児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

鹿野伸二「児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数」ジュリスト1404p122

法律時報82巻2号p128の匿名の解説にも同じ誤記がある
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20100212#1266142572

 「平成20年の少年法改正前の事件であり、管轄もなくなるということもあり、適法な主張として扱われた。」とありますが、本件は児童福祉法違反を含まないので、別件の原稿の消し忘れなんでしょうね。最高裁調査官。
 ともかくこういう場合の併合罪主張は適法ということらしいです。なら仙台高裁H21.3.3は改めてほしいところです。

(刑事)
1 児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数
2 児童ポルノであり,かつ,刑法175条のわいせつ物である物を,不特定又は多数の者に販売して提供するとともに,不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した行為が,全体として一罪とされた事例最高裁平成21年7月7日第二小法廷決定(平成20年(あ)第1703号、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反、わいせつ図両販売、わいせつ図両販売目的所持、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件)(刑集63巻6号507頁、判時2062号160頁)1審・さいたま地川越支判平成20年3月11日2審・東京高判平成20年8月13日     
本件は、被告人が。児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(以下「児童ポルノ法」という)における児童春、児童ポルノ製造、所持、提供の各行為と、刑法上のわいせつ図画販売、所持行為を行った事案であったが、そのうち問題とされたのは、被告人が、児童ポルノであり、かつ、わいせつ図画でもあるDVDと、児童ポルノには当たらない単なるわいせつ図画であるDVDを、多数回にわたり販売し、また、これらを販売目的で所持したという児童ポルノ提供及び所持、わいせつ図両販売及び所持に該当する行為の罪数である。 
すなわち、本件では、第1審において、当初、児童ポルノであり、かつ、わいせつ図画でもあるDVDと単なるわいせつ図画であるDVDを多数回にわたり販売した事実のうちの一部が公訴事実として起訴され、その後、訴因変更により、それらの販売回数が追加され、さらに、販売行為のほかに所持行為が犯罪事実に加えられたというように、公訴事実が拡大されてきたという経緯が存在した。弁護人は、控訴審において、要旨、「児童ポルノを提供、所持した場合、これらは併合罪の関係にあると解されるから、各行為については公訴事実の同一性がなく、このことは、本件のように、当該児童ポルノが同時にわいせつ物に該当し、仮にこれらの提供や所持が、わいせつ物販売、所持のみでみたときには全体として包括一罪とされるときであっても変わりはないから、それにもかかわらず、これをー罪として訴因変更を認めた第1審の訴訟手続には法令違反がある」と主張した。 
これに対し、原判決は、まず。最一小決昭和39・4・30(裁判集刑事151号133頁)及び最一小決昭和40・12・23(裁判集刑事157号495頁)を引用して、複数のわいせつ図両販売、所持は同一の意思のもとに行われる限りにおいて包括一罪となるとした上、さらに、児童ポルノであり、かつ、わいせつ図画でもあるDVDを販売したときは、児童ポルノ提供罪とわいせつ図両販売罪との観念的競合であり、同様のDVDを所持したときは児童ポルノ所持罪とわいせつ図画所持罪との観念的競合であるとして、結局、児童ポルノでありわいせつ図両でもあるDVDの提供(販売)と、その所持が複数回なされた本件について、各罪を包括一罪として訴因変更を許可した第1審の手続に違法はない旨の判断を示し、所論を排斥した。
弁護人が、上告審においても控訴審同様の主張を行った。  。  I 児童ポルノを、不特定又は多数の[mに| 者に提供するとともに、不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合、児童ポルノ法7条4項の児童ポルノ提供罪と同条5項の同提供目的所持罪とは併合罪の関係にある。 II 児童ポルノであり、かつ、刑法175条のわいせつ物である物を、不特定又は多数の者に販売して提供するとともに、不特定又は多数の者に販売して提供する目的で所持した場合、わいせつ物販売と同販売目的所持が包括して一罪を構成すると認められるときには、全体が一罪となる。     
1 本件では、訴因変更が適法かどうかという訴訟手続の法令違反の有無を判断するために公訴事実の同一性が問題となり、公訴事実の同―性は実体法上の罪数によって決せられるというのが通説であって、実務も基本的にはこれに従っているため。
控訴審において罪数についての判断が示されたものである。一般的には、裁判所が科刑上一罪と認定した罪数判断について、これが併合罪であると主張することは、被告人に不利益な主張であり、上訴理由としては不適法になることが多いが、
本件は、仮に併合罪であれば、訴因変更手続によって審理の対象とすることはできず、追起訴手続をとらなければならなかったというだけでなく、平成20年の少年法改正前の事件であり、管轄もなくなるということもあり、適法な主張として扱われた。