児童ポルノ・児童買春・児童福祉法・監護者わいせつ・不同意わいせつ・強制わいせつ・青少年条例・不正アクセス禁止法・わいせつ電磁的記録弁護人 奥村徹弁護士の見解(弁護士直通050-5861-8888 sodanokumurabengoshi@gmail.com)

性犯罪・福祉犯(監護者わいせつ罪・強制わいせつ罪・児童ポルノ・児童買春・青少年条例・児童福祉法)の被疑者(犯人側)の弁護を担当しています。専門家向けの情報を発信しています。

撮影後1年間に複製やバックアップが行われた場合を3項製造罪の単純一罪とした事例(東京高裁H21.12.9)

 1年間にわたる1個の行為なんだから撮影の時の犯意なんか問題にしないのですよ。
 包括一罪にもならないのなら、上田判事とかが論じてくれた実行行為性の争いなんて不要じゃないですか。
上田哲「刑事関係 平成18.2.20,3小決 (最高裁判所判例解説--平成18年2,3,10月分 平成19年2,3,10月分) (法曹時報. 61(8) [2009.8])

東京高裁H21.12.9
児童ポルノ製造罪に関する控訴趣意について
(1)児童ポルノ法10条の摘示に関する主張について(控訴理由第2)
論旨は,要するに,原判決は,「罪となるべき事実」の第2において,被告人が,当時のA県内の自宅において,被害児童に全裸の姿態をとらせて携帯電話機付属のカメラで撮影し,その画像(以下「本件ポルノ画像」という。)を自己のパソコンに保存した後,B国内において,同画像を同パソコンから外付けハードディスク(以下「本件ハードディスク」という。)に記録して保存したとの事実を認定しているが,このうちB国内における製造行為について国外犯処罰規定である児童ポルノ法10条の摘示を欠いているから,原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反ないしは法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,上記認定事実によると,犯罪を構成すべき行為の一部が日本国内で行われていることが明らかであり,本件について有罪判決をするに当たって児童ポルノ法10条を適用する必要があるものとは解されないから,論旨は理由がない。

(2)本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録,保存した行為は児童ポルノ製造罪に該当しないとの主張について(控訴理由第3)
論旨は,要するに,原判示第2の事実のうち,平成22年10月7日にB国内で被告人が本件ポルノ画像を本件ハードディスクに記録して保存した行為は,平成21年10月13日にA県内で被害児童を撮影した行為とは犯意が同一ではなく,包括一罪の関係に立たない不可罰的事後行為と評価すべきであるのに,これを含め,被告人の行為全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかし,児童ポルノ法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を更に別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為についても,児童ポルノ製造罪に当たると解すべきであり,撮影後,手違いでデータが消去されることを恐れた被告人が記録,保存行為を反復した挙げ句,最終的に記録,保存したのが所論のいう平成22年10月7日の行為であるなどの関係証拠から窺われる経緯に照らすと,被害児童を撮影してから本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録,保存するまでに約1年が経過していて,それらの行為が行われた場所も全く異なることなど,所論が指摘する事情を考慮しても,本件ハードディスクに本件ポルノ画像を記録して保存した点も含めて,全体が一つの児童ポルノ製造罪になるとした原判決に誤りがあるとはいえない。

上田判事曰く
児童ポルノの撮影によりその製造罪が成立するとすれば,その後の現像までの行為は不可罰的事後行為である,等の主張がされたものであり、・・・・上記②については新たに児童ポノレ/を作り出すものと評価できる行為はいずれも製造に当たると解するのが相当であり写真については,児童ポルノ製造罪は撮影によって既遂となるが, 現像. 焼付けもまたそれぞれ製造に当たるものと解され、各段階で頒布販売等の目的でこれを行った者には児童ポノレノ製造罪の適用がありただ, 先の行為を行った者が犯意を継続して後の行為を行った場合には包括一罪となるものと解される。

 東京高裁H21.12.9だと、継続犯みたいな感じですよね。
 ここまでいわれるんなら、併合罪の方が被告人に有利でいいですよ。
 上田さんどうでしょう?