ダウンロード販売の事案です。
これまでわいせつのメール送信もバンバン逮捕してましたが、札幌高裁h21.6.16を受けて、敗北宣言みたいです。
奥村も大阪高裁と札幌高裁でちょっとかんでます。
判例研究
インターネットを通じて不特定又は多数の者に有償で提供(販売 ) する目的で児童ポルノ動画ファイル及びわいせつ動画ファイルを自宅のパソコンのファイルサーバーに記憶蔵置させた事案につき児童ポルノ提供目的所持罪の成立を認めながらわいせつ図画販売目的所持罪の成立を否定した事例
(札幌高等裁判所平成21年6月16日判決・高検速報(札幌) 174号・研修737号127頁)
山崎耕史(法務省大臣官房司法法制部付)
刑法と児ポ法は別の法律であるから.必ずしも同じように解釈しなければならないわけではないが刑法175条のわいせつ図画販売罪等と児ポ法上の児童ポルノ提供罪等は構造的にはほぼ同様のものであり.異なる解釈をすることは困難であろう。
本判決は,前記の平成15年大阪高等裁判所における児ポ法の判例や平成16年の同法改正の流れの中にあって.軌をーにする整合的な判断を示したものといえる。そして.本判決を前提とすればわいせつ情報を刑法175条のわいせつ物に含めて理解することは困難となったものとみることができょう。このように.時代とともに技術が進歩し,新たな事態が生じてくると,従来の考え方では対処しきれなくなることはいくらでもあり得る。今回取り上げた本判決の事案もその1つといえる。 従来の考え方で対処しきれなくなった場合には.解釈で対応できる場合もあるであろうがそうでない場合もあり得るのであって,本判決の事案の場合もはや解釈の限界に接してしまったということではないかと思われる。
いずれにせよ.本判決のような事案についてわいせつ図岡販売目的所持罪で処理することは困難であり.立法上の手当が待たれるところである。
札幌高裁平成21年6月16日
諭旨に対する判断に先立ち,職権で原審記録を調査して検討するに,原判決には次のような法令の解釈適用の誤りがある。
すなわち,本件訴因変更後の公訴事実中,わいせつ図画販売目的所持罪に係る公訴事実の要旨は,「被告人は,インターネット上に開設したホームページを利用して,不特定又は多数のインターネット利用者を対象として」「わいせつ図画を販売」「しようと企て,」「男女の性交場面等を露骨に撮影記録したわいせつ図画である動画ファイルを記憶・蔵置させたファイルサーバー2台及びハードディスク3台を,これらの動画ファイルを不特定又は多数の者に」「販売する目的で所持した。」というものであるが,同罪の「販売目的」の対象となる「わいせつな文書,図画その他の物」(刑法175条前段)とは有体物であって,単なる電子データそのものや「電磁的記録その他の記録」(法7条1項参照)はこれに含まれないと解されるから,有体物ではない「動画ファイル」を販売する目的でファイルサーバー等を所持したとの上記公訴事実自体がわいせつ図画販売目的所持罪を構成しないというべきである。(なお,関係証拠を検討しても,被告人が,わいせつな画像データを記憶,蔵置させたファイルサーバー及びハードディスクを所持し,このわいせつな画像データをインターネット等の電気通信回線を通じて第三者にダウンロードさせてその対償を得ていたことは認められるが,このファイルサーバー及びハードディスク自体を飯売したり,わいせつな画像データをCDやDVDなどの有体物に記憶させてこれを販売したりする目的を有していたことを認めるに足りる証拠は存在しない。) したがって,上記公訴事実と同一の事実を「犯罪事実」の項の2において認定し,刑法175条後段を適用してわいせつ図画販売目的所持罪の成立を認めた原判決は,同罪に関する法令の解釈適用を誤っており,この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから破棄を免れないところ,原判決は,「犯罪事実」の項の2の事実について,わいせつ図画販売目的所持罪と児童ポルノ提供目的所持罪が成立して両罪は観念的競合であるとし,さらに,同項の1と2の事実を包括一罪として1個の刑を科しているので,原判決は結局その全部について破棄を免れない。
そこで,論旨に対する判断を省略し,刑訴法397条1項,380条により原判決を破棄し,同法400条ただし書により当裁判所において更に判決する。
バンバン捕まってたでしょ。
詳しい弁護士が争えば起訴されないか無罪になるとおもうんですが、
わいせつ画像をメール送信した疑い、男逮捕 香取署など /千葉県
2010.02.09 朝日新聞
同署によると、容疑者は昨年10月〜同12月、当時交際していた女性のわいせつな動画を携帯電話のメールで不特定多数の人に送信した疑いがある。インターネットの掲示板に動画を載せ、欲しいと言ってきた人に送っていたという。「(女性と)けんかになったのでやった。100人くらいに送った」と容疑を認めているという。わいせつ画像送信容疑で逮捕=山梨
2009.10.21 読売新聞
容疑者は、ネットオークションで被害女性が売り出していた女性服を購入。その際に知ったメールアドレスを悪用し、購入した服を身に着け、下半身を露出した写真を送りつけたという。容疑者はほかにも100着以上の女性服を購入しており、同署で余罪があると見て調べている。
熊本県教委参事を逮捕 わいせつ動画送付の疑い
2009.02.20 共同通信
同署によると、容疑者は昨年九月二十七日午後四時五十分ごろ、自宅のパソコンを熊本県の庁内ネットワークに接続。知り合いの県職員の男性(47)が送ったメールとみせかける工作をした上で、わいせつ動画を添付したメールを複数の県立高校に勤めている事務職員の男女数人の公用アドレスに送り付け、男性の名誉を棄損するなどした疑い。
なお、札幌高裁はダウンロード販売を4項提供罪(不特定多数)とするのですが、大阪高裁h21.9.2によれば、データの提供というのはメールの場合のみであって、他の場合は公然陳列罪だというので、メール以外の方法で児童ポルノ画像を送った場合の罰条については、判例が定まらないこともわかります。
大阪高裁平成21年9月2日
また,弁護人は,本件は,児童ポルノ公然陳列罪ではなく,児童ポルノ提供罪が成立する旨主張するが,本件が児童ポルノ公然陳列罪に該当することは,一審判決が「補足説明」の項で正当に説示するところである。
なお,弁護人の主張にかんがみ,付言するに,児童ポルノ法の平成16年改正で,電磁的記録の提供(同改正後の同法7条4項後段)を新たに処罰の対象として新設し,かつ,児童ポルノの定義(同法2条3項)に「電磁的記録に係る記録媒体」を明記した趣旨は,同改正前の同法において,児童のポルノに係る電子データを記録媒体に記憶させ,これをインターネット上で不特定多数の者に閲覧させた場合には,上記電子データが記憶・蔵置された記録媒体を有体物としての児童ポルノとし,その公然陳列があったとして,児童ポルノ公然陳列罪が成立すると解されていたところ,これを前提として,同改正前の同法では処罰の対象として含めることに疑義があった電子メールにより児童のポルノを内容とする電磁的記録を送信して頒布する行為の処罰を新設するとともに,この改正に伴い,解釈上の疑義が生じないように児童ポルノの定義中に「電磁的記録に係る記録媒体」が含まれることを明示したというものである。このような同法の改正の趣旨にかんがみれば,本件が児童ポルノ提供罪に当たらないことは明白であるo
以上のとおり,一審判決に法令の適用の誤りはない。弁護人の主張は,採用できない。