児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

裁判員裁判:上限超え懲役計32年 強殺未遂25年確定、強姦致傷で7年−−東京地裁H22.4.22

 執行の場面でも、30年だと、10年で仮釈放可能となりますが、25年と7年だと、重い方から執行されますから、仮釈放要件が10年では備わらないことになります。(刑訴法474条但書を厳密に適用しないかぎり。)

刑訴法
第四百七十四条  二以上の主刑の執行は、罰金及び科料を除いては、その重いものを先にする。但し、検察官は、重い刑の執行を停止して、他の刑の執行をさせることができる。

http://mainichi.jp/select/jiken/saibanin/news/20100423ddm041040080000c.html
裁判員裁判:上限超え懲役計32年 強殺未遂25年確定、強姦致傷で7年−−東京地裁 毎日新聞 2010.04.23 
 強盗殺人未遂罪で懲役25年の判決が確定した後、強姦(ごうかん)致傷罪に問われた被告(62)の裁判員裁判で、東京地裁は22日、懲役7年(求刑・懲役10年)の判決を言い渡した。
 懲役は計32年となるが、刑法の規定で有期刑上限の30年を超える刑は執行されない。林正彦裁判長は「7年は軽いと判断したが、特殊事情を考慮した」と説諭した。
 裁判員への負担を考慮し強殺未遂事件と今回の事件が分離されたことに対し、判決後に会見した裁判員からは「一緒に審理したほうが事件を総合的に見ることができた」「あくまで単体として事件を扱うべきだ」と意見が分かれた。


この問題は、旧少年法37条の問題として、昔は児童福祉法違反で論じられていました。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20081226#1230263794




追記
 研修pdf(ocr済)で「刑法51条」を検索しました。
 実際に執行する場面については研修に説明がありました。(現在では有期刑の上限が30年に改正されています。)

扇谷俊春「執行事務(3)」研修652p118
そこで,二以上の自由刑の執行を同時に指揮する場合において,刑法51条2項の適用があるときは,執行することができる刑期に満ちるまで,最も重い刑から順次その刑期を加えてそれぞれ執行すべき刑期とし,これを明らかにして(順次執行すべき刑期を定め,これを執行指揮書に明記して)執行を指揮します。
具体的には,刑法51条l項本文は,併合罪につき二個以上の裁判があったときは,その刑を併せて執行する旨規定していますが,この併執行を無制限に行うと,併合罪の同時審判における科刑の制限(刑法47条,14条前段)を超えて刑を執行するという結果を生ずることとなる場合が考えられます。そこで,刑法51条2項は,併合罪の関係にある有期懲役刑又は禁銅刑を執行する場合には,その最も重い罪につき定めた刑(注1)の長期にその半数を加えたものを超えることができない旨規定して,併合罪に係る刑については,その執行面においても科刑の限度に執行をとどめています。さらに,有期刑の執行は,通じて20年を超えることはできません(刑法14条前段)(注2 すなわち,執行することができる刑期は,併合罪中の最も重い罪につき定められた刑の長期にその半数を加えたものがその限度であり,その限度が20年を超えるときは,刑法14条の趣旨により20年が最高限度となります。
例えば,懲役10年以下の罪につき懲役10年、禁錮10年以下の罪につき禁錮10年の言渡しがあった場合には,重い懲役10年の長期10年にその半数を加えた15年が執行することができる刑期となります。15年に満ちるまで重い刑から順次その刑期を加えると,懲役刑10年と禁鋼刑5年が執行すべき刑期となります。

 報道の事件では懲役25年が先に執行されて、次に懲役7年のうち5年が執行されます。