶予の期間の経過により刑に処せられたことによって受けていた各種の資格に対する制限(25条注1ウ)参照)はなくなる。しかし刑の言渡しによりいったん失った資格が執行猶予期間の経過によって当然に回復するものではない。
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(ウ)効果
執行猶予の言渡しがされると判決が確定しでも直ちに刑の執行を受けることがなくなる(執行猶予の取消し及びその期間満了の効果については26・26の2・26の3.27参照)。しかし刑の言渡しに伴う他の法的な不利益は免れない。例えば,再度の刑の執行猶予の制限事由となり(25?),また一定の資格制限又は失職の事由となる(34条の2注1参照)。資格制限の例外として.少年のとき犯した罪について執行猶予の言渡しを受けた者は,法令上の資格制限の適用を受けない(少60?)。

3訂版 前科登録と犯歴事務P146 
3  刑法27 条による刑の消滅
通常「刑の消滅」というときは,刑法34 条の2 の規定により刑の言渡しの幼力を失う場合を指すのが一般的であるが.刑の執行猶予の言渡しがあった刑について.同法27 条の規定により刑の言渡しの効力を失う場合も.当然のことながら刑の消滅に該当するのところで,この27 条の規定は,現行刑法制定の当初から設けられているものであるが.本来は. 刑の消滅を定めたものというよりむしろ執行猶予期間の経過の効果を定めた規定であり.これが34 条の2 と並んで刑の消滅に関する規定といわれるようになったのは,34条の2 新設以後のことであって比較的歴史は新しい。
次に.27 条の効果が生ずるためには,執行猶予の宣告を取り消されることなく執行猶予の期間を経過することが必要であり.猶予期間の最終日の翌日にその効力が生ずる。なお,執行猟予取消しの場合,その効果は. 猶予期間中に執行猶予取消決定が確定することにより生ずるとされているので,猶予期間中に取消決定があっても.その確定が猶予期間の経過後であるときは.猶予取消しの効果は生ぜず執行猶予刑は消滅することドなる。執行猶予予期間満了の日に取消決定が確定する場合も.当然執行猶予刑は消滅する。
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次に,執行猶予の刑に処せられた者に対する種々の資格制限について.近時の立法では,これらの者を「禁鋼以上の刑に処せられ.……その執行を受けることがなくなるまでの者」として.明確に執行猶予期間中資格制限を受けるものとしている例が多いが(国家公務員法:38 条2 号.地方公務員法16条2 号等). 中には「禁制以上の刑に処せられ.その執行を終わり又は執行を受けることがなくなってから2 (3) 年を経過しない者」という法形式で資絡制限を規定している法令も相当数に上る(行政書士1去5 条3 号,司法書士法4条l 号,土地家屋調査土法4条l 号等)。ところで,前記「・・・その執行を受けることがなくなってから2 (3) 年を経過しない者」とする規定は,形式的に解釈すると.執行猶予期間経過後2 年又は3 年の問は依然として資格制限が続くということになりそうであるが.執行猶予の刑は,刑法27条の規定に基づき猶予期間の経過により消滅するので.この2 年又は3 年とした部分の規定は,猶予期間が経過した者については適用の余地がなく, 刑の執行の免除により刑の執行を受けることがなくなった者についてのみ適用 されることになる(法制意見第一局長回答)。