この主張を不利益主張だと解説した論稿もありました。
わいせつかつ児童ポルノのDVDを大量販売した事件の場合、まず、
H25.1.1のわいせつかつ児童ポルノのDVDの4項提供罪(不特定多数)で起訴して、起訴後に押収物を分析して
H25.1.3 わいせつかつ児童ポルノのDVDの4項提供罪
H25.1.10 わいせつかつ児童ポルノのDVDの4項提供罪
H25.2.110 わいせつかつ児童ポルノのDVDの4項提供罪
を「訴因変更」で追加していくのが実務なんです。
この訴因変更手続きが違法・無効になると、H25.1.1以外の提供罪が全部罪体から落ちるから、かなり軽くなるんですよ。そういう主張でした。
4項提供罪(不特定多数)と5項所持罪(不特定多数)が併合罪だというのがこの判例ですが、4項提供罪(不特定多数)を数回行った場合の罪数処理については判例がありません。
「不特定又は多数の者に提供」という構成要件なんだから、ある程度のまとまりで包括一罪になるというのが、常識でしょうね。判例は必ずしもそうは言わないと思いますが。
「児童ポルノを,不特定又は多数の者に提供するとともに,不特定又は多数の者に提供する目的で所持した場合の罪数」 最高裁判例解説刑事編H21
(注2) 公訴事実の同一性がないにもかかわらず訴因変更の許可がなされた場合,審理途中であれば訴因変更を取り消して,追起訴手続をとればよいが(最一小判昭和62年12月3日刑集41巻8号323頁),判決に至った場合には,当該判決は,請求を受けない事件について判決をした違法があるものとされる(最二小判昭和33年2月21日刑集12巻2号288頁)。弁護人の主張は,第一審判決において包括一罪と認定された事実を併合罪であると主張するものであるところ,併合罪は刑が加重されるのであるから, 一般的にはこのような主張は被告人に不利益な主張として許されないのであるが,本件においては上記訴因変更手続の問題がからんだために被告人に利益な主張ということになり,適法な上告理由ではないものの, 下級審への指針として職権判示の対象とされたものと思われる。