児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者性交・不同意性交・不同意わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録・性的姿態撮影罪弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

携帯電話で撮影して、pcにダビングして、バックアップして、ダビングして・・・という一連の製造行為(1年間)は単純一罪ではなく包括一罪(最決h22.3.25)。

 原判決と上告理由と最決を合わせて読むと、包括一罪になることがわかります。
 性犯罪と3項製造罪が重なるから観念的競合だと主張すると、撮影〜複製という一連の製造行為を1個の製造罪だとして、点と線の関係だから併合罪だとする高裁判決がいくつかありますが、そんなんで逃げるのはダメです。

最決h22.3.25
弁護人奥村徹の上告趣意のうち,上告理由第1において判例違反をいう点は,原判決は所論のような趣旨を判示したものとはいえないから,前提を欠く

上告理由第1 法令違反・判例違反〜一連の複製行為を「単純一罪」とした点
 原判決は、本件の製造行為を一個の行為であり単純一罪として処理しているが、実は、撮影→複製→複製という数回の製造行為であって、包括一罪として処理すべきであり、それが判例である。
 原判決には判決に影響を及ぼすべき法令の違反があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反するから原判決は破棄を免れない(411条1項)。
 同時に、包括一罪とした判例
東京高裁H17.12.26
札幌高裁H19.3.8
名古屋高裁金沢支部h17.6.9
最決H18.2.20
札幌高裁H19.9.4
に反していて、最高裁判所判例と相反する判断をしたか、最高裁判所判例がない場合に、大審院若しくは上告裁判所たる高等裁判所判例又はこの法律施行後の控訴裁判所たる高等裁判所判例と相反する判断をしたことに他ならないから原判決は破棄を免れない(405条3号)。

原判決
 2 児童ポルノ製造罪に関する控訴趣意について
 (1)児童ポルノ法10条の摘示に関する主張について(控訴理由第2)
 論旨は,要するに,原判決は,「罪となるべき事実」の第2において,被告人が,大阪府内の当時の自宅において,被害児童に全裸の姿態をとらせて携帯電話機付属のカメラで撮影し,その画像(以下「本件ポルノ画像」という。)を自己のパソコンに保存した後,A国内において,同画像を同パソコンから外付けハードディスク(以下「本件ハードディスク」という。)に記録して保存したとの事実を認定しているが,このうち中華人民共和国内における製造行為について国外犯処罰規定である児童ポルノ法10条の摘示を欠いているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反ないしは法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,上記認定事実によると,犯罪を構成すべき行為の一部が日本国内で行われていることが明らかであり,本件について有罪判決をするに当たって児童ポルノ法10条を適用する必要があるものとは解されないから,論旨は理由がない。

原判決
 論旨は,要するに,原判示第2の事実のうち,平成22年1月7日にA国内で被告人が本件ポルノ画像を本件ハードディスクに記録して保存した行為は,平成21年1月13日に大阪府内で被害児童を撮影した行為とは犯意が同一ではなく,包括一罪の関係に立たない不可罰的事後行為と評価すべきであるのに,これを含め,被告人の行為全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
 しかし,児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を更に別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為についても,児童ポルノ製造罪に当たると解すべきであり,撮影後,手違いでデータが消去されることを恐れた被告人が記録,保存行為を反復した挙げ句,最終的に記録,保存したのが所論のいう平成22年1月7日の行為であるなどの関係証拠から窺われる経緯に照らすと,被害児童を撮影してから本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録,保存するまでに約1年が経過していて,それらの行為が行われた場所も全く異なることなど,所論が指摘する事情を考慮しても,本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録して保存した点も含めて,全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決に誤りがあるとはいえない。